個人保証とは?メリットとデメリット、ガイドラインや外す方法を解説

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個人保証とは、会社や事業者が負った借入金などの返済義務を、代表者などの個人が会社に代わって返済する責任を負うことです。すでに個人保証を背負って会社を経営しているオーナーにとっては、「なんとか個人保証を解除できないか」「事業承継M&Aをする場合、債務の扱いはどうなるのか」など不安は尽きないものです。

本記事では、個人保証の基本的な仕組みからメリット・デメリット、経営者保証ガイドラインの活用法、個人保証を外すためにできりること、そして事業承継・M&A時の扱いまでを体系的に解説します。これから資金調達を行う方も、将来の出口を見据える方も、安心して経営に集中するための必須知識が得られる内容です。

個人保証の基本的な仕組み

まずは個人保証がどのような契約であり、なぜ中小企業融資で広く使われてきたのかを整理します。

個人保証とは

個人保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、債務者である企業ではなく経営者などの個人が返済義務を保証する仕組みです。中小企業向け融資では経営者本人が保証人となる「経営者保証」が代表的で、場合によっては家族や親族が保証人を担うケースもあります。

なぜこの仕組みが広まったかというと、日本の中小企業では個人資産と会社資産が明確に分離されておらず、ほぼ一体となって経営が行われることが多いためです。自己資本や担保が不足し、決算書の信頼性が不確かなケースも少なくありません。

そのため金融機関は、企業単体の与信力が不足する分を経営者個人が補う「信用補完」を求めてきました。個人保証は日本独自の商慣行として中小企業金融に深く根付いているのが実情です。

保証契約の法的な定義

個人保証は、民法第446条に定められた「保証契約」に該当します。これは、主たる債務者がその債務を履行しないときに、保証人が代わりに履行する責任を負う契約です。

保証契約は非常に大きな責任を伴うため、原則として書面または電磁的記録での契約が必要とされ、口頭の約束は無効となります。2020年4月施行の改正民法では、個人が保証人となる際に「自らの意思で保証する」ことを明示した保証意思確認書面の作成が義務づけられました。

また個人保証は不動産などのモノを担保とする物的担保と異なり、経営者個人の資産全体を引き当てとする「人的担保」に分類されます。物的担保であれば、仮に5億円の債務に対して担保価値が1億円の場合、責任の範囲は1億円にとどまり、差額の4億円を請求されることはありません。しかし、人的担保である個人保証は「経営者個人の資産全体」が引き当てとなるため、原則として残債の全額を支払う義務が生じます。

個人保証は連帯保証が基本

実務における融資取引の個人保証は、そのほとんどが通常の保証よりも制約の強い「連帯保証」です。連帯保証人は借入企業と連帯して債務を負担するため、企業の返済が滞ると同時に金融機関から直接請求を受けます。

一般の保証人に認められる権利が、連帯保証では排除される点も見逃せません。具体的には以下の3つの権利が使えなくなります。

  • 催告の抗弁 :まず本来の債務者へ請求するよう求める権利
  • 検索の抗弁 :本来の債務者の資産から先に取り立てるよう求める権利
  • 分別の利益 :保証人が複数いる場合に人数分に分割した額のみを負担すると主張する権利

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    個人保証のメリット

    デメリットが強調されがちな個人保証ですが、企業側にとっての利点も確かに存在します。

    会社の信用力向上

    中小企業は大企業と比べて企業単体の信用力が低く評価されやすく、会計監査を受けていない場合は決算書の信頼性も不確かと見られがちです。こうした状況で経営者が個人保証を提供すると、経営者個人の資産状況や実績が加わり、企業全体の信用力を総合的に高められます。

    たとえば設立から日が浅く実績が乏しい会社でも、経営者が個人保証を差し入れることで「経営者本人が事業に責任を持つ」という姿勢を示せます。この姿勢が金融機関の評価につながることは少なくありません。

    つまり個人保証は、企業の信用不足を経営者の信用で補完する役割を果たしているのです。

    融資審査への好影響

    金融機関にとってリスクが高く審査が厳しくなる場面でも、経営者の個人保証が加わることで貸し倒れリスクを抑えられると判断され、融資が実行される場合があります。経営成績が芳しくない時期や設立直後などが典型例です。

    個人保証の効果は審査の通過可否にとどまりません。金利、借入限度額、審査スピードといった条件面にも影響を与えることがあります。

    以下の表は、個人保証が融資条件に及ぼす主な影響をまとめたものです。

    項目個人保証ありの場合個人保証なしの場合
    審査の通過通過しやすくなる傾向財務基盤次第で厳しくなる
    借入限度額拡大が期待できる抑えられる場合がある
    金利水準優遇される可能性上乗せされる場合がある

    このように個人保証は、資金調達の柔軟性を高め、経営の安定や金融機関との長期的な関係構築につながる面があります。売掛債権の回収期間が長い業種などで資金不足に陥った際にも対応しやすくなるでしょう。

    個人保証のデメリット

    一方で個人保証には、経営者の人生を大きく左右しかねない深刻なリスクがあります。

    経営不振時に生活が犠牲になるリスク

    企業が返済不能に陥ると、連帯保証契約では企業の返済不能と同時に経営者自身が請求対象となります。自宅や預貯金といった個人資産が差し押さえられ、企業の破綻がそのまま生活破綻に直結するおそれがあるのです。

    過重な負担によって自己破産に追い込まれる例や、家族に精神的・経済的影響が及ぶ例も後を絶ちません。事業に失敗すると再起が極めて困難になるため、経営者にとって個人保証は事業リスクを人生全体のリスクへ拡大させる要因となります。

    具体的には、借入5億円に対して自宅を含む個人資産の大半を失うといった事態が、現実に起こり得ます。保証は上限を定めない限り残債全額に及ぶため、想像以上の負担が生じます。

    撤退判断が遅れる可能性

    個人保証はその仕組み上、事業から撤退しても経営者に債務が残り続けます。また、日本の金融機関は一度事業につまずいた事業者への再融資については敬遠されがちだと考えられる傾向があります。このため、赤字事業からの撤退や廃業、新規事業への挑戦といった柔軟な経営判断がしにくくなります。

    個人保証のリスクを恐れるあまり、採算性の低い事業を「やめられない」まま継続・先延ばしにしてしまうケースは少なくありません。判断の遅れによって損失が拡大すれば、経営者個人の財務負担はさらに重くなるという悪循環に陥ります。

    たとえばM&A(企業の合併買収)や事業譲渡といった代替策が十分に認識されていないと、本来なら傷が浅いうちに手を打てたはずの局面を逃してしまいます。個人保証が「辞める自由」を制限している点は見過ごせません。

    個人保証が事業承継を阻む原因になる

    個人保証は事業承継の大きな障壁にもなります。後継者が保証債務の引き継ぎに難色を示し、承継がスムーズに進まない原因となるためです。子どもや社内の後継候補が「保証まで背負うなら継ぎたくない」と考えるのは自然なことでしょう。

    また金融機関が、後継者の資産不足を理由に保証の引き継ぎ交渉で難色を示すこともあります。融資額に見合う資産がなく連帯保証人の役割を果たせないと判断されるケースです。

    経営者が高齢で承継の時期を迎えていても、個人保証が解除されないままでは後継者が引き継ぎを拒否し、廃業や第三者への売却に至る可能性があります。本来は金融面の整理が承継準備の大前提であるにもかかわらず、対応できていない中小企業が多いのが実態です。

    個人保証に関連するガイドライン

    個人保証の弊害を減らすため、国や金融界は制度整備を進めてきました。その中心が経営者保証ガイドラインです。

    「経営者保証に関するガイドライン」策定の背景と目的

    「経営者保証に関するガイドライン」は、全国銀行協会と日本商工会議所によって策定され、2014年2月から適用されています。目的は個人保証に依存しない融資の促進と、経営者保証による弊害の除去です。

    このガイドラインは中小企業・経営者・金融機関の共通の自主的ルールであり、法的な拘束力はありません。判断は金融機関に委ねられていますが、金融庁も積極的に推進しており、実務への影響は大きいものがあります。

    適用対象となるには、主たる債務者が中小企業であること、保証人がその経営者であること、双方が弁済に誠実で財産状況を適時開示していること、反社会的勢力でないことといった前提があります。ガイドラインを活用すれば、保証なしの借入や既存保証の解除を実現できる可能性が広がるのです。

    ガイドラインによる融資条件の変化

    2014年の適用以降、政府系および民間金融機関における経営者保証に依存しない新規融資の割合は、概ね増加傾向にあります。将来性のあるビジネスであれば、スタートアップでも個人保証なしの融資が下りる可能性が出てきました。

    ただし個人保証の慣行そのものが禁止されたわけではありません。ガイドラインに沿って対応しても必ず保証が解除されるとは限らず、実際の対応は金融機関ごとに異なります。以下は運用上の留意点です。

    • 経営者側の理解や準備が不足すると交渉が進まないことがある
    • 保証解除に固執するあまり交渉全体が頓挫するリスクがある
    • 金融機関はやむを得ず保証を求める場合、理由と代替策を具体的に説明する必要がある

    2023年4月には監督指針が改正され、金融機関が個人保証を求める際に説明責任を果たすことが義務づけられました。プロセスが見える化され、経営者が納得感のある対応を受けやすい環境が整いつつあります。

    さらに、本ガイドラインは単に「保証を外す」ためだけのものではありません。万が一、事業が行き詰まって破産や債務整理手続きを行うことになった場合でも、一定の生活資金や手元財産を合法的に残せる選択肢が用意されています。これにより、経営者の信用情報(いわゆるブラックリスト)への登録を回避できる効果もあり、破産後の速やかな事業再生や生活再建に取り組みやすくなるというセーフティネットとしての役割も果たしています。

    ガイドラインを利用するために満たすべき要件

    ガイドラインを活用して個人保証を外すには、経営状況に関する3つの要件を満たすことが求められます。自社の状況を照らし合わせて自己診断してみましょう。

    要件内容
    法人と個人の分離資産の所有や資金のやりとりが明確に区分されていること
    財務基盤の強化法人のみの資産や収益力で返済が可能な財務状態であること
    経営の透明性財務状況や事業計画を正確に把握し、金融機関の求めに応じて開示できること

    これら3要件は個別にではなく総合的に評価されます。とくに経営者個人と会社の資金を明確に分け、会社の力だけで返済できる体制を整えることが、保証不要化の前提となります。日頃からの地道な取り組みが問われる部分です。

    経営者保証改革プログラムによる制度拡充

    ガイドライン適用後も保証なし融資のハードルが十分に下がっていないため、金融庁が経済産業省・財務省と連携し「経営者保証改革プログラム」を策定しました。スタートアップ、民間融資、信用保証付融資、中小企業のガバナンスという4分野で取り組みが進められています。

    さらに2024年3月には「事業者選択型経営者保証非提供制度」がスタートしました。一定条件を満たす中小企業が、保証料率を上乗せすることで経営者保証なしに信用保証協会の保証を利用できる制度です。

    加えて2027年3月末までの時限措置として、上乗せ保証料の一部を国が補助する特別保証制度も設けられています。こうした制度を正しく理解し活用すれば、個人保証の解除に向けた選択肢はさらに広がります。詳細は信用保証協会や取引金融機関へ確認するとよいでしょう。

    [参考]中小企業庁「経営者保証」金融庁「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進について」

    事業承継・M&Aでの個人保証の扱い

    会社を承継・売却する際、個人保証がどう扱われるかは経営者の最大の関心事です。手法ごとの違いを理解しておきましょう。

    事業承継の場合

    親族や社内への事業承継では、経営権とともに借入も引き継がれるのが一般的です。しかし前経営者の個人保証は自動的には外れず、金融機関との交渉を経て後継者へ切り替える手続きが必要となります。

    ここで問題になるのが、後継者が保証を引き継ぐことへの心理的抵抗です。金融機関も後継者の資産や返済能力を審査するため、条件が整わなければ前経営者の保証が残り続けることもあります。場合によっては、前経営者と後継者の双方に保証を求められる「二重保証」の状態に陥り、承継の大きな足かせになるケースも少なくありません。

    こうした事態を防ぐため、経営者保証ガイドラインには「事業承継時の特則」という特別な扱いが定められています。この特則では、金融機関に対して前経営者と後継者からの二重保証を原則として禁止しているほか、後継者だからという理由だけで一律に個人保証を求めないようにしています。つまり、会社がガイドラインの要件を満たしていれば、前経営者の保証を外した上で、後継者も保証を負わずに事業を引き継ぐことが可能なのです。

    そのため承継計画の初期段階から、この特則の活用を見据えて金融機関と保証の取り扱いを協議しておくことが欠かせません。金融面の整理を後回しにすると承継そのものが頓挫するおそれがあるため、早めの準備が重要です。

    株式譲渡によるM&Aの場合

    株式譲渡は、売り手から買い手へ株式を譲渡して経営権を移す手法で、中小企業M&Aの主流です。会社は法人格を維持したまま買い手の傘下に入るため、資産・負債のすべてが引き継がれます。

    形式上は契約関係がそのまま残るため、譲渡オーナーの個人保証もそのままの状態で残ります。これを買い手側へ切り替えるには、金融機関の承諾と新たな保証契約の締結が必要です。手続きの流れを整理すると次のようになります。

    1. 保証状況を棚卸しし、対象となる借入と保証内容を把握する
    2. 買い手と金融機関を交えて保証切り替えを協議する
    3. 譲渡契約書に売り手の保証解除に関する条項を明記する
    4. クロージング時に旧保証の解除と新保証の締結を行う

    交渉が調えば売り手経営者は連帯保証人から外れるケースが多いものの、合意が得られなければ保証が継続する可能性もあります。だからこそ早期の準備と関係者間の調整が成否を分けます。

    事業譲渡によるM&Aの場合

    事業譲渡は、事業の一部または全部を売買する手法で、会社の経営権自体は売り手に残ります。株式譲渡と異なり、譲渡する資産・負債の範囲を当事者間で細かく決められる点が特徴です。

    この手法では売買対象の事業に関連しない債務まで一緒に引き継ぐケースはほとんどありません。経営者保証も一般債務と同じ扱いとなるため、譲受側から受け取った売却益で借入を返済し、その結果として個人保証を解除する流れが多く見られます。

    たとえば主力事業を譲渡して得た資金で対象借入を完済すれば、保証の前提となる債務そのものが消えます。どの手法が自社に適するかは債務構成や税務面によって変わるため、専門家と検討することが大切です。

    個人保証を外すためにできること

    最後に、個人保証を実際に解除・軽減するための具体的なアクションを紹介します。

    経営者保証ガイドラインによる個人保証解除申請

    個人保証を外す第一歩として、経営者保証ガイドラインに基づく解除の申し入れがあります。前述の3要件を満たしていることを示しながら、金融機関へ保証解除を申請します。

    申請にあたっては、法人と個人の資金が分離されている資料、財務状況を示す決算書、そして将来の返済見通しを裏づける事業計画書などを揃えることが重要です。金融機関が納得できる客観的な材料が、交渉を有利に進めます。

    ただし要件を満たしていても解除が保証されるわけではないため、金融機関と丁寧に対話を重ねる姿勢が求められます。日頃からの情報開示と信頼関係の構築が解除への近道となる点を意識しましょう。

    財務基盤強化による与信力向上

    金融機関に「法人単体でも十分に返済できる」と判断されれば、個人保証の必要性は下がります。そのための財務基盤強化として、以下の取り組みが有効です。

    • 内部留保の積み増しや増資により自己資本比率を高める
    • 資金繰り表を作成し定期的に金融機関へ提出する
    • 関係会社や取引先による第三者保証を避け自社の信用力で借りる
    • 社外株主との資本構成を見直しガバナンスを強化する
    • 経営者個人と法人の資産を明確に分離する

    自己資本比率は業種によりますが、一般的に20%以上が一つの目安とされます。これらの項目は単独ではなく総合的に評価されるため、継続的な経営管理が欠かせません。地道な財務体質の改善が、結果として保証解除の可能性を高めます。

    専門家への相談

    個人保証の解除や事業承継M&Aは、金融機関との交渉や契約書の作成など専門的な知識を要します。弁護士や税理士、M&A仲介会社といった専門家の支援を受けることで、交渉を有利かつ円滑に進められます。

    特にM&Aで保証解除を目指す場合は、早い段階から仲介会社に相談し、買い手や金融機関との調整を依頼することが有効です。譲渡後の個人保証の扱いに関する交渉も、経験豊富な専門家であれば的確に対応できます。

    相談のタイミングとしては、売却や承継を「いつか検討したい」と考え始めた段階が理想です。早めに動くほど選択肢が広がり、個人債務のリスクから解放された第二の人生を描きやすくなるでしょう。

    まとめ

    個人保証は会社の信用を補い融資を受けやすくする一方、経営悪化時の生活破綻リスクや事業承継の障壁となるデメリットを抱えています。個人保証を外すためにできることは、経営者保証ガイドラインや各種制度の活用、財務基盤強化による与信力向上などがあります。

    会社売却や事業承継を視野に入れているなら、まずは自社の保証状況を棚卸しし、早期に金融機関や専門家と協議を始めることが大切です。個人保証の整理は、安心して次の人生へ進むための重要な準備となります。

    M&Aロイヤルアドバイザリーでは、個人保証の解除を含めたM&A・事業承継のご相談を承っております。まずはお気軽にお問い合わせください。

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