配当還元方式とは?計算方法と適用要件をわかりやすく解説

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配当還元方式とは、非上場株式の相続税・贈与税評価に用いられる評価方法の一つで、株式から得られる配当金を基準に株価を算定します。適用対象となる株主が限定されているため、仕組みを正しく理解することが重要です。 

本記事では、配当還元方式の概要や適用要件、原則的評価方式との違い、評価方法が決まる流れをわかりやすく解説します。また、計算方法や具体例、計算時の注意点についても詳しく紹介します。さらに、メリット・デメリットや事業承継での活用例、利用時の注意点、よくある疑問まで幅広く解説します。

配当還元方式を正しく理解し、非上場株式の評価や円滑な事業承継に役立てましょう。 

配当還元方式とは

配当還元方式とは、非上場株式を相続や贈与によって受け取る際の株式の評価手法の一つです。上場株式とは異なり、非上場株式は市場価値が不明であり、個別で算定する必要があります。特に、少数株主が保有する非上場株式の評価に用いられるのが「配当還元方式」です。

ここでは、配当還元方式に関する基本的な知識について紹介します。 

配当還元方式の定義 

配当還元方式とは、株式から継続的に得られる通常配当を基準として株式の価額を算定する方法で、財産評価基本通達に基づいて評価を行います。 

配当還元方式では、会社の資産や利益を直接評価するのではなく、年間の通常配当額を一定の還元率(10%)で資本還元して株式価値を求めます。そのため、会社の企業価値よりも、少数株主が期待できる配当収益に着目した評価方法といえます。 

ただし、全ての非上場株式に適用できるわけではありません。相続や贈与で株式を取得した人の株主区分など一定の要件を満たす場合に適用されるため、評価方法は取得者ごとに異なることがあります。配当還元方式が適用される要件については、後ほど詳しく解説します。 

配当還元法との違い 

配当還元法と配当還元方式は名称が似ていますが、意味や利用目的は異なります。配当還元法とは、将来受け取る配当金を基に株式価値を評価する考え方や評価手法の総称です。企業価値評価や投資判断、M&Aなどで用いられることがあり、実績配当還元法やゴードン・モデルなど、複数の評価手法が含まれます。 

一方、配当還元方式は、国税庁が定める財産評価基本通達に基づき、非上場株式の相続税・贈与税評価で用いられる税務上の評価方法です。適用対象や計算方法が定められており、企業価値を算定する一般的な配当還元法とは目的が異なります。 

つまり、配当還元法は配当を基に株式価値を評価する考え方全体を指し、配当還元方式はそのうち税務評価で用いられる具体的な評価方法と理解すると分かりやすいでしょう。 

配当還元方式が用いられる場面 

配当還元方式は、相続税や贈与税において取引相場のない非上場株式を評価する際に、一定の少数株主等が取得した株式に適用される評価方法です。少数株主は、経営への支配力よりも配当を受け取ることを目的に株式を保有していると考えられるため、会社の純資産や収益力ではなく、通常配当を基準として評価を行います。 

一方で、経営に影響力を持つ同族株主等が取得する株式は、原則として会社の資産や収益力などを反映する「原則的評価方式」で評価されます。そのため、同じ会社の株式であっても、取得者の区分によって適用される評価方法が異なります。 

なお、配当還元方式は株式の売買価格や企業価値を算定するための方法ではありません。あくまで相続税・贈与税における非上場株式の税務評価を目的とした制度であり、実際の取引価格とは一致しない場合があります。 

参考:国税庁「取引相場のない株式の評価」

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    配当還元方式の計算方法 

    配当還元方式では、財産評価基本通達で定められた計算式に基づいて株式価額を算定します。評価の基礎となるものは、直前期末以前2年間の通常配当金額から算定した1株当たりの年配当金額です。特別配当や記念配当など、一時的な事情によって支払われた配当は、原則として年配当金額には含めません。 

    また、1株当たりの資本金等の額が50円以外の場合は所定の補正を行います。さらに、年配当金額が1株当たり2円50銭未満の場合や無配の場合には、財産評価基本通達に定められた取り扱いを適用して株式価額を算定します。 

    配当還元方式の計算式

    配当還元方式では、直前期末以前2年間の通常配当金額を基に1株当たりの年配当金額を算定し、その金額を10%の還元率で資本還元して株式価額を求めます。 

    例えば、直前期末以前2年間の通常配当金額が1株当たり18円と22円で、1株当たりの資本金等の額が50円である場合を考えてみましょう。この場合、1株当たりの年配当金額は、2年間の通常配当金額の平均である20円となります。

    (18円+22円)÷2=20円

    次に、この年配当金額を10%の還元率で資本還元すると、次のように計算できます。 

    20円 ÷ 10% = 200円 

    この例では、1株当たりの資本金等の額が50円であるため、補正は不要です。そのため、配当還元価額は1株当たり200円です。

    配当がゼロの場合 

    配当還元方式では、年配当金額が1株当たり2円50銭未満の場合や無配の場合であっても、実際の配当額ではなく、年配当金額を1株当たり2円50銭として計算します。例えば、1株当たりの資本金等の額が50円であれば、2円50銭を10%で還元して配当還元価額を算定します。

    また、1株当たりの資本金等の額が50円以外の場合は、財産評価基本通達に基づき所定の補正を行います。このように、無配会社であっても、実際の配当額をそのまま用いるわけではありません。財産評価基本通達で定められた取り扱いに従って評価額を算定することが重要です。 

    期末配当以外に定期的な配当がある場合 

    配当還元方式では、期末配当だけではなく、中間配当など継続的に支払われる通常配当も年配当金額に含めて計算します。そのため、年2回以上の通常配当を実施している会社では、直前期末以前2年間に支払われた通常配当を合算した上で、年配当金額を算定します。 

    一方、特別配当や記念配当など、一時的な事情によって支払われた配当は、原則として年配当金額には含めません。配当還元方式では、継続性のある通常配当を基に評価するためです。年配当金額は株式価額の算定基礎となるため、通常配当と臨時的な配当を区別し、対象となる配当を漏れなく把握することが重要です。 

    事業年度が1年ではない場合 

    会社法では、事業年度は1年以内と定められているため、10か月や11か月など、1年未満の事業年度を採用している会社もあります。このような会社では、事業年度の長さに応じて年配当金額を1年当たりの金額へ換算した上で配当還元価額を算定します。 

    例えば、10か月決算の会社であれば、10か月分の通常配当を12か月分へ換算し、その金額を基に1株当たりの年配当金額を求めます。 

    事業年度の長さを考慮せずに配当額をそのまま使用すると、実際の配当水準を適切に反映できず、評価額に影響する可能性があります。そのため、事業年度が1年ではない会社では、財産評価基本通達に従って年換算を行い、年配当金額を算定することが重要です。 

    配当還元方式の計算時の注意点

    配当還元方式の計算をする際には次の点に注意する必要があります。 

    • 特別配当・記念配当を除外する 
    • 中間配当を含めて計算する 
    • 対象となる事業年度を確認する 
    • 特例の適用漏れに注意する 

    それぞれについて詳細に説明します。 

    特別配当・記念配当を除外する 

    配当還元方式では、継続的に支払われる通常配当を基に年配当金額を算定します。そのため、特別配当や記念配当など、一時的な事情によって支払われた配当が含まれていないかを確認することが重要です。 

    例えば、創立記念や周年記念、特別利益の発生などを理由として支払われた配当は、通常配当とは性質が異なるため、原則として年配当金額には含めません。年間配当額を算定する際は、配当通知書や株主総会議事録などを確認し、通常配当と臨時的な配当を適切に区別することが大切です。 

    中間配当を含めて計算する 

    年配当金額を算定する際は、評価対象となる通常配当を漏れなく確認する必要があります。例えば、期末配当だけではなく、中間配当を実施している会社では、それらを含めた通常配当全体を基に年配当金額を算定します。

    対象となる配当を見落とすと、年配当金額を正しく算定できず、評価額にも影響する可能性があります。評価前には、配当の支払時期や内容を確認し、対象となる通常配当が漏れなく反映されていることを確認しましょう。 

    対象となる事業年度を確認する 

    配当還元方式では、評価時点に応じて対象となる事業年度を確認することも重要です。特に、決算期を変更している会社や、1年未満の事業年度がある会社では、対象となる配当期間や年配当金額の算定方法が通常とは異なる場合があります。 

    評価額を適切に算定するためには、決算書や株主総会資料などで対象期間を確認し、財産評価基本通達に従って年配当金額を算定することが大切です。 

    特例の適用漏れに注意する 

    配当還元方式では、通常の計算方法だけではなく、特例が適用される場合があります。例えば、1株当たりの年配当金額が2円50銭未満の場合や無配の場合には、年配当金額を1株当たり2円50銭として計算した上で、財産評価基本通達に定められた方法により配当還元価額を算定します。

    また、1株当たりの資本金等の額が50円以外である場合には、所定の補正も必要です。これらの取り扱いを見落とすと、評価額を誤って算定する恐れがあります。配当実績だけで判断するのではなく、適用される特例や補正の有無も併せて確認した上で計算することが重要です。 

    配当還元方式の要件

    配当還元方式が適用されるかどうかは、同族株主がいるか、どれだけ議決権を持っているかによって異なります。簡単にまとめると以下の表とおりです。

    保有する株式の会社区分配当還元方式の適用要件
    会社に同族株主がいる会社・同族株主以外の株主
    ・取得後の議決権割合が5%未満で、他に中心的な同族株主がおり、自身が役員ではない株主
    会社に同族株主がいない会社・議決権割合の合計が15%未満のグループの株主
    ・取得後の議決権割合が5%未満で、他に中心的な株主がおり、自身が役員ではない株主

    配当還元方式の適用要件に該当するかどうかの判定基準として以下の3点がポイントになります。

    • 同族株主の有無
    • 中心的な同族株主の有無
    • 中心的な株主の有無

    それぞれのポイントについて、わかりやすく解説します。

    同族株主の有無

    配当還元方式の適用要件の1つは、同族株主以外の株主であることです。

    同族株主とは、課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人とその同族関係者が保有する議決権の合計が、原則として会社の議決権総数の30%以上となる株主グループに属する株主をいいます。ただし、議決権割合が最も多い株主グループの保有割合が50%を超える場合には、その50%を超えるグループに属する株主が同族株主となり、50%以下のグループは同族株主にはなりません。

    同族株主の判定は、株式を相続または贈与で取得した人だけを基準にするのではなく、評価会社の株主全体を確認して行います。同族関係者には、配偶者や一定範囲の親族などが含まれるため、本人が保有する議決権だけではなく、同族関係者を含めたグループ全体の議決権割合を確認する必要があります。 

    会社に同族株主がいる場合、同族株主以外の株主には「配当還元方式」が適用され、同族株主には「原則的評価方式」が適用されます。ただし、同族株主グループに属していても、株式取得後の議決権割合が5%未満で、中心的な同族株主ではなく、役員または法定申告期限までに役員となる者でもない場合などには、配当還元方式が適用される可能性があります。 

    参考:国税庁「同族株主の判定」

    中心的な同族株主の有無 

    同族株主であっても中心的な同族株主が他にいる場合、配当還元方式が適用されるケースがあります。中心的な同族株主とは、同族株主のいる会社において、同族株主の中でも特に大きな議決権を持つ株主をいいます。 

    具体的は、株主本人の他、その配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の姻族などが保有する議決権を合計し、その割合が会社の議決権総数の25%以上となる株主をいいます。本人単独の議決権割合が25%未満であっても、一定範囲の親族が保有する議決権を合わせることで、中心的な同族株主に該当する場合があります。

    中心的な同族株主に該当する人が取得した株式は、原則的評価方式で評価されます。また、中心的な同族株主の配偶者や、一定の要件を満たす役員についても配当還元方式の対象外です。一方、同族株主グループに属していても、取得後の議決権割合が5%未満で、中心的な同族株主や役員でない場合は配当還元方式が適用される場合があります。

    中心的な株主の有無

    中心的な株主の有無も、配当還元方式の要件に該当するかどうかのポイントになります。

    中心的な株主とは、同族株主のいない会社において、会社の経営に一定の影響を及ぼす議決権を持つ株主をいいます。具体的には、株主の1人とその同族関係者が保有する議決権の合計が会社の議決権総数の15%以上となる株主グループのうち、単独で議決権総数の10%以上を保有する株主です。

    同族株主のいない会社では、まず取得者が属する株主グループの議決権割合が15%未満かどうかを確認します。15%未満であれば、配当還元方式の対象となります。15%以上のグループに属する場合でも、その会社に中心的な株主がおり、取得者の株式取得後の議決権割合が5%未満で、役員または法定申告期限までに役員となる者でなければ、配当還元方式が適用される場合があります。 

    このように、中心的な株主は、主に同族株主のいない会社で配当還元方式の適用可否を判断する際に用いられる株主区分です。 

    配当還元方式と他の評価方法の違い

    非上場株式の評価方法は配当還元方式だけではありません。ここでは、他の評価手法との違いについてわかりやすく解説します。

    非上場株式の評価方法として以下の手法があります。

    • 原則的評価方式 
    • 類似業種比準方式 
    • 純資産価額方式 

    それぞれの方法についてわかりやすく説明します。 

    原則的評価方式 

    原則的評価方式とは、非上場株式の価値を会社の実態に基づいて評価する方法です。会社の規模や事業内容、資産・負債、利益水準などを反映して株式価値を算定するため、会社の経済的価値を比較的幅広く評価できる点が特徴です。 

    取得者が経営に影響を及ぼす立場にある場合は、株式の価値は配当だけでなく会社全体の資産価値や収益力にも及ぶと考えられるため、原則として原則的評価方式が適用されます。なお、原則的評価方式には「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があり、会社規模などに応じて評価方法を決定します。 

    参考:国税庁「取引相場のない株式の評価」

    類似業種比準方式 

    類似業種比準方式とは、評価対象会社と事業内容が類似する上場会社の株価や経営指標を基に、非上場株式の価額を評価する方法です。 

    国税庁が公表する類似業種のデータを基に、1株当たりの「配当金額」「利益金額」「純資産価額」の3つの要素を比較し、所定の算式によって株式価額を算定します。類似業種の上場会社の株価や経営指標を参考に評価するため、会社の収益力や財務状況を評価額へ反映しやすい点が特徴です。 

    一方で、類似業種の株価や評価対象会社の業績、国税庁が定める業種区分などによって評価額が変動することがあります。 

    参考:国税庁「令和8年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)」

    純資産価額方式 

    純資産価額方式とは、会社が保有する資産と負債を相続税評価額などに置き換え、純資産額から株式価値を算定する方法です。土地や有価証券などを時価ベースで評価し直すため、会社が保有する資産価値を株価へ反映しやすい点が特徴です。 

    資産保有型会社や利益水準だけでは企業価値を適切に表せない会社では、純資産価額方式による評価が重要です。 

    参考:国税庁「財産評価|純資産価額」

    配当還元方式が適用されるまでの流れ

    配当還元方式が適用されるまでの流れは次の通りです。 

    1. 評価対象となる株主を確認する 
    1. 原則的評価方式では会社規模も判定する 
    1. 判定結果に応じて評価方法が決まる 

    それぞれについて詳細に説明します。 

    1.評価対象となる株主を確認する 

    配当還元方式を適用する際は、まず株式を取得した人がどの株主区分に該当するのかを確認します。非上場株式の評価方法は、会社そのものだけではなく、取得者の立場によっても異なるためです。 

    まず、評価会社に同族株主がいる会社か、同族株主がいない会社かを確認します。その上で、取得者が属する株主グループや議決権割合などを判定し、評価方法を決定するための基礎となる株主区分を整理します。 

    この判定では、取得者本人が保有する議決権だけではなく、配偶者や一定範囲の親族、関係法人などの同族関係者が保有する議決権も考慮します。そのため、本人だけを見ると少数株主に見えても、株主グループ全体では大きな議決権割合を保有しているケースがあります。 

    このように、非上場株式は「一物二価」といわれることがあり、同じ会社が発行した同じ株式であっても、取得者の株主区分によって適用される評価方法や評価額が異なる場合があります。そのため、配当還元方式を適用できるかどうかは、取得者本人の持株割合だけで判断するのではなく、株主区分や議決権割合などを正確に判定した上で、次の評価手順へ進むことが重要です。 

    2.原則的評価方式では会社規模も判定する 

    株主区分の判定により原則的評価方式を適用する場合は、次に評価会社の規模を判定します。会社規模は、類似業種比準方式と純資産価額方式のどの評価方法を適用するかを決めるための重要な基準です。 

    会社規模は、課税時期直前期の従業員数、総資産価額、取引金額などを基に判定します。判定基準は業種によって異なり、会社は大会社、中会社、小会社に区分されます。例えば、直前期末以前1年間の従業員数が70人以上であれば、原則として大会社に区分されます。70人未満の場合は、総資産価額や取引金額など、財産評価基本通達で定められた基準に従って会社規模を判定します。 

    会社規模が決まると、大会社は原則として類似業種比準方式、小会社は原則として純資産価額方式、中会社は両者を一定割合で組み合わせる方法によって評価します。また、株式等保有特定会社や土地保有特定会社など、特定の評価会社に該当する場合は、別途定められた評価方法を適用します。 

    なお、配当還元方式を適用する場合は会社規模を判定する必要はなく、通常配当を基に株式価額を算定します。 

    参考:国税庁「取引相場のない株式の評価上の区分」

    3.判定結果に応じて評価方法が決まる 

    株主区分や少数株式所有者への該当性、会社規模などの判定が終わると、その結果に応じて適用する評価方法が決まります。 

    配当還元方式の対象となる場合は、会社の資産価値や利益水準ではなく、通常配当を基に株式価額を算定します。一方、原則的評価方式の対象となる場合は、会社規模や特定の評価会社への該当性に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、または両者を組み合わせた方法で評価します。 

    非上場株式の評価では、配当還元方式と原則的評価方式のどちらかを自由に選択できるわけではありません。財産評価基本通達に基づいて取得者の株主区分を判定し、その結果に応じた評価方法を適用する必要があります。 

    評価方法を誤ると、株式の評価額だけでなく、相続税や贈与税の税額にも影響します。株主構成が複雑な会社や親族・関係法人が株式を保有している会社では判定が難しくなることもあるため、株主名簿や議決権の状況を確認しながら、適切な評価方法を選択することが重要です。 

    配当還元方式のメリット

    配当還元方式には次のメリットがあります。 

    • 評価額を抑えられる場合がある 
    • 計算が比較的簡単 
    • 評価額を予測しやすい 
    • 会社の業績や資産価値の影響を受けにくい 

    それぞれについて詳細に説明します。 

    評価額を抑えられる場合がある 

    配当還元方式のメリットは、一定の要件を満たす場合、原則的評価方式よりも評価額が低くなる可能性があることです。配当還元方式では、会社の純資産や利益ではなく通常配当を基に株式価額を算定するため、配当を抑えている会社では評価額が低くなるケースがあります。 

    評価額が低くなることで、相続税や贈与税の課税価格を抑えられる可能性があります。特に、内部留保を積み上げている一方で配当を抑えている会社では、原則的評価方式との評価額に差が生じることがあります。 

    ただし、配当還元方式は一定の取得者にのみ適用される評価方法です。評価額だけで有利・不利を判断するのではなく、取得者が適用要件を満たしているかを確認することが重要です。 

    計算が比較的簡単 

    配当還元方式は、年配当金額と財産評価基本通達で定められた計算式に基づいて株式価額を算定するため、原則的評価方式と比べると計算方法が比較的シンプルです。 原則的評価方式では、取得者の株主区分を判定した上で、さらに会社規模を判定し、類似業種比準方式や純資産価額方式などを使い分ける必要があります。

    一方、配当還元方式では、適用要件を満たす場合、通常配当を基に一定の計算式で評価額を算定します。ただし、計算式自体は比較的分かりやすいものの、取得者の株主区分や議決権割合の判定は専門的な知識が必要です。そのため、適用要件を十分に確認した上で評価を行うことが重要です。 

    評価額を予測しやすい 

    配当還元方式では、評価額の算定基準となる年配当金額や還元率が定められているため、おおよその評価額を事前に把握しやすいこともメリットです。例えば、配当方針が大きく変わらない会社であれば、過去の通常配当を基に概算の評価額を試算できます。

    相続や贈与を予定している場合でも、評価額の目安を把握しながら準備を進めやすい点が特徴です。ただし、配当方針の変更や取得者の区分によって適用される評価方法が変わる場合もあるため、実際の評価では最新の状況を確認する必要があります。 

    会社の業績や資産価値の影響を受けにくい 

    配当還元方式では、評価額は通常配当を基に算定されるため、会社の利益や純資産が増加した場合でも、それだけで評価額が大きく変動するとは限りません。

    例えば、利益を内部留保として積み上げたり、不動産などの含み益が増加したりしても、通常配当が大きく変わらなければ、配当還元価額への影響は限定的です。一方、原則的評価方式では、会社の利益や純資産価額の増減が評価額に反映されるため、業績や資産価値の変化によって株式価額が変動することがあります。

    ただし、配当還元方式を適用できるかどうかは、取得者の区分など財産評価基本通達で定められた要件によって判断されます。会社の状況だけで評価方法を選択できるわけではない点に注意が必要です。 

    配当還元方式のデメリット 

    反対に、配当還元方式には次のデメリットがあります。 

    • 適用対象となる取得者が限られる 
    • 配当政策によって評価額が左右される 

    それぞれについて詳細に説明します。 

    適用対象となる取得者が限られる 

    配当還元方式のデメリットは、適用対象となる取得者が限定されていることです。非上場株式の評価方法の一つですが、全ての取得者に適用できるわけではありません。相続税・贈与税の評価では、取得者の議決権割合や同族関係などを基に判定が行われ、一定の要件を満たす場合に配当還元方式が適用されます。 

    そのため、同じ会社の株式であっても、取得者の区分によっては配当還元方式ではなく、原則的評価方式によって評価される場合があります。配当還元方式の方が評価額を低く抑えられる可能性があるケースでも、適用要件を満たさなければ利用できません。 

    また、取得者本人だけではなく、同族関係者の保有状況や議決権割合なども判定要素となります。そのため、株式の保有割合だけで適用可否を判断できません。相続や贈与を検討する際は、取得者の区分や株主構成を確認し、どの評価方法が適用されるのかを事前に確認しておくことが重要です。 

    配当政策によって評価額が左右される 

    配当還元方式のデメリットは、会社の配当政策によって株式の評価額が左右されることです。評価額は年配当金額を基に算定されるため、通常配当を増額すれば評価額が高くなる可能性があり、反対に配当を減額した場合や無配となった場合は、財産評価基本通達に定められた取り扱いを踏まえて評価額が算定されます。 

     一方で、配当政策は税務上の評価だけで決まるものではありません。会社の資金繰りや設備投資、将来の事業計画、株主への利益還元方針など、さまざまな経営判断を踏まえて決定されます。そのため、配当方針が変更されれば、配当還元方式による評価額にも影響が生じる可能性があります。 

    また、会社の利益や資産価値が大きく増加していても、通常配当が大きく変わらなければ配当還元価額への影響は限定的となる場合があります。そのため、配当還元方式による評価額だけを見て会社全体の価値を判断するのではなく、会社の財務状況や配当方針もあわせて確認することが大切です。 

    配当還元方式が活用される事業承継の例

    次に、配当還元方式を使った事業継承の例を紹介します。 

    従業員持株会の活用 

    事業承継では、従業員持株会を活用して従業員へ自社株を保有してもらうケースがあります。取得者が同族株主以外の少数株主等に該当する場合は、配当還元方式によって株式を評価できる可能性があります。 

    従業員持株会は、従業員の経営参加意識や企業への帰属意識を高めるだけではなく、創業者から従業員へ段階的に株式を移転する仕組みとして活用されることがあります。一方で、配当還元方式を適用できるかどうかは、持株比率だけで判断されるものではありません。取得者本人だけではなく、親族や同族関係者を含めた議決権割合なども踏まえて判定されます。 

    また、制度を導入する際は、株式を取得する場面だけではなく、退職時の株式の買戻しや将来の株式集約についてもあらかじめ検討しておくことが重要です。事業承継では、評価額だけでなく、承継後の株主構成や経営権の維持まで含めて制度を設計する必要があります。 

    役員持株会の活用 

    役員持株会も、事業承継において活用されることがあります。後継者候補や同族関係のない役員が自社株を取得し、一定の少数株主等に該当する場合には、配当還元方式が適用される可能性があります。 

    一方で、役員であれば誰でも配当還元方式を適用できるわけではありません。創業家の親族である場合や、取得後の議決権割合などから一定の株主区分に該当する場合には、原則的評価方式によって評価されます。そのため、役職だけではなく、取得者の区分を財産評価基本通達に基づいて判断することが重要です。 

    また、役員へ株式を付与する場合は、将来的な退任時の株式の取り扱いも重要になります。退任後に誰が株式を買い戻すのか、どのような条件で株式を集約するのかといった点まで含めて制度を設計することで、円滑な事業承継や将来の株主構成の維持につながります。 

    配当還元方式を利用するときの注意点

    配当還元方式を利用するときの注意点として次が挙げられます。 

    • 配当還元方式を目的とした株主構成の変更 
    • 特殊な株式や法人を利用した節税 
    • 実態に沿った事業承継を行う 

    それぞれについて詳しく説明します。 

    配当還元方式を目的とした株主構成の変更 

    配当還元方式を適用することだけを目的として、株主構成や議決権割合を形式的に変更することは避けるべきです。配当還元方式が適用されるかどうかは、取得者本人の持株比率だけでなく、同族関係者を含む株主グループの議決権割合や役員就任の状況などを踏まえて判定されます。 

    例えば、実質的な経営支配の状況を変えないまま、一時的に株式を移転して同族株主等の判定だけを変えたり、相続の前後で株式を移動させることをあらかじめ計画したりする設計には注意が必要です。形式上は配当還元方式の要件を満たしているように見えても、実態として支配関係が維持されている場合には、想定した評価方法がそのまま認められるとは限りません。 

    財産評価基本通達6項では、通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産について、国税庁長官の指示を受けて評価すると定められています。そのため、税負担を軽減するためだけに株主区分を形式的に変更したと判断される場合には、配当還元方式による評価が見直される可能性があります。 

    株主構成を変更する際は、配当還元方式の適用だけを目的とするのではなく、経営権の承継、後継者の議決権、将来の株式集約など、事業上の必要性を明確にすることが重要です。 

    特殊な株式や法人を利用した節税 

    配当還元方式の適用を意識して、属人的株式や種類株式、一般社団法人などを利用する場合は、慎重な検討が必要です。これらの仕組みは会社法などの要件を満たして設計できる場合がありますが、形式上適法であることと、相続税・贈与税の評価がそのまま認められることは別の問題です。 

    例えば、特定の株式だけに議決権や剰余金の配当、残余財産の分配に関する権利を極端に集中させ、他の株式を実質的に経営へ関与できない状態にする設計が考えられます。また、議決権のある株式を一般社団法人などへ移転し、残る株主を形式的に同族株主以外の株主にする方法も想定されます。 

    しかし、実質的な支配関係や議決権行使の状況が従来と変わっていない場合には、形式上の株主名義や株式の種類だけで評価方法を判断できない可能性があります。法人を複数設立して株式を分散していても、継続して同一の議決権行使をしているなど、実態として一体の株主グループとみられる事情があれば、当初の想定とは異なる判定になることも考えられます。 

    また、株式に付与された権利が極端で、財産評価基本通達に定められた通常の方法では適正な価値を算定することが難しい場合には、通達6項による評価が問題となる可能性があります。特定の法人や種類株式を利用すれば必ず配当還元方式を適用できるわけではないため、法的な形式だけでなく、事業上の必要性や経済的な合理性を確認することが重要です。 

    実態に沿った事業承継を行う 

    配当還元方式を利用するときは、評価額を抑えることだけを目的とせず、会社の実態に沿った事業承継を行うことが重要です。事業承継では、株式の税務上の評価だけでなく、後継者への経営権の移転、議決権の確保、承継後の株主構成なども一体として検討する必要があります。 

    例えば、従業員持株会や役員持株会を利用して株式を分散する場合、取得時に配当還元方式が適用されるかどうかだけで判断するものは十分ではありません。従業員や役員が退職・退任した際に、誰が株式を買い戻すのか、どのような価格や期限で買い戻すのかについても決めておく必要があります。 

    出口の設計が不十分なまま株式を分散すると、退職者や元役員が株主として残ったり、後継者が十分な議決権を確保できなくなったりする可能性があります。また、将来会社を売却する際に少数株主から株式を集約する必要が生じ、手続きや資金負担が増えることも考えられます。 

    そのため、配当還元方式は、事業承継を進めるために任意で選択する制度としてではなく、取得者の区分に応じて適用される税務上の評価方法として位置付けることが大切です。株式の評価額だけでなく、経営権の安定、株主間の関係、退職時の買戻し、将来の株式集約まで見据えて、実態に合った承継計画を立てる必要があります。 

    配当還元方式に関するQ&A

    最後に、配当還元方式に関するQ&Aについて説明します。 

    配当還元方式は上場株式にも適用されるか 

    配当還元方式は、原則として上場株式には適用されません。配当還元方式は、相続税・贈与税における取引相場のない非上場株式を評価するための方法であり、同族株主以外の一定の少数株主が取得した株式などに適用されます。 

    一方、上場株式は証券取引所で日々市場価格が形成されているため、相続税・贈与税の評価では市場価格を基準として評価します。そのため、非上場株式のように配当還元方式や原則的評価方式を用いることはありません。 

    なお、「配当還元法」は企業価値評価の理論として上場株式にも用いられる場合がありますが、これは税務上の配当還元方式とは異なる考え方です。両者は名称が似ているものの、目的や適用場面が異なるため、混同しないよう注意しましょう。 

    配当還元方式は赤字企業でも利用できるか 

    配当還元方式は、赤字企業であっても利用できる場合があります。配当還元方式の適用可否は、会社が赤字か黒字かではなく、取得者が同族株主以外の一定の少数株主などの適用要件を満たしているかによって判断されます。 

    また、評価額の算定では会社の利益ではなく年間配当額を基に計算します。そのため、赤字企業でも配当を実施していれば実際の配当額を用いて評価し、無配の場合でも財産評価基本通達に基づき、1株当たりの年配当金額を2円50銭として計算します。 

    ただし、赤字企業だから必ず配当還元方式を利用できるわけではありません。取得者の株主区分や議決権割合などの適用要件を満たすことが前提となるため、会社の業績だけで判断せず、総合的に確認することが重要です。 

    配当還元方式の評価額は毎年変わるか 

    配当還元方式の評価額は、毎年変わる可能性があります。評価額は直前期末以前2年間の通常配当を基に算定されるため、配当金額や評価時点が変われば、年間配当額も変動し、株式の評価額に影響を及ぼします。 

    また、配当政策の変更や事業年度の変更、株式分割株式併合などが行われた場合も、1株当たりの年間配当額が変わるため、前年と同じ評価額になるとは限りません。さらに、取得者の株主区分が変わると、配当還元方式ではなく原則的評価方式が適用される場合もあります。 

    そのため、過去に算定した評価額をそのまま利用できません。相続や贈与を行う際は、その時点の配当実績や株主区分などを基に改めて評価額を算定することが重要です。毎年の決算内容や配当方針も確認しながら、最新の状況に基づいて判断しましょう。 

    配当還元方式が適用されるかはいつ判定されるか 

    配当還元方式が適用されるかどうかは、原則として課税時期の状況を基に判定されます。相続では被相続人が死亡した日、贈与では受贈者が株式を取得した日が課税時期となり、その時点の株主構成や議決権割合などを基に評価方法が決定されます。 

    判定では、取得者が同族株主等に該当するか、それとも同族株主以外の一定の少数株主に該当するかを確認します。取得者本人だけでなく、親族や同族関係者の議決権保有割合も考慮されるため、株主名簿や議決権の状況を正確に把握することが重要です。 

    なお、一定の場合には、課税時期に役員であるかどうかだけでなく、課税時期の翌日から相続税または贈与税の法定申告期限までに役員となる予定であるかどうかも判定要素となります。そのため、配当還元方式を適用できるかどうかは、課税時点の株主構成だけでなく、関連する要件も含めて総合的に判断する必要があります。 

    配当還元方式で出した評価額と実際の売買価格は同じか 

    配当還元方式で算出した評価額と実際の売買価格は、必ずしも同じではありません。配当還元方式による評価額は、相続税や贈与税を公平に課税するための税務上の評価額であり、実際の取引価格を示すものではないためです。 

    一方、実際の売買価格は、当事者間の合意を基本として決まります。会社の資産価値や将来性、支配権の有無、譲渡制限の内容、当事者の関係など、さまざまな要素が価格に影響するため、税務上の評価額とは異なる金額となることがあります。 

    このように、同じ非上場株式であっても、相続・贈与、売買、株式買取請求など評価の目的によって重視される事情は異なります。そのため、配当還元方式で算出した評価額を、そのまま実際の売買価格として用いることは適切ではなく、目的に応じた評価を行うことが重要です。 

    相続と贈与で配当還元方式の計算方法は変わるか 

    相続と贈与で配当還元方式の計算方法が変わることはありません。いずれも財産評価基本通達に基づいて評価されるため、年間配当額や10%の還元率など、基本的な計算方法は共通です。 

    一方で、評価の基準となる時点は異なります。相続では被相続人が死亡した日、贈与では受贈者が株式を取得した日が課税時期となり、その時点の株主区分や配当実績などを基に、配当還元方式を適用できるかどうかを判定します。 

    このように、相続と贈与で異なるものは評価時点や適用要件の判定であり、計算式そのものではありません。そのため、相続か贈与かにかかわらず、課税時期の状況を正確に把握した上で、財産評価基本通達に従って評価額を算定することが重要です。 

    配当還元方式は個人事業主にも関係があるか 

    配当還元方式は、個人事業主に適用される制度ではありません。配当還元方式とは、相続税や贈与税において、取引相場のない非上場株式を取得した際に、取得者が一定の少数株主などの要件を満たす場合に適用される評価方法です。 

    そのため、個人事業主であっても非上場会社の株式を保有しており、相続や贈与によって株式を取得する場面では、配当還元方式が関係する可能性があります。一方、自身の事業を個人事業として営むだけで、法人の株式を保有していない場合は、配当還元方式を利用する機会は基本的にありません。 

    つまり、配当還元方式の適用は「個人事業主かどうか」ではなく、「非上場株式を取得するかどうか」と「取得者が適用要件を満たすかどうか」で決まります。個人事業主でも法人オーナーでも、状況によって適用の有無が判断されます。 

    配当還元方式の算出は税理士へ依頼した方が良いか 

    配当還元方式の計算は自分で行うことも可能ですが、相続や事業承継が関係する場合は税理士へ依頼することをおすすめします。配当還元方式の計算式自体は比較的シンプルであるものの、適用要件や株主区分の判定を誤ると、評価方法そのものが変わる可能性があるためです。 

    特に、同族株主や中心的な株主の判定、議決権割合の確認、配当実績の取り扱いなどは専門的な知識が必要です。また、会社規模や他の評価方式との比較が必要になるケースでは、総合的な判断が求められます。 

    相続税や贈与税の申告では、評価額の誤りが税額や税務調査に影響する恐れもあります。そのため、配当還元方式を適用するか迷う場合や、評価額に不安がある場合は、税理士へ相談し、適切な評価方法を選択することが安心につながります。 

    まとめ

    配当還元方式は、非上場株式の評価方法の一つであり、過去の配当金をもとに1株当たりの価値を算定します。本記事では、基本的な計算方法、注意点、適用要件について解説しました。配当還元方式の適用可否は、株式の保有割合や他の株主の状況によって異なります。

    実際の判定では専門的な確認が必要になる場面も少なくありません。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。あわせて、国税庁が公表している「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」も活用すると、評価の進め方を確認しやすくなります。

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