減価償却費とは?仕訳やメリット、実務での注意点をわかりやすく解説

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減価償却費とは

減価償却費とは、損益計算書の販管費に分類される費用です。また、減価償却とは、事業で使用する建物や機械、車両などの固定資産を購入した際に、その費用を使用期間に応じて分割して計上する会計処理を表します。減価償却は単なる帳簿上の手続きではなく、企業の正確な損益計算や税務対策、さらにはM&Aの企業価値評価にまで影響を与える重要な要素です。 

しかし、減価償却の仕訳やメリット、計算手順について十分に理解している経営者や経理担当者は意外に少なく、適切な処理ができていないために節税機会を逃したり、税務調査で指摘を受けたりするケースも見受けられます。本記事では、減価償却の基本的な考え方から実務での活用方法、注意すべきポイントまで、中小企業の実情に合わせてわかりやすく解説していきます。 

減価償却費とは?減価償却の仕組みをわかりやすく解説

減価償却とは、建物や機械設備、車両、備品などの固定資産を購入したときに、その取得費用を使用する期間にわたって少しずつ費用計上していく処理です。通常の資産であれば購入時に全額費用計上しますが、長期間使用する減価償却資産は金額が高額となることも多く、一度に計上してしまうと適切な財務状況を判断できなくなるおそれがあります。

まずは減価償却の意味や仕組み、なぜ必要なのかについてわかりやすく解説します。

減価償却費の意味

減価償却費をひと言でいうと、固定資産の取得費用を使用期間に応じて分けて計上する費用です。例えば、事業で使う車両や機械を購入した場合、その資産は購入した年だけでなく、翌年以降も継続して使われます。それにもかかわらず、購入時に全額を一度に費用計上してしまうと、その年だけ費用が大きくなり、翌年以降の利益との比較がしにくくなります。

固定資産の取得費用を耐用年数に応じて複数年に分け、毎年少しずつ費用として計上していくことで、企業は正確な利益と費用のバランスを比較評価することができます。なお、減価償却費は計上したからといって、毎年その金額の現金が出ているわけではありません。

実際の支払いは資産を購入したときに済んでおり、その費用が会計上では各年度に配分されていきます。この点は、現金支出を伴う通常の経費との大きな違いです。また、減価償却費は、取得価額、耐用年数、償却方法などをもとに計算することができます。具体的な計算方法には定額法や定率法があり、資産の種類や適用ルールによって扱いが異なります。

減価償却の仕組み

減価償却とは、固定資産の取得費用を、その資産が使用される期間にわたって配分する仕組みです。 考え方としては、「資産を買った年にまとめて費用にする」のではなく、「使って便益を受ける期間に応じて費用化する」と捉えるとわかりやすいでしょう。

例えば、1,200万円で機械設備を購入し、その耐用年数が10年だとします。定額法で計算する場合は、原則として毎年120万円ずつ減価償却費を尊敬計算書に計上していくことになります。もし購入した年に1,200万円を全額費用にすると、その年の利益だけが大きく圧迫され、翌年以降は費用がまったく計上されない状態になります。

これでは、各年度の経営成績を正しく比較することができません。しかし、減価償却を行えば、資産の使用実態に合わせて損益を把握しやすくなります。

なぜ減価償却が必要なのか|中小企業における重要性

減価償却が必要とされるのは、各年度の利益を実態に近い形で把握できるためです。減価償却費を計算し、正しく処理することで、各年度の損益がより実態に近づき、経営状況を継続的に把握しやすくなります。これは経営者だけでなく、金融機関や投資家など、会社の数字を見る立場にとっても重要です。

中小企業にとっては、減価償却費が税務面や資金計画に与える影響も無視できません。減価償却費は、一定のルールに従って損金算入できるため、課税所得を適切に圧縮する効果があります。例えば、大きな設備投資をした年でも、取得費用を一括で落とすのではなく、毎年の費用として計上することで、税負担を平準化しやすくなります。

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    減価償却の対象になる資産・ならない資産

    減価償却の対象となる資産かどうかの判断基準は、事業の用に供している資産であること、時間の経過により価値が減少すること、使用可能期間が1年以上であること、そして一定額以上の取得価額であることです。これらの条件を満たす資産が減価償却の対象となりますが、実務では判断に迷うケースも多く、正しい理解が求められます。

    ここでは、減価償却の対象となる資産、ならない資産についてわかりやすく解説します。

    減価償却の対象になる主な資産

    減価償却の対象になるのは、時間の経過や使用によって価値が減っていく固定資産です。事業で長く使う資産を購入した場合、原則として購入した年に全額を費用にするのではなく、耐用年数に応じて少しずつ費用計上していきます。

    代表的なのは、建物、建物附属設備、機械装置、車両運搬具、工具・器具・備品などです。例えば、工場で使う機械、営業車、オフィスで使うパソコンや机、店舗の空調設備などがこれにあたります。こうした資産は、購入して終わりではなく、数年にわたって事業に使われるため、その利用期間に応じて費用配分する考え方がとられます。

    また、形のある資産だけでなく、一定の無形固定資産も減価償却の対象となります。例えば、ソフトウェアやのれんなどです。ただし、すべての資産が同じ扱いになるわけではないため、固定資産なら一律に同じ方法で処理すると考えないことが大切です。

    実務では、「高額なもの=減価償却する」と思われがちですが、正確には事業で継続して使用する資産で、価値が時間とともに減少するものが対象です。減価償却費を正しく理解するには、まずどの資産が対象になるのかを押さえておきましょう。

    減価償却の対象にならない主な資産

    一方で、固定資産として扱われるものの中には、減価償却の対象にならない資産もあります。代表的なのが土地です。土地は、通常の使用や時間の経過によって価値が減少していくものとして扱われないため、減価償却は行いません。

    また、借地権や骨董品、美術品なども、性質によっては減価償却の対象外となることがあります。例えば、価値が時間の経過で減るとはいえないものや、そもそも耐用年数という考え方になじまないものは、減価償却の対象にはなりません。

    建物と土地を一緒に購入した場合でも、建物部分は減価償却の対象になりますが、土地部分は対象外です。両者を区別せずに処理すると、減価償却費の計算を誤る原因になります。減価償却の可否は、金額の大きさだけで決まるものではありません。資産の性質によって処理方法が変わるため、購入時には「固定資産かどうか」だけでなく、「減価償却の対象かどうか」まで確認することが重要です。

    少額資産は取扱いが異なる

    取得価額が一定金額未満の少額資産については、通常の減価償却とは異なる処理が認められる場合があります。そのため、固定資産を購入したからといって、すべて耐用年数に応じて減価償却するとは限りません。中小企業では、要件を満たすことで少額減価償却資産の特例を利用できる場合もあります。

    例えば、取得価額が30万円未満の資産については、購入した事業年度に全額を費用計上できるケースがあります。また、取得価額が10万円以上20万円未満の場合、一括償却資産として3年にわたり均等に処理する方法が使えることもあります。

    こうした制度がある理由は、少額の資産まで厳密に通常の減価償却で処理すると、実務負担が大きくなりやすいためです。金額が小さい資産については、より簡便な方法で処理できるようにルールが設けられています。ただし、金額が小さいからといって必ず一括で費用にできるわけではありません。

    取得価額の基準や事業者の区分、適用できる特例の有無によって扱いは変わります。少額資産は一見わかりやすそうですが、実務では判断を誤りやすいポイントでもあります。通常の減価償却をするのか、特例や別の処理方法を使えるのかを確認したうえで対応することが大切です。

    減価償却の対象資産の見分け方

    減価償却の対象になるかどうかの簡単な見分け方についても紹介します。

    事業用資産かつ経年劣化する有形資産の見分け方 

    有形資産のうち減価償却の対象となるのは、実際に事業で使用され、かつ時間の経過とともに価値が減少する資産です。具体的には建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品などが該当します。判断のポイントは以下の通りです。

    • 事業目的で実際に使用されている資産
    • 物理的または機能的な劣化が生じる資産
    • 使用可能期間が1年を超える資産
    • 取得価額が10万円以上の資産 

    一方、建設中の建物や未稼働の機械設備は、事業の用に供していないため減価償却の対象外となります。また、事業用ではなく役員の個人的な用途に使用している資産も対象外です。ただし、建設中であっても完成部分が使用されている場合や未稼働の機械設備が稼働できる状態で維持されている場合は減価償却の対象となるケースもあります。

    特許権・ソフトウェアなど無形資産の判断基準 

    無形資産についても、一定の条件を満たせば減価償却の対象となります。主な対象資産は特許権、商標権、著作権、ソフトウェア、のれんなどです。無形資産の場合、原則として定額法による償却を行います。 

    • 特許権や商標権: 法定保護期間または契約期間が耐用年数。
    • ソフトウェア: 税法上、利用目的に応じて定められており、「複写して販売するための原本」や「開発研究用のもの」は3年、一般的な社内利用などの「その他のもの」は5年で償却。
    • のれん: M&A時に発生。会計上は「20年以内の効果が及ぶ期間」で償却するが、税務上は「資産調整勘定」として特定のM&A(事業譲渡など)の場合に限り5年間で均等償却。両者のルールは大きく異なるため注意が必要。 

    土地・美術品など価値が下がらない資産の見分け方 

    減価償却の対象とならない資産は、時間の経過により価値が減少しないと考えられる資産です。代表的なものに土地、美術品、骨董品、金地金などがあります。

    • 土地:時間経過による価値減少がないため非償却資産
    • 美術品:100万円以上は非償却資産、100万円未満は償却対象
    • 骨董品:歴史的価値があり価値減少しないため非償却資産
    • 電話加入権:現在は価値がほぼゼロだが制度上は非償却資産 

    ただし、美術品については平成27年の税制改正により、取得価額が100万円未満のものは減価償却資産として取り扱われることになりました。また、ゴルフ会員権のように価値の変動が大きい資産については、実質的な価値減少が生じた場合に評価損として処理することがあります。 

    参考:国税庁「減価償却資産」

    減価償却の仕訳と勘定科目

    減価償却費は、計算して終わりではありません。毎期の決算で適切に仕訳を行い、帳簿や財務諸表に反映させてはじめて、正しい会計処理になります。

    減価償却の記帳方法には、大きく分けて「直接法」と「間接法」の2つがあります。どちらも減価償却費を計上する点は同じですが、固定資産の帳簿上の見せ方や、取得価額・償却累計額の管理方法が異なります。ここでは、減価償却費の基本的な勘定科目と、直接法・間接法の違い、さらに処分や売却時の仕訳まで順に確認していきましょう。

    減価償却の勘定科目

    減価償却を行うときは、通常、販管費の費用として「減価償却費」を計上します。これは損益計算書に表示される勘定科目で、固定資産の取得費用を各事業年度に配分した結果として発生するものです。

    一方、貸借対照表では、減価償却の記録方法によって使う勘定科目が異なります。直接法では、固定資産そのものの帳簿価額を直接減額します。例えば、備品であれば、「備品」の金額自体を減らしていく処理です。これに対し間接法では、固定資産とは別に「減価償却累計額」という勘定科目を使い、取得価額を残したまま償却額を累計管理します。

    つまり、損益計算書上では「減価償却費」、貸借対照表上では「固定資産」または「減価償却累計額」が関係してくるということです。勘定科目の役割を分けて理解しておくと、仕訳の意味がつかみやすくなります。

    減価償却の直接法による仕訳

    直接法では、減価償却費を計上するたびに、固定資産そのものの帳簿価額を直接減額します。 帳簿上の資産残高がそのまま未償却残高になるため、現在の帳簿価額を把握しやすいのが特徴です。この方法では、借方に減価償却費を計上し、貸方に該当する固定資産勘定を記入します。

    例えば、取得価額100万円、年間の減価償却費25万円の備品がある場合、仕訳は次のようになります。

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    減価償却費250,000円備品250,000円

    この場合の帳簿上の備品残高は75万円になります。

    また、取得価額300万円の車両の年間減価償却費が50万円の場合、以下のような仕訳となります。 

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    減価償却費500,000車両運搬具500,000

    この場合の固定資産の現在価値は250万円となります。

    直接法では、帳簿上の残高がそのまま未償却残高になるため、現在の資産価値がわかりやすいというメリットがあります。一方で、取得価額やこれまでにいくら減価償却したのかが帳簿だけでは見えにくいというデメリットもあります。

    このように、直接法はシンプルでわかりやすい仕訳処理ですが、取得価額や累計の減価償却額を別途確認しにくいため、固定資産が増えてくると管理面で不便を感じることがあります。

    処分する場合の仕訳

    直接法で減価償却している固定資産を廃棄や除却などで処分する場合は、帳簿に残っている固定資産の残高を取り崩します。例えば、帳簿価額が20万円残っている備品を廃棄した場合は、次のような仕訳になります。

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    固定資産除去損200,000円備品200,000円

    直接法では、資産勘定そのものがすでに減額されているため、残っている帳簿価額をそのまま除却損として落とす形になります。

    売却する場合の仕訳

    直接法で処理している固定資産を売却する場合は、売却代金と帳簿価額との差額によって売却益または売却損が発生します。例えば、帳簿価額20万円の備品を30万円で売却し、代金を現金で受け取った場合は、次のように仕訳します。

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    現金300,000円備品200,000円
      固定資産売却益100,000円

    反対に、売却額が帳簿価額を下回る場合は、差額を固定資産売却損として処理します。直接法では資産の簿価がすでに帳簿に反映されているため、売却時はその帳簿価額を基準に損益を計算します。

    減価償却の間接法による仕訳

    間接法では、固定資産の取得価額をそのまま残し、減価償却額は「減価償却累計額」に積み上げて管理します。固定資産の取得価額と、これまでにどれだけ償却したかを分けて把握できるため、実務ではこの方法がよく使われています。

    例えば、取得価額100万円の備品について、当期の減価償却費が25万円の場合は、次のように仕訳します。

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    減価償却費250,000円減価償却累計額250,000円

    間接法による仕訳では、備品の取得価額100万円は帳簿上そのまま残り、減価償却累計額が25万円計上されます。貸借対照表では、備品100万円から減価償却累計額25万円を差し引いた75万円が実質的な帳簿価額として表示されます。

    取得価額と償却累計額が分かれているため、設備投資の履歴や資産の減価償却の進み具合を把握しやすく、固定資産台帳との整合も取りやすいのがメリットです。固定資産が多い企業や、将来的にM&Aや金融機関への説明が必要になる可能性がある企業では、間接法の方が管理しやすいといえるでしょう。

    処分する場合の仕訳

    間接法で減価償却している固定資産を処分する場合は、固定資産の取得価額と減価償却累計額の両方を取り崩します。例えば、取得価額100万円、減価償却累計額80万円の備品を廃棄した場合、帳簿価額は20万円です。このときの仕訳は次のようになります。

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    減価償却累計額800,000円備品1,000,000万円
    固定資産除却損200,000万円  

    間接法では、取得価額が帳簿に残ったままになっているため、処分時には累計額とあわせて消し込む必要があります。帳簿価額にあたる部分が固定資産除却損として計上されます。

    売却する場合の仕訳

    間接法で処理している固定資産を売却する場合も、まず取得価額と減価償却累計額を取り崩し、そのうえで売却額との差額を売却益または売却損として処理します。例えば、取得価額100万円、減価償却累計額80万円の備品を30万円で売却し、現金を受け取った場合は、次のような仕訳になります。

    借方科目借方金額貸方科目貸方金額
    減価償却累計額800,000円備品1,000,000万円
    現金300,000万円固定資産売却益100,000円

    もし売却額が帳簿価額20万円を下回れば、その差額は固定資産売却損となります。間接法では処理の手順がやや増えますが、その分、取得価額・償却累計額・帳簿価額を明確に把握できるため、資産管理の面では優れています。

    減価償却のメリット

    減価償却は、単に会計上のルールとして必要なだけではありません。減価償却により、費用を適切に配分することで、税負担の平準化や資金計画の立てやすさにつながるほか、会社の業績を実態に近い形で把握しやすくなるというメリットがあります。

    特に設備投資のある企業では、減価償却の考え方を理解しているかどうかで、利益の見え方や経営判断の精度が変わってきます。ここでは、減価償却費を計上する代表的なメリットを3つに分けて見ていきましょう。

    節税につながる

    減価償却費は、会計上だけでなく税務上も重要な費用です。適切に計上することで、その年度の課税所得を抑えることができ、結果として税負担の軽減につながります。

    例えば、設備を購入した際、その取得費用を一括で費用計上するのではなく、耐用年数に応じて毎年少しずつ減価償却費として計上していけば、その分だけ各年度の利益を圧縮できます。利益が小さくなれば、法人税や所得税の計算のもとになる課税所得も抑えられるため、税負担を平準化しやすくなります。

    ただし、ここで注意したいのは、減価償却費が「新たにお金を生む」わけではないという点です。資産の購入時点で現金はすでに支出しており、減価償却費は支払ったお金を後から少しずつ費用計上しているものです。節税効果があるからといって、無条件に得をするというわけではありません。

    それでも、各年度の税負担を過度に偏らせずに管理しやすくなるのは大きなメリットです。特に利益の変動が大きい企業や、設備投資が多い企業では、減価償却費の扱いが税務戦略にも影響します。

    現金を残しやすい

    減価償却費の特徴のひとつは、計上時点では現金支出を伴わない費用であることです。 資産を購入したときに支払いは発生していますが、その後に毎期計上する減価償却費そのものによって、追加の現金が出ていくわけではありません。

    このため、損益計算書上では費用として利益を圧縮しつつ、同時に手元資金はその時点で減らないという状態が生まれます。結果として、利益と現金の動きを切り分けて考えやすくなり、会社に現金を残しやすいという見方ができます。

    例えば、減価償却費を年間100万円計上したとしても、その100万円が当期に新たに支払われるわけではありません。会計上は費用が増えるため利益は下がりますが、実際の資金繰りにはその分の追加支出がないため、手元資金の管理に余裕を持ちやすくなります。

    実際の経営状況を把握しやすい

    減価償却には、毎年の利益を実態に近い形で把握しやすくするメリットもあります。 固定資産の取得費用を購入年度に一括で落としてしまうと、その年だけ利益が大きく減り、翌年度以降は逆に利益が大きく見えやすくなります。これでは、事業の本来の収益力を正しくつかみにくくなります。

    減価償却によって費用を使用期間に応じて配分すれば、資産を活用して収益を上げている期間に合わせて費用を認識できます。その結果、各年度の売上と費用の対応関係が見えやすくなり、業績の比較もしやすくなります。

    これは経営者にとって大きな意味があります。例えば、設備投資をした年だけ赤字が大きく見えるような状態では、実際には悪くない業績でも、数字の見え方だけで誤った判断をしてしまうかもしれません。減価償却費を適切に計上していれば、設備投資の影響を複数年に分けて反映できるため、より冷静に業績を見極められます。

    金融機関に説明するときや、将来の設備更新を検討するときにも、減価償却費を踏まえた損益の把握は欠かせません。単に帳簿上のルールというだけでなく、経営の実態を正しくつかむための仕組みとして理解しておくことが大切です。

    減価償却の耐用年数

    減価償却費を計算するときに欠かせないのが、その資産を何年にわたって費用計上するのかという考え方です。 この期間を決める基準になるのが「耐用年数」で、取得価額が同じでも、耐用年数が違えば毎年の減価償却費は変わります。

    例えば、同じ100万円の資産でも、4年で償却するのか10年で償却するのかによって、1年あたりの費用額は大きく変わります。そのため、減価償却費を正しく計算するには、まず資産ごとの耐用年数を正確に確認することが重要です。

    法人税上の耐用年数

    税務上の減価償却では、この耐用年数にもとづいて毎年の減価償却費を計算します。耐用年数が短ければ1年あたりの減価償却費は大きくなり、反対に長ければ毎年の金額は小さくなります。つまり、耐用年数は減価償却費の金額を左右する重要な要素です。

    法人税法上の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づいて定められており、資産の種類、構造、用途ごとに細かく区分されています。例えば、普通自動車は6年、パソコンは4年、鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の事務所用建物は50年といった形です。実務では、こうした法定耐用年数を前提に処理を進めます。

    耐用年数は、単に「長く使えそうかどうか」の感覚で決めるものではありません。見た目が似ている資産でも、用途や構造が違えば耐用年数も異なることがあります。そのため、減価償却費を計算するときは、必ず該当する資産区分を確認する必要があります。

    なお、中古資産については新品と同じ耐用年数をそのまま使わず、一定のルールに従って耐用年数を見積もることがあります。簡便法によって計算した結果、1年未満の端数が出た場合は切り捨て、2年に満たない場合は2年とする取り扱いがある点も押さえておきたいところです。

    参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

    減価償却の計算の流れ

    減価償却費は、いきなり計算式に数字を入れれば求められるものではありません。その資産がそもそも減価償却の対象か、いくらで取得したのか、何年で償却するのか、どの方法で計算するのかといった前提を順に確認していく必要があります。

    この流れを飛ばしてしまうと、耐用年数の誤りや取得価額の漏れ、償却方法の選択ミスなどが起こりやすくなります。特に実務では、建物と土地をまとめて購入したケースや、中古資産、年度途中の取得などで判断に迷うことも少なくありません。

    ここでは、減価償却費を計算するときに押さえておきたい基本の流れを5つのステップに分けて解説します。

    1. 対象資産か確認する

    最初に確認したいのは、その資産が減価償却の対象になるかどうかです。 固定資産を取得したからといって、すべてが減価償却の対象になるわけではありません。

    減価償却の対象になるのは、一般に、時間の経過や使用によって価値が減少していく資産です。例えば、建物、機械装置、車両運搬具、工具・器具・備品などは代表的な対象資産です。一方で、土地のように通常は時間の経過で価値が減少しないと考えられる資産は、減価償却の対象外です。

    また、少額資産や一括償却資産のように、通常の減価償却とは異なる扱いになるケースもあります。そのため、まずは「固定資産かどうか」だけでなく、「通常の減価償却をする資産かどうか」まで確認することが重要です。

    2. 取得価額を確定する

    次に、その資産の取得価額を確定します。 減価償却費は、この取得価額をもとに計算するため、金額の捉え方を誤ると毎年の償却額にも影響が出ます。

    取得価額には、単純な購入代金だけでなく、その資産を事業で使える状態にするまでにかかった費用が含まれることがあります。例えば、運送費、据付費、設置費用などが該当する場合があります。何でも取得価額に含めれば良いわけではなく、内容によって判断が分かれることもあります。

    建物と土地を一括で購入したようなケースでは、総額のまま処理するのではなく、減価償却の対象となる建物部分と、対象外である土地部分を分けて考える必要があります。減価償却費を正しく計算するためには、この取得価額を正しく把握することが大切です。

    3. 耐用年数を確認する

    取得価額が確定したら、その資産に対応する耐用年数を確認します。耐用年数とは、その資産を何年にわたって費用配分するかを決める基準になる年数です。

    税務上の耐用年数は、資産の種類、構造、用途ごとに定められています。同じ建物でも構造によって年数が違いますし、同じ車両でも用途によって扱いが変わることがあります。見た目が似ている資産でも耐用年数が同じとは限らないため、正確な資産区分の確認が欠かせません。

    また、中古資産については新品と同じ耐用年数を使わず、簡便法などによって別途算定することがあります。この点を見落とすと、減価償却費が大きくずれる原因になります。取得した資産がどの区分に当てはまるかを確認し、適切な耐用年数を設定しましょう。

    4. 償却方法を確認する

    続いて、どの償却方法で減価償却費を計算するかを確認します。 代表的な方法として、定額法と定率法があります。

    定額法は、毎年ほぼ同じ金額を計上していく方法で、費用が安定しやすいのが特徴です。一方、定率法は、初年度に多く、年数が経つにつれて少なくなる形で償却していく方法です。どちらを使うかによって、各年度の減価償却費や利益の見え方が変わります。

    ただし、実務では自由に好きな方法を選べるとは限りません。資産の種類や税務上の取扱いによって、適用できる償却方法が決まっている場合があります。そのため、単に「自社に有利そうだから」という理由だけで決めるのではなく、その資産に認められている方法を確認したうえで判断することが大切です。

    5. 年額・月額を計算する

    ここまで確認できたら、取得価額、耐用年数、償却方法にもとづいて、実際の減価償却費を計算します。まずは年間の減価償却費を求め、必要に応じて月額に換算していく流れです。

    定額法であれば、取得価額に償却率を掛けて計算するのが基本です。定率法の場合は、帳簿価額に一定の償却率を掛けて計算するため、年数の経過とともに償却額が変わります。どちらの方法でも、耐用年数に応じた償却率を正しく確認することが前提になります。

    また、年度途中で取得した資産については、1年分をそのまま計上するのではなく、使用した月数に応じて月割り計算が必要になることがあります。例えば、期の途中で取得・使用開始した資産は、その年に使った期間分だけ費用化するのが原則です。

    このように、減価償却費の計算は、単に計算式を覚えるだけではなく、前提条件をひとつずつ整理することが重要です。具体的な減価償却の計算方法については下記の記事をご覧ください。

    減価償却の実務における注意点

    減価償却費の計上は理論的には単純ですが、実務では様々な注意点があります。特に事業年度の途中で資産を取得した場合の月割計算、減価償却の計上漏れ、税務調査での指摘事項については、多くの企業で問題となりやすい分野です。これらの注意点を事前に理解し、適切な管理体制を構築することで、税務リスクを回避し、正確な会計処理を維持することができます。 

    事業年度の途中で取得した資産を月割計算する 

    事業年度の途中で減価償却資産を取得した場合、年間の減価償却費を月割計算して当期分を算出します。重要なポイントは、資産の購入日ではなく「事業の用に供した日」から計算を開始することです。例えば、3月に機械を購入したが実際の稼働開始が5月の場合、5月から減価償却を開始します。 

    月割計算では、事業供用開始月から事業年度末までの月数を12か月で割って年間減価償却費に乗じます。年間減価償却費120万円の資産を10月に取得した場合(3月決算)、10月から3月までの6か月分となり、120万円×6÷12=60万円が当期の減価償却費となります。 

    • 事業供用日の正確な把握と記録が重要
    • 1か月未満の端数は1か月として計算
    • 購入日と事業供用日が異なる場合の注意
    • 売却時は売却月まで計算に含める 

    月割計算のミスは税務調査で指摘されやすいため、事業供用日の記録と計算の正確性を重視する必要があります。 

    減価償却の計上漏れを防ぐ 

    減価償却の計上漏れは、中小企業において頻繁に発生する問題です。計上漏れを防ぐためには、まず固定資産台帳の整備が不可欠です。すべての減価償却資産を台帳に記録し、定期的な現物確認を行うことで、管理対象資産の把握漏れを防げます。 

    特に注意が必要なのは、少額資産や建物附属設備です。エアコン、内装工事、電気設備などは計上を忘れがちですが、これらも立派な減価償却資産です。また、リース資産についても、ファイナンスリースの場合は減価償却が必要になるため、契約内容の確認が重要です。 

    • 固定資産台帳の継続的な更新と管理
    • 年次での現物確認と台帳との照合
    • 建物附属設備や構築物の計上忘れに注意
    • リース契約の内容確認とファイナンスリースの適切な処理
    • 少額資産の特例適用判定の正確性 

    定期的な棚卸しと台帳管理により、計上漏れのリスクを大幅に軽減できます。 

    税務調査での指摘を回避する 

    税務調査において減価償却は重点的に確認される項目の一つです。よくある指摘事項としては、耐用年数の適用誤り、償却方法の変更手続き漏れ、事業供用日の認定誤り、少額減価償却資産特例の適用誤りなどがあります。 

    耐用年数については、資産の用途や構造を正確に把握し、国税庁の耐用年数表と照合することが重要です。また、定率法から定額法への変更や、その逆の変更を行う場合は、事前に税務署への届出が必要であり、届出漏れは指摘の対象となります。 

    • 耐用年数表との照合による適用年数の確認
    • 償却方法変更時の適切な届出手続き
    • 事業供用日を示す客観的な証拠資料の保管
    • 少額減価償却資産特例の年間限度額管理
    • 償却率の適用確認と計算ミスの防止 

    税務調査での指摘を避けるためには、日頃から正確な記録管理と定期的な自己点検を行い、疑問点は税理士や税務署に事前確認することが効果的です。証憑書類の適切な保管も、調査時の説明材料として重要な要素となります。

    減価償却が経営やM&Aに与える影響

    M&Aにおいて減価償却は、企業価値評価と取引条件の決定に直接的な影響を与えます。企業価値評価の主要手法であるコストアプローチは、企業の貸借対照表(バランスシート)の純資産を基準とした評価方法であり、減価償却費が帳簿価額に影響を与えます。適切な減価償却が行われていない場合、資産価値が過大または過小に評価され、適正な取引価格の算定が困難になります。 

    ここでは、減価償却費が企業価値やM&Aにどのような影響を与えるのかについて紹介します。

    企業価値評価における減価償却の影響 

    企業価値評価において、減価償却費は特にDCF法とEBITDA倍率法で重要な役割を果たします。DCF法では、フリーキャッシュフローの計算において「税引き後営業利益+減価償却費-設備投資額-運転資本増加額」という式を使用し、減価償却費はキャッシュアウトを伴わない費用のため加算されます。 

    例えば、年間営業利益5,000万円、減価償却費1,000万円の企業の場合、減価償却費の適切な計上により企業価値が大きく変動します。減価償却の計上漏れがある企業では、実態修正により営業利益が減少し、結果として企業価値が下がる可能性があります。 

    EBITDA倍率法では、「営業利益+減価償却費」でEBITDAを算出し、業界平均の倍率を乗じて企業価値を算定します。 

    • 減価償却費の計上状況が企業価値評価に直接影響
    • DCF法では減価償却費がキャッシュフロー計算の重要要素
    • EBITDA倍率法では減価償却費がEBITDA算出の基礎
    • 計上漏れや過不足は企業価値の過大
    • 過小評価につながる 

    正確な減価償却処理により、適正な企業価値評価が可能となります。 

    デューデリジェンスで確認される減価償却のポイント

    デューデリジェンス(買収監査)では、減価償却に関する以下の項目が重点的に確認されます。まず、減価償却費の計上漏れや過不足の有無を調査し、必要に応じて実態修正を行います。特に中小企業では、建物附属設備や少額資産の計上漏れが頻繁に発見されます。 

    耐用年数の適用についても詳細に確認され、資産の用途や構造に応じて適切な年数が適用されているかを検証します。また、定率法と定額法の選択が適切で、税務署への届出が必要な変更について手続きが完了しているかも確認対象となります。 

    • 固定資産台帳と実際の資産の照合確認
    • 減価償却費の計上漏れや償却過不足の調査
    • 耐用年数適用の適切性と根拠資料の確認
    • 償却方法選択の一貫性と変更手続きの完了状況
    • 特別償却や圧縮記帳等の税務上の特例処理の影響を考慮

    デューデリジェンスで発見された問題点は、企業価値評価に反映され、最終的な取引価格に影響を与えるため、売り手企業は事前の自己点検が重要です。 

    M&A後の会計処理と減価償却の引き継ぎ 

    M&A成立後は、取得した資産を時価で評価し直し、新たな減価償却計算を開始します。この際、買収対価と純資産時価の差額は「のれん」として計上されますが、その償却は会計と税務で扱いが異なります。

    会計上は「20年以内のその効果が及ぶ期間」で規則的に償却しますが、税務上は「資産調整勘定」として5年間で償却され、しかもこの税務上の償却が認められるのは事業譲渡など特定のM&Aスキームに限られます。のれん償却費は営業利益を圧迫するため、買い手企業の今後の業績に大きく影響します。 

    既存の固定資産については、M&Aスキームによって異なります。株式譲渡では、簿価で引き継がれ、残存耐用年数で減価償却を継続します。事業譲渡の場合は時価評価後の金額を新たな取得原価として減価償却します。

    また、買い手企業と売り手企業で減価償却の会計方針が異なる場合は、統一された方針に合わせて調整を行います。特に償却方法(定額法・定率法)や耐用年数の適用方針について、グループ全体での一貫性を保つことが重要です。 

    • 取得資産の時価評価と新たな減価償却計算の開始
    • のれんの計上と20年以内での償却処理
    • 会計方針の統一と減価償却方法の調整
    • 固定資産台帳の統合と管理体制の整備 

    M&A後の適切な会計処理により、統合後企業の財務諸表の信頼性を確保し、将来の経営判断に必要な正確な財務情報を提供できます。 

    まとめ|減価償却費を正しく理解して企業価値を高めよう

    減価償却費は、単なる会計処理ではなく、企業の健全な成長と価値向上を支える重要な仕組みです。固定資産の取得費用を耐用年数に応じて適切に期間配分することで、正確な損益計算が可能となり、経営者は事業の実態を正しく把握できるようになります。

    減価償却費を算出する際には、税制改正への対応や複雑な判断が必要な場合もあるため、税理士や会計の専門家と連携し、最新の制度を活用した最適な処理方法を検討することが重要です。減価償却費を正しく理解し活用することで、企業の財務基盤を強化し、持続的な成長と企業価値の向上を実現していきましょう。 

    M&Aロイヤルアドバイザリーでは、M&Aおよび事業承継に関するご相談を承っております。従来は、経営者のご高齢化に伴う後継者不足を背景に検討されるケースが多く見られましたが、近年はそれだけに限らず、事業の拡大やさらなる成長を目的としてM&Aを選択する企業も増えています。

    また、M&Aは検討してから成立するまでに時間を要するため、スムーズな承継や意思決定のためには、早い段階で準備と計画を進めておくことが欠かせません。現時点で「今すぐ譲渡したい」とお考えでない場合でも、将来の選択肢の一つとして情報を整理したいという経営者様は、お気軽にお問い合わせください。

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