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みなし配当とは、実際には配当金として支払われていなくても、税務上は配当とみなされて課税される仕組みです。自己株式の取得や事業承継、会社の解散、組織再編などを行う際に注意が必要で、知らずに取引を進めると、想定外の所得税や住民税が発生したり、源泉徴収や支払調書の手続きを見落としたりする可能性があります。
本記事では、みなし配当の概要や通常の配当との違い、みなし配当が発生するケース・発生しないケース、計算方法などをわかりやすく解説します。
目次
まず、みなし配当の基本的な情報を紹介します。
みなし配当とは、形式上は配当金ではないものの、実質的に株主への利益還元と判断されることで、税務上は配当として扱われる所得のことです。 例えば、会社が株主から自社株を買い取る場合、株主は売却代金を受け取ります。このうち、会社の利益の分配に相当すると判断された部分は、みなし配当として課税されます。
税法では、取引の名称や手続きの形式ではなく、実質的にどのような経済的利益が株主へ移転したかを重視します。そのため、売買や資本取引として行われた取引であっても、会社が蓄積した利益を株主へ還元したと考えられる部分については、配当と同様の課税が行われる仕組みです。 この制度は、取引の形式だけを変えて配当課税を回避することを防ぎ、通常の配当との税負担の公平性を保つために設けられています。
そもそも配当とは、企業が事業活動で得た利益の一部を株主へ分配することです。 一方、みなし配当は配当金として支払われるわけではなく、自己株式の取得などの取引に伴って発生します。
両者の違いは発生する原因にあります。配当は利益還元を目的として支払われるのに対し、みなし配当は株式の譲渡や資本取引の結果として発生します。ただし、どちらも実質的には株主が会社から利益を受け取るという点で共通しているため、税務上は配当として取り扱われます。
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みなし配当が発生する代表的なケースは次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
自己株式の取得とは、会社が株主から自社の株式を買い取ることをいいます。事業承継や株主整理などを目的として行われることが多く、みなし配当が発生する代表的なケースの一つです。 株主が受け取った売却代金の全てが株式譲渡所得になるわけではありません。受け取った金額のうち、株式に対応する資本金等の額を超える部分については、会社が蓄積した利益の還元と考えられるため、みなし配当として課税されます。
例えば、会社が自己株式を700万円で取得し、その株式に対応する資本金等の額が500万円であった場合、差額の200万円がみなし配当です。
会社を解散・清算すると、債務の返済後に残った財産が株主へ分配されます。この財産を残余財産といいます。残余財産のうち、株主が出資した金額に対応する部分は出資金の返還として扱われます。一方、それを超える部分は会社が蓄積した利益に由来するため、みなし配当の課税対象です。
ただし、会社の財産が十分に残っておらず、株主への分配額が出資額を下回る場合には、利益の分配に相当する部分がないため、みなし配当は発生しません。
有償減資によって株主へ資金が返還される場合にも、みなし配当が発生することがあります。 有償減資とは、会社が資本金を減額するとともに、その一部を株主へ返還する手続きです。形式上は資本の払い戻しですが、返還される金額の中に利益の分配に相当する部分が含まれている場合には、その部分がみなし配当として課税されます。
そのため、有償減資では返還額の全てが資本の払い戻しとして扱われるわけではなく、資本金等に対応する部分と利益の分配に相当する部分を区分して判断する必要があります。
合併や会社分割などの組織再編では、税務上の区分によって、みなし配当が発生する場合があります。特に注意が必要なのが、非適格合併と非適格分割型分割です。
合併には、税制上の要件を満たす「適格合併」と、要件を満たさない「非適格合併」があります。非適格合併では、消滅する会社の株主が、合併の対価として株式や現金などを受け取ることがあります。このとき、受け取った対価の一部は、実質的に会社が蓄積してきた利益の分配と考えられるため、みなし配当として課税されます。
つまり、単なる株式の交換ではなく、会社の利益が株主へ移転したと判断される部分について課税が行われる仕組みです。
会社分割にも、税制上の要件を満たす「適格分割」と、要件を満たさない「非適格分割」があります。 このうち、非適格分割に該当し、さらに分割会社の株主が分割の対価を受け取る「分割型分割」の場合には、みなし配当が発生することがあります。 株主が受け取る株式や現金などのうち、会社に蓄積された利益の分配に相当する部分がみなし配当として扱われるためです。
組織再編では同じ合併や会社分割であっても、適格・非適格の判定によって税務上の取り扱いが大きく変わるため、事前に確認しておくことが重要です。
みなし配当は全ての資本取引や組織再編で発生するわけではありません。みなし配当が発生しないケースは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
合併や会社分割が行われた場合でも、税制上の要件を満たす適格組織再編に該当する場合は、原則としてみなし配当は発生しません。適格合併では、消滅会社が保有していた資産や負債、利益積立金などが存続会社へ引き継がれます。このとき、株主に対して現金などの財産が分配されるわけではなく、会社内部で権利義務が移転するだけであるため、利益の分配とはみなされません。
適格分割についても同様です。分割会社の資産や利益が承継会社へ引き継がれるものの、税制上、利益の分配とは扱われないため原則としてみなし配当は発生しません。
証券取引所を通じて行われる通常の株式売買では、みなし配当は発生しません。みなし配当は、会社から株主へ利益が移転したと判断される場合に適用される制度です。
一方、市場での株式売買は投資家同士の取引であり、会社が株主へ利益を分配しているわけではありません。そのため、売却によって利益が生じた場合でも、配当所得ではなく譲渡所得として課税されます。
合併や会社分割などの組織再編に反対する株主は、「株式買取請求権」を行使して会社へ株式の買い取りを請求できます。 この場合、会社(発行法人)が自社株式を取得することになるため、税務上は自己株式の取得として扱われます。そのため、株主が受け取った対価のうち、税務上の資本金等の額に対応する部分を超える金額は、原則としてみなし配当の対象となります。
ただし、組織再編の内容や適用される税制によっては、みなし配当が発生しない特例が適用される場合もあります。そのため、株式買取請求権を行使する際は、個別の取引内容に応じた税務上の取り扱いを事前に確認しておくことが重要です。
相続した非上場株式を発行会社へ譲渡する場合には、一定の要件を満たすことで特例を利用できます。 通常、発行会社へ株式を売却すると、受け取った金額の一部がみなし配当として課税されることがあります。しかし、相続税の課税価格の計算の基礎となった非上場株式について、相続税の申告期限の翌日から3年以内に発行会社へ譲渡した場合は、一定の要件の基で特例の適用を受けられます。
この特例が適用されると、みなし配当として扱われる部分についても譲渡所得として課税されるため、相続税と所得税の二重負担を軽減できる可能性があります。事業承継や株主整理の場面で活用されることも多いため、該当する場合は事前に税理士へ相談すると良いでしょう。
参考:国税庁(相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例)
具体的な計算方法は取引の種類によって異なります。ここでは、基本的な計算方法と代表的なケースごとの計算方法を解説します。
計算式は次のとおりです。
| みなし配当額=交付された金銭等の額-資本の払戻しに相当する金額 |
会社から受け取った金額(対価)から、資本の払戻しに相当する金額を差し引いた残額が、みなし配当です。
資本の払戻しに相当する金額とは、株主が出資した資本のうち、税務上「資本金等の額」に対応する部分を指します。一方、それを超える部分は、会社に蓄積された利益の分配に相当すると考えられるため、みなし配当として課税対象です。
例えば、会社から自己株式の取得などにより1,500万円を受け取り、そのうち資本の払戻しに相当する金額が1,200万円だった場合、差額の300万円がみなし配当です。
なお、資本の払戻しに相当する金額の算定方法は、自己株式の取得や資本の払戻し、組織再編など取引の種類によって異なり、税法で定められています。
自己株式の取得では、株主が受け取った対価から、その株式に対応する資本の払戻しに相当する金額を差し引いて、みなし配当額を計算します。
例えば、株主が保有する100株を会社へ売却し、対価として800万円を受け取ったとします。また、その株式に対応する資本の払戻しに相当する金額が、1株当たり5万円として計算される場合、資本の払戻しに相当する金額は500万円(5万円×100株)です。
この場合、受取額800万円から資本の払戻し部分500万円を差し引いた300万円が、みなし配当として課税対象です。
非適格合併では、消滅会社の株主が受け取る株式や現金などの対価のうち、税務上、会社に蓄積された利益の分配に相当する部分がみなし配当となる場合があります。
計算式は次のとおりです。
| みなし配当額=交付された財産の時価-資本の払戻しに相当する金額 |
資本の払戻しに相当する金額とは、税務上の資本金等の額に対応する部分を指します。具体的な算定方法は税法で定められており、会社の資本金等の額などを基に計算されます。
例えば、消滅会社の株主が合併によって300万円相当の株式や現金を受け取り、そのうち税務上の資本金等の額に対応する金額が200万円だった場合、差額の100万円がみなし配当です。
非適格分割型分割では、分割会社の株主が受け取る対価のうち、利益の分配に相当する部分がみなし配当です。
計算は、分割部分が会社全体の純資産に対してどの程度の割合を占めているかを基準に行います。まず、次の計算式で分割部分の純資産比率を求めます。
| 純資産比率=分割部分の純資産額 ÷ 分割法人全体の純資産額 |
次に、この比率を用いて分割部分に対応する資本金等の額を算出します。
| 分割部分に対応する資本金等の額=分割法人の資本金等の額 × 純資産比率 |
その上で、株主が受け取った分割対価から、上記で求めた資本金等の額を差し引いた金額がみなし配当です。
なお、実際の算定方法は、税法で定められた計算方法に基づいて行われます。
資本剰余金の払戻しや会社解散時の残余財産の分配では、株主が受け取った金額のうち、資本金等に対応する部分を除いた金額がみなし配当です。
計算の流れは、非適格分割型分割の場合と同様です。まず、払戻しを受けた金額のうち、資本金等に対応する部分を算出します。その上で、受け取った金額との差額をみなし配当額として計算します。
計算式は次のとおりです。
| 資本金等に対応する金額= 資本金等の額 × 保有株式数 ÷ 発行済株式総数 |
例えば、株主が解散した会社から1,200万円の残余財産を受け取り、そのうち900万円が資本金等に対応する金額だった場合、差額の300万円がみなし配当です。
持分会社の出資払戻しや組織変更が行われた場合も、みなし配当が発生することがあります。 この場合は、合併や分割と同様に、出資持分に対応する資本金等の額を基準として計算します。社員が受け取った現金や株式などの対価から、出資額に対応する部分を差し引いた金額がみなし配当です。
計算式は次のとおりです。
| 出資額に対応する金額= 資本金等の額 × 持分割合 |
例えば、社員が出資払戻しによって900万円を受け取り、そのうち700万円が出資額に対応する金額だった場合、差額の200万円がみなし配当とした課税対象です。
みなし配当が発生した場合の税務上の取り扱いは、取引に関与する立場によって異なります。ここでは、みなし配当が発生した場合における個人株主・法人株主・自己株式を取得した法人それぞれの税務処理について解説します。
個人株主が発行法人へ株式を譲渡し、みなし配当が発生した場合、その金額は配当所得として扱われます。 非上場株式に係るみなし配当は、原則として総合課税の対象です。給与所得や事業所得などの他の所得と合算して税額を計算するため、所得金額が大きいほど税負担も増加する可能性があります。
また、一定の要件を満たす場合は、確定申告の際に配当控除の適用を受けられることがあります。自己株式の取得や事業承継に伴う株式譲渡では、事前に税額を試算しておくことが重要です。
法人が発行法人へ株式を譲渡し、みなし配当を受け取った場合は、会計上「受取配当金」として処理します。 ただし、同じ利益に対して二重に法人税が課されることを防ぐため、受取配当等の益金不算入制度が適用されます。そのため、みなし配当についても持株比率に応じて一定割合または全額を益金に算入しないことが可能です。
例えば、完全子法人株式等(持株比率100%)に該当する場合は100%、関連法人株式等(持株比率3分の1超)の場合も原則として100%が益金不算入となります。一方、保有割合がこれより低い株式等については、益金不算入となる割合が制限されます。
実務上は、株式譲渡として会計処理を行った上で、決算時に益金不算入の調整を行うケースが一般的です。
会社が自己株式を取得し、株主へ支払いを行った場合、発行法人にも税務上の手続きが発生します。みなし配当に該当する部分については、発行法人が所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、原則として翌月10日までに納付しなければなりません。
また、税務申告に必要な支払調書の作成・提出も必要です。特に非上場企業では、事業承継や株主整理のために自己株式取得を行うケースが多いため、事前に税務上の影響を確認しておくことが重要です。
なお、完全親会社と完全子会社のような完全支配関係にある法人間で自己株式取得が行われた場合には、例外的な取り扱いが適用されることがあります。
みなし配当は税務上「配当所得」として扱われるため、一定の場合には源泉徴収の対象となります。ここでは、みなし配当における源泉徴収の基本的な仕組みを解説します。
参考:国税庁(配当所得)
みなし配当が発生した場合、その金額は税務上「配当所得」として取り扱われるため、原則として源泉徴収の対象です。通常の配当金と同様に、配当を支払う会社には所得税等をあらかじめ差し引いて納付する義務があります。そのため、株主へ支払われる金額の全てがそのまま手元に入るわけではなく、みなし配当に該当する部分については源泉徴収後の金額が支払われます。
特に非上場企業では、事業承継や株主整理を目的とした自己株式の取得によってみなし配当が発生するケースが多く、源泉徴収の手続きを見落としやすいため注意が必要です。 例えば、次のようなケースでは源泉徴収が必要になることがあります。
これらの取引では、受け取った金額の全額が源泉徴収の対象になるわけではありません。税務上のみなし配当に該当すると判定された部分のみについて源泉徴収が行われます。
また、源泉徴収義務があるにもかかわらず納付を怠った場合は、会社側に不納付加算税や延滞税が課される可能性があります。そのため、自己株式の取得や組織再編を実施する際は、みなし配当の有無だけでなく、源泉徴収の要否についても事前に確認しておくことが重要です。
みなし配当に適用される源泉徴収税率は、株式の種類や株主の属性によって異なります。個人株主に対する非上場株式のみなし配当については、原則として20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が源泉徴収されます。 一方、上場株式等に係る配当では、20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)が適用されます。
適用税率は取引内容によって異なる場合があるため、実際の手続きでは最新の税制の確認が大切です。
源泉徴収額は、みなし配当の金額に税率を乗じて計算します。
計算式は次のとおりです。
| 源泉徴収額 = みなし配当額 × 税率 |
例えば、みなし配当額が100万円で、税率が20.315%の場合は次のようになります。
1,000,000円 × 20.315% = 203,150円
この場合、203,150円が源泉徴収され、株主へ支払われる金額は796,850円です。
なお、発行会社は源泉徴収した税額を所定の期限までに納付する必要があります。源泉徴収漏れが発生すると追徴課税の対象となる可能性もあるため、自己株式取得などを行う際は事前に税務処理を確認しておきましょう。
非上場株式の譲渡や自己株式の取得では、事前準備によって税務上のリスクを軽減できる場合があります。ここでは、みなし配当の税務リスクを抑えるために、株価算定や配当政策、譲渡タイミングを検討する際のポイントを解説します。
非上場株式を発行会社へ譲渡する場合は、譲渡価格の妥当性が重要です。非上場株式には上場株式のような市場価格が存在しないため、株価を客観的な方法で算定する必要があります。価格が実態とかけ離れている場合は、税務上問題視される可能性もあるため注意が必要です。
株価算定にはさまざまな方法がありますが、代表的なものとして次の3つが挙げられます。
類似会社比較法とは、上場している同業他社の株価や財務指標(PBR・PERなど)を参考に、自社の株価を推定する方法です。市場で形成された株価を基準にできるため客観性が高い一方で、比較対象となる企業の選定によって評価額が変動することがあります。
DCF法とは、会社が将来生み出すと予測されるキャッシュフローを現在価値へ割り引き、企業価値や株価を算定する方法です。将来の利益や成長性を評価に反映できるため、M&Aや事業承継、ベンチャー企業の株価算定などで広く利用されています。現在の純資産だけでなく、将来どれだけ収益を生み出せるかを重視する点が特徴です。
一方で、評価額は事業計画や利益予測、割引率の設定によって大きく変動します。そのため、楽観的な事業計画を前提とすると評価額が高くなりやすく、算定には専門的な知識が求められます。成長企業や将来性の高い事業を評価する際に適した手法ですが、算定結果の妥当性を説明できる資料を準備しておくことが重要です。
純資産価額法とは、会社が保有する資産から負債を差し引いた純資産を基準に株価を算定する方法です。会社を現在の時点で清算した場合に、株主へどの程度の財産が残るかという考え方に基づいており、中小企業の株価評価で広く利用されています。 貸借対照表を基礎として計算するため比較的わかりやすく、客観性が高い点がメリットです。また、税務上の非上場株式評価においても参考とされることが多くあります。
一方で、将来の収益力やブランド価値、技術力といった無形の価値は反映されにくいという特徴があります。そのため、成長企業では実態より低い評価額になる場合もあります。実際には、会社の規模や事業内容、評価の目的によって適切な手法は異なります。自己株式の取得や事業承継など重要な取引を行う際は、公認会計士や税理士などの専門家へ相談し、適切な株価評価を行うことが望ましいでしょう。
みなし配当の金額は、会社の資本金等の額や利益積立金額の状況によって変動します。そのため、株式を譲渡する時期によって税務上の影響が異なる場合があります。
特に非上場企業では、過去の配当実績や今後の利益還元方針、利益剰余金の蓄積状況などが株価評価や税務判断に影響を与えることがあります。 そのため、事業承継や株主整理を予定している場合は、配当原資の状況や今後の配当計画を確認した上で、株式譲渡のタイミングの検討が重要です。事前にシミュレーションを行うことで、想定外の税負担を避けられます。
みなし配当は税務上「配当所得」として扱われるため、一定の場合には確定申告が必要です。また、総合課税を選択した場合は、税負担を軽減できる「配当控除」を利用できるケースもあります。ただし、課税方法や所得金額によって取り扱いが異なるため、制度の内容を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、配当控除の仕組みや確定申告のポイントについて解説します。
配当控除とは、配当所得を総合課税で確定申告した場合に適用できる税額控除制度です。企業は利益に対して法人税を納付した上で、その利益の一部を株主へ配当として分配しています。そのため、株主が受け取った配当にも所得税が課されると、同じ利益に対して法人段階と個人段階で二重に課税されることになります。配当控除は、この二重課税を調整し、株主の税負担を軽減するために設けられている制度です。総合課税を選択した場合は、一定割合の金額を所得税額から直接差し引けます。
みなし配当についても、税務上は配当所得として扱われるため、総合課税の対象となる場合には配当控除を受けられることがあります。ただし、全てのみなし配当が対象になるわけではなく、課税方法や株式の種類によって取り扱いが異なるため注意が必要です。
また、配当控除を利用することで税負担を軽減できる場合がある一方、総合課税を選択した結果として所得税率が上がるケースもあります。そのため、みなし配当が発生した際は、配当控除による節税効果も含めて有利・不利の検討が重要です。
配当控除額は、課税総所得金額等によって計算方法が異なります。
配当控除は、配当所得の一定割合を所得税額から差し引く制度です。ただし、高所得者ほど控除率が低くなる仕組みが採用されているため、課税総所得金額等が1,000万円を超えるかどうかが一つの基準です。
課税総所得金額等が1,000万円以下の場合、配当控除額は原則として次の計算式で求めます。
| 配当控除額 = 配当所得 × 10% |
例えば、配当所得が50万円の場合は、5万円が配当控除額となります。
なお、証券投資信託の収益分配金については控除率が異なり、次の計算式を用います。
| 配当控除額 = 配当所得 × 5% |
そのため、同じ配当所得であっても、配当の種類によって控除額が変わる点に注意が必要です。
課税総所得金額等が1,000万円を超える場合は、1,000万円以下の部分と超える部分に分けて計算します。
| 配当控除額 = 1,000万円以下の配当所得 × 10% + 1,000万円超の配当所得 × 5% |
例えば、配当所得のうち1,000万円を超える部分については控除率が半分になるため、高所得者ほど配当控除による節税効果は小さくなります。
また、証券投資信託の収益分配金の場合は、次の計算式を用います。
| 配当控除額 = 1,000万円以下の配当所得 × 5% + 1,000万円超の配当所得 × 2.5% |
証券投資信託の収益分配金における配当控除額は、投資信託の種類、課税総所得金額、外貨建資産割合や非株式割合など、複数の要因によって控除率が異なります。配当控除を利用することで税負担を軽減できる可能性がありますが、総合課税を選択した結果、かえって税額が増えるケースもあります。そのため、みなし配当が発生した場合は、総合課税と他の課税方法のどちらが有利になるか事前の確認が大切です。
みなし配当は配当所得として扱われるため、確定申告が必要になる場合があります。また、確定申告が必須でない場合でも、申告した方が税負担を軽減できるケースがあります。
例えば、上場株式等の取引で譲渡損失が発生している場合です。一定の要件を満たせば、配当所得と譲渡損失を損益通算できるため、源泉徴収された税金の一部または全部が還付される可能性があります。
一方で、総合課税を選択した場合は、配当控除を受けられるメリットがある反面、給与所得や事業所得など他の所得と合算して課税されます。そのため、所得水準によっては税率が上がり、かえって税負担が増えるケースもあります。 また、配当所得の増加によって扶養判定や各種控除に影響が生じる可能性もあるため注意が必要です。
どの課税方法が有利になるかは、所得状況や保有している株式の種類によって異なります。みなし配当が発生した場合は、配当控除の適用や損益通算の可否も含めて確認し、必要に応じて税理士などの専門家へ相談すると良いでしょう。
みなし配当が発生した場合は、税務処理だけでなく法定調書の作成・提出にも注意が必要です。特に会社が自己株式を取得した場合などは、一定の要件を満たすことで支払調書の提出義務が生じます。ここでは、みなし配当に関する支払調書の概要や提出期限、作成方法について解説します。
支払調書とは、会社が行った一定の支払いについて、その内容を税務署へ報告するための法定調書です。 みなし配当が発生した場合は、「配当等とみなす金額に関する支払調書」を作成します。この書類には、支払先の氏名や住所、支払金額、源泉徴収税額などを記載します。
税務署は支払調書を基に、支払いを受けた株主が適切に申告しているかを確認します。そのため、みなし配当に関する税務手続きの中でも重要な書類の一つです。 なお、実務上は株主へ支払調書の写しを交付するケースもありますが、税務署への提出とは異なり、必ずしも法律で義務付けられているわけではありません。
みなし配当に関する支払調書は、原則として支払確定日から1カ月以内に税務署へ提出する必要があります。 提出する際は、「配当等とみなす金額に関する支払調書」だけでなく、支払調書合計表も併せて作成します。提出期限を過ぎると税務上の指摘を受ける可能性があるため、配当が発生した段階で速やかに準備を進めることが大切です。
また、源泉徴収が必要なケースでは、支払調書の提出とは別に源泉所得税の納付も必要です。税務手続きが複数発生するため、スケジュール管理には十分注意しましょう。
支払調書は、国税庁が公表している様式を利用して作成できます。近年は会計ソフトや税務ソフトに対応しているケースも多く、電子申告(e-Tax)を利用して提出することも可能です。また、インターネット上では記載例や作成手順を確認できるため、自社で作成もできます。
ただし、みなし配当の金額計算や源泉徴収税額の算定を誤ると、支払調書の内容にも影響します。そのため、自己株式取得や事業承継など複雑な取引が関係する場合は、税理士へ相談しながら作成すると安心です。
最後に、みなし配当に関するよくある質問とその回答を紹介します。
赤字の会社でもみなし配当は発生する可能性があります。みなし配当が発生するかどうかは、その年度の損益(黒字・赤字)だけで決まるわけではありません。重要なことは、会社が過去から蓄積してきた税務上の利益積立金額です。
例えば、今期は赤字であっても、過去に十分な利益を積み上げており利益積立金額が残っている会社が自己株式を取得した場合には、みなし配当が発生することがあります。
一方で、長年の赤字によって利益積立金額がほとんどない、あるいは欠損の状態にある場合は、みなし配当額が発生しない、または少額になるケースもあります。そのため、「今期が赤字だからみなし配当は発生しない」とは言い切れません。
みなし配当は、株主が会社から経済的利益を受け取ったかどうかによって判断されます。そのため、現金だけでなく、株式や不動産などの資産を受け取った場合でも、税務上はみなし配当として扱われるケースがあります。 例えば、非適格合併や非適格分割型分割において、株主が対価として株式や現金の交付を受けた場合、その一部がみなし配当として課税されることがあります。
みなし配当の判定では、受け取る財産の種類ではなく、会社の利益が株主へ移転したと考えられるかどうかが重要なポイントです。
親族同士で株式を売買する場合は、原則として通常の株式譲渡として扱われるため、みなし配当は発生しません。
一方、事業承継や株主整理のために発行会社が親族から自社株を買い取る場合は、自己株式の取得に該当するため、みなし配当が発生する可能性があります。
また、親族間取引では株価の妥当性も重要です。時価とかけ離れた価格で売買した場合は、みなし配当だけでなく、贈与税や所得税の問題が生じる可能性もあります。そのため、非上場株式を譲渡する際は、事前に適正な株価を算定しておくことが大切です。
みなし配当は株式の保有割合ではなく、取引の内容によって判定されます。そのため、少数株主であっても、会社による自己株式の取得や有償減資などによって利益の分配に相当する部分が生じた場合は、みなし配当として課税されることがあります。例えば、株主整理を目的として会社が少数株主から自社株を買い取るケースでは、受け取った金額のうち資本金等の額を超える部分がみなし配当となる可能性があります。
保有株式数が少ないからといって、みなし配当の対象外になるわけではありません。少数株主との株式売買や株主整理を行う際は、事前に税務上の影響を確認しておくことが重要です。
同じ取引の中で、みなし配当と譲渡所得の両方が発生することがあります。例えば、会社が株主から自己株式を取得した場合、株主が受け取った金額のうち、利益の分配に相当する部分は「みなし配当(配当所得)」として課税されます。
一方、それ以外の部分については株式の譲渡対価として扱われ、譲渡所得の計算対象となります。そのため、自己株式の取得では、受取金額を「みなし配当部分」と「譲渡所得部分」に分けて税務処理を行うケースが少なくありません。特に非上場株式の自己株式取得や事業承継に伴う株式譲渡では、両方の所得が発生することで税額計算が複雑になるため、事前にシミュレーションを行っておくことが重要です。
個人が受け取ったみなし配当は、所得税だけでなく住民税の課税対象にもなります。みなし配当は税務上「配当所得」として扱われるため、確定申告を行った場合は住民税の計算にも反映されます。特に非上場株式のみなし配当は総合課税の対象となるため、給与所得や事業所得などと合算して住民税額が計算されます。その結果、翌年度の住民税負担が増加する可能性があります。
また、住民税を基準として算定される各種行政サービスや公的負担に影響するケースもあるため注意が必要です。みなし配当が高額になる場合は、所得税だけでなく住民税への影響も含めて事前に試算しておくと良いでしょう。
非上場株式のみなし配当は、原則として総合課税の対象となるため、確定申告を行うと配当所得が総所得金額等に加算されます。
その結果、国民健康保険に加入している場合は翌年度の保険料に影響する可能性があります。また、所得金額の増加によって、配偶者控除や扶養控除の判定に影響が生じるケースもあります。ただし、影響の有無や程度は、所得状況や加入している保険制度によって異なります。みなし配当が高額になる場合は、税金だけでなく健康保険料や扶養への影響も含めて事前に確認しておくことが大切です。
みなし配当額は、自己株式の取得価格や資本金等の額、利益積立金額などを基に算定されるため、取引前の段階でもある程度の試算が可能です。特に事業承継や株主整理では、自己株式の取得金額が大きくなることも多く、みなし配当による税負担が想定以上になるケースがあります。そのため、契約前にシミュレーションを行い、株主側の所得税や会社側の源泉徴収額を確認しておくことが重要です。
ただし、組織再編や資本取引を伴うケースでは計算が複雑になるため、正確な税額を把握するには税理士や公認会計士などの専門家へ相談することをおすすめします。
原則として、みなし配当に該当する部分は会社の経費(損金)にはなりません。みなし配当は、税務上は会社が株主へ利益を分配したものとして扱われます。そのため、給与や外注費のような事業運営に必要な費用とは異なり、法人税の計算上は損金算入できません。例えば、会社が自己株式を取得した場合、支払った金額のうちみなし配当に該当する部分については、利益の分配として処理されるため経費にはなりません。
また、会計上の処理と税務上の取り扱いが異なる場合もあるため、自己株式の取得や事業承継などで高額な取引を行う際は注意が必要です。
みなし配当は、自己株式の取得や有償減資、事業承継に伴う株主整理などで発生することが多く、税額も大きくなりやすい項目です。そのため、税務調査では株価の算定方法やみなし配当額の計算が適切に行われているかを確認されることがあります。
特に、親族間取引や同族会社の自己株式取得では、取引価格が適正な時価に基づいているかどうかが重要なチェックポイントです。また、源泉徴収や支払調書の提出が適切に行われているかについても確認される場合があります。 税務調査に備えるためには、株価算定資料や契約書、株主総会議事録、みなし配当の計算根拠などを保管しておくことが重要です。
株式譲渡や自己株式取得の実施を決定する前が理想です。みなし配当は、株価の設定や利益積立金額の状況によって税額が大きく変わることがあります。そのため、取引後に想定以上の税負担が発生して初めて問題に気付くケースも少なくありません。
特に非上場株式の譲渡では、適正な株価の算定や、みなし配当額の計算、源泉徴収の要否などを事前に確認しておくことが重要です。事業承継や株主整理、組織再編を予定している場合は、取引の具体的な条件を決める前の段階で税理士へ相談することで、税務リスクを把握しながら進められます。また、取引後の確定申告や支払調書の作成だけでなく、税額シミュレーションやスキームの検討についてもアドバイスを受けられるため、早めの相談がおすすめです。
みなし配当とは、会社が自己株式の取得や資本の払戻しなどを行った際に、形式上は配当でなくても税務上は配当とみなされる利益分配のことです。みなし配当について理解することは、税務上のトラブルを避けるために非常に重要です。特に、自己株式の取得や会社の解散など、特定の状況で発生する可能性があるため、事前にその仕組みを把握しておくことが大切です。
また、確定申告の際には、みなし配当の計算や申告方法をしっかりと理解し、配当控除を利用することで税負担を軽減することが可能です。今後、自己株式の取得や会社の組織再編を考えている方は、事前に専門家に相談し、みなし配当が発生するかどうかを確認しましょう。
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