事業譲渡にかかる税金は?法人と個人の違いをわかりやすく解説

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事業譲渡にかかる税金

事業譲渡を検討する際には、税金との関係も切り離せません。事業譲渡では売り手となる法人や個人だけでなく、買い手にも税金が発生する場合があります。何を、いくらで、どのように引き継ぐのかによって税負担が変わるため、事業譲渡の全体像を整理して理解することが大切です。

本記事では、事業譲渡における税金の基本をわかりやすく解説し、法人と個人の違いを詳しく説明します。さらに、売り手と買い手それぞれが負担すべき税金の種類や、譲渡資産ごとの課税関係、会社譲渡との違いについても掘り下げます。この記事を通じて、M&Aに関連する税務知識を深めましょう。

事業譲渡にかかる税金をわかりやすく解説

事業譲渡は代表的なM&Aスキームの一つです。会社を譲渡する方法には株式譲渡などもありますが、会社そのものを売買する株式譲渡とは異なり、事業譲渡は資産や負債、契約、営業権などを個別で引き継ぐため、税金関係も複雑になりがちです。

まずは、事業譲渡にかかる税金の考え方についてわかりやすく解説します。

事業譲渡の税務の考え方

事業譲渡における税金を理解するうえで大切なのは、「事業全体に一律の税率で課税されるわけではない」という点です。事業譲渡では、店舗や機械、在庫、備品、不動産、営業権などを個別の資産として引き継ぐため、それぞれの資産の性質に応じて税金の扱いが変わります。例えば、建物や在庫には消費税がかかる一方で、土地は消費税の課税対象外です。

また、売り手が法人か個人事業主かでも、かかる税金の種類が異なります。法人が事業譲渡を行って利益が出た場合は「法人税等」の対象となり、個人事業主であれば「所得税」や「住民税」が関係します。さらに、買い手側では取得する資産に応じて「不動産取得税」や「登録免許税」などが発生することがあります。

株式譲渡の考え方の違い

事業譲渡と株式譲渡(会社譲渡)の税金で大きく違うのは、買い手にも税金が課されることがあるという点です。株式譲渡では、売り手の譲渡益に対して法人には法人税等、個人には所得税や住民税が課されます。一方で、買い手には直接的な税負担はありません。

また、株式譲渡の場合は印紙税を必要としないケースが一般的ですが、事業譲渡の契約書を作成する際には印紙税も必要となります。収入印紙を添付しない場合は追加の過怠税が発生する為、覚えておきたいポイントです。このように、事業譲渡で発生する税金は株式譲渡とは異なるため、「事業譲渡ではどの税金がかかるのか」「誰が何を負担するのか」がわかりにくいと感じる方も少なくありません。

事業譲渡と株式譲渡の違いは別の章でも解説します。

事業譲渡にかかる税金一覧

事業譲渡で発生する税金は「誰が」「何を」「どのように」譲渡・取得するかで決まります。正しく把握するには、譲渡代金の総額だけでなく、内訳まで見て判断することが大切です。まずは全体像をつかむために、主な税金を一覧で確認しておきましょう。

立場主な税金概要
売り手(法人)法人税等事業譲渡によって生じた譲渡益に対して課税される
売り手(個人)所得税事業譲渡による所得に応じて課税される
売り手(個人)住民税所得税とあわせて課税される地方税
買い手消費税課税対象資産を取得した場合に負担する
買い手不動産取得税土地や建物などの不動産を取得した場合にかかることがある
買い手登録免許税不動産の所有権移転登記などで発生する
売り手/買い手印紙税事業譲渡契約書を作成した場合に課税される

このように、事業譲渡でかかる税金の種類は一つではなく、取引の当事者や譲渡対象の資産によって複数発生します。特に注意したいのは、株式譲渡のように単純な課税関係ではないことです。事業譲渡では、資産ごとに課税・非課税が分かれ、売り手と買い手の双方で確認すべき項目が異なります。

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    事業譲渡で売り手にかかる税金(法人・個人)

    事業譲渡では、売り手が法人か個人かによって、かかる税金の種類や考え方が異なります。法人が事業譲渡を行う場合は、譲渡によって生じた利益に対して法人税等が課されます。一方、個人事業主が事業譲渡を行う場合は、所得税や住民税が関係します。

    注意したいのは、「譲渡代金を受け取った=その全額にそのまま課税される」というわけではない点です。実際には、譲渡した資産の帳簿価額や取得費、譲渡にかかった費用などを差し引いて課税所得や譲渡益が計算されます。

    ここでは、法人と個人事業主に分けて、事業譲渡で発生しやすい主な税金を解説します。

    売り手が法人の場合(法人税等)

    法人が事業譲渡によって利益を得た場合、その譲渡益に対して法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などが課されます。これらはまとめて「法人税等」と呼ばれます。ここでいう利益(譲渡益)は、単純に譲渡代金を指すのではなく、譲渡した資産の帳簿価額や譲渡に伴って生じた費用などを差し引いたうえで計算された金額です。つまり、高い金額で事業を譲渡できたとしても、簿価や費用の状況によって課税額は低くなることもあります。

    法人税等の税率

    法人税の税率は会社の事業規模によって異なり、以下のように定められています。

    法人区分所得金額税率
    中小法人(資本金1億円以下)800万円以下適用除外事業者:19% 
    上記以外の事業者:15%
    中小法人(資本金1億円以下)800万円超23.2%
    大法人(資本金1億円超)全所得23.2%

    さらに、この法人税に対して地方法人税(10.3%)や法人住民税が課されます。実際には、事業全体の利益に対して、実効税率30~34%の税金がかかるイメージです。株式譲渡は計算がシンプルなのに対し、事業譲渡は個々の資産を移転するため、資産ごとの計算が複雑になりやすい点に注意しましょう。

    売り手が個人事業主の場合(所得税・住民税)

    個人事業主が事業譲渡を行う場合は、譲渡によって得た利益が個人の所得として扱われます。そのため、個人の売り手には、取得税や住民税が発生します。個人事業主の事業譲渡でも、法人と同じく何を譲渡するかによって課税関係が変わる点に注意しましょう。例えば、棚卸資産や設備、営業権などを譲渡する場合と、不動産を含む場合とでは、税務上の整理の仕方が異なることがあります。

    所得税の税率

    個人事業主が事業譲渡を行って利益を得た場合、その所得は所得税の対象になります。所得税は累進課税の仕組みのため、課税所得に応じて最低5%から最大45%の税率が課されます。所得税は法人税のように一律の税率ではないため、譲渡所得が大きいと適用される税率も高くなり、同じ譲渡価格でも他の所得状況によって税負担の重さが変わる点が法人との大きな違いです。

    また、事業譲渡における所得税の扱いは、譲渡した資産の内容によっても変わることがあります。例えば、土地や建物を譲渡した場合は、譲渡所得として税率15%(短期譲渡所得の場合は30%)に復興特別所得税を加算して計算します。個人事業主にとっては、譲渡による所得がどの区分に該当するのか、どの程度の税率が見込まれるのかを事前に整理しておくことが重要です。

    住民税の税率

    個人事業主が事業譲渡によって所得を得た場合は、その所得に所得税だけでなく住民税も課されます。住民税は約10%ですが、前年の所得をもとに計算されるため、事業譲渡によってその年の所得が増えれば、翌年の住民税負担も大きくなる可能性があります。所得税に比べると見落とされがちですが、実際の手取り額を考えるうえでは無視できない税金です。

    特に事業譲渡では、まとまった譲渡益が一度に発生することがあるため、所得税だけを見ていると、後から住民税の負担に驚くケースもあります。譲渡後の資金計画を立てる際は、その年だけでなく翌年の税負担まで見込んでおくことが大切です。個人事業主の事業譲渡では、「譲渡代金が入ったから安心」と考えるのではなく、住民税を含めた全体の税負担を把握しておく必要があります。

    売り手と消費税の関係

    事業譲渡を行う場合、資産によっては法人および個人に消費税の納税義務が発生します。消費税の対象となるのは、建物、機械装置、車両、備品、商品在庫、営業権などの課税資産です。一方で、土地の譲渡や有価証券などは原則として消費税の課税対象外です。そのため、事業譲渡契約では、どの資産が課税対象で、どの資産が非課税なのかを明確に分けておく必要があります。

    なお、消費税を負担するのは買い手であり、売り手の法人や個人が徴収した税金を税務署に納める形になります。消費税の考え方を曖昧にしたまま進めると、後から売り手・買い手の認識がずれ、思わぬトラブルになることもあります。法人の事業譲渡では、法人税等だけでなく消費税の影響も大きいため、契約前の段階で確認しておくことが重要です。

    事業譲渡で買い手にかかる税金

    事業譲渡では、税金は売り手だけにかかるものではありません。買い手側にも、取得する資産の内容や契約方法に応じて、複数の税金が発生する可能性があります。例えば、課税資産を取得すれば消費税がかかり、不動産を取得すれば不動産取得税や登録免許税が発生することがあります。さらに、契約書の作成方法によっては印紙税も必要です。

    買い手は譲渡価格だけでなく、取得後に発生する税負担も含めて総コストを見積もることが重要です。ここでは、事業譲渡の買い手にかかる主な税金と、あわせて確認しておきたいのれんの税務上の扱いを解説します。

    買い手にかかる税金(消費税・不動産取得税・登録免許税)

    事業譲渡で買い手にかかる税金は、取得する資産の種類ごとに異なります。事業そのものを一括で買うイメージを持たれやすいものの、実際には建物、機械、棚卸資産、不動産、営業権などを個別に取得するため、それぞれに応じた税金を確認しなければなりません。特に消費税は、課税資産が多い事業譲渡では負担額が大きくなりやすいため、契約金額を見る際にも注意が必要です。

    また、不動産を含む場合には不動産取得税や登録免許税がかかり、契約書を作成する場合には印紙税も発生します。これらは譲渡価格に直接含まれないことも多いため、事前に把握しておかないと、想定より取得コストが膨らむ可能性があります。買い手として事業譲渡を検討する際は、取得後の運転資金だけでなく、税金を含めた初期負担まで見込んでおくことが大切です。

    消費税の税率

    買い手は、事業譲渡で取得する資産のうち、課税対象となるものについて消費税を負担します。例えば、建物、機械装置、車両、備品、棚卸資産、営業権などは原則として課税対象です。一方で、土地や有価証券などは原則として消費税の対象外です。つまり、買い手が支払う総額のうち、どこまでに消費税がかかるのかは、譲渡対象資産の内訳によって変わります。

    実務では、契約書や資産明細において資産ごとの価格を明確にしておくことが重要です。もし価格配分が曖昧だと、消費税の計算や会計処理で問題が生じるおそれがあります。特に課税資産が多い事業譲渡では、消費税負担が想定以上に大きくなることもあるため、買い手は譲渡価格だけで判断せず、税込・税抜の両面から確認する必要があります。

    不動産取得税の税率

    事業譲渡で土地や建物などの不動産を取得した場合、買い手には不動産取得税がかかることがあります。不動産取得税は、不動産を取得したときに都道府県から課される地方税で、売買価格そのものではなく、原則として固定資産税評価額を基準に計算されます。そのため、契約金額だけを見ていると、後から別途税負担が発生する点を見落としやすい税金です。

    不動産取得税は、取得した不動産価格(固定資産評価額)の4%ですが、令和9年3月31日までは、土地および住宅用家屋の税率は3%の特例措置が設けられています。

    • 土地:固定資産評価額×3%-減額額(宅地等の場合は取得した価格×1/2)
    • 住宅用の家屋:(固定資産評価額-特例控除額)×3%

    特に店舗や工場、事務所などを事業譲渡の対象に含める場合は、不動産取得税の負担も取得コストの一部として見込んでおく必要があります。事業譲渡は、設備や営業権だけを引き継ぐケースもあれば、不動産までセットで取得するケースもあるため、どこまで取得対象に含まれるのかによって税負担は変わります。不動産を含む事業譲渡では、譲渡価格に加えて不動産取得税まで含めた資金計画を立てることが重要です。

    参考:東京都主税局「不動産取得税」

    登録免許税の税率

    事業譲渡で不動産を取得し、所有権移転登記などの登記手続きを行う場合は、登録免許税が発生します。登録免許税は、登記を行う際にかかる国税で、不動産の名義変更や抵当権設定などの場面で必要になります。事業譲渡では、不動産の取得そのものに不動産取得税がかかる場合がありますが、それとは別に、登記手続きに対して土地や建物に登録免許税が発生する点に注意が必要です。

    登録免許税は、取得した不動産価格(固定資産評価額)に対して2%ですが、令和11年3月31日までに登記する土地には1.5%の軽減税率が適用されます。

    買い手が不動産を引き継ぐ場合には、譲渡費用や税金だけでなく、登記費用や司法書士報酬などの付随コストも見込んでおく必要があります。

    登録免許税は見落とされやすいものの、不動産を含む事業譲渡では実務上必ず確認したい項目です。特に複数の不動産を取得するケースでは負担額も大きくなりやすいため、契約前の段階で試算しておくと安心です。

    参考:国税庁「登録免許税の税額」

    のれん(営業権)の税務上の扱い

    事業譲渡では、建物や設備、在庫などの目に見える資産だけでなく、取引先との関係、ブランド力、ノウハウ、立地上の価値など、目に見えない価値も譲渡価格に含まれることがあります。このような超過収益力に対して支払われる対価は、一般にのれん、または営業権として扱われます。事業譲渡の実務では、こののれんが譲渡価格の中で大きな割合を占めることも珍しくありません。

    買い手にとって重要なのは、のれんも税務上の処理対象になるという点です。単に「まとめて支払った金額」として扱うのではなく、どの資産にいくら配分され、そのうちどれだけが営業権にあたるのかを整理しておく必要があります。価格配分が曖昧なままだと、会計処理や税務申告の段階で問題が生じる可能性があります。事業譲渡では、有形資産だけでなく、のれんの扱いまで含めて契約内容を設計することが大切です。

    事業譲渡にかかる税金の注意点

    ここまで事業譲渡に関して、売り手法人・売り手個人・買い手にそれぞれかかる税金について紹介しました。続いて、事業譲渡の税金を計算する際や契約書の作成時に発生する印紙税、無償で譲渡する場合の注意点について解説します。

    事業譲渡にかかる税金の計算方法

    ここまで紹介した事業譲渡でかかる税金の計算方法についてもおさらいしましょう。税率や計算方法は税金の種類によって異なります。売り手法人の法人税等は、一般に「譲渡益-損金等」をもとに課税所得を算定し、その金額に実効税率を掛けて概算します。

    個人事業主の所得税は「課税所得×税率-控除額」、住民税は「課税所得×税率」で考えるのが基本です。買い手側では、不動産取得税は原則として「固定資産税評価額×税率」、登録免許税は「固定資産税評価額×税率」で計算します。

    それぞれの計算式を以下の表にまとめました。

    項目簡易的な計算式
    法人税等課税所得 × 実効税率
    ※法人税は原則23.2%、住民税は10%(ただし、事業規模によって異なる)
    所得税課税所得 × 税率 − 控除額
    ※譲渡資産により、累進課税または分離課税のため税率にばらつき
    住民税課税所得 × 税率
    ※通常は10%
    不動産取得税固定資産税評価額 × 税率
    ※原則4%だが軽減税率が適用される場合あり
    登録免許税固定資産税評価額 × 税率
    ※土地は2%だが軽減税率が適用される場合あり

    実際には税率や計算方法に例外もあるため、概算の把握にとどめ、最終的には専門家への確認が必要です。

    契約書作成時の印紙税の扱い

    事業譲渡契約書を作成する場合、その契約書に対して収入印紙の貼付が必要となり、印紙税がかかります。印紙税は、課税文書を作成した際に必要となる税金で、事業譲渡契約書は第1号文書に該当します。例えば、100万円超~500万円以下なら2,000円、1,000万円超~5,000万円以下なら2万円というように、契約金額に応じて税額が異なります。

    なお、印紙税は契約書の作成者が納税することになっており、共同して作成した場合には両者に納税義務が発生します。例えば、買い手と売り手でそれぞれ契約書の原本を保有する場合は印紙税をそれぞれ支払うことになります。原本を1通作り、もう一方はコピーの場合は印紙税を折半にするケースもあります。貼付を忘れると、通常の2倍の過怠税が加算(印紙税の3倍を徴収)となるため注意しましょう。

    参考:国税庁「印紙税額の一覧表(その1)」/「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」

    事業を無償で譲渡した場合

    事業譲渡を無償で行う場合でも、「対価を受け取っていないから税金がかからない」とは限りません。税務上は、著しく低い価額や無償で資産を移転した場合でも、時価で譲渡したものとみなされることがあります。

    例えば、法人が関係会社や親族に事業を無償で引き継ぐと、譲渡側に益金課税が生じたり、受け取る側に受贈益や贈与税の問題が出たりする可能性があります。個人事業でも、親族間の承継だからといって自由に無税で移せるわけではありません。無償譲渡は通常の売買よりも税務上の論点が複雑になりやすいため、節税目的で安易に選ぶのは避け、時価評価や契約内容を含めて慎重に検討することが重要です。

    事業譲渡と株式譲渡(会社譲渡)の税金の違い

    M&Aでは、事業譲渡と株式譲渡のどちらを選ぶかによって、税金のかかり方が大きく変わります。事業譲渡は、建物や在庫、営業権などを個別に移転する取引であるため、資産ごとに課税関係を確認する必要があります。一方、株式譲渡は株主が保有する株式を売却する取引であり、会社そのものを包括的に引き継ぐ形になるため、税務上の整理も異なります。

    例えば、売り手にとっては株式譲渡のほうが税務上の計算がシンプルになりやすい一方、買い手は簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性も含めて判断する必要があります。どちらが有利かは立場や取引条件によって異なるため、税金だけでなく、引き継ぐ範囲やリスクも含めて比較することが大切です。

    売り手の税務負担

    売り手にとって、事業譲渡と株式譲渡の最も大きな違いは、「何を売るか」にあります。事業譲渡では会社や個人事業主が保有する資産を譲渡するため、譲渡益に対して法人税等や所得税・住民税が課され、さらに課税資産が含まれていれば消費税も発生します。つまり、事業譲渡は複数の税金を意識する必要があり、税務上の整理も複雑になりやすいのが特徴です。

    一方、株式譲渡では、売り手が株主として保有している株式を売却するため、基本的には株式の譲渡益に対する課税が中心になります。事業譲渡のように、建物や在庫ごとに消費税を切り分ける必要はありません。そのため、売り手側から見ると、株式譲渡のほうが税務処理が比較的シンプルで、手取り額を計算しやすいケースが多くなります。特にオーナー経営者が会社を売却する場面では、税金面から株式譲渡が選ばれやすい理由の一つになっています。

    買い手の税務負担

    買い手にとっては、事業譲渡と株式譲渡で税負担の出方が大きく異なります。事業譲渡では、取得する資産ごとに消費税の課税有無を確認する必要があり、不動産を取得すれば不動産取得税や登録免許税がかかることもあります。さらに、契約書を作成すれば印紙税も発生します。つまり、事業譲渡は取得対象を自由に選びやすい一方で、取得時の税金が発生しやすい取引といえます。

    これに対し、株式譲渡では買い手が取得するのは会社の株式そのものであり、個別資産を直接取得するわけではありません。そのため、事業譲渡で問題になりやすい消費税や不動産取得税などが通常は発生しない点が大きな違いです。ただし、その代わりに会社が抱える簿外債務や偶発債務、過去の税務リスクなども引き継ぐ可能性があります。買い手にとっては、単純な税金の多寡だけでなく、将来のリスクまで含めてスキームを選ぶことが重要です。

    税負担の観点でどちらを選ぶべきか

    税負担だけを見ると、一般に売り手は株式譲渡を好みやすく、買い手は引き継ぐリスクを限定しやすい事業譲渡を選びやすい傾向があります。売り手にとって株式譲渡は、課税関係が比較的シンプルで、事業譲渡のように資産ごとの消費税や譲渡損益を細かく整理する必要がありません。一方、買い手にとって事業譲渡は、必要な資産や契約だけを選んで引き継ぎやすく、不要な債務やリスクを切り離しやすいというメリットがあります。

    ただし、どちらが有利かは一概には決まりません。事業譲渡は取得時の税負担が出やすい反面、引き継ぐ範囲を限定しやすく、買い手にとっては安心材料になることがあります。逆に株式譲渡は税金面でシンプルでも、買収後に想定外のリスクが表面化する可能性があります。実務では、税金だけでなく、引き継ぐ対象、契約関係、許認可、従業員対応、簿外債務の有無などを含めて総合的に判断するのが基本です。税負担は重要な比較軸ですが、それだけで決めるのではなく、目的に合ったスキームを選ぶことが大切です。

    まとめ

    事業譲渡にかかる税金について理解することは、売り手と買い手のどちらにとっても重要です。また、売り手でも法人と個人では税金の種類や計算方法が異なるため、それぞれの立場での税金の仕組みを把握しておくことが必要です。また、譲渡資産ごとに異なる課税関係や、のれんの扱い、消費税の課税・非課税なども注意が必要です。事業譲渡と株式譲渡の違いも理解し、最適な方法を選ぶことが、最終的な税負担を軽減する鍵となります。

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