繰越欠損金とは?期限や控除額、仕訳から注意点までわかりやすく解説

着手金・中間金無料 完全成功報酬型

繰越欠損金とは、過去の事業年度で生じた欠損金(税務上の赤字)を将来の所得と相殺し、法人税の負担を軽減できる制度です。企業の資金繰りや経営再建を支える重要な税制として活用されています。 

本記事では、繰越欠損金の仕組みや控除限度額、利用するための条件、確認方法をわかりやすく解説します。また、税効果会計や仕訳、繰越欠損金の管理方法についても具体例を交えながら紹介します。 

さらに、利用時の注意点やM&Aでの活用方法、税務上のポイント、よくある疑問まで幅広く解説します。繰越欠損金を正しく理解し、節税や経営戦略に役立てるための知識を身につけましょう。 

繰越欠損金とは 

まず、繰越欠損金に関する基本的な知識について紹介します。 

繰越欠損金の意味 

繰越欠損金とは、税務上の赤字である欠損金を翌事業年度以降の黒字から差し引ける制度、またはその金額を指します。将来の課税所得と相殺することで、法人の税負担を軽減できます。

平成27年度・平成28年度税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度で発生した欠損金の繰越期間は、従来の9年から10年へ延長されました。また、欠損金の控除限度額も見直され、資本金1億円を超える法人は所得金額の50%まで控除できるようになっています(中小法人の場合は所得金額の全額控除)。

参考:国税庁「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除

欠損金とは 

欠損金とは、法人税務上の赤字を指します。課税所得は益金から損金を差し引いて算出され、損金が益金を上回ると課税所得がマイナスとなります。この税務上の赤字が欠損金です。 

一方、繰越欠損金とは、その欠損金を翌事業年度以降へ繰り越したものを指します。将来黒字となった際に課税所得と相殺できるため、法人税などの税負担を軽減できます。 

つまり、欠損金は単年度に発生した税務上の赤字そのものを意味し、繰越欠損金はその赤字を将来の黒字と相殺するために繰り越した金額を意味します。両者は発生時点と活用方法に違いがあります。 

繰越欠損金と赤字の違い 

赤字とは、一定期間の収益より費用が上回った状態を指す会計上の概念です。企業の業績や財務状況を示す指標であり、赤字が続くと資金繰りや事業継続に影響を及ぼす可能性があります。 

一方、繰越欠損金は税務上の赤字である欠損金を翌事業年度以降へ繰り越したものです。将来黒字となった際に課税所得と相殺できるため、法人税の負担を軽減できます。 

つまり、赤字は企業の経営状況を示す会計上の概念であるのに対し、繰越欠損金は将来の税負担を軽減するための税務上の制度です。将来の黒字が見込まれる企業にとって、財務改善やキャッシュフローの向上に役立ちます。 

繰越欠損金の仕組み 

繰越欠損金の仕組みについて見ていきましょう。

  • 過去の赤字を将来の黒字と相殺する
  • 繰越欠損金を使った計算例
  • 繰越欠損金がない場合の制度 

それぞれのポイントについて説明します。 

過去の赤字を将来の黒字と相殺する 

繰越欠損金とは、事業年度に発生した税務上の赤字(欠損金)を翌事業年度以降へ繰り越し、将来発生する黒字と相殺できる制度です。これは企業の税負担を調整するために設けられています。 

企業の業績は年度ごとに変動するため、一時的な赤字の翌年に黒字へ転換することもあります。繰越欠損金を活用することで、過去の赤字を考慮しながら課税所得を計算できます。 

繰越欠損金の制度を活用することで、企業は将来の法人税負担を軽減できる他、手元資金を確保しやすくなります。そのため、この制度は企業の継続的な経営や資金繰りを支援する重要な仕組みとして活用されています。 

繰越欠損金を使った計算例 

ある中小企業が前期に100万円の赤字があり、当期に50万円の黒字が出た場合を考えます。この場合、前期から繰り越した赤字100万円のうち50万円を、当期の黒字50万円と相殺できます。その結果、当期の課税所得は0円になります。 

課税所得が0円になると、法人税や法人事業税の所得割は発生しません。ただし、法人住民税には所得に関係なく課税される均等割があるため、一定額の納税は必要です。 

相殺しきれなかった残り50万円の赤字は、翌期以降に繰り越されます。翌期に黒字が出た場合は、その黒字から残りの赤字を差し引けるため、将来の税負担を抑えることができます。 

繰越欠損金がない場合

前述の例では、前期の赤字100万円と当期の黒字50万円を相殺することで、当期の課税所得を0円にできました。しかし、繰越欠損金がない、または期限などの理由で相殺に使えない場合は、当期の黒字がそのまま課税所得となり、法人税などが課されます。

過去に赤字があっても、繰越欠損金の適用要件を満たしていない場合や、繰越できる期間を過ぎている場合は、税務上その赤字を将来の利益と相殺することはできません。

一方、繰越欠損金制度を活用すれば、当期に黒字が出た際に過去の赤字を相殺できるため、課税所得を減らし税負担を軽減できます。また、相殺しきれなかった欠損金は、一定の期間・範囲で翌期以降へ繰り越せるため、長期的には資金繰りの改善にもつながります。

参考:国税庁「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」

    必須
    必須
    必須
    必須

    個人情報につきましては、当社の個人情報保護方針に基づき適切に管理いたします。詳しくは「個人情報の保護について」をご確認ください。

    img

    THANK YOU

    お問い合わせが
    完了しました

    ご記入いただきました情報は
    送信されました。
    担当者よりご返信いたしますので、
    お待ちください。

    ※お問い合わせ後、
    2営業日以内に返信がない場合は
    恐れ入りますが
    再度お問い合わせいただきますよう、
    よろしくお願い致します。

    お急ぎの場合は
    代表電話までご連絡ください。

    phone
    03-6269-3040
    受付:平日 9:00~18:00
    img
    img

    繰越欠損金の控除限度額 

    繰越欠損金の控除限度額は大企業と中小企業で異なります。それぞれについて詳細に説明します。 

    大企業 

    資本金1億円超の法人や、資本金5億円以上の法人の子会社は、中小法人とは異なり、繰越欠損金の控除額に上限が設けられています。平成30年4月1日以降に開始する事業年度では、繰越欠損金の控除限度額は原則として所得金額の50%です。 

    例えば、繰越欠損金が800万円、当期の所得金額が1,000万円の場合、控除できるのは所得金額の50%にあたる500万円までとなります。そのため、課税所得は500万円となり、残りの300万円は翌事業年度以降へ繰り越されます。 

    なお、大企業の控除限度額は税制改正により段階的に引き下げられてきました。令和8年7月現在の控除額は所得金額の50%が上限となっているため、繰越欠損金があっても所得の全額を相殺できるわけではない点に注意が必要です。 

    中小企業 

    中小法人は、原則として繰越欠損金の控除限度額に制限がありません。そのため、過去に発生した繰越欠損金を当期の所得金額まで全額控除することができ、税負担の軽減につなげられます。 

    例えば、繰越欠損金が300万円、当期の所得金額が400万円の場合、300万円全額を所得金額から差し引くことができます。その結果、課税所得は100万円となり、法人税等の負担を抑えることが可能です。 

    ただし、資本金が1億円以下であっても、資本金5億円以上の法人の子会社やグループ通算制度の大通算法人は中小法人に該当しません。そのため、自社が中小法人の要件を満たしているか事前に確認することが重要です。 

    繰越欠損金のメリット 

    繰越欠損金の直接的なメリットは法人税負担を軽減できることです。法人税負担を軽減することで得られる副次的なメリットは次のとおりです。 

    • 資金繰りが安定し、事業再生の原資に回せる
    • 経営計画(収支予測)が立てやすくなる
    • 黒字化へのモチベーションになる 

    それぞれについて詳細に説明します。 

    資金繰りが安定し、事業再生の原資に回せる 

    繰越欠損金を活用して得た節税によって手元に残った資金は、企業の資金繰りを支える重要な原資になります。例えば、借入金の返済や運転資金の確保に充てることで財務基盤の安定につながる他、設備の更新や人材採用・人材育成、新規事業への投資など企業価値の向上に向けた取り組みに活用できます。 

    また、手元資金に余裕を持てることで、急な設備故障や原材料価格の高騰、取引先からの入金遅延など、予期せぬ資金需要にも対応しやすくなります。資金不足によって必要な支出や投資を先送りするリスクを抑えられるため、安定した事業運営につながるでしょう。 

    特に、赤字から回復した直後の企業は、利益が出始めても十分な自己資金を蓄積できていないケースがあります。そのような局面では、財務基盤を立て直しながら成長に必要な投資を継続しやすくなるため、事業再生や持続的な企業成長を後押しする効果が期待できます。 

    経営計画(収支予測)が立てやすくなる 

    繰越欠損金を適切に管理することで、将来の利益計画や収支予測を立てやすくなります。

    企業は事業計画を策定する際、売り上げや利益だけでなく、設備投資や人件費、借入金の返済など、さまざまな支出を見込みながら資金計画を作成します。繰越欠損金の残高や利用可能額を把握しておくことで、将来の税負担も考慮した収支予測を行いやすくなり、中長期的な経営計画の精度向上につながります。 

    さらに、金融機関や投資家などへ事業計画を説明する際にも、利益計画や資金計画の根拠を整理しやすくなります。将来の見通しを客観的な数値に基づいて説明できることは、経営の透明性を示し、金融機関や投資家からの信頼を得る上でも役立ちます。 

    黒字化へのモチベーションになる 

    繰越欠損金は、将来利益が出た際に活用できる制度であるため、赤字となった企業が黒字化を目指すモチベーションになります。 

    企業では、創業直後や新規事業への先行投資、景気の悪化などにより、一時的に赤字となることがあります。しかし、繰越欠損金を将来活用できることから、赤字が発生した年度だけで判断するのではなく、中長期的な視点で事業の立て直しや収益改善に取り組みやすくなります。 

    また、黒字へ転換した際には繰越欠損金を活用できるため、事業の収益性を高める取り組みを継続する後押しにもなります。短期的な利益だけを追うのではなく、将来を見据えた経営を行いやすくなる点もメリットです。 

    繰越欠損金を利用するための条件 

    繰越欠損金を利用するためにはいくつかの条件があります。具体的な条件は次のとおりです。

    • 欠損金が発生した事業年度に青色申告をしている
    • 継続して確定申告書を提出している
    • 帳簿書類を正しく記録・保存している
    • 繰越控除の対象となる期間内(現在は原則10年以内)に発生した欠損金である

     それぞれについて詳細に説明します。 

    欠損金が発生した事業年度に青色申告をしている 

    繰越欠損金の適用を受けるためには、欠損金が発生した事業年度に青色申告を行っていることが条件です。青色申告は、正規の簿記による記帳や帳簿書類の保存、正確な所得計算などが求められる制度であり、適正な会計処理が前提となっています。 

    青色申告の承認を受けるには、原則として適用を受けたい事業年度開始日の前日までに税務署へ申請書を提出する必要があります。一度承認を受ければ、その後に白色申告へ変更した場合でも、青色申告の事業年度に生じた欠損金については繰越控除を受けることが可能です。 

    ただし、特定支配関係の発生後に旧事業を廃止した場合や、旧事業の規模を大きく上回る借り入れを行った場合などは例外です。一定の要件に該当すると繰越欠損金の控除が認められなくなるため、制度の適用条件を十分に確認しておくことが重要です。

    継続して確定申告書を提出している 

    繰越欠損金の適用を受けるためには、欠損金が発生した事業年度以降も継続して確定申告書を提出する必要があります。これは、税務署が欠損金の金額や繰越状況を確認し、適正に制度が利用されているかを把握するために求められている条件です。 

    繰越欠損金は翌事業年度以降に利用する制度であるため、毎年の確定申告を通じて残高や控除額を申告しなければなりません。たとえ当期に欠損金を利用しない場合や課税所得が発生していない場合でも、継続して申告を行うことが重要です。 

    もし確定申告を怠ると、繰越欠損金が残っていても繰越控除の適用を受けられなくなる可能性があります。そのため、制度のメリットを十分に活用するためには、毎事業年度に正確な確定申告を継続して行うことが欠かせません。 

    帳簿書類を正しく記録・保存している 

    繰越欠損金の適用を受けるためには、欠損金が発生した事業年度の帳簿書類を正しく記録し、適切に保存していることが必要です。保存対象には、総勘定元帳や仕訳帳などの帳簿類に加え、貸借対照表や損益計算書、契約書、注文書、領収書などの関連書類が含まれます。 

    また、電子帳簿保存法に対応した電子帳簿や電子取引データについても保存が求められます。これらの書類は、税務調査の際に欠損金の発生事実や金額の妥当性を確認するための重要な証拠となるため、適切な管理が欠かせません。 

    さらに、繰越欠損金を利用する場合の保存期間は原則10年間であり、通常の帳簿書類の保存期間である7年よりも長くなります。保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から起算されるため、制度を活用する際は長期的な書類管理体制を整えておくことが重要です。 

    繰越控除の対象となる期間内(現在は原則10年以内)に発生した欠損金である

    繰越欠損金を利用するためには、繰越控除の対象期間内に発生した欠損金であることが必要です。現在は、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に生じた欠損金について、原則10年間にわたり翌事業年度以降へ繰り越すことが認められています。 

    ただし、繰越期間を過ぎた欠損金は利用できません。たとえ未使用の欠損金が残っていても、10年を超えると課税所得との相殺はできなくなり、その時点で失効します。そのため、欠損金が発生した年度を正確に把握しておくことが重要です。 

    また、欠損金の発生時期によって繰越可能期間が異なる場合もあります。繰越欠損金を有効に活用するためには、残高や利用期限を継続的に管理し、将来の利益計画や税負担の見通しと併せて活用することが求められます。 

    繰越欠損金の確認方法 

    繰越欠損金を確認するためには次の方法があります。 

    • 法人税申告書で確認する 
    • 別表七(一)で確認する
    • 繰越欠損金の残高を確認する

     それぞれについて詳細に説明します。 

    法人税申告書で確認する 

    繰越欠損金は、法人税申告書を確認することで把握できます。特に「別表七(一)」には、過去に発生した欠損金の残高や当期に控除した金額、翌期へ繰り越す金額などが記載されており、繰越欠損金の状況を確認する際の重要な資料です。 

    別表七(一)を確認することで、現在利用可能な繰越欠損金の残高だけでなく、欠損金が発生した事業年度も把握できます。そのため、将来の黒字とどの程度相殺できるのかを確認でき、将来の税負担予測や利益計画の策定に役立てることが可能です。 

    また、繰越欠損金には原則10年の繰越期間が設けられているため、有効期限の管理も欠かせません。法人税申告書を定期的に確認することで、欠損金の失効を防ぎながら、節税効果を最大限に活用し、設備投資や内部留保を見据えた経営計画の立案につなげることができます。 

    別表七(一)で確認する

    別表七(一)は、法人が保有している繰越欠損金の残高や利用状況を確認するための書類です。過去の赤字がどれだけ残っているのか、当期にいくら控除したのかを把握できるため、繰越欠損金の管理において重要な役割を果たします。 

    繰越欠損金は、将来の黒字と相殺することで課税所得を減らし、将来の税負担を軽減できる税務上の権利です。そのため、別表七(一)を確認することで、将来の税負担予測や利益計画を立てやすくなります。また、節税によって確保した資金を内部留保や設備投資などに活用することも可能です。 

    さらに、繰越欠損金には原則10年の繰越期間が設けられています。別表七(一)では残高だけでなく発生年度も確認できるため、有効期限の管理に役立ちます。期限切れによる権利の失効を防ぐためにも、定期的に内容を確認しながら経営計画へ反映させることが重要です。 

    繰越欠損金の残高を確認する

    繰越欠損金を有効に活用するためには、欠損金が発生した年度や残高を正確に管理することが重要です。繰越欠損金は将来の黒字と相殺することで税負担を軽減できるため、現在どの程度の欠損金が残っているのかを継続的に把握しておく必要があります。 

    また、繰越欠損金には原則10年の繰越期間が設けられているため、有効期限の管理も欠かせません。期限を過ぎると未使用の欠損金は失効してしまうため、法人税申告書の別表七(一)などを活用し、発生年度や残高を定期的に確認することが大切です。 

    さらに、将来の利益計画や税負担予測と併せて管理することも重要です。黒字化の見込みや設備投資計画などを踏まえて活用することで、節税効果を最大化できます。適切な管理は資金繰りの改善や経営計画の精度向上にもつながるため、経営戦略の一環として継続的に取り組むことが求められます。 

    繰越欠損金の税効果会計

    ここでは、繰越欠損金の税効果会計について説明します。税効果会計とは、会計上の利益と税務上の所得の違いによって生じる税負担のズレを調整するための会計処理です。企業の実際の経営成績や財務状況を財務諸表に適切に反映することを目的としています。 

    税効果会計とは

    企業が作成する財務諸表の利益と、税法に基づいて計算される課税所得は必ずしも一致しません。例えば、将来の支出に備えて計上する引当金は会計上は費用となりますが、税務上は一定の要件を満たすまで損金として認められないことがあります。また、配当金のように会計上は収益でも、税務上は課税対象とならないケースもあります。 

    税効果会計とは、このような会計と税務の認識時期や計算方法の違いによって生じる差異を調整し、税負担を適切な会計期間へ配分する仕組みです。これにより、各期の利益と税金の対応関係が明確になり、企業の財務状況をより正確に把握できます。 

    繰越欠損金が税効果会計の対象になる理由 

    繰越欠損金は、将来の課税所得と相殺することで法人税負担を軽減できるため、税効果会計の対象となります。将来の税金を減らす効果が見込まれることから、その効果を財務諸表へ適切に反映する必要があります。 

    税効果会計では、将来利用できる繰越欠損金に対応する税金軽減額を「繰延税金資産」として計上します。ただし、将来十分な課税所得が見込まれなければ、繰延税金資産として認識することはできません。 

    なお、税効果会計は主に上場企業や大企業で適用される会計処理です。中小企業では適用が義務付けられていない場合も多く、繰越欠損金があっても税効果会計を行わないケースがあります。 

    繰延税金資産の計上

    繰延税金資産を計上することで、欠損金によって将来節税できる見込み額を資産として認識できます。その結果、会計上の利益と税務上の所得の差異を適切に調整し、企業の財務状況をより正確に表すことが可能です。 

    ただし、繰延税金資産は将来の課税所得によって回収されることが前提です。そのため、将来十分な利益を計上できる見込みがなければ計上できない場合があり、回収可能性を慎重に検討する必要があります。 

    法人税等調整額との関係 

    法人税等調整額は、税効果会計によって生じた税金費用の調整額を表す勘定科目です。繰延税金資産を計上する際には、その相手勘定として法人税等調整額を用いて処理し、会計上の税金費用を適切に調整します。 

    繰延税金資産と法人税等調整額は対になる関係にあり、繰延税金資産を計上すると法人税等調整額が発生します。これにより、将来の税負担軽減効果を当期の財務諸表へ反映し、利益と税金の対応関係を適切に示すことができます。 

    なお、繰延税金資産の金額は、将来減算一時差異や繰越欠損金に法定実効税率を乗じて算定します。そのため、将来の税負担軽減額を合理的に見積もり、各会計期間へ適切に配分することが重要です。 

    [参考:企業会計基準委員会「中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針」

    欠損金が発生・解消したときの仕訳 

    欠損金が発生した場合、将来の課税所得と相殺できる可能性が高ければ、税効果会計に基づいて繰延税金資産を計上します。これは、将来の税負担軽減効果を財務諸表に反映するための会計処理です。 欠損金の仕訳について、欠損金が発生した場合、解消した場合、回収可能性がなくなった場合の3つのパターンについて解説します。

    欠損金が発生したときの仕訳例

    例えば、当期に100万円の欠損金(税務上の赤字)が発生し、将来十分な課税所得が見込まれるため、繰延税金資産を計上できると判断した場合を考えます。実効税率が30%の場合、将来の税負担軽減額は30万円(100万円×30%)となります。 

    そのため、将来の節税効果に相当する30万円を繰延税金資産として計上します。また、その相手勘定として法人税等調整額を計上することで、将来の税負担軽減効果を当期の財務諸表へ反映します。 

    決算時には、借方に「繰延税金資産」30万円、貸方に「法人税等調整額」30万円を計上します。これにより、将来利用できる繰越欠損金の税効果を財務諸表へ適切に反映できます。

    【仕訳例】

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    繰延税金資産30万円法人税等調整額30万円

    繰越欠損金を解消したときの仕訳 

    繰越欠損金を解消したときは、過去に計上していた繰延税金資産を取り崩す処理を行います。これは、繰越欠損金を利用して課税所得を減額したことで、将来の税負担軽減効果の一部または全部が実現したためです。 

    例えば、当期に黒字が発生し、その利益と繰越欠損金を相殺した場合、利用した欠損金に対応する繰延税金資産を減額します。この際、取り崩した金額は法人税等調整額として処理し、税効果会計上の税金費用を適切に調整します。 

    この処理によって、将来の節税効果として資産計上していた金額が実際の税負担軽減として実現したことを財務諸表に反映できます。また、繰越欠損金の残高や繰延税金資産の残高も減少するため、今後利用可能な欠損金の金額や回収可能性を継続的に管理することが重要です。

    【仕訳例】

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    法人税等調整額30万円繰延税金資産30万円

    回収可能性がなくなったときの仕訳 

    回収可能性とは、計上した繰延税金資産を将来の課税所得によって回収できるかどうかを判断する考え方です。繰延税金資産は将来の税負担を軽減する効果を表すため、その効果を実現できる見込みがあることが前提となります。 

    業績悪化や事業の縮小・廃止、会社の存続が困難などにより回収可能性が低下した場合は、過去に計上した繰延税金資産を取り崩し、損失として処理します。

    例えば、過去に計上した繰延税金資産が30万円ありましたが、業績悪化によって将来の課税所得が見込めなくなり、回収可能性がないと判断された場合を考えます。この場合、計上済みの繰延税金資産を取り崩す必要があります。 

    仕訳では、借方に「法人税等調整額」30万円、貸方に「繰延税金資産」30万円を計上します。これにより、これまで資産として計上していた将来の税負担軽減効果を取り消すことになります。この処理によって当期の費用が増加し、利益は減少します。

    【仕訳例】

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    法人税等調整額30万円繰延税金資産30万円

    繰越欠損金があっても、将来の課税所得が十分に見込めない場合には税負担の軽減が見込めないため、繰延税金資産の回収可能性を、利益計画や経営状況等を踏まえて慎重に検討する必要があります。企業は繰延税金資産を計上する時だけでなく、その後も期末ごとに回収可能性を継続的に見直し、必要に応じて計上額の見直し(取り崩し)を行い、財務諸表に適切に反映することが重要です。

    繰越欠損金の使い方のルール 

    繰越欠損金を使うためには次のルールがあります。 

    • 古い年度の欠損金から順番に使う
    • 黒字年度での利用をスキップできない
    • 相殺しきれない欠損金は翌期以降に繰り越す 

    それぞれについて詳細に説明します。 

    古い年度の欠損金から順番に使う 

    繰越欠損金を利用する際は、最も古い事業年度に発生した欠損金から順番に使用するルールがあります。これは、繰越欠損金に利用期限が設けられているためであり、期限切れによる失効を防ぐことを目的としています。 

    例えば、複数年度にわたって繰越欠損金がある場合は、新しい年度の欠損金を優先して使用することはできません。原則として、発生年度が古いものから順次課税所得と相殺していきます。 

    なお、繰越欠損金は法人税申告書の別表七(一)で発生年度ごとに管理されています。そのため、適切に申告を行っていれば残高や利用状況を確認でき、有効期限を意識しながら計画的に活用することが可能です。 

    黒字年度での利用をスキップできない 

    繰越欠損金は、黒字が発生した事業年度に任意で利用を見送ることはできません。課税所得が生じた場合は、法令で定められたルールに従い、利用可能な繰越欠損金を控除します。そのため、「将来もっと利益が出そうだから今回は使わない」といった判断は認められていません。繰越欠損金は発生年度の古いものから順に使用され、課税所得との相殺が行われます。 

    また、繰越欠損金には利用期限があるため、恣意的なタイミング調整による節税はできません。適切な税務処理を行うためにも、毎期の所得状況や繰越欠損金の残高を正確に把握しながら管理することが重要です。 

    相殺しきれない欠損金は翌期以降に繰り越す 

    繰越欠損金は、当期の課税所得と相殺しても使い切れなかった場合、残額を翌事業年度以降へ繰り越すことができます。そのため、一度に全額を控除できなくても、将来の黒字と順次相殺しながら活用することが可能です。 

    ただし、この制度を利用するためには、青色申告の承認を受けていることや、連続して確定申告を行っていることが必要です。また、帳簿書類の作成や保存など、適切な会計処理を継続して行わなければなりません。 

    さらに、繰越欠損金の適用を受ける場合は、関連する帳簿書類を長期間保存することが求められます。残高や利用状況を適切に管理しながら活用することで、将来の税負担を計画的に軽減できます。 

    繰越欠損金の注意点 

    繰越欠損金の注意点として次のものが挙げられます。 

    • 赤字が解消されるわけではない
    • 融資審査に影響する可能性がある
    • 10年の有効期限がある
    • 繰越欠損金として控除できる金額には上限がある 

     それぞれについて詳細に説明します。 

    赤字が解消されるわけではない 

    繰越欠損金を利用しても、企業の赤字そのものが解消されるわけではありません。繰越欠損金は、過去の税務上の赤字を将来の黒字と相殺し、法人税負担を軽減するための制度であり、経営状況を直接改善するものではありません。 

    例えば、繰越欠損金によって税負担が減少しても、売り上げの回復や利益率の改善がなければ、企業の収益力や財務体質は変わりません。特に債務超過の企業では、税負担の軽減だけで財務問題を解決することは困難です。 

    そのため、繰越欠損金はあくまでも経営改善を支援する制度として活用することが重要です。黒字化に向けた事業改善やコスト削減、収益力の向上などと組み合わせることで、企業の持続的な成長につなげることができます。 

    融資審査に影響する可能性がある 

    繰越欠損金は融資審査に影響する可能性があります。銀行は法人税申告書の別表七を確認し、繰越欠損金の残高や発生時期を把握します。また、過去の欠損金が残っていることは、「自己資本が毀損(きそん)している(債務超過、またはそれに近い状態)」と判断される要因になることもあります。 

    ただし、繰越欠損金があることだけで融資に不利になるわけではありません。銀行は欠損金の金額だけでなく、その発生原因や現在の収益力、将来の利益計画なども総合的に評価します。一時的な事業再編や設備投資などが原因の赤字であれば、必ずしもマイナス評価とはなりません。 

    また、繰越欠損金には原則10年の利用期限があるため、銀行は期限内に黒字と相殺できるかどうかにも注目します。利益計画や解消計画を示し、繰越欠損金を計画的に活用できることを説明すれば、融資審査でも前向きに評価される可能性があります。 

    10年の有効期限がある 

    繰越欠損金には利用期限があり、原則として欠損金が発生した事業年度の翌年から最大10年間にわたって繰り越すことができます。期限内であれば、将来発生する黒字と相殺し、法人税負担を軽減することが可能です。 

    なお、繰越期間は税制改正によって変更されており、平成30年4月1日以後に開始する事業年度に生じた欠損金から10年となっています。そのため、自社の欠損金がどの制度の対象となるのかを確認しておくことが重要です。 

    また、繰越欠損金は発生年度の古いものから順番に利用するルールがあります。期限を過ぎると未使用の欠損金は失効してしまうため、残高や有効期限を定期的に確認しながら計画的に活用する必要があります。 

    繰越欠損金として控除できる金額には上限がある 

    繰越欠損金として控除できる金額には上限があります。中小法人は原則として当期の課税所得まで全額を控除できますが、課税所得を超えて控除できません。控除しきれなかった欠損金は翌事業年度以降へ繰り越されます。 

    一方、資本金1億円超の法人や一定の大規模法人の子会社などは、繰越欠損金の控除額が課税所得の50%までに制限されています。そのため、欠損金が多く残っていても、一度に全額を相殺できるわけではありません。 

    また、繰越欠損金は発生年度の古いものから順番に利用するルールがあります。控除限度額や繰越期間を考慮しながら、課税所得や欠損金の残高を毎年確認し、計画的に管理・活用することが重要です。 

    M&Aで繰越欠損金を活用する際のポイント 

    M&Aで繰越欠損金を活用する際のポイントとして次が挙げられます。 

    • 繰越欠損金を引き継げるケースがある
    • 節税目的だけの買収は認められない
    • 事業継続性が重視される
    • 税務リスクを事前に確認する 

    それぞれについて詳細に説明します。 

    繰越欠損金を引き継げるケースがある 

    M&Aでは、一定の要件を満たす場合に限り、被合併法人の繰越欠損金を引き継ぐことができます。ただし、全ての合併で認められるわけではなく、税務上の要件を満たした適格合併であることが前提となります。 

    また、原則として支配関係が5年を超えて継続していることが求められます。ただし、5年未満でも、みなし共同事業要件を満たす場合や、一定の時価純資産超過額がある場合には、繰越欠損金を引き継げる可能性があります。 

    このように、繰越欠損金の引継ぎには複数の要件が設けられており、M&Aの形態や支配関係、事業の継続性などが重要な判断基準となります。税務上の取り扱いは複雑なため、事前に専門家へ相談しながら慎重に検討することが大切です。 

    節税目的だけの買収は認められない 

    M&Aでは、繰越欠損金を活用した節税だけを目的とする買収は認められていません。税法では、事業実態のない租税回避行為を防ぐため、繰越欠損金の引継ぎに厳しい要件が設けられています。 

    例えば、繰越欠損金を多額に保有する休眠会社を買収し、自社の黒字事業を移転して欠損金と相殺するといった手法は、節税目的のM&Aと判断される可能性があります。このようなケースでは、繰越欠損金の利用が制限されることがあります。 

    そのため、M&Aで繰越欠損金を活用する際は、節税効果だけでなく、事業継続や経営統合などの合理的な目的が重要です。税務上の要件を十分に確認し、適切な手続きを踏んで進めることが求められます。 

    事業継続性が重視される 

    M&Aで繰越欠損金を活用するためには、事業継続性が重視されます。税務上は、単に会社を買収するだけではなく、被買収会社が行っていた事業を合併後も継続して営んでいることが重要な判断基準となります。 

    例えば、買収後すぐに事業を廃止したり、大幅に事業内容を変更したりした場合は、繰越欠損金の引継ぎが制限される可能性があります。一方、従業員や事業資産を引き継ぎ、事業を継続している場合は、税務上も実態のあるM&Aとして評価されやすくなります。 

    このように、繰越欠損金は事業実態を伴う組織再編であることを前提として認められる制度です。M&Aを実施する際は、事業継続性を意識した統合計画を策定し、税務上の要件を満たしているかを事前に確認することが重要です。 

    税務リスクを事前に確認する 

    M&Aで繰越欠損金を活用する際は、事前に税務リスクを十分に確認することが重要です。繰越欠損金があっても、税務上の要件を満たさなければ引き継げない場合や、利用が制限される場合があります。 

    特に、適格合併の要件や支配関係の継続期間、事業継続性などは重要な確認事項です。また、繰越欠損金の残高や繰越期間、有効期限、税務申告や帳簿保存の状況についても事前に確認しておく必要があります。 

    これらの税務リスクを見落とすと、期待していた節税効果が得られない可能性があります。そのため、デューデリジェンスを通じて税務上の問題点を把握し、税理士などの専門家と相談しながら慎重にM&Aを進めることが重要です。 

    繰越欠損金に関するQ&A 

    最後に、繰越欠損金に関するよくある質問とその回答を紹介します。 

    繰越欠損金は個人事業主も利用できるか 

    個人事業主も赤字を翌年以降へ繰り越すことはできます。ただし、法人の「繰越欠損金」とは制度の内容が異なり、同じルールが適用されるわけではありません。 

    個人事業主の場合は、青色申告を行っていることを条件に、事業で生じた純損失を原則3年間繰り越し、翌年以降の所得から控除できます。また、一定の要件を満たせば、損失を前年へ繰り戻して所得税の還付を受けられる場合もあります。 

    一方、法人の繰越欠損金は原則10年間繰り越すことができ、課税所得と相殺して法人税負担を軽減します。そのため、個人事業主と法人では、繰越期間や適用要件などの制度内容に違いがある点に注意が必要です。 

    会社を解散した場合の繰越欠損金はどうなるか 

    会社を解散した場合、繰越欠損金は解散事業年度や特定の条件下で利用することができます。例えば、解散手続きの過程で債務免除益などの課税所得が発生した場合は、残っている繰越欠損金や一定の費用と相殺できることがあります。 

    そのため、解散前には繰越欠損金の残高や有効期限、今後発生する清算費用などを確認し、課税所得との相殺が可能かを事前に検討しておくことが重要です。 

    また、債務整理や納税後に残った残余財産を株主へ分配する場合は、税務上「みなし配当」として課税されることがあります。解散時は繰越欠損金だけでなく、株主への課税も含めた税務全体を考慮しながら手続きを進めることが大切です。 

    白色申告でも繰越欠損金は利用できるか 

    原則として、白色申告の事業年度に発生した欠損金は、翌事業年度以降へ繰り越すことはできません。

    一方、欠損金が発生した事業年度に青色申告の承認を受けていれば、その後の事業年度が白色申告であっても、連続して確定申告書を提出しているなど、法令で定められた要件を満たす場合には、青色申告時に生じた繰越欠損金を控除できます。 

    ただし、白色申告の事業年度に新たに発生した欠損金については繰り越すことができません。繰越欠損金を継続的に活用するためには、適切な申告を継続して行うことが重要です。 

    会社の売却価格に影響するか 

    繰越欠損金は、将来の課税所得と相殺して法人税負担を軽減できるため、企業価値や売却価格に影響する可能性があります。将来の節税効果が見込まれることから、企業価値評価においてプラス要素として考慮される場合があります。 

    一般的には、繰越欠損金に法人実効税率を乗じた税効果額が評価の目安となります。ただし、その価値を十分に活用できるだけの利益が将来見込めるか、税務上の要件を満たして利用できるかなども併せて判断されます。 

    そのため、繰越欠損金があっても必ず売却価格へ反映されるわけではありません。買い手の収益計画や価格交渉によって評価が異なるため、M&Aでは税務上の価値を適切に説明し、企業価値として正しく評価してもらうことが重要です。 

    まとめ

    繰越欠損金とは、企業が税負担を軽減し、経営の安定を図るために重要な制度です。特に、過去に赤字を抱えた企業が復活する際、繰越欠損金を活用することで、将来の利益と相殺して法人税の負担を減らせる点が大きなメリットです。

    しかし、利用には一定の条件やルールがあるため、しっかりと理解しておくことが重要です。例えば、控除できる期間や限度額、必要な手続きなどを把握しておくことで、効果的に制度を活用できます。また、M&Aの場面でも繰越欠損金の存在は戦略的に重要な役割を果たします。

    これらを踏まえ、税理士や専門家に相談しながら、自社にとって最適な利用方法を検討してみてください。繰越欠損金を正しく理解し、賢く活用することで、企業の財務基盤をより強固にする一歩を踏み出しましょう。

    M&AロイヤルアドバイザリーではM&Aや事業承継に関するご相談を承っております。M&Aや経営課題に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。

    CONTACT

    お問い合わせ

    Feel free to contact us.

    当社は完全成功報酬ですので、
    ご相談は無料です。
    M&Aが最善の選択である場合のみ
    ご提案させていただきますので、
    お気軽にご連絡ください。

    無料
    お気軽にご相談ください
    phone
    03-6269-3040
    受付:平日 9:00~18:00
    icon 無料相談フォーム
    icon
    トップへ戻る

    M&Aロイヤルアドバイザリーは、
    一般社団法人 M&A仲介協会の正会員です。