持分会社とは?株式会社との違いや設立のメリットをわかりやすく解説

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持分会社とは、株式会社と並ぶ会社法で定められた法人形態の一つです。しかし、「持分会社と株式会社の違いがよく分からない」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

持分会社は、少人数で柔軟な会社運営を行いやすい一方で、資金調達や組織づくりなど株式会社とは異なる特徴があります。また、持分会社にはいくつかの種類があり、設立後に後悔しないためには、それぞれの会社形態のメリット・デメリットを正しく理解しておくことが重要です。 

本記事では、持分会社の概要や株式会社との違い、合同会社・合名会社・合資会社の特徴、設立手続き、社員の加入・退社や相続、持分譲渡など、会社法に基づいてわかりやすく解説します。 

持分会社とは 

持分会社とは、株式を発行せずに運営される法人です。現在設立できる会社形態は、株式会社、合名会社、合資会社合同会社の4種類であり、株式会社以外の3つは持分会社に該当します。

まず、持分会社について基本的な情報を紹介します。 

持分会社の概要 

会社法では、日本で設立できる会社は「株式会社」と「持分会社」に分けられています。持分会社では、資金を出した社員が会社の運営にも関わることを基本としています。株式会社のように株式を発行して出資者を募る仕組みではなく、原則として出資する人と経営に携わる人が一致している点が特徴です。 

日本では株式会社が会社形態の大半を占めていますが、2006年の会社法施行により合同会社が追加され、その利便性の高さから、近年は小規模な事業や少人数での経営を行う事業者を中心に、合同会社を選ぶケースも増えています。

なお、持分会社には、意思決定や運営方法を柔軟に設計しやすい性質がありますが、社員が負う責任や経営の仕組みは会社の種類によって異なります。ちなみに、ここでいう「社員」とは、一般的な雇われた従業員のことではなく、会社に資金を出した出資者であり経営者でもある人を指します。 

持株会社との違い 

持株会社と持分会社は名称が似ていますが、それぞれ異なる概念です。 

持株会社とは、他の会社の株式を保有することで、子会社の経営を管理・支配する会社をいいます。企業グループ全体の経営戦略の立案や経営資源の最適化、ガバナンスの強化などを目的として採用されることが多く、「ホールディングス」と呼ばれることもあります。持株会社には、自ら事業を行わず子会社の管理に専念する「純粋持株会社」と、事業を営みながら子会社の株式も保有する「事業持株会社」があります。 

つまり、持株会社は会社グループにおける経営上の役割を表す概念であるのに対し、持分会社は会社法上の会社形態を表す概念です。そのため、両者は比較対象ではなく、それぞれ異なる視点で分類されたものといえます。 

持分会社と株式会社の違い 

持分会社と株式会社の違いは出資者の役割や経営の柔軟性、設立費用など多岐にわたります。ここでは、持分会社と株式会社の主な違いをわかりやすく解説します。 

出資者 

持分会社と株式会社の1つ目の違いが出資者の持つ権利の違いです。

株式会社の出資者は株主です。株主は会社へ出資することで株式を取得し、その保有割合に応じて議決権や配当を受ける権利などを持ちます。また、株式は原則として自由に譲渡できるため、株主が変わっても会社の運営に影響が生じにくい仕組みです。 

一方、持分会社の出資者は社員です。社員としての地位(持分)は、原則として他の社員全員の同意がなければ譲渡できません。そのため、株式会社と比べて社員同士の人的な信頼関係を重視した会社形態といえます。 

所有と経営 

持分会社と株式会社の2つ目の違いが所有と経営が一致しているか分離しているかの違いです。株式会社では、会社へ出資する株主と、会社の経営を担う取締役は、それぞれ異なる役割を担います。株主は株主総会を通じて重要事項の意思決定に関与し、日常の業務執行は取締役が行うことが原則です。 

一方、持分会社では、社員が出資者であると同時に経営にも関わることを基本としています。つまり、持分会社は出資と経営が一体となりやすい会社形態である点が、株式会社との大きな違いです。 ただし、持分会社であっても定款で定めることにより、業務執行権を持つ社員と出資のみの社員に分けることが可能です。

経営体制 

持分会社と株式会社の3つ目の違いが経営体制の違いです。株式会社では、会社法に基づき取締役を置く必要があります。また、会社の規模や機関設計に応じて、取締役会や監査役、監査等委員会、会計監査人などの機関を設置することがあります。 

一方、持分会社には株式会社のような機関設計は設けられておらず、社員を中心に会社を運営します。また、株式会社の取締役には任期がありますが、持分会社の社員には原則として任期がありません。このように、持分会社は比較的シンプルな組織体制で運営できることが特徴です。 

利益配分 

持分会社と株式会社の4つ目の違いが、利益配分の決め方についてです。

株式会社では、利益の配分は原則として株主が保有する株式の比率に応じて行われます。例えば、発行済株式の10%を保有する株主であれば、配当も原則として全体の10%を受け取ります。このように、株式会社では出資割合に応じて利益を分配することが基本的なルールです。 

一方、持分会社では、利益や損失の分配方法を定款で自由に定められます。例えば、出資額が少ない社員であっても、会社への貢献度や業務の負担が大きい場合には、その社員へ多くの利益を分配することも可能です。反対に、出資額が多くても経営への関与が少ない社員については、利益配分を少なくするよう定めることもできます。 

このように、持分会社は出資割合だけでなく、社員の役割や会社への貢献度などを考慮して利益配分を決められるため、実態に応じた柔軟な運営を行いやすい点が特徴です。一方で、利益配分のルールが曖昧なまま会社を運営すると、社員間で認識の違いが生じ、トラブルにつながるおそれがあります。そのため、利益配分の方法は設立時に十分に話し合い、定款へ明確に定めておくことが重要です。 

意思決定の方法 

持分会社と株式会社の違いには意思決定の方法もあります。株式会社では、会社法で定められた重要事項について、株主総会の決議が必要です。また、毎事業年度終了後には定時株主総会を開催し、計算書類の承認などを行います。

一方、持分会社では、株式会社のように株主総会の開催は義務付けられていません。会社法や定款の定めに従い、社員が会社の意思決定を行います。社員総会を開催することも可能ですが、株式会社の株主総会のように必ず設置・開催しなければならない機関ではありません。 

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    持分会社の運営方法 

    持分会社における基本的な運営方法は、次のとおりです。 

    • 社員が業務を執行する
    • 代表社員を定められる 

    それぞれをわかりやすく解説します。 

    社員が業務を執行する 

    持分会社では、会社の基本的なルールを定める「定款」に別段の定めがない限り、社員が会社の業務を執行します。社員が複数いる場合は、業務執行に関する事項を社員の過半数で決定することが原則です。

    一方、日常的な業務については、それぞれの社員が単独で執行することが認められています。また、定款によって業務を執行する社員を特定の社員に限定することも可能です。この場合は、その社員が業務執行社員として会社の業務を担当します。 

    代表社員を定められる 

    業務執行社員とは、持分会社の業務を実際に執行する社員のことです。持分会社の社員は原則として業務執行権と会社の代表権を持ちます。これにより、各社員が取引先との契約締結など、会社を代表する法律行為を行えます。 

    ただし、定款で業務執行社員を定めた場合には、その社員が業務を執行し、代表権も有します。また、業務執行社員が複数いる場合には、定款または社員の互選によって代表社員を定めることもできます。

    持分会社における社員 

    持分会社の社員の区分は大別して次の二つです。 

    • 無限責任社員 
    • 有限責任社員 

    それぞれの社員の役割についてわかりやすく解説します。 

    無限責任社員 

    無限責任社員とは、会社の債務について無限責任を負う社員をいいます。通常、会社が負った債務は、会社の財産によって返済されます。しかし、会社の財産だけでは債務を完済できない場合には、無限責任社員が不足分を自己の財産で弁済しなければなりません。 

    例えば、会社が金融機関から借り入れを行い、その後経営悪化によって返済できなくなった場合、まずは会社の預貯金や不動産などの会社の財産を充てて返済します。それでもなお債務が残る場合には、無限責任社員が自己の預貯金や不動産などの個人財産を用いて返済します。 

    このように、「無限責任」とは、会社の債務全てを無条件で負担するという意味ではなく、会社の資産だけでは不足する部分について責任を負う制度です。そのため、会社の経営状況によっては、社員個人の財産にも大きな影響が及ぶ可能性があります。 

    一方、有限責任社員は、原則として出資額を超えて会社の債務を負担することはありません。会社が大きな負債を抱えても個人の財産に影響を及ぼさない点が、無限責任社員との大きな違いです。合名会社は全員が無限責任者、合資会社は最低1名が無限責任者である必要があり、その責任の重さから、現在では合名会社や合資会社を新たに設立するケースは少なくなっています。

    有限責任社員 

    有限責任社員とは、出資額を限度として会社の債務について責任を負う社員をいいます。

    有限責任社員は、会社が債務を返済できなくなった場合でも、原則として出資した財産を超えて返済義務を負うことはありません。そのため、会社が倒産した場合でも、個人の財産によって会社の債務を弁済する責任は生じないことが特徴です。 

    例えば、100万円を出資して合同会社の社員となった場合、会社が倒産しても、原則として責任はその出資額の範囲に限られます。 ただし、社員が会社の借り入れについて連帯保証人となっている場合などは、保証契約に基づいて返済義務を負うことがあります。

    これは有限責任社員としての責任ではなく、個別に締結した保証契約によって生じるものです。また、社員全員が有限責任社員のみで設立できる持分会社は合同会社のみです。そのため、近年設立される持分会社のほとんどが合同会社となっています。

    持分会社の種類 

    持分会社の種類は、次のとおりです。 

    • 合名会社 
    • 合資会社 
    • 合同会社 

     それぞれをわかりやすく解説します。 

    合名会社 

    合名会社とは、社員全員が無限責任社員で構成される持分会社です(会社法第576条第2項)。 無限責任社員は、会社の財産だけでは債務を完済できない場合、不足分を自己の財産で弁済する責任を負います。そのため、社員には会社の経営だけでなく、債務に対する重い責任も課されます。 

    会社法では、原則として社員全員が業務を執行し、会社を代表する権限を有します。ただし、定款で業務を執行する社員や代表社員を定めることも可能です。 現在では新たに設立されるケースは多くありませんが、酒造業や醸造業など長い歴史を持つ企業で採用されている例が見られ、例えば松井酒造合名会社や合名会社寒梅酒造などがあります。 

    合資会社 

    合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員の双方で構成される持分会社です(会社法第576条第3項)。有限責任社員は出資額を限度として責任を負う一方、無限責任社員は会社の債務について自己の財産をもって責任を負います。そのため、合資会社を設立するには、それぞれの社員が少なくとも一人ずつ必要です。 

    旧商法では、業務の執行や会社の代表は、無限責任社員が担うことになっており、有限責任社員は会社へ出資しますが、業務執行権や代表権は有しませんでした。 しかし、会社法の施行に伴い、定款に定めない限りは有限責任社員も業務執行権が持てるようになりました。

    現在では新規に設立される例は少なく、酒造業や醸造業、食品製造業など、長い歴史を持つ企業で採用されているケースが見られます。例えば、合資会社八丁味噌や合資会社山本屋総本家などが挙げられます。 

    合同会社 

    合同会社とは、社員全員が有限責任社員で構成される持分会社です(会社法第576条第4項)。 

    合同会社は、2006年の会社法施行により創設された会社形態で、持分会社の中では最も新しい制度です。社員は全員が有限責任であるため、会社が負債を抱えた場合でも、原則として出資額を超えて責任を負うことはありません。 

    会社法では、原則として社員全員が業務を執行しますが、定款によって業務執行社員や代表社員を定めることもできます。また、合同会社には無限責任社員が存在しないため、持分会社の中で唯一、社員全員が有限責任となる会社形態です。 

    近年では個人事業主の法人成りやスタートアップ企業に加え、外資系企業の日本法人として採用されるケースも増えています。代表例としては、アマゾンジャパン合同会社やアップルジャパン合同会社などが挙げられます。 

    持分会社を設立するメリット 

    持分会社を設立するメリットは、次のとおりです。 

    • 設立時の負担を軽減できる 
    • 経営判断をスピーディーに行える 
    • 自社に適した運営ルールを設計できる 

    それぞれのメリットをわかりやすく解説します。 

    設立時の負担を軽減できる 

    持分会社は、株式会社と比べて設立時に必要となる手続きが少なく、初期費用を抑えやすい点が大きなメリットです。

    株式会社では、公証人による定款認証を受ける必要があります。定款認証とは、会社設立時に作成した定款が、発起人全員の意思に基づいて適正に作成されたものであることを公証人が証明する手続きです。これにより、定款の改ざんや内容を巡るトラブルの防止につながります。 

    持分会社では定款認証が不要であるため、この手続きにかかる時間や費用を削減できます。また、登録免許税の最低額は、株式会社が15万円であるのに対し、持分会社は6万円です。このように、設立時に必要となる費用を比較的低く抑えられる点が持分会社のメリットです。 

    経営判断をスピーディーに行える 

    持分会社のメリットには、経営に関する意思決定を迅速に進めやすい点も挙げられます。株式会社では、重要事項について株主総会や取締役会などの決議が必要となる場合があり、会社の規模が大きくなるほど意思決定に時間を要することがあります。 

    一方、持分会社では、出資者である社員が経営にも関与することが原則であり、所有と経営が一致しています。また、機関設計もシンプルなため、経営方針の変更や新規事業への投資などについて、関係者間の調整を比較的円滑に進めやすく、状況の変化にも柔軟に対応できます。 

    特に、少人数で事業を運営する会社では、経営環境の変化に応じて迅速に判断を行えることが大きなメリットといえるでしょう。 

    自社に適した運営ルールを設計できる 

    持分会社では、会社法で認められた範囲内で、会社の運営方法を定款によって柔軟に定められます。例えば、利益配分の方法や業務を執行する社員、代表社員の選任方法、意思決定のルールなどを、会社の実情に合わせて設計できます。 

    このように、画一的な制度に合わせるのではなく、自社の経営方針や社員構成に応じた運営体制を構築しやすいことも、株式会社とは異なる持分会社のメリットです。 

    持分会社を設立するデメリット 

    持分会社にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。持分会社の主なデメリットは、次のとおりです。 

    • 資金調達の選択肢が限られる 
    • 会社の成長に合わせた組織づくりが難しい 
    • 株式会社と比べて認知されにくい 

    それぞれのデメリットをわかりやすく解説します。 

    資金調達の選択肢が限られる 

    持分会社は、株式会社と比べて資金調達の方法が限られる点がデメリットです。株式会社では、新株を発行して投資家から資金を調達できますが、持分会社には株式を発行する制度がありません。そのため、株式による増資を行えず、事業資金は社員による追加出資や金融機関からの融資などが中心です。 

    また、社員の持分を第三者へ譲渡する場合には、原則として他の社員全員の同意が必要です。株式会社のように株式を自由に譲渡できる仕組みではないため、新たな出資者を受け入れる際にも一定の制約があります。 

    事業の拡大に伴って多額の資金を調達したい場合や多くの投資家から出資を募りたい場合には、株式会社の方が適した会社形態といえるでしょう。 

    会社の成長に合わせた組織づくりが難しい 

    持分会社のデメリットには、事業の拡大に伴って経営体制を見直したい場合に制約が生じやすい点も挙げられます。

    持分会社では、出資者である社員が会社の経営にも関与することが原則であり、株式会社のように出資者と経営者を分離する仕組みはありません。そのため、外部から経営人材を迎え入れたり、株式を活用して経営体制を整えたりすることはできません。 

    また、株式会社では、会社の規模や成長段階に応じて取締役会や監査役などの機関を設置できますが、持分会社にはこのような機関設計の制度はありません。将来的に組織規模の拡大やガバナンスの強化を予定している場合には、会社形態が事業計画に適しているかを事前に検討することが重要です。 

    株式会社と比べて認知されにくい 

    持分会社は株式会社と同じく法人格を持ちますが、日本では株式会社が最も一般的な会社形態です。国税庁の会社標本調査によると、国内の会社の多くは株式会社であり、持分会社は比較的少数です。そのため、取引先や金融機関などから会社形態について説明を求められる場面もあります。 

    また、持分会社では「代表取締役」という肩書は使用できず、「代表社員」などの名称を用います。こうした制度の違いが十分に知られていない場合には、株式会社と比べて会社形態を理解してもらうための説明が必要になることもあります。 

    ただし、企業の信用は会社形態だけで決まるものではありません。事業内容や経営実績、財務状況などを総合的に評価して判断されるため、持分会社であることだけを理由に信用が低いと評価されるわけではありません。 

    持分会社が向いている企業 

    持分会社は、全ての企業に適した会社形態ではありません。事業規模や経営方針、将来の成長戦略によって、株式会社の方が適しているケースもあります。持分会社が選ばれやすい企業の特徴は、次のとおりです。 

    • 少人数で意思決定したい 
    • 家族経営・共同経営を行う 
    • 上場を予定していない 

    それぞれをわかりやすく解説します。 

    少人数で意思決定したい 

    経営に携わる人数が限られている企業には、持分会社が適しています。 

    例えば、創業メンバーのみで事業を運営する会社や小規模な事業を展開する企業では、経営者同士が日常的にコミュニケーションを取りながら会社を運営できます。そのため、経営に関わる人数が増えることを前提としない場合は、持分会社の仕組みを活用しやすいでしょう。 

    また、少人数で経営する企業では、経営者同士が互いの役割や責任を把握しやすく、事業の方向性について認識を共有しやすいという特徴があります。そのため、市場環境の変化や顧客ニーズに応じて柔軟に経営方針を見直しながら事業を進めたい企業にも適しています。 

    家族経営・共同経営を行う 

    家族や共同創業者など、少人数で事業を運営する企業にも持分会社は適しています。このような企業では、経営方針や役割分担について日頃から話し合いながら事業を進めることが多く、迅速に意思決定を行いやすい傾向があります。 

    また、持分会社では会社の実情に合わせて運営ルールを定款で定められるため、経営メンバーの考え方や事業内容に応じた柔軟な会社運営を実現できます。そのため、事業規模の拡大よりも、経営メンバー同士が協力しながら長期的に会社を運営したい企業に向いています。 

    上場を予定していない 

    将来的に株式上場を経営戦略として予定していない企業も、持分会社が適した選択肢となる場合があります。IPO(Initial Public Offering)とは、企業が証券取引所に株式を上場し、一般の投資家が株式を売買できるようにすることをいいます。

    IPOを行うことで、株式の発行による資金調達が可能になりますが、持分会社は株式を発行しない会社形態であるため、IPOを行うことはできません。 例えば、地域に密着した事業を長期的に継続したい企業や、特定の顧客との取引を中心に安定した経営を目指す企業では、多額の資金調達を必要としないケースがあります。

    また、事業規模を無理に拡大するのではなく、自社の経営方針に沿って着実に成長したいと考える企業も少なくありません。このように、IPOを前提とせず、経営の安定性や事業の継続性を重視する企業にとっては、持分会社という会社形態が適している場合があります。 

    持分会社を設立するための手続き 

    持分会社を設立するには、会社法で定められた手続きを順番に進める必要があります。基本的な流れは、次のとおりです。 

    1. 定款を作成する
    2. 出資を履行する
    3. 設立登記を行う 

     それぞれをわかりやすく解説します。 

    1.定款を作成する 

    まず、社員となる全員で定款を作成します。 

    持分会社の定款には、会社の目的、商号、本店所在地、社員に関する事項、出資に関する事項など、会社法で定められた内容を記載します。また、会社法に反しない範囲であれば、会社運営に関するルールを定款で定めることも可能です。 

    なお、定款は書面だけでなく、電子データ(電磁的記録)で作成することも認められています。内容が確定した後は、社員全員が署名または記名押印を行い、設立手続きを進めます。 

    2.出資を履行する 

    定款を作成した後は、社員が約束した出資を履行します。 

    合同会社では、設立登記を申請するまでに、社員が出資額の全額を払い込む、または現物出資を行う必要があります。一方、合名会社と合資会社には同様の規定がないため、出資が完了していない状態でも会社を設立できます。 

    この違いは、合名会社や合資会社では無限責任社員が会社の債務について責任を負うことから、合同会社とは異なる制度が採用されているためです。 

    3.設立登記を行う 

    必要な手続きが完了したら、本店所在地を管轄する法務局で設立登記を申請します。持分会社は、定款の作成や出資だけでは成立せず、設立登記が完了した時点で法人として成立します。設立登記によって会社の存在が公示され、法人として権利や義務の主体となります。 

    登記が完了すると、会社名義で契約を締結したり、銀行口座を開設したりするなど、事業活動を正式に開始できます。 

    持分会社の登記事項 

    持分会社は、設立時だけでなく、会社の基本的な情報に変更が生じた場合にも商業登記が必要です。 

    • 合同会社・合名会社・合資会社で登記事項は異なる 
    • 登記事項に変更があった場合は変更登記が必要 
    • 登記事項証明書で確認できる内容 

    それぞれをわかりやすく解説します。 

    合同会社・合名会社・合資会社で登記事項は異なる 

    持分会社では、会社形態によって登記しなければならない事項が一部異なります。例えば、合同会社では資本金の額を登記しますが、合名会社と合資会社では資本金の額は登記事項ではありません。

    また、合資会社では有限責任社員と無限責任社員の別を登記する必要がありますが、合同会社と合名会社では、それぞれ社員全員が有限責任社員または無限責任社員であることが会社形態から明らかなため、社員の責任に関する事項の登記は必要はありません。 

    一方、商号、本店所在地、事業目的、代表社員に関する事項などは、持分会社に共通して登記される主な事項です。 

    登記事項に変更があった場合は変更登記が必要 

    登記した事項に変更が生じた場合は、法令で定められた期間内に変更登記を申請しなければなりません。例えば、商号や本店所在地を変更した場合の他、代表社員の変更、社員の加入・退社などにより登記事項が変わる場合は、変更登記が必要です。 

    変更登記を怠ると、会社法に基づき過料の対象となる場合があります。そのため、会社の情報に変更があった際は、必要な登記手続きを速やかに行うことが重要です。 

    登記事項証明書で確認できる内容 

    登記事項証明書とは、法務局で管理されている登記情報を証明する書類です。会社の基本情報を公示する役割があり、取引先との契約や金融機関での手続きなど、さまざまな場面で利用されます。 

    持分会社の登記事項証明書では、商号、本店所在地、事業目的、会社成立年月日、代表社員に関する事項などを確認できます。また、会社形態に応じて、合同会社では資本金の額、合資会社では有限責任社員・無限責任社員に関する事項なども記載されます。 

    登記事項証明書は、全国の法務局で取得できる他、オンラインによる請求も可能です。 

    持分会社における社員の加入・退社 

    持分会社では、新たな社員を加入させたり、既存の社員が退社したりするためのルールが会社法で定められています。社員の加入・退社に関する基本的なルールは、次のとおりです。 

    新たな社員を加入させる 

    持分会社では、定款を変更することで新たな社員を加入させられます。社員に関する事項は定款の記載事項であるため、新たな社員を迎える場合は、定款を変更しなければなりません。 

    また、社員の加入に伴い登記事項が変更されるため、変更登記も必要です。なお、合同会社では、新たに加入する社員が出資の払込みや現物出資などの給付を完了していない場合、出資の履行が完了した時点で社員となります。 

    さらに、新たに加入した社員は、加入前に生じた会社の債務についても弁済する責任を負います。 

    社員は任意または法律の規定により退社する 

    持分会社の社員がその地位を失うことを「退社」といいます。退社には、自らの意思による「任意退社」と、法律で定められた事由による「法定退社」があります。 

    任意退社は、持分会社の存続期間を定めていない場合などに認められており、原則として事業年度の終了時に退社できます。この場合は、原則として退社する6か月前までに会社へ予告する必要があります。ただし、やむを得ない事由がある場合はこの限りではありません。

     一方、法定退社とは、社員本人の意思にかかわらず、法律で定められた事由によって退社となる制度です。主な事由には、定款で定めた事由の発生、総社員の同意、死亡、法人である社員が合併により消滅した場合、破産手続き開始の決定、法人である社員の解散、後見開始の審判、除名などがあります。 

    退社した社員は持分の払戻しを受けられる 

    退社した社員は、出資の種類にかかわらず、原則として金銭による持分の払戻しを受けとれます。払戻しの金額や方法は、会社法や定款の定めに従って決定されます。なお、持分の払戻しを受けられる場合でも、退社前に生じた会社の債務に関する責任が直ちになくなるわけではありません。 

    責任の有無や範囲については、会社法の規定に基づいて判断されます。 

    持分会社の社員が死亡した場合の相続 

    持分会社では、社員が死亡した場合の取り扱いについても会社法で定められています。ここでは、社員が死亡した場合の基本的なルールや、相続人が社員となる場合・ならない場合の違いについて解説します。 

    社員が死亡すると原則として退社する 

    持分会社では、社員が死亡すると、原則として会社を退社したものと扱われます。これは会社法で定められた法定退社事由の一つです。持分会社は、社員同士の信頼関係を前提として運営される会社形態であるため、社員としての地位は他の者に相続されません。 

    そのため、社員が死亡した時点で社員としての地位は終了し、相続人が自動でその地位を承継して社員となることはありません。 ただし、定款に定めた場合はこの限りではありません。

    定款に定めがあれば相続人が社員になれる 

    持分会社では、定款に「社員が死亡した場合は、その相続人その他の一般承継人が社員となる」旨を定めている場合、相続人が社員としての地位を承継できます。 

    この場合、相続人は出資持分だけでなく、社員としての権利や義務も引き継ぎます。家族経営や親族内で事業承継を予定している持分会社では、このような規定をあらかじめ定款に設けているケースもあります。 

    地位を承継しない場合は持分の払戻しを受ける 

    定款に社員の地位を承継する旨の定めがない場合は、相続人は社員にはならず、退社した社員の持分払戻請求権を相続します。 

    持分払戻請求権とは、退社した社員が会社に対して持分の払戻しを請求できる権利です。相続人はこの権利を承継し、会社法や定款の定めに従って持分の払戻しを受けます。 

    持分会社における持分の譲渡 

    持分会社では、株式会社の株式譲渡とは異なり、社員が持つ「持分」を譲渡することになります。ただし、持分会社は社員同士の信頼関係を重視する会社形態であるため、持分を自由に譲渡できるわけではありません。

    ここでは、持分譲渡の要件や譲渡後の法律関係、必要となる登記手続きについて解説します。 

    持分を譲渡するには社員の承諾が必要 

    持分会社では、社員が持分の全部または一部を譲渡する場合、原則として他の社員全員の承諾が必要です。これは、持分会社が少人数での会社運営を前提としており、新たな社員の加入が会社の経営や責任関係に大きく影響するためです。 

    ただし、合同会社では、業務を執行しない社員が持分を譲渡する場合は、業務執行社員全員の承諾で足りる場合があります。また、これらのルールは任意規定であるため、定款で別の取り扱いを定めることも可能です。 

    持分を譲渡すると社員としての地位を承継する 

    持分の譲渡が成立すると、譲受人は譲渡人の社員としての地位を承継します。そのため、社員として有していた権利だけでなく、未履行の出資義務がある場合には、その義務も譲受人へ引き継がれます。 

     一方、持分の全部を譲渡した社員は、会社の社員としての地位を失います。ただし、退社前に生じた会社の債務については、会社法に基づき、退社後も従前の責任の範囲で責任を負う場合があります。この責任は、退社の登記後2年以内に債権者から請求または請求の予告がなかった場合には消滅します。 

    持分譲渡後は変更登記を行う 

    持分の譲渡によって社員の構成が変わった場合は、変更登記が必要です。持分の全部を譲渡した場合は、譲渡人の退社と譲受人の加入について登記を行います。一方、持分の一部を譲渡した場合は、譲受人が新たに社員となるため、社員の加入に関する登記を行います。 

    登記申請では、持分譲渡に必要な承諾があったことを証明する書類など、変更内容に応じた添付書類を提出します。また、組織変更の登録免許税は最低でも3万円必要となります。

    参考:国税庁「登録免許税の税額表」

    持分会社の解散・清算 

    持分会社は、設立後に永続的に存続するものではありません。ここでは、持分会社が解散する主な理由や解散後に行われる清算手続きの流れについて解説します。 

    持分会社が解散する事由 

    持分会社は、会社法で定められた事由が生じた場合に解散します。主な解散事由としては、定款で定めた存続期間の満了、定款で定めた解散事由の発生、総社員の同意、社員が欠けたこと、合併による消滅、破産手続き開始の決定、裁判所による解散命令などがあります。 

    例えば、社員全員が会社を終了することに合意した場合や定款で定めた存続期間が満了した場合には、持分会社は解散します。なお、解散後も直ちに法人格が消滅するわけではなく、会社の財産や債務を整理するための清算手続きへ移行します。 

    清算人が会社の財産や債務を整理する 

    持分会社が解散すると、清算人が会社を代表して清算手続きを行います。清算人は、会社の財産を管理し、債権の回収や債務の弁済などを進めます。 

    また、全ての債務を弁済した後に財産が残っている場合は、会社法や定款の定めに従って社員へ残余財産を分配します。このように、清算手続きは会社の権利義務を整理し、債権者や社員の利益を適切に保護するために行われます。 

    清算結了登記を行う 

    会社の財産や債務の整理が完了した後は、法務局で清算結了登記を申請します。また、解散した時点では、解散登記や清算人の登記も必要です。これらの登記を行った上で清算手続きを進め、全ての手続きが完了した後に清算結了登記を行います。 

    清算結了登記が完了すると、持分会社の法人格は消滅し、一連の解散・清算手続きが終了します。 

    参考:法務局「持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)」

    持分会社に関するQ&A 

    最後に、持分会社に関するよくある質問とその回答を紹介します。 

    持分会社は一人でも設立できるか 

    持分会社のうち、合同会社と合名会社は一人でも設立できます。 特に合同会社は、有限責任社員が一人だけでも設立できるため、個人事業主が法人成りする際や、一人で事業を始める場合に選ばれています。また、合名会社についても、一人の無限責任社員のみで設立することが可能です。 

    一方、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の双方で構成される会社形態であるため、一人では設立できません。設立時には、それぞれの社員が少なくとも一人ずつ必要です。 

    なお、設立後に社員数や社員の構成が変わった場合の取り扱いは会社法の規定に従います。例えば、合資会社で無限責任社員または有限責任社員のいずれかが欠けた状態となった場合は、そのままでは会社形態を維持できず、一定期間内に要件を満たさなければ解散事由となる場合があります。 

    持分会社を途中で株式会社へ変更できるか 

    会社法では、持分会社から株式会社へ組織変更することが認められています。組織変更とは、法人格を維持したまま会社形態を変更する制度です。そのため、新たに株式会社を設立して事業や資産を移転するのではなく、現在の会社を株式会社へ変更できます。 

    組織変更を行う場合は、会社法に基づく手続きや組織変更の登記が必要です。また、株式会社へ変更した後は、株式を発行できるようになる一方で、株主総会や取締役など、株式会社に関する会社法上のルールが適用されます。 

    将来的に株式による資金調達やIPO(株式上場)を目指す場合などには、持分会社から株式会社への組織変更を検討するケースがあります。 

    持分会社の社員は従業員と何が違うのか 

    持分会社における社員とは、会社へ出資して会社法上の権利や義務を持つ人のことであり、一般的な従業員とは意味が異なります。 

    日常的に使われる「社員」は会社で働く従業員を指すことが多いですが、会社法における持分会社の社員は、会社の構成員として出資を行い、会社の経営に関与する人をいいます。一方、従業員は会社と雇用契約を結び、給与を受け取りながら業務を行う人です。出資をしている必要はなく、会社法上の社員には該当しません。 

    例えば、合同会社では出資者である社員が業務を執行することもありますが、従業員を雇用して事業を運営することも可能です。そのため、「社員=従業員」ではなく、持分会社では両者は異なる立場であることを理解しておくことが重要です。 

    持分会社は銀行融資を受けられるか 

    持分会社であっても、銀行などの金融機関から融資を受けることは可能です。金融機関は、会社形態だけで融資の可否を判断するわけではありません。事業内容や収益性、返済能力、財務状況、事業計画などを総合的に審査した上で融資を判断します。 

    そのため、持分会社であることだけを理由に融資を受けられないわけではありません。実際に、合同会社をはじめとする持分会社でも、事業資金や設備資金の融資を受けて事業を運営している企業は数多くあります。 

    ただし、持分会社は株式会社のように株式を発行して資金調達できません。そのため、多額の資金調達が必要な場合は、金融機関からの借り入れや自己資金を中心に資金を確保することになります。 

    持分会社の社員は法人でもなれるか 

    会社法では、持分会社の社員を個人に限定していないため、株式会社や合同会社などの法人が持分会社へ出資し、社員となることが可能です。 

    ただし、法人は自ら業務を行うことができないため、法人が業務執行社員または代表社員となる場合には、会社法に基づき職務執行者を選任しなければなりません。職務執行者とは、法人に代わって業務を執行したり、会社を代表したりする自然人のことです。 

    なお、職務執行者を選任した場合は、その氏名や住所などを登記しなければならないケースもあります。このように、法人が社員になることは認められていますが、実際に経営へ関与するためには、会社法に定められた手続きを行う必要があります。 

    持分会社は商号(会社名)を変更できるか 

    持分会社でも商号を変更することは可能です。事業内容の変更やブランドイメージの刷新などを目的として、会社名を変更する企業は少なくありません。持分会社も会社法に基づき、商号を変更できます。 

    ただし、商号を変更するためには、定款を変更した上で、法務局へ変更登記を申請する必要があります。また、登記が完了するまでは、新しい商号を正式な会社名として公示できません。 

    なお、会社法では会社の種類を商号へ表示することが義務付けられています。そのため、合同会社であれば「合同会社」、合名会社であれば「合名会社」、合資会社であれば「合資会社」という文字を商号へ含めなければなりません。 

    また、会社形態と異なる名称を使用することは禁止されています。例えば、合同会社は「株式会社○○」という商号を使用できません。 

    持分会社は未成年でも社員になれるか 

    会社法では、持分会社の社員について年齢制限は設けられていません。そのため、未成年者であっても社員になること自体は可能です。 

    ただし、未成年者が持分会社へ出資したり、社員として法律行為を行ったりする場合には、民法上の規定が関係します。法定代理人(親権者など)の同意が必要となるケースもあるため、実際に設立へ参加する際は注意が必要です。 

    また、業務執行社員として会社の経営へ関与する場合には、法律上だけでなく、契約や金融機関との取引など実務面も考慮する必要があります。そのため、未成年者が社員となることは可能ですが、設立前に司法書士などの専門家へ相談すると安心です。 

    持分会社の社員は競業しても良いか 

    原則として、業務を執行する社員が競業を行う場合には、他の社員全員の承認が必要です。競業とは、会社と同じ事業を自ら行ったり、競合する会社の経営に関わったりするなど、会社と利益が競合する取引を行うことをいいます。 

    会社法では、業務を執行する社員が自己または第三者のために会社の事業と競合する取引を行う場合には、原則として他の社員の承認を得なければならないと定められています。これは、社員が自社の利益よりも自己の利益を優先することを防ぎ、会社との利益相反を避けるためです。 

    なお、承認を得ずに競業取引を行った場合は、その取引によって会社へ損害が生じたときに、損害賠償責任を負う可能性があります。そのため、競業に該当するおそれがある場合は、事前に他の社員の承認を得ることが重要です。 

    まとめ

    持分会社の設立には、株式会社とは異なるメリットとデメリットがあります。近年では、株式会社だけでなく合同会社を設立するケースも増えています。しかし、事業規模を将来的に拡大したい場合は制約が生じる可能性もあるため、会社形態の選択は慎重に行う必要があります。

    持分会社の設立を検討している場合は、専門家に相談することをお勧めします。法的な手続きや税務面でのサポートを受けることで、スムーズな設立が可能になるでしょう。

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