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株の仕組みは、初心者にとって複雑で理解しにくいものです。しかし、この仕組みをきちんと理解することで、株式投資も安心して始めることができます。また、自社の売却や事業承継を検討している中小企業のオーナーにとっても、株式の仕組みや株価の決まり方を知ることは、創業者利益を考えるための土台となります。
本記事では、株の基本的な仕組みから株価が動く要因、株式投資の始め方までを、経営者視点も交えながらわかりやすく解説します。自社株の価値を考えるヒントとして、また株式投資を始める最初の一歩として、ぜひご覧ください。
目次
まずは株の基本的な仕組みから理解していきましょう。株とは何か、なぜ会社は株を発行するのか、そして株を持つとどのような権利が得られるのかを整理することで、自社株の本質も見えてきます。ここでは4つの視点から株式の基礎を解説します。
株式とは、会社への出資を証明する証券であり、会社の所有権を細かく分割したものです。会社を設立する際には資本金が必要ですが、その資本金を出した人に対して発行されるのが株式です。株を持つということは、その会社の一部を所有しているという意味を持ちます。
たとえば、ある会社が100株を発行しており、そのうち60株を保有していれば、その人は会社の60%を所有していることになります。中小企業のオーナー経営者の多くは、自社株の大半を保有しているため、実質的に会社を単独で支配している状態といえます。この所有割合が、後の会社売却や事業承継における交渉の基礎となります。
会社が事業を拡大したり設備投資を行ったりするには、まとまった資金が必要になります。その資金を集める方法の一つが、株式を発行して投資家から出資を募る「エクイティファイナンス」です。銀行からの借入とは異なり、返済義務がないという特徴があります。
株式発行による資金調達には、次のようなメリットとデメリットがあります。以下に箇条書きで整理します。
このように、株の発行は資金調達の手段であると同時に、経営権の分散という側面も持ち合わせています。中小企業では経営権を維持するため、オーナーが株式を集中して保有するケースが一般的です。
投資家が証券市場や相対取引を通じて株式を購入すると、その会社の「株主」となります。株主は会社のオーナーの一員として位置づけられ、保有する株数に応じてさまざまな権利や利益を受け取ることができます。
上場企業の株式であれば、証券取引所を通じて誰でも自由に売買できます。一方、非上場の中小企業の株式は市場で取引されないため、売買には当事者間の合意や会社の承認が必要です。この違いは、後述するように会社売却や株式譲渡の場面で重要な意味を持ちます。非上場株式の売買がしにくいという特性こそが、M&Aによる出口戦略が注目される理由の一つなのです。
株主になると、保有する株式の数に応じて主に3つの権利を得られます。これらは会社法によって定められた株主の基本的な権利です。株の仕組みを理解するうえで欠かせないポイントとなります。
株主が持つ主な権利は次の3つです。
第一に「議決権」で、株主総会に参加し経営の重要事項を決定する投票に参加できます。第二に「配当を受け取る権利(利益配当請求権)」で、会社が得た利益の一部を分配してもらえます。第三に「残余財産分配請求権」で、会社が解散した際に残った資産を保有割合に応じて受け取れます。特に議決権は経営権と直結しており、発行済株式の過半数を握れば取締役の選任など重要な意思決定を主導できます。オーナー経営者にとって、この議決権の集中こそが会社を安定的に経営する基盤となっているのです。
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次に、株価がどのように決まるのかを見ていきましょう。株価は日々変動していますが、その動きには明確な理由があります。株価の決まり方を理解することは、自社の企業価値を考えるうえでも役立ちます。ここでは株価を左右する主要な要因を解説します。
株価が動く基本的な仕組みは、需要と供給のバランスです。その株を「買いたい」という投資家が多ければ株価は上がり、「売りたい」という投資家が多ければ株価は下がります。これは市場での取引によって決まる価格形成の原則です。
株価とは、買い手と売り手の合意が成立した価格そのものです。上場企業の株が取引される証券取引所では「板情報」と呼ばれる注文状況が公開されており、各価格にどれだけの買い注文と売り注文が入っているかを確認できます。この需給のバランスが崩れることで株価は刻々と変動します。非上場の中小企業には市場での株価がありませんが、M&Aの場面では買い手と売り手の交渉によって同様に価格が決まっていく点は共通しています。
株価に大きな影響を与える要因の一つが企業の業績です。売上や利益が伸びている会社は将来性が期待され、多くの投資家が株を買いたいと考えるため株価が上昇します。逆に業績が悪化すると株価は下落する傾向にあります。
企業業績を評価する指標として、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といったファンダメンタルズ分析の指標がよく使われます。PERは株価が1株あたり利益の何倍かを示し、PBRは株価が1株あたり純資産の何倍かを示します。これらの指標は、株価が割安か割高かを判断する材料となります。中小企業の企業価値評価においても、収益性や純資産は重要な評価基準となり、M&Aの売却価格に直結することがあります。自社の利益水準を高めておくことが、将来の売却価格を引き上げる鍵となるのです。
景気の動向も株価に大きく影響します。景気が良くなると企業の売上が伸び、業績が向上するため株価は上昇しやすくなります。反対に景気が後退局面に入ると、企業収益の悪化が予想され株価は下落しやすくなります。
一方で、景気が落ち込んでいる状況でも株価が上がるケースも見られます。投資家は将来の景気を予測しながら株を売買するため、景気が悪化しているように見えても「これから回復する」と見込まれれば株が買われることがあるからです。会社売却を検討する際も、景気が良く買い手が積極的なタイミングを選ぶことで、より有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
金利の変動も株価を左右する重要な要因です。一般的に、金利が上昇すると株価は下がりやすく、金利が低下すると株価は上がりやすいという関係があります。これは資金の流れと企業の負担が変化するためです。
金利が上がると、企業は借入コストが増加して利益が圧迫されます。また投資家にとっては、預金や債券で得られる利回りが高まるため、リスクのある株式よりも安全な資産に資金が向かいやすくなります。逆に低金利の環境では、株式市場に資金が流入しやすくなり株価が上昇する傾向にあります。
為替レートの変動も、特に輸出入を行う企業の株価に影響を与えます。円安になると輸出企業は海外で価格競争力が高まり、利益が増える傾向があるため株価が上がりやすくなります。一方で輸入企業にとっては、円安はコスト増につながるため株価にマイナスに働くことがあります。
日本の株式市場は輸出企業の割合が大きいため、円安が進むと日経平均株価などの株価指数が上昇しやすい傾向があります。このように、株価は企業単体の業績だけでなく、為替を含めたマクロ経済の影響を受けて総合的に決まっていくのです。自社が為替の影響を受ける業種であれば、こうした外部環境の理解も経営判断に役立ちます。
個別の株価だけでなく、市場全体の動きを示す「株価指数」も重要な指標です。ニュースでよく耳にする日経平均株価やTOPIXがどのような仕組みで市場を映し出しているのかを理解しましょう。ここでは代表的な2つの株価指数を解説します。
日経平均株価は、日本を代表する株価指数の一つです。東京証券取引所プライム市場に上場する銘柄のうち、日本経済新聞社が選定した225銘柄の株価をもとに算出されます。「日経225」とも呼ばれ、日本の株式市場の動きを示す代表的な指標です。
日経平均株価は株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすいという特徴があります。そのため、一部の値がさ株が大きく動くと、指数全体も大きく変動することがあります。ニュースで「今日の株価は上がった・下がった」と報じられる際には、この日経平均株価が使われることが多く、投資家が市場全体の雰囲気をつかむ目安として広く活用されています。
TOPIX(東証株価指数)は、日経平均株価と並ぶもう一つの代表的な株価指数です。東京証券取引所に上場する多くの銘柄を対象とし、時価総額を基準に算出されます。市場全体の動きをより広く反映する指標といえます。
TOPIXは時価総額の大きい銘柄ほど指数への影響が大きくなる仕組みです。時価総額とは「株価×発行済株式数」で計算され、企業の市場での評価額を示します。TOPIXは対象銘柄が幅広いため、日本の株式市場全体の実勢をバランスよく捉えられる点が特徴です。
日経平均株価とTOPIXは、どちらも日本の株式市場を示す指数ですが、算出方法や特徴に違いがあります。両者を比較して理解することで、市場のニュースをより正確に読み解けるようになります。以下の表で違いを整理します。
| 比較項目 | 日経平均株価 | TOPIX |
|---|---|---|
| 対象銘柄 | 選定された225銘柄 | 東証上場の幅広い銘柄 |
| 算出基準 | 株価(値がさ株の影響大) | 時価総額(大型株の影響大) |
| 特徴 | 値動きがわかりやすい | 市場全体を反映しやすい |
このように、日経平均株価は特定の銘柄に注目した指数であるのに対し、TOPIXは市場全体を広く捉えた指数といえます。両方を見ることで、市場全体の動きと一部の大型銘柄の動きの両面を把握できます。
ここからは、株式投資でどのように利益や損失が生じるのかを解説します。株から得られる利益には複数の種類があり、その仕組みを知ることは自社株の価値を考えるうえでも役立ちます。オーナーが会社売却で得る創業者利益とも通じる部分があります。
株式投資で得られる利益の代表格が、株価の値上がりによる売却益です。これを「キャピタルゲイン」と呼びます。安く買った株が値上がりしたタイミングで売却すれば、その差額が利益となります。
買値と売値の差額が、株式投資における代表的な利益の源泉です。たとえば1株1,000円で購入した株が1,500円に値上がりしたときに売れば、1株あたり500円の利益が得られます。この考え方は、中小企業のオーナーが自社株を売却して得る「創業者利益」と同様の仕組みです。設立時に低い資本で得た株式が、事業成長によって高い企業価値を持つようになり、その差額が売却益としてオーナーの手元に残ります。
株を保有し続けることで得られる利益が配当金です。これを「インカムゲイン」と呼びます。会社が事業活動で得た利益の一部を、株主に対して保有株数に応じて分配するのが配当金の仕組みです。
配当金は通常、年に1回または2回支払われます。会社の業績が好調であれば配当額が増える「増配」もあり、逆に業績が悪化すれば「減配」や「無配」となることもあります。安定した配当を出す企業は、長期投資を志向する投資家に人気があります。
株主優待があります。株主優待は企業が株主に対して、自社製品や割引券、金券などを提供する制度です。特に日本においては非常に普及しており、独自の文化として発展してきた側面も強いです。すべての企業が実施しているわけではなく、対象銘柄を保有している株主が優待を受け取れます。
株主優待の内容は企業によってさまざまで、飲食店の食事券や小売店の割引券、自社製品の詰め合わせなど多岐にわたります。配当金とあわせて優待を目当てに株を保有する個人投資家も少なくありません。なお、株主優待が広く普及しているのは日本特有であり、海外ではあまり見られません。投資家にとっては、株を保有する楽しみの一つとなっています。
株式投資には利益だけでなく、損失が生じるリスクもあります。購入した株が値下がりしたときに売却すると、買値と売値の差額が損失となります。これを「売却損」または「キャピタルロス」と呼びます。
株価は企業業績や景気、金利、為替などさまざまな要因で変動するため、常に上がるとは限りません。損失リスクを抑えるためには、複数の銘柄に分散投資してリスクを分散する「ポートフォリオ」の考え方や、短期的な値動きに一喜一憂しない長期投資のスタンスが有効です。投資には必ずリスクが伴うことを理解したうえで、無理のない範囲で取り組むことが大切です。
最後に、実際に上場企業の株式を購入して株式投資を始める手順を解説します。株の仕組みを理解したら、少額から実践してみることで理解がさらに深まります。ここでは初心者が株式投資を始めるための具体的なステップを順を追って紹介します。
株式投資を始めるには、まず証券会社に口座を開設する必要があります。証券会社には、店舗を構える対面型と、インターネットで取引できるネット証券があります。ネット証券は手数料が安く自宅で手軽に取引できる一方、店舗型証券では対面での相談が可能で、専門スタッフから直接アドバイスを受けられます。
証券会社を選ぶ際には、取引手数料の安さ、取扱商品の豊富さ、取引ツールの使いやすさなどを比較するとよいでしょう。特に少額から始める場合は、手数料の負担が利益に影響するため重要なポイントです。またNISA(少額投資非課税制度)に対応しているかも確認しておくと、税制上のメリットを活用できます。自分の投資スタイルに合った証券会社を選ぶことが、株式投資を続けるうえでの第一歩となります。
証券会社を選んだら、次に証券口座を開設します。口座開設は申込書を記入した上で、本人確認書類とマイナンバー確認書類を提出することで手続きが進みます。多くのネット証券では、申し込みから数日で口座が開設されます。
口座を開設する際には、税金の扱いに関わる口座の種類を選ぶ必要があります。「特定口座(源泉徴収あり)」を選べば、証券会社が税金の計算や納付を代行してくれるため、確定申告の手間を省けます。初心者にはこの特定口座(源泉徴収あり)がおすすめです。あわせてNISA口座を開設しておくと、一定額までの投資で得た利益が非課税になるメリットを受けられます。
口座が開設できたら、株を購入するための資金を証券口座に入金します。入金方法は銀行振込やネットバンキングからの即時入金などがあり、証券会社によって対応が異なります。即時入金サービスを使えば、手数料無料でスピーディーに資金を移せることが多いです。
入金する金額は、あくまで生活に影響のない余裕資金の範囲にとどめることが大切です。株式投資には値下がりのリスクがあるため、当面使う予定のないお金で始めるのが基本です。まずは少額を入金して、実際の取引の流れを体験しながら徐々に慣れていくとよいでしょう。
資金を入金したら、いよいよ購入する銘柄を選びます。銘柄選びには、企業の業績や財務状況を分析する「ファンダメンタル分析」と、株価チャートの動きから売買のタイミングを探る「テクニカル分析」という2つのアプローチがあります。
初心者のうちは、自分がよく知っている商品やサービスを提供している企業から選ぶのも一つの方法です。身近な企業であれば業績や将来性をイメージしやすく、関心を持って情報を追いやすくなります。また、値動きの安定した大型株から始めると、大きな損失を避けやすいとされています。慣れてきたら成長が期待できる中小型株にも目を向けるなど、段階的に投資対象を広げていくとよいでしょう。
銘柄を決めたら、注文方法を選びます。株式の注文方法には主に「成行注文」と「指値注文」の2種類があります。それぞれの特徴を理解して使い分けることが、株の売買では大切です。
成行注文は、価格を指定せずに「いくらでもよいから買いたい・売りたい」という注文で、すぐに約定しやすい反面、想定外の価格で取引が成立することもあります。一方の指値注文は、「この価格で買いたい・売りたい」と価格を指定する注文で、希望の価格で取引できますが、その価格に達しなければ約定しません。板情報を見ながら需給の状況を確認し、状況に応じて注文方法を選ぶことで、より納得のいく取引が可能になります。
注文方法を決めたら、実際に株を注文します。証券会社の取引画面で銘柄、株数、注文方法、価格を入力して発注します。注文が市場で成立することを「約定」と呼び、約定すると正式にその株の株主となります。
日本の株式は原則として100株を1単元として取引されるため、株価が1,000円の銘柄であれば最低10万円の資金が必要になります。ただし、近年は1株から購入できる単元未満株のサービスも普及しており、より少額から始められるようになっています。注文後は、約定したかどうかを取引画面で確認する習慣をつけましょう。
株式投資を始める際に大切なのは、最初から大きな金額を投じるのではなく、少額から始めることです。少額であれば、たとえ値下がりしても損失を小さく抑えられ、投資に慣れながら経験を積むことができます。
まずは失っても生活に困らない少額から始めることが、株式投資を長く続けるコツです。NISA制度や単元未満株を活用すれば、数千円から数万円程度で株式投資をスタートできます。実際に自分のお金で株を保有すると、株価の動きや経済ニュースへの関心が高まり、株の仕組みへの理解が一段と深まります。こうした経験は、自社株の価値や会社売却を考えるうえでの感覚を養うことにもつながるでしょう。
[参考]金融庁「NISAを知る」
本記事では、株の仕組みから株価の決まり方、株式投資の始め方までを解説しました。株は会社への出資を示すものであり、株主にはさまざまな権利と利益が与えられます。株価は需要と供給を基本に、業績や景気、金利、為替といった要因で変動します。
株式投資で得られる売却益の仕組みは、中小企業オーナーが自社株を売却して得る創業者利益とも類似しています。株の仕組みを理解することは、自社の企業価値や会社売却の可能性を考えるうえでの重要な土台となります。
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