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経営権とは企業経営における権利のことであり、M&Aや事業承継を行う場合には企業の経営権を誰がどのように持っているのかを知ることは大切です。
本記事では会社経営や事業譲渡において重要な経営権の種類や内容、取得方法、M&A・事業承継における役割、経営権を守るための対策などについて解説します。
企業経営において、経営権は企業の意思決定を左右する重要な権利です。ここでは、経営権の基本的な概念とその重要性について解説します。
経営権とは、その名の通り「会社を経営する権利」のことで、主に企業の経営における目標設定、戦略策定、業務執行などの経営活動を総合的にコントロールする権利です。
具体的には取締役の選任・解任、重要な業務執行の決定、予算編成、組織運営など、企業経営に関するあらゆる事項を決定する権限を指します。
経営権を握っているのは議決権を持っている株主であり、株主は株主総会において重要事項を決めたり経営者を選任することができます。選任された経営者や取締役会を通じて行使されるのが一般的です。
経営権は、企業の成長と発展に大きな影響を与えます。
経営権を持つ者が適切な経営判断を行うことで、企業は競争優位性を確立し、持続的な成長を達成することができます。一方、経営権を持つ者の判断が誤っていれば、企業は業績不振に陥り、最悪の場合には倒産に至る可能性もあります。
議決権とは企業の株主総会などで重要事項を決める際の投票権利のことであり、保有する株数によって決まります。つまり、保有する株式の数が多いほど、会社の意思決定ができるため、会社の方針や重要事項を左右する経営権を保持しているといえます。
経営権と混同されやすい概念に「支配権」があります。
支配権とは、企業の意思決定を実質的に支配する権利です。一般的には、議決権のある株式の過半数を保有することで、支配権を獲得することができます。支配権を持つ者は、取締役の選任・解任を通じて経営権を掌握し、企業経営を意のままにコントロールすることができます。
経営権と支配権は密接な関係にありますが、両者は異なる概念です。経営権は企業経営に関する意思決定を行う権利であり、支配権は企業を実質的に支配する権利です。
支配権を持つ者は、経営権を行使することができますが、経営権を持つ者が必ずしも支配権を持つとは限りません。
「業務命令権」「人事権」「施設管理権」の3つの権利を経営三権といいます。
これらは企業が労働者や労働組合の合意を必要せずに行使できる権利です。
企業の株式を持つ株主の割合を「持株比率」といい、比率が高いほど企業に対する所有権が大きくなります。
持株比率は以下の計算式で算出できます。
持株比率(%)=保有株式数÷発行株式数×100
議決権は、株主総会において議案に対する賛否を表明する権利です。議決権の数が多いほど、株主総会における影響力が増し、経営権の行使に有利となります。一般的に、議決権の過半数を保有することで、経営権を掌握することができます。
株主の持つ議決権の割合を「議決権比率」といい、企業に対する影響力を表し、以下の計算式で算出できます。
議決権比率(%)=保有議決権数÷行使できる議決権数×100
議決権は原則1株につき1つですが、議決権を持たない株式を発行している企業の場合は必ずしも一致しているわけではありません。
本記事では議決権がある株式を前提に進めていきます。
株主が企業に対して行使できる権利は持株の比率によって異なり、1株以上で得られる「単独株主権」と一定数の株式を保有することで得られる「少数株主権」があります。
単独株主権 | 保有する株式が1株以上 |
少数株主権 | 保有する株式が一定数を超えている |
株主は個人の利益となる権利(自益権)と株主全体の利益となる権利(共益権)を持ち合わせています。
利益配当請求権(自益権) | 企業の剰余金から配当金を受け取る権利 |
残余財産分配請求権(自益権) | 企業が解散する場合に負債を返済して残った財産を請求できる権利 |
株主総会における議決権(共益権) | 株主総会に出席し、議案に投票できる権利 |
株主は持株が多いほどに配当金も多くなり、企業に対しての影響力も強くなります。
以下に持株比率ごとに行使できる権利をまとめました。
保有株式が1株以上 | 利益配当請求権 残余財産分配請求権 株主総会における議決権 議事録を閲覧できる議事録閲覧権 会社の役員に対して株主代表として訴訟できる株主代表訴訟 |
持株比率1%以上 | 企業の方針や経営についての提案請求権 |
持株比率3%以上 | 株主総会の招集請求権 会計帳簿の閲覧及び謄写請求権 企業の適正な経営を確認する監査請求権 |
持株比率33.4%以上 | 株主総会の特別決議を単独で否決する権利 |
持株比率50%以上 | 株主総会の普通決議を単独で可決する権利 |
持株比率66.7%以上 | 株主総会の特別決議を単独で可決する権利 |
持株比率90%以上 | 他の株主から株式を強制買い上げ(スクイーズアウト)できる権利 |
持株比率100% | すべての決議を単独で決定できる |
持株比率が1/3を超えた場合は特別決議を否決することができ、1/2を超えた場合は普通決議を通すことが可能となります。経営権を持つとされるのは1/2以上の株式を保有している場合です。
さらに、100%の株式を所有している場合は少数株主による経営に関する介入を防ぐことができます。これを完全支配権といいます。
また、企業の発行株式を最も多く保有する株主を「筆頭株主」、全体の10%以上を保有する株主を「主要株主」と呼びます。
しかし、必ずしも筆頭株主が経営権を持つとは限りません。
経営権は主に、取締役の選任・解任権、重要事項の決定権、業務執行権の3つの主要な権限から構成されます。これらの権利は、経営権の中核をなすものであり、企業経営において重要な役割を果たします。
これらは株主総会で決議されます。会社法では、株主総会とは株式会社における最高の意思決定機関と定められています。株主総会では株式会社の組織、運営、管理その他株式に関する一切の事項を決議できるとあります。
株主総会には毎年事業年度が終了した後に開催される「定時株式総会」とそれ以外の「臨時株主総会」の2つがあります。
また、株主総会で行われる決議方法は「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の3つに分類されます。
ほとんどの決議事項は普通決議によって行われます。
議決権を持つ株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の過半数が賛成の場合に成立します。
重要度の高い事項に関しては特別決議にて決定されます。
議決権を持つ株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の2/3以上が賛成の場合に成立します。
特別決議よりもさらに重要事項を決める際の決議方法となります。
議決権を行使できる株主の半数以上かつ、当該株主の議決権の2/3以上が賛成した場合に成立します。
普通決議 | 議決権を持つ株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の過半数が賛成の場合に成立します。 |
特別決議 | 議決権を持つ株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の2/3以上が賛成の場合に成立します。 |
特殊決議 | 議決権を行使できる株主の半数以上かつ、当該株主の議決権の2/3以上が賛成した場合に成立します。 |
経営権は、株式譲渡や事業譲渡などの方法によって取得・譲渡することができます。それぞれの方法について解説します。
株式譲渡は、既存株主が保有する株式を別の者に譲渡することで、経営権を移転する方法です。株式譲渡は、比較的簡便な手続きで経営権を移転することができますが、譲渡価格や条件など様々な事項について交渉する必要があります。
事業譲渡は、企業がその事業の全部または一部を別の企業に譲渡するものです。事業譲渡は、事業の資産・負債を譲渡するものであり、経営権自体が直接的に移転するわけではありません。経営権の移転は株式譲渡や合併によって行われるのが一般的です。
事業譲渡を行う場合には、譲渡対象となる事業の範囲や譲渡価格、従業員の承継など、様々な事項について検討する必要があります。
事業承継は、後継者に事業を引き継ぐことを指します。事業承継においては、経営権をどのように引き継ぐかが重要な課題となります。
親族内承継は、子供や親族に事業を引き継ぐ方法です。親族内承継の場合、経営権は後継者にスムーズに引き継がれることが期待できますが、後継者の育成や他の親族との利害調整など、様々な課題があります。
第三者承継は、M&Aなどによって事業を別の企業に譲渡する方法です。第三者承継の場合、経営権は買収側に移転します。第三者承継を行う場合には、従業員の雇用維持や取引先との関係維持など、様々な事項について配慮する必要があります。
経営権を巡っては、様々なトラブルが発生することがあります。ここでは、代表的なトラブルとその対策について解説します。
経営権争いは、株主間や取締役間で経営権を争うものです。経営権争いは、企業価値を毀損するだけでなく、従業員のモチベーション低下や取引先からの信頼喪失にもつながる可能性があります。経営権争いを避けるためには、株主間契約や取締役会運営規程などを整備し、経営体制を明確化することが重要です。
経営権を保護するためには、様々な対策を講じることができます。例えば、株式の分散を防ぐために、役員持株制度を導入したり、友好的な株主との連携を強化したりすることが有効です。また、買収防衛策を導入することも、経営権保護のために有効な手段となります。
買収防衛策とは、第三者に経営権を取得されないように講じる対策のことです。
買収の種類には、経営者の同意を得ずに行われる「敵対的買収」と経営者間の同意を持って進められる「友好的買収」があります。
日本のM&Aによる事業承継は友好的買収がほとんどですが、経営権を守るためにも敵対的買収に備えた対策を講じることも大切です。
代表的な買収防衛策を紹介します。
黄金株とは通常の株式と違い、特別な権利を持つ株式のことです。特別決議において拒否権を持つため、事前に発行し信頼できる株主に保有させることで買収を阻止することができます。
ポイズンピルとは特定の投資家が一定以上の株式を取得した際に、新しい株式を既存の株主に対し安価または無料で発行することで、持株比率を下げることができます。
ホワイトナイトとは敵対的買収をされる前に新たな買収企業を見つけ、買収または合併をしてもらうことです。
クラウンジュエルとは収益性が高い事業を売却することで企業価値を下げることです。
ゴールデンパラシュートとは取り締まりの退職金を高額に設定することで買収意欲を下げることです。
MBOとは経営陣が自社の株式や事業を買収することです。
資産ロックアップとは、買収後一定期間は資産の売却ができないように定めておくことです。
買収防衛策には様々なものがあります。国内では敵対的買収はリスクが大きいため滅多にありませんが、いざという時のための対策を用意しておくことは会社と従業員を守るために大切です。
経営権は、会社法をはじめとする様々な法律によって規制されています。ここでは、経営権に関する法的な留意点について解説します。
会社法は、経営権に関する様々な規定を設けています。例えば、取締役の選任・解任、業務執行、組織運営などに関する規定があります。これらの規定を遵守することは、企業経営において非常に重要です。
経営権の実質的な移転は、株式譲渡や株主間契約などを通じて行われます。これには会社法に基づく手続き(株主総会の決議が必要な場合など)や、契約書の作成が伴うことが一般的です。また、税金や労働関係など、様々な法的な問題についても注意する必要があります。
経営権を確保し、強化するためには、様々な戦略を講じることができます。ここでは、代表的な戦略について解説します。
持株比率を高めることは、経営権を安定させるために有効な手段です。例えば、自社株買いや第三者割当増資などを活用して、持株比率を高めることができます。
株主間契約は、複数の株主間で経営権に関する取り決めを行う契約です。株主間契約を締結することで、経営権の安定化を図ることができます。
M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業合併・買収の総称であり、経営権の移転を伴うことが多くあります。ここでは、M&Aにおける経営権の重要性について解説します。
M&Aにおける経営権移転は、買収側が対象企業の株式を取得することで行われることが一般的ですが、合併や会社分割、事業譲渡などの手法によっても実現されることがあります。手法ごとに経営権移転のプロセスや法的手続きは異なります。買収側は、経営権を取得することで、対象企業の経営戦略や業務執行を自社の意向に沿って行うことができます。
M&Aにおける経営権譲渡は、様々な注意点やリスクを伴います。例えば、買収価格が過大であったり、買収後に統合がうまくいかなかったりするリスクがあります。これらのリスクを管理するためには、デューデリジェンス(買収監査)を 徹底的に行い、契約内容を明確化することが重要です。
経営権を理解し、権利譲渡や買収対策を把握することで会社を守り、正しく運営することができます。
解説した内容を参考に、経営権に関する知識を深め、自社の経営に役立ててください。
また、経営権や事業を譲渡する場合にM&Aを検討することもあるでしょう。
M&Aロイヤルアドバイザリーでは、M&Aや事業承継の初期的な関心でもご相談いただけます。事業承継には時間がかかるものなので、早い段階で情報収集を行い、M&Aを含めた最適な解決策を検討することが重要です。
今後のプランを考えるためにも、ぜひM&Aロイヤルアドバイザリーにご相談ください。
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