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取締役会とは、会社の経営方針や重要な業務執行について審議・決定する機関です。しかし、「株主総会や役員会とは何が違うのか」などと疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
取締役会を設置する場合は、取締役の人数や決議要件だけでなく、招集通知、議事録の作成・保存など、会社法に基づいた運営が求められます。また、近年はオンライン開催やみなし決議を活用する企業も増えており、それぞれの違いや要件を正しく理解することが重要です。
本記事では、取締役会の定義や役割、設置義務がある会社、構成、決議事項、開催手順について詳しく解説します。
目次
まず、取締役会に関する基本的な情報を紹介します。
取締役会とは、株式会社に設置される意思決定機関であり、会社の経営方針や業務方針など、経営に関わる重要事項を決定するための機関です。
取締役会は、3名以上の取締役で構成され、会社法に基づいて運営されます。設置が義務付けられる会社や取締役会の職務、運営方法などについても会社法で定められており、法令に沿って適切に運営することが求められます。
なお、取締役会の設置義務や構成、具体的な役割については、後ほど詳しく解説します。
役員会とは、会社法で定められた機関ではなく、各会社が独自の目的や運営ルールに基づいて設置する任意の会議体です。中長期的な経営戦略や事業方針について協議し、役員間で認識を共有する場として活用されることが多く、取締役だけでなく、監査役や執行役員などが参加するケースもあります。
一方、取締役会は会社法に基づいて設置される機関であり、会社法上、取締役会の決議が必要な事項を役員会だけで決定できません。そのため、役員会で重要事項について協議した場合でも、法令や定款で取締役会の決議が必要とされる事項については、改めて取締役会で決議する必要があります。
株主総会とは、株主が議案を検討し、会社の重要事項について意思決定を行う機関です。
取締役会を設置していない会社では、株主総会は会社法に定められた事項だけでなく、株式会社の組織や運営、管理など、会社に関する幅広い事項を決議できます。一方、取締役会設置会社では、株主総会が決議できるのは、会社法および定款で定められた事項に限られます。
取締役会が主に経営上の重要事項を決定するのに対し、株主総会では、取締役などの役員の選任・解任、役員報酬、定款変更、合併をはじめとする組織再編など、会社の組織や株主の利害に大きく関わる事項を決議します。
取締役会は、全ての株式会社に設置が義務付けられているわけではありません。取締役会の設置が義務付けられている主な会社は、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
公開会社とは、発行する株式のうち、少なくとも一部について自由に譲渡できる株式を発行できる株式会社です。株主は原則として会社の承認を受けることなく株式を売買できるため、株主構成が変動しやすい特徴があります。
公開会社と上場会社は混同されることがありますが、両者は同じ意味ではありません。上場会社は証券取引所で株式を売買できる会社であり、原則として公開会社に該当します。一方、公開会社であっても株式を証券取引所に上場していない会社もあるため、公開会社が全て上場会社というわけではありません。
これに対し、全ての株式について譲渡に会社の承認を必要とする会社は「非公開会社」と呼ばれます。株主の異動を会社が把握・管理しやすい非公開会社とは異なり、公開会社では株主が自由に入れ替わる可能性があることから、経営の透明性や適切な監督体制を確保することが重要です。
そのため、会社法では公開会社に対して取締役会の設置を義務付けています。取締役会を設置することで、重要事項の意思決定や取締役の職務執行を組織的に監督し、株主の利益を保護する仕組みが整えられています。
監査役会設置会社とは、監査役会を置く株式会社のことです。監査役会は3名以上の監査役で構成され、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません。
監査役は、取締役とは独立した立場から、取締役の職務執行が法令や定款に違反していないか、また会社の利益を損なう行為がないかを監査する役員です。監査役会では、それぞれの監査役が行った監査結果を共有するとともに、組織として監査方針や監査方法などを決定します。
また、監査の結果、法令違反や不正行為など重大な問題が認められた場合には、監査役は取締役会の招集を請求するなど、必要な対応を求める権限を有しています。このように、監査役会設置会社では、取締役の職務執行を監督する仕組みとして取締役会が前提となるため、会社法により取締役会の設置が義務付けられています。
監査等委員会設置会社とは、監査等委員会を機関として置く株式会社のことです。監査等委員会は3名以上の取締役で構成され、委員の過半数は社外取締役でなければなりません。
この制度は、企業統治の強化を目的として2015年の会社法改正により導入されました。従来の監査役会設置会社とは異なり、監査を担当する取締役が取締役会の一員として意思決定に関与する点が特徴です。そのため、業務執行の状況を継続的に確認しながら、経営に対する監督機能をより実効性のあるものとすることが期待されています。
また、監査等委員会設置会社では、会計監査人を設置しなければなりません。監査等委員会による監督と会計監査人による会計監査を組み合わせることで、経営の適正性や信頼性を確保する体制が整えられています。
このように、監査等委員会設置会社は取締役会を中心とした機関設計を採用しているため、会社法により取締役会の設置が義務付けられています。
指名委員会等設置会社では、取締役の選任・解任に関する議案を扱う「指名委員会」、業務執行を監督する「監査委員会」、取締役や執行役の報酬を決定する「報酬委員会」の3つの委員会を設置します。これらの委員会がそれぞれの役割を担うことで、重要な経営判断をより客観的に行える体制が整えられています。
各委員会は3名以上の取締役で構成され、委員の過半数は社外取締役でなければなりません。社外取締役が委員会運営の中心となることで、経営陣から独立した立場で意思決定や監督を行えるようになっています。
また、この機関設計では、取締役会が会社全体の経営を監督し、執行役が日常の業務執行を担当します。それぞれの役割を明確に分けることで、経営の透明性を高めるとともに、迅速な業務執行を実現しやすい点が特徴です。
なお、公開会社である大会社は、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、または指名委員会等設置会社のいずれかの機関設計を採用する必要があります。指名委員会等設置会社は取締役会を前提とした制度であるため、会社法により取締役会の設置が義務付けられています。
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取締役会は、異なる役割を担う者で構成されています。
それぞれの役割について解説します。
取締役は、株式会社の経営を担う役員であり、取締役会を構成する者です。会社法では、株式会社には原則として1名以上、取締役会設置会社では3名以上の取締役を置くことが定められています。
取締役会では、会社の経営方針や重要な業務執行に関する事項について審議・決議を行います。 また、それぞれが専門知識や経験を生かして経営上の課題やリスクについて意見を述べるとともに、他の取締役の職務執行を相互に監督する役割も担っています。
社外取締役とは、会社法で定められた要件を満たす取締役です。単に社外から選任された取締役ではなく、その会社やグループ会社との現在・過去の関係について一定の制限があります。
具体的には、その会社や子会社の業務執行取締役、執行役、使用人などではなく、原則として就任前10年間もこれらの立場に就いていないことが必要です。また、親会社やグループ会社との関係、会社役員などとの親族関係についても要件が定められています。
社外取締役には、社内の事情に偏らない立場から経営上の課題やリスクについて意見を述べ、取締役の職務執行を監督する役割が期待されています。
監査役は、取締役の職務執行を監査する役員です。監査役設置会社では取締役会への出席義務があり、法令や定款に従って業務が適正に行われているかを確認するとともに、必要に応じて意見を述べることができます。
また、業務監査や会計監査を通じて経営の健全性を確保し、取締役会の監督機能を支える役割を担っています。なお、監査役は取締役会の構成員ではないため、取締役会の決議に参加できず、議決権も有していません。
取締役会が担う主な役割は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
取締役会は、会社法で定められた重要な業務執行を決定します。日常的な業務については代表取締役などへ委任できますが、会社経営に大きな影響を及ぼす事項は、取締役会の決議を経なければ実行できません。
具体的には、会社の財産や組織運営、内部統制などに関する重要事項が対象となります。これらの決議事項については、次章で詳しく解説します。
取締役会は、取締役が法令や定款を遵守し、取締役会で決定した方針に基づいて職務を執行しているかを監督します。
業務執行を担当する取締役は、取締役会に対して職務執行の状況を報告し、取締役会はその内容を確認しながら必要に応じて意見を述べます。また、監査役設置会社では監査役も取締役会へ出席し、監査の立場から意見を述べることができます。
このように、取締役会は意思決定を行うだけでなく、その決定内容が適切に実行されているかを継続的に確認する役割も担っています。
取締役会は、代表取締役を選定するとともに、必要に応じて解職する権限を有しています。
代表取締役は会社を代表して契約の締結や業務執行を行うため、その選任は会社経営における重要な意思決定の一つです。また、代表取締役を変更する必要が生じた場合には、取締役会の決議によって新たな代表取締役を選定し、併せて現任の代表取締役を解職できます。
なお、代表取締役は取締役の中から選定されるため、代表取締役でなくなった場合でも、取締役まで退任するとは限りません。
取締役会で決議する代表的な事項は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
取締役会では、会社にとって重要な財産の処分や譲受けについて決議します。重要な財産とは、会社の事業や財務状況に大きな影響を与える資産を指します。例えば、土地や建物などの不動産、事業で使用する高額な設備、重要な株式などが該当する場合があります。
これらの財産の取得や処分は会社の経営に大きな影響を及ぼすため、特定の取締役だけで判断するのではなく、取締役会で必要性やリスクなどを十分に検討した上で意思決定を行います。
会社が多額の借入れを行う場合も、取締役会で決議する必要があります。多額の借入れは、設備投資や事業拡大などの資金調達手段となる一方で、会社の財務状況や資金繰りにも大きな影響を与えます。そのため、借入れの必要性や資金使途、返済計画などを総合的に検討し、会社として適切な判断を行うことが重要です。
なお、「多額」に該当する金額は会社法で一律に定められているわけではなく、会社の規模や事業内容などを踏まえて個別に判断されます。
取締役会では、支配人その他の重要な使用人の選任・解任についても決議します。支配人とは、営業に関する一切の裁判上・裁判外の行為を行う権限を有する使用人です。
また、重要な使用人とは、事業部長や本部長など、会社の重要な業務を統括する立場にある者を指すことが一般的です。これらの人事は会社の経営や業務執行に大きな影響を及ぼすため、取締役会で慎重に審議した上で決定します。
支店その他の重要な組織の設置、変更および廃止についても、取締役会の決議事項です。支店や営業所、重要な事業部門などの組織体制を変更することは、事業戦略や経営資源の配分に大きく関わります。
そのため、事業への影響や経営上の必要性などを総合的に検討した上で意思決定を行います。
取締役会は、内部統制システムの整備に関する基本方針についても決議します。
内部統制システムとは、法令遵守や業務の適正性を確保するための体制を整備・運用する仕組みです。会社法では、大会社など一定の株式会社に対して、内部統制システムの整備に関する基本方針を取締役会で決定することを求めています。
取締役会は基本方針を決定するだけでなく、内部統制システムが適切に運用されているかを継続的に確認し、必要に応じて見直すことで、企業の健全な経営を支える役割を担っています。
取締役会を設置するメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
取締役会を設置すると、会社法や定款で株主総会の決議が必要とされる事項を除き、重要な業務執行は取締役会で決定できます。特に、株主数が多い会社では、株主総会の招集や開催には一定の手続や時間を要します。取締役会で重要事項を決定できることで、経営環境の変化にも迅速に対応しやすくなります。
また、取締役の競業取引や利益相反取引の承認も取締役会で行えるため、重要な取引についても適切な手続きを踏みながら、迅速に判断できます。ただし、取締役会の開催には招集や資料準備などの手続きが必要です。そのため、取締役会を設置する際は、会社の規模や経営体制に応じて検討することが重要です。
取締役会を設置することで、経営に対する監督機能を強化できます。取締役会では、重要事項を決定するだけでなく、業務執行を担当する取締役から報告を受け、その内容を確認します。
また、社外取締役や監査役設置会社では監査役がそれぞれの立場から意見を述べることで、多面的な視点から経営を確認できる体制が整えられます。さらに、経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」でも、取締役会には重要な意思決定だけでなく、経営戦略の方向性を示し、その実行状況を監督する役割が求められています。
このような仕組みを整備することで、継続的に経営をチェックできる体制を構築できる点がメリットです。
取締役会を設置することで、重要事項の意思決定と日常的な業務執行の役割を分けやすくなります。
取締役会設置会社では、会社の重要事項は取締役会が決定し、その決定に基づいて代表取締役や業務執行取締役が業務を執行します。このように、意思決定を行う機関と実際に業務を執行する者の役割を区分することで、それぞれの権限や責任の範囲を整理しやすくなります。
また、重要事項が取締役会の決議を経て決定されるため、どのような経緯で意思決定が行われたのかを議事録などで確認できます。経営判断のプロセスを明確に残せることは、適切な会社運営につながります。
取締役会を設置するデメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
取締役会を設置する場合は、前述のとおり、取締役を3名以上置かなければなりません。また、会社の機関設計によっては、監査役や社外取締役などの設置が必要となる場合もあります。
役員が増えれば、その分の役員報酬や社会保険料などの人的コストが発生する他、取締役会を円滑に運営するための事務担当者の確保や、会議運営に必要な時間も必要です。さらに、社外取締役や監査役を選任する場合には、適任者の選定や日程調整など、継続的な人的リソースも求められます。
特に、中小企業や創業間もない企業では、限られた経営資源で事業運営を行っているケースも少なくありません。そのため、取締役会を設置する際には、継続的に運営できる人員や予算を確保できるかもあわせて検討することが重要です。
取締役会を設置すると、会社法に基づき適切な手続きを踏んで運営しなければなりません。例えば、取締役会を開催する際には、原則として各取締役および監査役に招集通知を発し、開催後は議事の経過や決議内容などを記載した議事録を作成して、本店に10年間備え置く必要があります。
また、決議に特別の利害関係を有する取締役は、その議決に参加できないなど、決議手続きにも一定のルールが設けられています。こうした法的手続きを適切に行うためには、開催日程の調整、議案や会議資料の準備、議事録の作成・保管など、継続的な事務対応が欠かせません。
手続きに不備があると、取締役会の適正な運営に支障を及ぼす可能性があるため、法令を踏まえた管理体制を整備することが求められます。
取締役会を開催する手順は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
まずは、取締役会で審議する議題や議案を整理します。議題は、大きく「報告事項」と「決議事項」に分けられます。
報告事項では、代表取締役や業務執行取締役による職務執行状況の報告や、事業の進捗(しんちょく)状況などを共有します。一方、決議事項では、重要な業務執行の決定や代表取締役の選定・解職など、会社法や定款に基づき取締役会で決定すべき事項を審議します。
また、議題ごとに提案内容や目的、背景、期待される効果、想定されるリスクなどを整理した資料をあらかじめ準備しておくことも重要です。事前に資料を共有することで、各取締役が内容を十分に検討した上で会議に臨むことができ、限られた時間でも実質的な議論を行えます。
議題や資料を準備したら、取締役会の招集通知を送付します。会社法では、原則として取締役会開催日の1週間前までに、各取締役および監査役へ招集通知を発することとされています。ただし、定款で別の期間を定めている場合は、その定めに従います。
招集通知には、開催日時や場所の他、議題・議案などを記載することが一般的です。併せて審議資料を送付することで、当日に初めて内容を確認する状況を避けることができ、円滑な意思決定につながります。
なお、取締役および監査役全員の同意がある場合には、招集手続きを経ずに取締役会を開催することも認められています。
開催日になったら、取締役会を開き、議題に沿って審議を進めます。取締役会の具体的な進行方法について会社法に細かな定めはないため、会社ごとに進行方法を定めることができます。一般的には、議長が会議を進行し、報告事項と決議事項の順に審議を進めます。
決議事項については、会社法で定められた定足数および決議要件を満たした上で採決を行います。また、特別の利害関係を有する取締役は、その決議に参加できません。
議事録は、単に会議の内容を記録するための書類ではありません。取締役会でどのような審議が行われ、どのような理由で意思決定に至ったのかを客観的に示す重要な記録としての役割があります。
また、代表取締役の選定など、登記が必要となる事項を決議した場合には、取締役会議事録を登記申請の添付書類として提出するケースがあります。そのため、議事録は会社法上の義務を果たすだけでなく、会社の各種手続きを進める上でも重要な書類です。
なお、議事録は会社法に基づき、本店に10年間備え置かなければなりません。一定の要件を満たす場合には、株主や債権者などが閲覧・謄写を請求できるため、内容を正確に記録し、適切に保管することが重要です。
ここでは、取締役会の開催頻度の目安と開催場所について詳しく解説します。
会社法第363条第2項では、代表取締役および業務執行取締役は、原則として3か月に1回以上、自身の職務執行状況を取締役会へ報告しなければならないと定められています。
この規定を踏まえ、実務では3か月に1回程度、年4回を目安として定例の取締役会を開催する会社が多く見られます。ただし、これはあくまで一般的な開催頻度の目安であり、会社法が一律に年間4回の開催を義務付けているわけではありません。
また、新規事業への投資やM&A、資金調達など、重要な経営判断が必要になった場合には、定例開催とは別に臨時取締役会を開催することもあります。このように、取締役会の開催回数に上限はなく、会社の規模や事業内容、意思決定の必要性に応じて柔軟に開催されています。
取締役会の開催場所について、会社法では特別な制限は設けられていません。そのため、本社や支店の会議室などで対面開催する他、ウェブ会議システムを利用したオンライン開催や、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催することも可能です。
近年は、通信環境やウェブ会議システムの普及により、遠隔地にいる取締役や監査役も参加しやすいオンライン開催を採用する会社が増えています。一方で、オンライン開催を行う場合には、取締役同士が十分に意思疎通を図れる環境を整えることが重要です。
なお、オンライン開催を行う際の要件や、会議を開催せずに決議があったものとみなす「みなし決議」との違いについては、次章で詳しく解説します。
近年では、ウェブ会議システムなどを利用して、取締役会をオンラインで開催する企業が増えています。ここでは、オンライン開催の概要や、みなし決議との違い、オンライン開催時の要件について解説します。
オンラインで取締役会を開催するためには、出席者同士が対面で会議を行う場合と同程度に意思疎通できる環境を確保することが重要です。
具体的には、発言内容が遅滞なく他の出席者へ伝わる「即時性」と、出席者全員が相互に発言や質疑応答を行える「双方向性」が求められます。これらの要件を満たしていれば、ウェブ会議システムだけでなく、電話会議システムを利用しての開催が可能です。
また、オンライン開催であっても、対面開催と同様に議事録の作成・保存は必要です。議事録には、オンラインで開催したことが分かるよう開催方法などを適切に記録しておくことが重要です。
オンライン開催と混同されやすい制度に、「取締役会の決議の省略(みなし決議)」があります。オンライン開催は、対面での開催と同様に、取締役同士がリアルタイムで議論や意見交換を行った上で決議を行う方法です。
一方、みなし決議は、実際に会議を開かず、会社法第370条の要件を満たした場合に、取締役会の決議があったものとみなす制度です。みなし決議を行うためには、定款にその旨の定めがあることに加え、議決に参加できる取締役全員が書面または電磁的記録により決議事項へ同意し、監査役設置会社では監査役が異議を述べていないことが必要です。
ここでは、みなし決議を行うための要件や利用されるケース、具体的な手続きについて解説します。
取締役会のみなし決議を行うためには、会社法で定められた要件を満たす必要があります。まず、定款に「取締役会の決議を省略できる」旨の定めがなければ、みなし決議を利用できません。
その上で、議決に参加できる取締役全員が、提案された決議事項について書面または電磁的記録により同意する必要があります。また、監査役設置会社では、監査役がその提案について異議を述べていないことも要件です。
これらの要件を一つでも満たさない場合は、みなし決議は成立せず、通常どおり取締役会を開催して決議を行わなければなりません。
みなし決議は、取締役全員の意思が一致しており、会議を開催しなくても意思決定できる場合に利用されます。例えば、緊急に決議が必要で取締役会を開催する時間を確保できない場合や出張や天候などの事情により取締役全員が集まることが難しい場合などに活用されています。
また、決議事項について事前に十分な調整が行われ、取締役全員が賛成することが明らかな場合にも利用されることがあります。一方で、みなし決議では取締役同士が意見交換や議論を行う機会はありません。
そのため、重要な経営判断や意見が分かれる可能性のある案件については、通常どおり取締役会を開催し、十分な審議を行った上で意思決定することが望ましいでしょう。
みなし決議を行う場合は、まず決議事項をまとめた提案を作成し、議決に参加できる取締役全員へ送付します。監査役設置会社では、監査役にも提案内容を通知します。
その後、取締役全員から提案に対する同意を得るとともに、監査役設置会社では監査役から異議が述べられていないことを確認します。同意の方法は、書面だけでなく、電子メールなどの電磁的記録による方法でも可能です。
全ての要件を満たした時点で、取締役会の決議があったものとみなされます。なお、取締役ごとに同意した日が異なる場合は、最後に同意した取締役の意思表示が行われた日が決議成立日となります。
決議成立後は、通常の取締役会と同様に議事録を作成し、本店に10年間備え置かなければなりません。また、提案書や取締役の同意を確認できる書面・電磁的記録についても、議事録と併せて適切に管理しておきます。
取締役会をより実効的に機能させるためのポイントは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
取締役会では、取締役が十分な情報を把握した上で議論できる環境を整えることが重要です。例えば、会議の議題や関連資料を事前に共有し、論点を明確にしておくことで、会議当日に情報確認へ時間を割くことなく、重要事項の議論に集中しやすくなります。
また、事業の進捗や経営課題について継続的に報告を受けることで、取締役が現状を正確に把握し、より適切な意思決定を行えます。さらに、議長は特定の参加者だけが発言する状況を避け、幅広い意見を引き出しながら議論を整理することが求められます。
多様な視点から意見を交わすことで、意思決定の質の向上が期待できます。
取締役会には、業務執行を監督する役割があります。そのため、内部統制システムが適切に運用されているかを継続的に確認することが重要です。
例えば、内部監査の結果やコンプライアンスに関する報告、リスク管理の状況などを定期的に確認し、必要に応じて改善策を検討することで、不正や法令違反、経営上のリスクを早期に把握しやすくなります。
このような継続的な監督は、企業の健全な経営基盤を維持する上で重要な取り組みです。
取締役会は開催するだけでは十分ではなく、その運営が適切に機能しているかを定期的に評価し、改善につなげることが重要です。東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードでも、取締役会は実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示することが求められています。
実効性評価では、取締役会の構成や議論の質、情報提供の十分性、議題の設定などを確認します。評価方法としては、取締役へのアンケートや個別インタビューを実施する他、必要に応じて外部専門家の客観的な評価を取り入れる方法もあります。
評価結果を踏まえて課題を整理し、翌年度の運営方法や議題設定へ反映することで、取締役会の機能向上につながります。
前述のとおり、取締役会を開催した場合は、議事の内容や決議事項を記録した「取締役会議事録」を作成しなければなりません。ここでは、取締役会議事録の概要や記載事項、保存期間、電子化のポイントなどについて詳しく解説します。
取締役会議事録とは、取締役会で行われた議事の内容や決議事項を記録した書面または電磁的記録のことです。取締役会を開催した場合だけでなく、会社法第370条に基づくみなし決議を行った場合にも、議事録を作成する必要があります。
取締役会議事録は、取締役会における意思決定の内容や経過を明確に記録し、後日確認できるようにするための重要な書類です。また、登記手続きの添付書類として利用される場合がある他、株主や債権者が一定の要件の基で閲覧・謄写を請求できることから、会社の適正なガバナンスを支える役割も担っています。
取締役会議事録には、会社法施行規則で定められた事項を記載しなければなりません。主な記載事項は次のとおりです。
取締役会の内容によって必要となる記載事項は異なるため、会社法や会社法施行規則に沿って漏れなく記載することが重要です。
取締役会議事録は、取締役会を開催した日(みなし決議の場合は決議があったものとみなされた日)から10年間、本店に備え置かなければなりません。
また、株主や債権者は一定の要件を満たす場合、取締役会議事録の閲覧や謄写を請求できます。ただし、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社では、株主が閲覧・謄写を請求する際に裁判所の許可が必要となるなど、会社の機関設計によって要件が異なります。
取締役会議事録を書面で作成する場合は、出席した取締役および監査役が署名または記名押印を行わなければなりません。一方、電磁的記録で作成する場合は、署名や記名押印に代えて電子署名を付与する必要があります。
近年はDXの推進やリモートワークの普及を背景に、取締役会議事録を電子化する企業が増えています。電子化することで、過去の議事録を検索しやすくなる他、遠隔地からでも閲覧・管理しやすくなるなど、業務効率の向上につながります。
会社法では、取締役会議事録の作成および本店への備え置きを義務付けています。これらの義務に違反した場合には、会社法第976条に基づき、取締役に100万円以下の過料が科されることがあります。そのため、必要事項を漏れなく記載し、法令で定められた期間にわたり適切に保存することが重要です。
最後に、取締役会に関するよくある質問とその回答を紹介します。
取締役会を毎月開催する会社もあります。ただし、会社法では毎月開催することは義務付けられていません。前述のとおり、会社法第363条第2項では、代表取締役および業務執行取締役は原則として3か月に1回以上、職務執行状況を取締役会へ報告しなければならないと定められています。
一方で、上場会社や事業環境の変化が大きい企業では、業績の確認や経営戦略、投資案件などを継続的に審議するため、毎月定例の取締役会を開催するケースも少なくありません。また、新規事業への投資や組織再編、資金調達など重要な経営判断が必要となった場合には、定例開催とは別に臨時取締役会を開催することもあります。
会社法では取締役会の録音や録画を禁止する規定はありません。そのため、会社のルールや出席者の同意などを踏まえて録音・録画を行うことは可能です。録音・録画したデータは、議事録を正確に作成するための補助資料として活用されることがあります。発言内容や審議の経過を後から確認できるため、議事録の正確性を高めることにつながります。
ただし、録音・録画データには経営戦略や未公表の重要情報、個人情報などの機密情報が含まれる場合があります。そのため、保存期間や閲覧権限、利用目的などを社内規程で定め、情報漏えいを防ぐための適切な管理体制を整えることが重要です。
なお、録音・録画を行った場合でも、会社法上義務付けられている取締役会議事録の作成・保存を省略できません。録音・録画はあくまでも議事録を補完するための手段であり、議事録の代わりにはならない点に注意しましょう。
会社法では、公開会社や監査役会設置会社など一定の株式会社については取締役会の設置が義務付けられています。一方、全ての株式に譲渡制限を設けている非公開会社(非公開株式会社)には、原則として取締役会の設置義務はありません。
しかし、設置義務がない場合でも、会社の判断で取締役会の設置はできます。例えば、経営上の重要事項を複数の取締役で審議・決定したい場合や取締役同士の相互監督を強化したい場合などに、任意で取締役会を設置するケースがあります。
ただし、取締役会を設置する場合は、取締役を3名以上置かなければならない他、会社法に基づく招集手続きや議事録の作成・保存などのルールも適用されます。そのため、会社の規模や経営体制を踏まえ、継続的に運営できるかを検討した上で設置することが重要です。
取締役会の招集権者は、原則として各取締役です。ただし、会社法では、定款または取締役会の決議によって、特定の取締役を招集権者として定めることが認められています。実務では、代表取締役を招集権者として定めている会社が多く見られます。
また、特定の取締役が招集権者として定められている場合でも、他の取締役は必要に応じて取締役会の開催を請求できます。請求を受けた招集権者が、請求日から5日以内に、請求日から2週間以内の日を開催日とする招集通知を発しない場合には、請求した取締役が自ら取締役会を招集することが可能です。
さらに、監査役設置会社などでは、監査役も一定の場合に取締役会の招集を請求できます。また、招集請求をしても招集権者が適切に対応しない場合には、監査役が自ら取締役会を招集できるケースもあります。
このように、会社法では取締役会を適切な時期に開催できるよう、招集権者だけでなく、一定の場合には他の取締役や監査役にも招集を求める権限や自ら招集する権限を認めています。
会社法では、取締役会の議長を誰が務めるかについての定めはありません。そのため、会社ごとに定款や取締役会規則などで議長を定めることが一般的です。実務では、代表取締役や取締役社長が議長を務めるケースが多く見られます。ただし、会社の機関設計や運営方針によっては、会長や他の取締役が議長を務めることもあります。
また、あらかじめ議長が定められていない場合は、その都度、出席した取締役の中から議長を選任して会議を進めることも可能です。 議長は、取締役会の議事を円滑に進行する役割を担います。具体的には、議題に沿って審議を進める他、出席者へ発言を促し、議論を整理した上で採決を行います。
ただし、議長であっても一人で意思決定を行う権限があるわけではなく、会社法や定款で定められた決議要件に従い、取締役会全体で意思決定を行います。なお、取締役会議事録には、議長を定めた場合はその氏名を記載する必要があります。
取締役会の決議は、議決に参加できる取締役の過半数が出席し、その出席した取締役の過半数の賛成によって成立することが原則です。
例えば、議決権を有する取締役が6名いる場合は、まず3名を超える4名以上が出席しなければ取締役会を開くことはできません。その上で、4名が出席した場合は3名以上、6名全員が出席した場合は4名以上の賛成があれば決議は成立します。
なお、会社法では、決議についてより厳しい要件を定款で定めることも認められています。そのため、決議に必要な人数を判断する際は、議決権を有する取締役が何名いるのかを確認することが重要です。
取締役会は、株主総会で示された意見や議決結果、IR活動などを通じて寄せられた株主の意見を踏まえ、経営方針や事業運営の改善につなげる役割を担います。
例えば、株主総会では、取締役の選任・解任や役員報酬などの重要事項が決議される他、株主から経営に関する質問や要望が示されることがあります。取締役会は、こうした意見や決議結果を真摯に受け止め、今後の経営判断へ反映することが重要です。
また、特に上場会社では、機関投資家などとの建設的な対話(エンゲージメント)を通じて、経営戦略や資本政策、ガバナンスに関する意見を把握し、企業価値の向上につなげることが求められています。こうした株主との対話を継続することで、外部の視点から経営上の課題や改善点を把握しやすくなります。
さらに、取締役会は、株主からの意見を参考にしながらも、短期的な利益だけでなく中長期的な企業価値の向上を見据えた経営判断を行うことが重要です。透明性の高い情報開示と継続的な対話を通じて株主との信頼関係を築くことが、持続的な成長につながります。
原則として、取締役会へ代理人(委任状)を出席させることはできません。
取締役会では、会社の重要事項について取締役同士が議論を行い、その場で意見交換をしながら意思決定を行います。そのため、取締役の職務は本人が直接行うべきものであり、他の人へ委任することは認められていません。
例えば、病気や出張などの理由で取締役本人が出席できない場合でも、部長や他の役員が代理人として出席し、本人に代わって議決権を行使できません。ただし、取締役の一部が欠席しても、会社法で定められた定足数と決議要件を満たしていれば、取締役会を開催し、有効に決議することは可能です。
また、取締役同士が互いに意思疎通できる環境が整っていれば、ウェブ会議システムなどを利用したオンライン参加も認められています。そのため、代理人を出席させることはできませんが、状況に応じてオンライン開催を利用したり、欠席者を除いた出席者で適法に取締役会を開催することが可能です。
会社法では、原則として取締役会開催日の1週間前までに、各取締役および監査役へ招集通知を発することとされています。ただし、定款で別の期間を定めている場合は、その定めに従います。
また、取締役および監査役全員の同意がある場合には、この招集手続きを省略して取締役会を開催できます。そのため、緊急の資金調達や災害への対応、重要な契約の締結など、迅速な意思決定が必要な場合でも、法令に沿って柔軟に取締役会を開催することが可能です。
なお、招集手続きを省略した場合でも、取締役会の決議要件や議事録の作成・保存義務などは通常の取締役会と同様に適用されます。そのため、緊急時であっても、会社法に定められた手続きを適切に行うことが重要です。
取締役会の基本的な役割は共通していますが、運営方法や重視されるポイントは国や地域によって異なります。
例えば、アメリカでは取締役会の監督機能を重視しており、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場規則では、取締役の過半数を独立社外取締役とすることが求められています。また、CEO(最高経営責任者)と取締役会議長を別の人物が務めることで、経営陣に対する監督機能を強化する企業も多く見られます。
ヨーロッパでは国によって制度が異なります。例えばドイツでは、経営を監督する「監査役会」と業務執行を担う「取締役会」を分ける二層制を採用しています。一方、イギリスやフランスでは日本と同様の一層制が主流ですが、環境・社会・ガバナンス(ESG)やサステナビリティを重視した経営が取締役会の重要な役割となっています。
アジアでは創業家が経営に大きな影響力を持つ企業が多く、迅速な意思決定が行われる一方で、ガバナンスの透明性が課題となるケースもあります。日本でも従来は社内出身の取締役が中心でしたが、近年はコーポレートガバナンス・コードの普及を背景に、社外取締役の選任や取締役会の独立性・透明性を高める取り組みが進められています。
このように、国ごとに制度や運営方法は異なりますが、企業価値の向上や適切な経営監督を実現するという取締役会の役割は共通しています。
取締役会とは、会社の経営戦略や重要な意思決定を行うための重要な機関です。特に、設置義務や運営方法については会社法に基づいて正確に理解し、実施することが求められます。株主総会や役員会との違いをしっかりと把握し、適切な運営を行うことが企業の成長に繋がります。
もし、取締役会の設置や運営に関する具体的な疑問や課題がある場合は、法律の専門家や経営コンサルタントに相談することをお勧めします。また、オンライン開催やみなし決議など新しい方法を取り入れることで、効率的な運営を実現することも可能です。
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