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この記事の監修
秋本 陽介
この記事の監修
秋本 陽介
米国の大学院を卒業後、大手M&A仲介会社に参画し、部長職として同社の年間売上上位を複数回記録。これまでに50社以上のM&A成約に携わる。2022年よりM&Aロイヤルアドバイザリー株式会社に参画、常務執行役員パートナーに就任。
近年、事業拡大や事業承継、新規事業への参入手段として、M&Aを利用する企業が増加しています。特に後継者問題が深刻化している中小企業においてはM&Aの件数は急増しており、2023年には約4,015件ものM&Aが実施されました。
本記事では、M&Aの基本的な情報をわかりやすく解説します。目的・メリットや、実施の流れ、成功させるためのポイントについて確認していきましょう。M&Aを実現するには、M&Aがどのような取り組みなのか正しく理解することが重要です。
M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で、そのまま企業の「合併」「買収」を意味します。広義では「提携」まで含まれます。
M&Aといえば「大企業や外資系企業による乗っ取り」「譲渡企業の身売り」「経営不振」というネガティブなイメージがありました。しかし、近年は企業戦略としてのM&Aが活発になってており、ネガティブなイメージは払拭されています。
特に中小企業におけるM&Aは友好的なものが大半です。1985年には年間約360件だったM&Aは、2023年には約4,015件にまで増大しており、企業戦略の1つとして受け入れられていることが伺えます。
譲受企業がM&Aを行う目的としては、主に「事業拡大のための時間の削減」「新規事業への参入」「自社のウィークポイントの補強」の3つが挙げられます。
事業規模の拡大や新規事業の開拓には膨大な時間がかかりますが、M&Aでは譲渡企業の事業分、自社の規模を拡大できます。会社を大きくするための時間を大幅に削減できるのです。そのため、M&Aは「時間を買う戦略」と称されています。
M&Aにより、スピーディーに新たなビジネスチャンスを獲得できます。急激に変化するビジネス環境では、コストと時間をかけて新規事業を開拓しても、先行した競合に差を付けられることが珍しくありません。
現代においては、育成する時間を省いて新規事業に参入する手段としてM&Aが用いられています。
自社の弱みや苦手分野の補強にもM&Aが有効です。M&Aで自社にはない技術やノウハウを持つ企業と1つになることで、スピーディーに課題を解決できます。ウィークポイントを補強し合える企業と統合できれば、相乗効果(シナジー効果)も期待できます。
譲渡企業がM&Aを行う目的としては、主に「後継者不在問題・雇用問題の解決」「事業の強化・事業規模の拡大」「事業の再生」「創業者利益の獲得・資金調達」「イグジット戦略」の5つが挙げられます。
現在、日本の中小企業の多くは、経営者の高齢化と後継者不足で事業を存続させることが難しい状況にあります。このままいくと中小企業の廃業が増加し、2025年までに約650万人の雇用と約22兆円のGDPが喪失すると推計されてきました。M&Aで事業承継できれば、後継者や雇用の問題を解決できます。
人員や設備、顧客の拡大はもちろん、新規事業への参入やノウハウの取得も可能です。近年では事業拡大や経営資源取得を目的とした小規模なM&Aが増加しています。
M&Aで事業を買収・合併することで、経営不振に陥った企業を救済することもできます。日本では元々、経営不振の企業を救うためのM&Aは主流となっていました。
事業を売却して資金調達を行うためにM&Aを行うこともあります。テクノロジーの発展と共に社会情勢や景気は急激に変化しており、利益が出にくい事業を売却することで、新規事業や中核事業に人材や資金といった資源を集中させることができます。
M&Aは、事業を売却することで投資資金を回収するイグジット戦略(出口戦略)にも活用されるようになっています。アメリカを中心に海外ではM&Aによるイグジットは一般的でしたが、近年では日本でも起業時から積極的にM&Aによるイグジットを目指す経営者が増えています。
M&Aにおいては、「企業価値評価(バリュエーション)」の算出が欠かせません。企業価値評価(バリュエーション)とは、M&Aにおける価格交渉のベースとなる「企業の値段」で、企業が保有する有形資産・無形資産や将来的な収益性を客観的に評価、数値化するプロセスです。
企業の価値は何を基準にして算出するのかにより、大きく数値が変わってきます。非上場企業は、株式を自由に売買できる市場がないため市場価格もわかりません。
曖昧な企業価値を評価するために行われるのが企業価値評価(バリュエーション)なのです。
企業価値評価(バリュエーション)の算出方法は、「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3つがあります。
コストアプローチは、企業の資産・負債から純資産を計算して、企業の価値を算出する方法です。中小企業や成熟企業や衰退基調下にある企業のM&Aで採用されるのが一般的。
インカムアプローチは、企業の将来の収益性から企業の価値を算出する方法です。主に大企業や成長企業のM&Aで採用されます。
マーケットアプローチは、株式市場やM&A市場での相場から企業の価値を算出する方法です。主に大手企業や同業他者が存在する企業で採用されます。
M&Aは、譲受企業にも譲渡企業にもメリットがあります。
【M&Aのメリット】
譲受企業(買収側) | 1.時間をかけずに事業を拡大・多角化できる 2.技術・ノウハウ・許認可・権利を取得できる 3.ブランド力・信用を取得できる 4.優秀な人材・専門人材を確保できる |
譲渡企業(売却側) | 1.後継者不在問題を解決できる 2.従業員の雇用を守れる 3.経営者の個人保証を解除できる 4.事業を資金化できる |
■時間をかけずに事業を拡大・多角化できる
M&Aによって、時間をかけずに事業規模の拡大や新規事業への参入、エリアの拡大、海外進出を図ることができます。シナジー効果による収益拡大や、事業の多角化によるリスクの分散・プロダクトライフサイクルへの対応も実現可能です。
■技術・ノウハウ・許認可・権利を取得できる
M&Aでは、譲渡企業が持つ知的財産をそのまま受け継ぐことができます。本来、技術やノウハウは長い時間をかけて研究、教育されて蓄積されるものです。しかし、M&Aであれば求める技術・ノウハウはもちろん、許認可や権利までを短期間で取得できるのです。
■ブランド力・信用を取得できる
M&Aにより、譲渡企業が持つブランド力や市場からの信用も引き継ぐことができます。新たな市場で新ブランドのブランド力や信用を確立するには、技術やノウハウと同様に長い時間がかかります。M&Aでは短期間で業界でのブランド力・信用も獲得できるのです。
■優秀な人材を確保できる
M&Aでは人材という資産も引き継ぐことができます。知的財産やブランド力と同じく、優秀な人材の育成には長い時間をかける必要があり、人口減少が進む現代では新規で採用しようとしても簡単には確保できません。
優秀な技術者や専門人材を引き継ぐことができる点は大きなメリットといえるでしょう。
■後継者不在問題を解決できる
M&Aは深刻化する後継者問題の解決策として非常に有効な手段です。少子高齢化や人材不足によって会社を引き継いでくれる人が見つからなくても、M&Aで会社を売却・合併して経営を引き継いでもらえれば、後継者問題に悩まされることはなくなります。
■従業員の雇用を守れる
M&Aは働いている従業員ごと引き継いでもらうことができます。特に中小企業のM&Aでは従業員の雇用の維持が譲渡条件に入れることが多く、M&Aで経営者や働く会社が変わっても従業員はそれまで通り雇用され続けるのが一般的です。
■経営者の個人保証を解除できる
M&Aでは、譲受企業に債務を肩代わりしてもらう、または実行時に借入金を返済することで個人保証(経営者保証)を外すことができます。中小企業では融資を受ける際に経営者自身が会社の債務の連帯保証人になっているのが一般的です。
経営者を継ぐとこの個人保証を引き継がなければならないため、後継者不足の一因にもなってきましたが、M&Aでは個人保証の問題も解決できます。
■事業を資金化できる
M&Aで事業や自社株を売却すれば、経営者は現金を手にできます。M&A後に会社を去る・譲受企業に転籍する場合は、売却対価の一部を退職金として受け取ることも可能です。M&Aにより、経営者の老後資金や新事業の立ち上げ資金を作ることができます。
M&Aはメリットが多く、実際に実行された件数も増加傾向にありますが、留意しておきたいデメリットも存在します。
【M&Aのデメリット】
譲受企業(買収側) | 期待していた収益やシナジー効果が出ない組織の再編に時間がかかる・上手くいかないリスクを引き継ぐ可能性がある承継した優秀な人材が離職する |
譲渡企業(売却側) | 従業員の雇用条件・労働環境が悪化する顧客や取引先との関係が悪化するソフト面のミスマッチが起きる希望した価格で売却できるとは限らない |
■期待していた収益やシナジー効果が出ない
M&Aではプラスの効果を期待できますが、いつも期待どおりの結果になるわけではありません。想定していたような利益が上がらない、シナジー効果を感じられないということもあるでしょう。
ただし、M&Aによる変化が目に見えるまでには時間がかかります。M&A実行後も中長期的な視点で見たときに、初めてどの程度の効果があったのかが判断できます。
■組織の再編に時間がかかる・上手くいかない
異なる理念やビジョンを持った企業同士がそう簡単に統合できるわけはなく、M&A後の組織再編にはかなりの時間と労力がかかります。
しかし、M&Aによる効果を得るためには、従業員の混乱を避けながら計画的に統合作業を進める必要があります。
■リスクを引き継ぐ可能性がある
採用するスキームにもよりますが、M&Aでは貸借対照表に計上されていない簿外債務や、将来的に債務になりそうな偶発債務といったマイナスの資産も引き継がなければならないケースがあります。
さらに、M&Aでは将来の収益性、所謂「のれん」も見込んで取引条件を決めます。将来期待していた収益が実現しなかった場合、のれんが減損するリスクもあります。
■承継した優秀な人材が離職する
M&Aでは譲渡企業にいる優秀な人材を獲得できますが、転籍後に企業文化や待遇に不満を感じられてしまうと、優秀な人材が流出することもあります。
優秀な人材に離職されると、想定されていた収益の拡大やシナジー効果が得られなくなるだけでなく、離職者が多ければ通常業務を続けることも難しくなります。
■従業員の雇用条件・労働環境が悪化する
M&A後、一般的には譲渡企業の従業員の雇用が継続されますが、雇用条件や労働環境が悪化することも考えられます。待遇が悪くなれば、優秀な人材の離職も考えられます。
そのため、譲渡企業は継続雇用だけでなく、給与や待遇についても同条件で引き継ぐよう交渉する必要があります。
■顧客や取引先との関係が悪化する
M&Aによって経営者や担当者、契約条件が変更されると、顧客や取引先との関係が悪化する可能性があります。顧客・取引先と良好な関係を保つためには、譲渡企業側が譲受企業に転籍し、案件に関与を続けて新しい関係構築のサポートを行う必要があります。
■ソフト面のミスマッチが起きる
譲受企業で働いていた人と譲渡企業で働いていた人の間で、ソフト面でのミスマッチが起きる可能性があります。
M&Aによって設備や制度・規則、組織構造といったハード面は統合できても、企業文化や従業員に根付く価値観や意識といったソフト面の統合は簡単には進みません。M&Aではソフト面での相性も考慮する必要があります。
■希望した価格で売却できるとは限らない
M&Aでは、買収・合併してくれる企業を見つけなければなりませんが、必ずしも希望する価格で売却できるとは限りません。
譲受企業と譲渡企業の双方が合意しないとM&Aは成立しませんが、当初想定していた通りの条件で合意できないこともあるでしょう。
一般的にM&Aというと、狭義のM&Aである「買収」と「合併」です。ただし、一口に買収・合併といってもさまざまなやり方があります。ここからはM&Aのスキーム(手法)を解説します。広義のM&Aは「提携」も含むため併せてみていきましょう。
M&Aにおける買収とは、他の企業の経営権や事業を取得する手法です。事業や株式を他社に売却しても、買収された企業は存続するため、事業規模の拡大やノウハウの獲得、優秀な人材・後継者の確保などを目的に活用されます。
買収は大きく株式取得・事業譲渡・会社分割の3つに分けられます。
株式取得とは、譲受企業が譲渡企業の株式を取得して経営権(支配権)を得る方式です。M&Aの分類方法によっては、「資本参加」「資本提携」と呼ばれることもあります。
【株式取得のメリット】
他の手法に比べて手続きに手間がかからない譲渡企業は企業形態を維持できる許認可を引き継ぎやすい取得する株式で経営に関与する度合いを調節できる株式の取得割合が50%以上で譲受企業が譲渡企業を子会社化できる |
【株式取得のデメリット】
特定の資産・事業を指定して引き継げない100%子会社にする場合、譲受企業は負債・不信事業も引き継ぐことになる譲渡企業の株主が多いと交渉に時間がかかる敵対的買収になると関係者から反感を買う負債のリスクが比較的高くなる株式譲渡の場合、買収資金が必要 |
株式取得には、さらに「株式譲渡」「株式交換」「株式移転」「第三者割当増資」という4つの手法が存在します。特に株式譲渡は、手続きが簡便であり、譲受企業に人材も引き継がれるため雇用の維持も可能です。
そのこともあり、中小企業のM&Aのうち約41%は株式譲渡が選択されていて、数あるM&Aのスキームのなかでもポピュラーな手法といえます。
事業譲渡とは、譲受企業に譲渡企業の事業の一部または全てを譲渡する手法です。事業の一部のみを譲渡するのは「一部譲渡」、事業の全てを譲渡するのは「全部譲渡」と呼ばれます。
引き渡す事業には、有形資産のほか、債務債権・知的財産・ブランド・顧客・人材・ノウハウが含まれます。
譲渡企業に手放したい事業・残したい事業がある場合や、譲受企業がリスクのある事業を承継したくない場合に選択されます。
手続きが簡便で、事業を譲渡する側・譲渡される側の双方にメリットがあるため、中小企業庁によると中小企業のM&Aのうち約40%は事業譲渡が行われています。株式譲渡と並んでポピュラーな手法といえるでしょう。
【事業譲渡のメリット】
譲受企業は事業成長に繋がる特定の事業のみ買収できる譲受企業は債務を引き継ぐリスクを回避できる譲渡企業は一部の事業を売却することで経営の効率化・立て直しが図れる譲渡企業に負債があっても譲渡先が見つかりやすい譲渡企業が存続できる経営者が金銭を獲得できる |
【事業譲渡のデメリット】
譲受企業の税負担が大きい株主全員の同意が必要になる譲受企業は転籍する従業員と個別に雇用契約を再契約する必要がある許認可の再取得が必要になる事業に関わる全ての契約で再契約が必要になるため、手続きに手間と時間がかかる譲渡企業は一定期間、譲渡した事業を行えない |
会社分割とは、譲受企業に譲渡企業の事業の一部または全てを継承する手法です。経営資源を再分配できるため、多くが組織再編のために用いられます。
【会社分割のメリット】
譲受企業は転籍する従業員と再契約をする必要がない対価を株式にすれば、十分な資金がなくても実行できる譲受企業は関連のある事業だけ引き継げるためシナジー効果を得やすい事業単位で分割すれば、切り分けた企業で後継者を育成できる |
【会社分割のデメリット】
譲受企業は債務を引き継ぐリスクがある一部を除いて許認可の再取得が必要になる取引条件の交渉が必要になるため手間と時間がかかる |
会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」の2種類があります。M&Aにおいては、多くの場合で吸収分割が行われますが、好調な事業に経営資源を集中させたい場合や経営のスリム化を行いたい場合には新設分割が実施されます。
場合によっては、株式譲渡+新設分割が行われることもあり得ます。
M&Aにおける企業の合併とは、2つ以上の企業を1つの企業に統合する手法です。買収とは違い、合併される側の企業は消滅することになります。
合併はM&Aの中でも最も企業同士の強い結びつきを形成する手法で、業界再編に繋がるような大型M&Aで採用されるほか、グループ企業間の組織再編、業績不振の企業の救済目的でも活用されます。
ただし、同一の企業として運営していくため、経営方針や社風が近い企業同士でなければ成功しません。
合併には「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。
吸収合併とは、譲受企業が譲渡企業の持つ権利・義務を承継する手法です。吸収合併では、譲受企業を残して、譲渡企業はすべて消滅します。消滅する譲渡企業の株主には、譲受企業の株が割り当てられます。
新設合併には特有のデメリットがあるため、合併の大半は吸収合併が選択され、新設合併が実施されるケースは極めて稀です。
【吸収合併のメリット】
資産と権利を統合することで効率的な経営ができる事業に必要な許認可を承継できる複数の企業が統合されるため、シナジー効果を得やすい株式を対価にできるため、十分な資金がなくても実行できる譲渡企業の繰越損金を引き継げれば、税金の優遇を受けられる |
【吸収合併のデメリット】
手続きが煩雑で手間がかかる譲受企業と譲渡企業の取引先が重複しているとトータルの収益が減少することがある債務も承継することになる |
新しい企業を新設して、譲渡企業の権利・義務を承継する手法です。新設合併では、合併を行う全ての企業が消滅します。合併する企業の株主には、新設される企業の新株が発行されます。
吸収合併よりもコストと手間がかかるため、グループ内の組織再編のための子会社同士の合併に用いられるのが一般的です。
【新設合併のメリット】
対等な関係でM&Aであることをアピールできるより大きな規模で事業を運営できるようになる資金がない企業でも合併に参加できる |
【新設合併のデメリット】
新企業を設立するために大きなコストがかかる事業に必要な許認可をすべて取得し直す必要がある吸収合併よりもさらに手続きが煩雑で手間がかかる |
提携とは、2社以上の企業が資本面、または業務面で協力関係を構築する手法です。複数の企業がそれぞれの経営資源を提供することで、買収や合併と同様に、他者との結びつきを形成し、シナジー効果を生み出すことが期待できます。
提携には、「資本提携」と「業務提携」があります。
買収や合併とは異なり、いずれにおいても他企業の経営権を取得する目的がなく、経営権の移動はないため、一般的にはM&Aには含まれません。
ただし、資本提携では資本の移動は発生するため、広義のM&Aとして扱われることがあります。業務提携は、資本の移動がないため広義のM&Aにも含まれません。
続いては、M&Aを行うときの大きな流れを解説します。M&Aは大きく下記の6つのフェーズに分けることができます。
M&Aは決定から実行まで最低でも1年程度、場合によって2~3年かかることもあるため、計画的に進めることが大切です。
まずは本当にM&Aを実行するのかという検討を行います。M&Aはあくまでも手段であり、目的ではありません。実現したい目標や課題を明確にして、M&A以外の方法も含めてどのように解決するのか考えてみましょう。
■買い手のポイント
M&Aを行うには資金の余力が必要です。後先考えずに積極的に他の企業と統合すればいいというものではありません。自社の経営状態と投資資金の回収プランから戦略上M&Aが必要なのかを検討しましょう。
実施を決めたら、目的と併せて相手企業に求める条件やM&Aのスキームについて具体化・数値化して、その目標や戦略が現実的なものなのかも慎重に確認する必要があります。
■売り手のポイント
売り手がM&Aを検討するのは、事業承継または経営戦略・成長戦略においてです。M&Aが選択肢として適切であるかを検討しましょう。
M&Aの実施が決まったら、より具体的にM&Aによって達成したい目標や譲れない条件を明確にしていきます。自社の企業価値を把握するために自社の強み・弱み、リスクの洗い出しも行っておきます。
M&Aの実施を決めたら、専門業者の選定や候補企業のリストアップを行います。自社でM&A相手の企業を探すこともできますが、一般的にはM&A仲介会社やFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)を利用してマッチする企業を探してもらいます。
M&A仲介会社は、中立な立場からM&Aの成立をサポートしてくれます。中小企業の案件を扱っている企業が多い傾向があります。
一方、FASは売り手または買い手の専属になって計画の立案から成約まで一連の助言業務を担い、クライアントの利益を追求します。大手証券会社や投資銀行、大手会計事務所が、大手企業や大規模案件にサービスを提供しています。
信頼できる専門業者が見つかったら契約し、相手候補を探してもらいましょう。
続いては、M&Aのお相手探しと候補企業にM&Aの意向を伝えるフェーズです。
■買い手のポイント
専門業者を通じて、売り手の情報がまとまった「ノンネームシート」や開示されている書類を参考に情報を収集、候補企業の魅力度や買収の実現可能性を探り、候補の絞り込みを行います。
ノンネームシートは、業種や事業規模、売却理由、希望価格、M&Aのスキームなどがまとめられた概要書です。
■売り手のポイント
相手候補を探す段階では、企業が特定できない形で譲受候補にノンネームシートを提示します。自社がM&Aを進めていることが従業員や取引先、競合企業、株式市場に漏れれば、株価や売上に悪影響を及ぼし、会社の存続にも関わります。
M&Aの交渉が不利になったり、破談になったりする可能性もあるため、M&Aに関する情報は一般の従業員には触れさせず、経営層以外に漏らさないよう細心の注意を払いましょう。
買い手は交渉を希望する企業があれば、仲介業者やFAを通じて交渉を打診します。
しかし、M&Aの交渉に入るためには、ノンネームシートに記載された以上の情報が必要です。そのため、M&Aについての情報が外部に漏れたり、情報が不正に利用されたりしないよう秘密保持契約(NDA)を締結します。
秘密保持契約は、買い手と売り手で直接交わされるケースと、業者を介して間接的に交わされるケースがあります。
秘密保持契約後に企業名や詳細な情報を交換したら、経営者同士が面談を行い、具体的な条件の交渉に入ります。M&Aのスキームや譲渡価格、今後のスケジュールなどM&Aの基本的な条件を話し合い、話がまとまれば「基本合意」を締結します。
基本合意とは、譲渡企業と譲受企業の双方が条件を確認し、暫定的に合意したことを示すプロセスです。
基本合意書を締結した後は、契約締結に向けた最終フェーズに入ります。譲受企業はデューデリジェンス(DD/買収監査)を実施して、譲渡企業の法務・財務・税務・ビジネス・環境・ITなど各方面におけるリスク・問題点を詳細に確認します。
デューデリジェンスの結果を元に、最終条件の交渉が行われ、まとまれば最終契約が締結されます。
最終契約書には、M&Aのスキーム・譲渡価格・成約事項・補償などが記載されます。
■買い手のポイント
デューデリジェンスは、各分野の専門家に委託することになります。例えば、法務は弁護士に、財務は公認会計士に、税務は税理士に委託するのが一般的です。事業計画や事業概要、競合企業などビジネスに関するデューデリジェンスはコンサルティング会社に委託するか、買い手企業自らが行います。
デューデリジェンスで検出されたリスク・問題点に応じて、基本合意書の内容の修正を売り手に求めましょう。
■売り手のポイント
デューデリジェンスの結果によって、MA&のスキームの変更や譲渡価格、問題点の解消を求められることになります。譲歩すべき事項を慎重に検討し、役員の処遇、従業員の雇用の継続や雇用条件、経営者の退職金や個人保証の解消、社名・ブランドの継続などについては引き続き要求していきます。
最終契約を交わした後は、公正取引委員会への届出・株主総会での承認決議・従業員からの同意取得と雇用契約の承継手続きを行います。
完了したらクロージングを実施して、実際に譲渡対価の支払いや経営権の移転、株式の譲渡などを行います。個人保証を解除する場合は、金融機関で解除手続きが必要です。
個人保証はM&Aを行ったからといって勝手に解除されることはないため、必ず手続きしましょう。
M&Aが成立したら、「情報開示(ディスクロージャー)」を行って、親族や従業員、金融機関、取引先、メディアなどの関係者にM&Aの実施を伝えます。
特に従業員や顧客への報告には注意が必要です。反感や不信感を抱かれると、従業員なら離職、取引先なら契約の打ち切りに繋がるリスクがあります。伝えるタイミングや伝え方、内容をよく精査して、慎重に伝えましょう。
そして、統合作業「PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)」を実施します。M&Aの成功はこのPMIにかかっているといっても過言ではありません。
PMIは理念や経営戦略についての「経営統合」・理念や経営戦略についての「経営統合」・社風や企業文化についての「意識統合」の3段階に分けて行います。PMIが完了したら、M&Aは完了です。
M&Aは譲受企業にとっても譲渡企業にとっても大きなメリットが期待できる選択肢です。しかし、相手企業との相性や取引条件によっては、失敗に終わってしまう可能性もあります。
最後は、M&Aを成功させるためM&A仲介会社の選び方について確認しておきましょう。
M&A仲介会社は、M&Aが成功を左右する企業同士マッチング業務を担うため、M&Aの成功させるためには重要な役割を果たします。
M&A仲介会社を選ぶときに必ず確認すべきなのが必要なのが実績です。一口にM&A仲介会社といっても、取り扱う案件の規模や得意とする業界が異なります。仲介会社によっては、得意とする分野の案件でなければ真剣に動いてくれない可能性もあります。
仲介会社を選ぶ際は、自社と同規模・同業界の案件の実績について具体的な数字や参考資料を提示してもらいながら確認しましょう。実績が多いほど、経験やノウハウが蓄積されていることの判断基準となります。
M&A仲介会社には、業界特化タイプと幅広い業界を扱う非特化タイプの2種類が存在します。特定の業界に特化している仲介会社であれば、業界に精通しており、専門的なサポートが期待できます。
一方で、非特化タイプの仲介会社であれば、同業に限らず幅広く相手企業を探せます。M&Aの目的によってどちらを選ぶのかは変わりますが、非特化タイプの仲介会社を選ぶのであれば、特に同業界の実績をチェックしておきましょう。
料金体系もM&A仲介会社選びでは欠かせないポイントです。M&Aは大きな金額が動く取引であり、仲介会社に支払われる手数料も安いものではありません。そのため、不明瞭な料金体系を提示され、そのまま契約してしまえば、想定外の費用がかかる可能性があります。
仲介会社の料金体系では、着手金・中間金の有無や最低成功報酬額、成功報酬の算定基礎などが会社ごとに異なります。特に、着手金や中間金はM&Aが成功しなくても返却されることはなく、一般的には着手金だけで数百万円が必要になります。
M&A仲介業者選びでは、必ず料金体系を確認し、追加料金がかかる条件や返金ポリシー、途中解約金なども含めて詳細を担当者に確認しておきましょう。
M&A仲介会社選びでは、担当となるM&Aアドバイザーの質も要チェックです。同じ仲介会社でも担当者の経験値によって結果が大きく変わる可能性もあります。仲介会社全体の実績を確認するときは、担当アドバイザーの実績も併せてチェックしておきましょう。
その他、担当アドバイザーが持っている資格や認定も判断材料になります。例えば、一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)が認定する「JMAA認定M&Aアドバイザー(CMA)」や一般社団法人金融財政事情研究会の「事業承継シニアエキスパート」などの民間資格があります。
そのほか、弁護士や公認会計士、税理士などの士業の資格を持ってM&Aアドバイザーをしている人もいます。
最終的には、実績や資格以外にも面談時の態度や話し方も含めて、信頼できる担当者なのかを判断しましょう。
本記事では、M&Aの基本情報をまとめてお伝えしました。日本ではネガティブなイメージがあったM&Aも、現在では成長戦略や事業承継の有用な手段の1つとして実施件数は増加傾向にあります。
一方で、M&A実行までにかかる手続きやプロセスは膨大で、専門的な知識や経験が必要です。M&Aロイヤルアドバイザリーでは、経験豊富なアドバイザーが、M&Aの検討からM&Aのマッチング、実行、契約まで全面的にサポートいたします。M&Aを決めていない段階でもご相談いただけるので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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