TMK(特定目的会社)とは?メリットやSPCとの違いを解説

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TMK(特定目的会社)とは

TMK(特定目的会社)とは、資産流動化法に基づいて設立される法人であり、不動産や設備などの動かしにくい資産を証券として流通させる役割を担います。TMKはSPC(特別目的会社)の一形態として知られ、資産を切り離し、財務構造を最適化するスキームとして多くの企業に利用されています。 

TMKは通常の株式会社や合同会社とは異なる特徴を持つため、設立の際にはメリットとデメリットの把握が欠かせません。本記事では、TMKの基本的な仕組みをはじめ、設立のメリット・デメリット、手続きや実務上のポイントまでわかりやすく解説します。 

TMK(特定目的会社)とは

TMK(特定目的会社)とは、「資産の流動化に関する法律(資産流動化法)」に基づき、不動産や債権などの資産を証券化することを目的として設立されます。

TMKの役割は、資産の裏付けとなる証券(特定社債や優先出資証券など)を発行して資金を調達し、投資家に収益の分配を行うことです。企業が特定目的会社を新たに設立して資産を流動化する運用は「TMKスキーム」と呼ばれています。

TMKの目的

TMK(特定目的会社)は、特定のプロジェクトや資産の管理、運用を目的に設立される法人です。特に、不動産や証券化を伴うプロジェクトでは、TMKを利用することで、そのプロジェクトに適した資金調達やリスク管理が可能になります。

TMKを設立することで、企業はプロジェクトごとに独立した資金調達やリスク管理を行うことができ、そのプロジェクトが自社の財務に与える影響を軽減することができます。また、TMKは通常の株式会社のような事業活動を行うことができず、また投資家保護のために厳密なルールが定められています。

TMKはこうした法的な取り決めと仕組みによって、運営の透明性が高まり、金融機関や投資家からの信頼を得やすくなるのが特徴です。

TMKの仕組み

TMK(特定目的会社)の仕組みは主に3つの要素で成り立っています。

  • 資産の取得:資産の所有権を明確にし、リスクを切り離す。
  • 証券の発行:資産を証券化し、流動性を高めて投資家に販売することで資金を調達する。
  • 資産の管理・運用:信託銀行や証券会社といった専門機関と連携し、資産の管理・運用を行う。

まず、オリジネーターと呼ばれる資産の所有者がTMKを設立し、不動産などの特定の資産をTMKに譲渡します。TMKは、その資産の価値を裏付けとした有価証券(優先出資証券や特定社債、特定約束手形など)を発行します。これらの証券は「資産対応証券」と呼ばれます。

TMKは、発行した証券を担保に金融機関からの借り入れを行ったり、証券を投資家に売却したりして、必要な資金を調達します。オリジネーターに資産の代金を支払い、資産を取得します。

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    TMK(特定目的会社)とSPC(特別目的会社)の違い

    TMK(特定目的会社)と混合されがちな用語に「SPC(特別目的会社)」があります。ここでは、TMKとSPCの違いについて解説します。

    SPCとは

    SPC(特別目的会社)とは、資産流動化やファイナンス目的で設立される法人の総称です。SPCは「Special Purpose Company」の略で、会社法などの法制度に基づき設立され、不動産に限らず動産、債権、知的財産など多様な資産を流動化することが可能です。

    一方、TMKは、「資産の流動化に関する法律」に基づいて設立される法人で、主に不動産を対象とします。TMKは法律上、運用に関する厳密な規定がある点でSPCより限定的な形態といえます。実務ではSPCとTMKが混同されることがありますが、法的には明確に区別されています。

    また、SPV(特別目的事業体)は「Special Purpose Vehicle」の略で、SPCやTMKを含む広義の事業体全般を指します。法人格の有無を問わず、特定目的で設立された事業体を指す概念です。これらの用語は似ているため混同されがちですが、目的や法的要件を正確に理解することが重要です。

    SPCの活用場面

    SPC(特別目的会社)は、資産の証券化、財務構造の再編、M&Aなど柔軟なスキーム設計を必要とする場面で活用されます。 

    • 証券化:不動産以外に売掛債権やローン債権など、多様なキャッシュフロー資産を対象に、アセットバック証券(ABS)を発行して資金調達が可能です。
    • 財務改善:SPCに資産を売却することで親会社のバランスシートから負債を切り離し、自己資本比率を高める柔軟な設計が可能です。 
    • M&A:買収専用のSPCを設立し、レバレッジド・バイアウト(LBO)やマネジメント・バイアウト(MBO)によって買収資金を調達することができます。

    レバレッジド・バイアウトとは、少ない資金で大規模なM&Aを行うための手法で、買収する事業が将来生み出す利益を担保に資金調達し、その資金で会社を買収します。一方、マネジメント・バイアウトは経営陣が主体となり、特別目的会社を通じて資金を調達し、株式を取得する方法です。

    TMKスキームとは

    TMKスキームとはどのような手法なのでしょうか。ここでは、TMKスキームの特徴や他の資金調達および収益分配スキームとの違いを解説します。

    TMKスキームの特徴

    TMKスキームとは、特定目的会社を用いて、不動産などの資産を証券化し、投資家から資金を調達するスキームです。主に、大規模な不動産プロジェクトや流動性の低い資産を対象に、資金調達と財務リスクの分離を同時に実現するために利用されます。 

    自己資本比率の維持や資産のオフバランス化、不動産取得税・登録免許税の軽減といった効果も期待され、不動産の証券化、再開発、大規模施設の建て替えなどで多く活用されています。 

    TMKスキームに近い資金調達および収益分配スキームとして、GK-TKスキームとREITがあります。

    GK-TKスキームとの違い

    TMKスキームとGK-TKスキームは、いずれも資産を保有・運用しながら資金を集めるための仕組みです。GK-TKスキームは、合同会社(GK)と匿名組合(TK)による組合契約をベースにした柔軟で簡易なスキームです。

    TMKは資金管理を目的とするため、営業などの事業ができません。従業員を雇用せず、資産運用は外部の信託会社に委託することになります。一方、GK-TKスキームで設立する合同会社は事業の運営も可能です。また、TK出資者はGKに対して出資を行いますが経営に関与せず、利益分配を受けるのみです。

    さらに、TMKの設立資金は最低10万円必要であるのに対し、合同会社の資本金は1円からでも可能です。そのため、中小規模の不動産案件や再エネプロジェクトなどに適しており、実務上の使い勝手が良い点が評価されています。また、TMKスキームでは現物の不動産も運用可能であるのに対し、GK-TKスキームの運用資産は信託受益権であるという違いがあります。 

    総じて、TMKスキームは制度的信頼性と税制メリットを重視する大型案件向け、GK-TKはスピードとコスト効率を重視する小規模案件向けというすみ分けがなされています。

    REITとの違い

    TMKスキームとREIT(不動産投資信託)は、いずれも不動産を裏付けとして投資家から資金を集める仕組みです。REITは「投資法人」という独立した法人を用い、一般投資家から広く資金を募って複数の不動産に分散投資することを目的とした仕組みです。

    日本でのREITは金融商品取引法や投信法の適用を受け、上場も可能であり、投資家は証券市場で自由に売買できます。また、収益の90%超を配当に回すことで法人税の免除を受けられます。 

    TMKスキームは閉鎖的・非上場である一方、REITは透明性・流動性が高く、公募による広範な資金調達と継続的な運用を目的としています。TMKスキームは単発の事業や開発案件向け、REITは継続的な資産運用と投資家向けの金融商品という違いがあります。

    TMK(特定目的会社)の資金調達方法

    TMK(特定目的会社)を設立する際の資金調達には次の方法があります。 

    • 特定資本
    • 優先資本
    • 特定社債
    • 特定目的借入

    それぞれについて解説します。

    特定出資

    特定出資とは、TMKを設立する際に、発起人などが出資する自己資本部分を指します。これは株式会社の資本金に相当し、特定出資者は出資額を限度とした有限責任を負います。また、特定出資額は定款に記載される必要があり、特定目的会社設立の基礎となる重要な要素です。

    特定出資者には、倒産隔離の観点から一般社団法人やケイマン諸島法人などの中立的な存在が用いられることが一般的です。特に一般社団法人を用いる場合、資金提供者は「基金提供者」として資金を拠出しますが、法人の意思決定に直接関与しません。これによって、万が一スポンサー企業が倒産しても、TMKには影響が及びにくい構造となります。

    優先出資

    優先出資とは、TMKが発行する優先出資証券を通じた資金調達手段です。議決権はありませんが、利益配分や清算時の残余財産の分配において、特定出資よりも優先的に取り分が確保される仕組みです。

    優先出資証券は、発行条件を柔軟に設定できるため、投資家のリスク許容度や期待利回りに応じた設計が可能です。また、複数の異なる条件を持つ優先証券を組み合わせることで、さまざまな投資家ニーズに対応することができます。

    優先出資者は、TMKの運営において経営に関与する権利を持たないため、主に配当や清算時の利益を享受することを目的としています。

    特定社債

    特定社債とは、TMKが投資家に対して発行する社債(債券)のことを指します。

    特定社債の発行に際しては、原則として「特定社債管理者」の設置が義務付けられており、これは債権者の立場からTMKの財務・業務をチェックする役割を担います。ただし、一口当たりの発行価格が1億円以上かつ50口未満であるなどの一定要件を満たす場合には、例外的に管理者の設置が不要とされることもあります。 

    特定社債は、安定的な利回りを求める機関投資家によく用いられ、TMKにとっては出資以外の調達手段として重要です。一方で、社債管理者の設置にはコストもかかるため、スキーム設計時にはその必要性を慎重に検討することが求められます。

    特定目的借入

    特定目的借入とは、TMKが金融機関などから資産取得のために行う借り入れのことです。これは「資産流動化計画」に基づいて、借入限度額を設定した上で実行されます。 

    多くの場合、ノンリコースローン(非遡及(ひそきゅう)型ローン)として設計され、返済原資は流動化対象資産から生まれるキャッシュフローに限定されます。これにより、借り入れに際して出資者やスポンサーが連帯保証を求められることなく、出資者のリスクが明確に限定される仕組みが確保されます。

    TMK(特別目的会社)と他の会社形態の違い

    TMK(特定目的会社)とは、不動産を主とした資産の取得・管理・処分を目的に設立される法人ですが、他の会社形態とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、TMKと株式会社・合同会社の違いを解説します。

    TMKと株式会社の違い

    TMKは株式会社の一種として扱われますが、通常の株式会社とは違いがあります。 TMKは証券発行や資産保有を目的とした「事業の受け皿」に特化した法人であり、株式会社とは設立趣旨・活動範囲ともに大きく異なります。

    まず、TMKは事業内容が資産の保有・運用などに限定されています。また、会社の決算報告の方法や監査方法などが詳細に決められています。一方、株式会社は会社法に基づき、原則としてあらゆる営利事業が可能であり、営業活動や製造、サービス提供などの制限はありません。

    次に、株式会社は従業員を雇用し事業運営が可能ですが、特定目的会社は雇用が認められず、業務は外部委託により行います。設立資金も、株式会社は資本金1円から可能であるのに対し、TMKは最低10万円が必要です。

    TMKと合同会社の違い

    TMKと合同会社(LLC)の違いは、設立資金や事業運営の有無に加え、有価証券を発行できるかどうかという点にもあります。

    合同会社は会社法に基づいて設立される柔軟な企業形態で、出資者(社員)が直接経営に関与し、比較的簡単に設立・運営が可能です。資本金は1円からでも設立でき、定款認証も必要ありません。そのため、小規模事業や柔軟な経営を目指す企業に適した形態です。

    ただし、合同会社では株式の発行が認められておらず、社債の発行も信用度の低さから引受先確保の難易度が高くなります。

    一方、TMKを設立するには、内閣総理大臣への届出が必要で、その運営は厳格な監督条件の下に置かれます。しかし、TMKは優先出資証券や特定社債などの資産対応証券を発行することができ、投資家からの資金調達を可能にする仕組みを持っています。

    TMK(特定目的会社)設立のメリット

    TMK(特定目的会社)設立のメリットは次のとおりです。 

    • 資産のオフバランス化ができる
    • 自己資本比率を維持できる
    • 資産を倒産から守る
    • 多くの投資家から資金調達できる 

    それぞれについて解説します。

    資産のオフバランス化ができる

    TMKを設立する最大のメリットは、資産およびそれに伴う負債を親会社の貸借対照表から切り離し、オフバランス化できる点です。 

    例えば、大規模な不動産開発や取得により多額の負債を抱えると、親会社の自己資本比率が悪化し、財務の健全性が損なわれかねません。そこで、特定目的会社に対象資産と関連負債を移転させることで、親会社のバランスシートをスリム化し、財務内容の改善が図れます。 

    これにより、銀行からの融資条件や格付けにも好影響を与え、新規投資や事業拡大に向けた柔軟な資金調達ができます。

    自己資本比率を維持できる

    TMKを活用するメリットとして、第三者割当増資をせずに自己資本比率を維持できる点が挙げられます。

    金融機関などからの借り入れを行うと負債が増加するため自己資本比率は低下します。しかし、不動産投資などに必要な借り入れを特定目的会社に負わせることで、親会社の負債に計上されず、自己資本比率を維持することができます。

    また、資産を切り出すことで、資本効率や財務指標の改善も期待できます。ただし、特定目的会社が親会社から独立していることが前提であり、会計基準によっては連結対象となり負債が親会社に計上される可能性があります。

    さらに、スポンサーとしての信用リスクが残る場合もあるため、慎重なスキーム設計が必要です。

    資産を倒産から守る

    TMKには、会社が倒産した場合に資産を失うリスクを回避するメリットもあります。企業が経営破綻した場合、保有資産は原則として売却・清算の対象となります。特に不動産は評価額と売却価格に乖離しやすく、損失リスクが高まることがあります。

    特別目的会社を設立して対象資産を移転しておくことで、親会社が倒産しても資産が特定目的会社に残り、清算手続きの対象から除外される仕組みが構築できます。この「倒産隔離」の仕組みは、特に資産価値の高い不動産を保護し、長期的な資産戦略として有効です。

    ただし、倒産隔離を成立させるには、特定目的会社が親会社から法的・経済的に独立している必要があります。また、特定目的会社が親会社の信用に依存している場合、間接的な影響を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

    多くの投資家から資金調達できる

    TMKは、資産を裏付けとした特定社債や優先出資証券の発行を通じて、一般投資家や機関投資家から広く資金を調達できます。 

    証券化の仕組みを通じて資金調達が行われるため、資金提供者はオリジネーター(資産保有者)ではなく、資産自体の信用力を重視します。そのため、オリジネーターの信用度が低い場合でも、優良資産であれば資金調達が可能です。 

    また、特定目的会社を通じた調達は、複数の投資家に分散されることが多いため、資金調達の安定性と柔軟性が高く、資産の流動性向上にもつながります。

    TMK(特定目的会社)設立のデメリット

    TMK(特定目的会社)の設立にはメリットだけでなく、デメリットやリスクも存在するため、慎重な検討が必要です。TMKには次のようなデメリットがあります。 

    • 設立や維持にコストがかかる
    • 運用開始までに時間がかかる
    • グループ通算制度の適用が受けられない
    • 不正会計の温床となる可能性がある 

    それぞれについて解説します。

    設立や維持にコストがかかる

    TMKの設立には、資本金として最低10万円以上が必要で、1円で設立可能な一般法人よりもハードルが高くなります。また、登録免許税、定款作成費用、弁護士や会計士への報酬などが発生します。さらに、資産流動化法に基づく厳格な財務報告や監査が義務付けられ、維持コストが高額になることもあります。

    運用開始までに時間がかかる

    TMKの設立から運用開始までは、資産流動化計画の策定・届出、内閣総理大臣への届出、金融機関との融資交渉、デューデリジェンスの実施など、多くの工程を経る必要があります。通常、1~3カ月以上かかることが一般的で、資産取得のタイミングに合わせた慎重なスケジュール設計が求められます。

    グループ通算制度の適用が受けられない

    TMKは資産流動化法に基づく特殊な法人格であるため、グループ通算制度の適用を受けられません。このため、特定目的会社による不動産保有では損益通算ができず、税負担が増加する可能性があります。ただし、他の税制優遇措置を活用することで、税務効率を高めることも可能です。

    不正会計の温床となる可能性がある

    過去には、特定目的会社を利用したオフバランス処理の悪用により、親会社の財務指標を意図的に良く見せる不正会計事例がありました。

    現在では、資産流動化法や会計基準の整備により、実質的に親会社が支配する特定目的会社については連結決算が義務付けられ、不正は困難になっています。それでも、透明性の確保やガバナンス強化が引き続き求められます。

    TMK(特定目的会社)の税制優遇措置

    TMK(特定目的会社)は、一般的な株式会社に比べて設立・維持に高いコストがかかる一方で、一定の要件を満たせばさまざまな税制上の優遇措置を受けられる法人形態です。 

    主な優遇措置は次のとおりです。 

    • 利益配当の損金算入
    • 不動産取得における税負担の減免 

    それぞれについて解説します。

    利益配当の損金算入

    TMKは、租税特別措置法第67条の14に基づく「導管性要件」を満たすことで、投資家への利益配当(優先出資配当など)を損金算入できます。これは通常の法人では認められておらず、特定目的会社が法人税と投資家課税の二重課税を回避できる仕組みです。 

    利益配当が損金算入として認められるための条件(導管性要件)は、対象法人に関する要件と、対象事業年度に関する要件の2つに分類されます。

    対象法人に関する要件

    対象法人に関する要件は次のとおりです。 

    • 特定目的会社名簿に登載されていること
    • 特定出資・優先出資の50%超が国内で募集された旨が資産流動化計画に記載されていること
    • 会計期間が1年以内であること
    • 次のいずれかの条件を満たすこと
      • 特定社債が公募により1億円以上発行されている
      • 特定社債が機関投資家等により保有される見込み
      • 優先出資が50人以上によって引き受けられている
      • 優先出資が機関投資家のみによって引き受けられている

    対象事業年度に関する要件

    対象事業年度に関する要件は次のとおりです。 

    • 業務は資産流動化計画に従って行われていること
    • 他の事業を営んでいないこと
    • 特定資産の管理・処分を外部に委託していること
    • 同族会社に該当しないこと(事業年度末時点)
    • 利益配当が配当可能利益の90%超であること
    • 無限責任社員でないこと(合名会社・合資会社でないこと)
    • 他の資産を保有せず、借り入れが機関投資家や特定SPCからであること

    不動産取得における税負担の減免

    TMKは、一定の要件を満たすことで不動産取得に関わる税負担を軽減する制度も活用できます。具体的には、特定目的会社が特定資産として不動産を取得する際、次の5つの要件全てを満たせば、登録免許税の税率が通常の2.0%から1.3%へ軽減されます。 

    1. 財務局への業務開始届出がなされていること
    2. 資産流動化計画において資産対応証券(特定社債や優先出資等)の発行が明記されていること
    3. 特定不動産が特定資産全体の75%以上である旨の記載があること
    4. 借入先と出資者が同一でないこと
    5. 不動産取得後の構成においても不動産が全体の75%以上を占めること

    また、不動産取得税についても、TMKであれば、上記の2〜5の要件を満たせば評価額の5分の3の控除が認められ、実質的な取得コストが大幅に抑えられます。ただし、特定目的会社が取得する資産の軽減措置は令和7年3月31日までであり、今後は優遇要件が変わる可能性があります。なるべく会計士や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

    TMK(特定目的会社)の設立要件と手順

    TMK(特別目的会社)を設立するには、「資産の流動化に関する法律」に基づく法的・実務的要件を満たす必要があります。また、設立手順についても解説します。

    TMKの設立要件

    TMKを設立する際の要件として以下が挙げられます。

    • 資本金の最低額
    • 定款の記載事項
    • 役員の人数
    • 内閣総理大臣への届出 

    それぞれについて解説します。

    資本金の最低額

    TMKの資本金の最低額は10万円以上と定められており、株式会社のように1円での設立は認められていません。また、特定目的会社の設立の際に登録免許税3万円と資本金額に応じた定款の公証手数料が必要です。

    • 100万円未満:3万円
    • 100万円以上300万円未満:4万円
    • 300万円以上:5万円

    役員の人数

    TMKの設立には取締役1名と監査役1名の設置が必須であり、いずれも登記事項です。監査役の氏名と住所が登記対象である点は、透明性とガバナンスを強化するための制度上の特徴です。

    定款の記載事項

    「資産の流動化に関する法律」第16条第2項に基づき、TMKの定款には、以下の絶対的記載事項を明記しなければなりません。これらは法人としての成立要件であり、次の6項目です。

    1. 目的(資産流動化を行う旨を明記)
    2. 商号
    3. 本店の所在地
    4. 特定資本金の額(特定出資の金額を指します)
    5. 発起人の氏名または名称および住所
    6. 存続期間または解散の事由

    特定資本金の額とは、特定目的会社を設立する際に発起人(特定社員)が出資する金額を指し、資産流動化計画を実行するための基本的な資本となります。また、定款には存続期間または解散の事由を必ず記載しなければならない点が、株式会社との大きな違いです。

    TMKは、特定のプロジェクトや資産流動化計画を達成するために設立される法人であり、事業完了後に解散することが一般的です。そのため、事業の終了時期や解散条件を明示することが求められます。定款への記載事項は、TMKの透明性と規律を確保し、資産流動化計画に基づく運営を適切に行うための重要な要件となっています。

    内閣総理大臣への届出

    TMKを設立する場合、資産流動化法第4条第1項に基づき、あらかじめ内閣総理大臣への届出が必要とされています。なお、条文上は内閣総理大臣宛となっていますが、実務上は所轄の財務局に届出書類を提出します。 

    この届出において重要なのは、「資産流動化計画(ALP=Asset Liquidation Plan)」の添付です。資産流動化計画には、TMKが取得する特定資産の内容、取得方法、運用方針、資金調達手段(優先出資や特定社債の発行など)、配当方針、委託先の管理体制など、詳細なスキーム全体が記載されます。 

    TMKは、業務開始後、この計画に従って厳格に運営しなければならず、途中で逸脱する場合には再届出や修正手続きが必要となる場合もあります。

    その他注意事項

    TMKは、一定の規模や資金調達形態に応じて、追加的な義務が課される場合があります。特に、資産流動化法第19条第1項に基づき、以下の場合には会計監査人(公認会計士または監査法人)の設置が義務付けられます。

    1. 特定社債の発行額が200億円以上の場合
    2. 優先出資の発行がある場合(発行額の規模にかかわらず)

    会計監査人は、特定目的会社の財務諸表や資産流動化計画に基づく運営が適切に行われているかを監査し、資産流動化スキーム全体の透明性と信頼性を確保する役割を担います。

    TMKの設立手順

    特定目的会社設立の設立における手続きの流れは次のとおりです。 

    1. 特定目的会社設立手続きの相談
    2. 必要書類などの準備
    3. 定款の作成
    4. 定款の認証
    5. 特定資本金の払込み手続き
    6. 登記申請と資産流動化計画の作成 

    それぞれ順番に解説します。

    1. 特定目的会社設立手続きの相談
      特定目的会社の設立には、会社法とは異なる複雑な法制度の理解と実務対応が必要となるため、早期の段階で弁護士、公認会計士、司法書士などの専門家に相談することが重要です。資産流動化のスキーム全体を設計し、法令に準拠した手続きを行うためには、資産内容・資金調達方法・出資構造を含めた専門的な判断が不可欠です。
    2. 必要書類などの準備
      設立にあたっては、発起人や役員の印鑑証明書、代表者の実印、資本金の払込口座の通帳写しなどの必要書類を事前に準備します。加えて、資産流動化計画の原案や、証券発行に関する計画書、登記申請書類なども整える必要があります。
    3. 定款の作成
      特定目的会社の設立において、最初のステップは定款の作成です。定款は発起人が作成し、その全員がこれに署名し、または記名押印しなければなりません(資産流動化法第16条第1項)。また、発起人は会社成立後、特定社員になります(資産流動化法第25条第1項で準用する会社法第50条)。 
    4. 定款の認証
      特定目的会社の設立においては、定款を作成した後、株式会社と同様に公証人役場での認証が必要です。なお、資産流動化法に基づく特定目的会社の設立では、印紙税法の定款に該当しないことから紙の定款であっても印紙税は課税されません。ただし、定款認証手数料は資本金額に応じて3~5万円がかかります。
    5. 特定資本金の払込み手続き
      特定目的会社の設立において、発起人は特定資本金を指定した金融機関の口座に払い込みます。この払い込みを証明する書類(振込明細書や通帳のコピーなど)は、設立登記申請時に法務局へ提出する必要があります。これにより、特定目的会社の設立資本金が確認されます。
    6. 登記申請と資産流動化計画の作成
      資本金の払込が完了したら、法務局に登記申請を行います。これにより特定目的会社が正式に成立します。特定目的会社の運営に必要な「資産流動化計画」を作成し、所轄財務局に業務開始届出とともに提出します。 

    TMK(特定目的会社)の活用事例3選

    TMK(特定目的会社)の代表的な活用事例を紹介します。また、近い手法で行われたホテルオークラの特別目的会社(SPC)活用事例も併せて紹介します。

    六本木ヒルズの建設の事例

    森ビル株式会社は、総事業費約2,700億円の大規模再開発プロジェクト「六本木ヒルズ」の建設において、約1,000億円を自己資金で負担し、残りの約1,700億円は特定目的会社「六本木ヒルズ・フィナンシャルコープ株式会社」を活用して調達しました。 

    日本政策投資銀行や民間金融機関からローンを受ける形で資金を集め、森ビルはオフバランス処理によって大幅にリスクを軽減してプロジェクトを推進することに成功しました。

    歌舞伎座の建て替えの事例

    松竹株式会社は、老朽化した歌舞伎座の建て替えにあたり、特定目的会社を設立して約430億円の資金を調達し、複合ビルへの再開発を実施しました。 特定目的会社を通じて建て替え後は安定した賃料収入が得るようになり、本業である興行収入に依存しない利益確保にもつなげています。

    ホテルオークラの建て替えの事例

    ホテルオークラは、老朽化したホテルオークラ東京本館の建て替えにあたり、約1,100億円にのぼる事業費のうち約9割を短期借り入れで賄う財務戦略を採用しました。この際、41階建ての高層棟オフィス部分(8〜25階)を信託化し、大成建設・新日鉄興和不動産と共同設立した特別目的会社(SPC)に譲渡しました。 

    その後、建物竣工時にはオフィスフロアの所有権もSPCが取得する形をとり、賃貸事業として運営されました。このスキームにより、ホテル本体の財務負担を抑えつつ、資産活用と事業収益の両立が実現されています。

    特定目的会社に関するQ&A

    最後に、特別目的会社に関する質問とその回答を紹介します。

    Q.中小企業でも特定目的会社を設立することはあるか

    A.中小企業でも特定目的会社を設立するケースはあります。特に、不動産収益物件を保有していて、資産のオフバランス化を通じて財務体質の改善を図りたい場合に活用されます。 

    ただし、特定目的会社の設立・維持には専門的な知識やコストが伴うため、税理士・弁護士・会計士などの専門家と連携することが一般的です。

    Q.特定目的会社の解散手続きはどのように行うか

    A.特定目的会社の解散は、事業目的である資産流動化が完了した際に行われることが一般的です。解散の手続きは通常の株式会社に準じて行われますが、特定目的会社特有の要件として「資産流動化計画」の終了が解散事由として明記されている点が特徴です。 

    まず、株主総会で解散決議を行い、その後、清算人(多くの場合、代表取締役が兼任)を選任します。清算人は債権・債務の整理や資産の売却、残余財産の分配などを実施し、全ての債務処理が完了すると、清算結了登記をもって法人格が消滅します。 

    なお、特定目的会社は会計監査人や監査役が設置されているため、清算過程でも監査や報告義務が発生する点に留意が必要です。また、特定目的会社の解散登記後には、法務局や税務署などへの届出も求められます。

    Q.特定目的会社の存続期間に制限はあるか

    A.特定目的会社の存続期間について、資産流動化法上で明確な年数制限は設けられていません。ただし、特定目的会社は特定の資産を証券化・流動化することを目的とする法人であるため、存続期間は資産流動化計画に基づいて合理的に設定される必要があります。

    一般的には、3〜10年程度の中期運用を前提とするケースが多く、対象資産の性質や投資家との契約条件によって異なります。例えば、不動産を対象とする場合、賃料収入や将来的な売却益の見通しに基づき、一定期間の運用後に解散・清算を前提とした設計が行われます。

    なお、特定目的会社の定款には、存続期間または解散の事由を明記することが法律で定められています。運用終了後には解散・清算手続きが進められることが一般的です。

    Q.特定目的会社が扱う不動産には制限や要件があるか

    A.特定目的会社が取得・流動化の対象とする不動産には、法令上の明確な制限は設けられていませんが、実務上は一定の適格性が求められます。 

    対象となる不動産は、賃料収入や売却によって安定したキャッシュフローが見込まれることが基本条件です。また、収益性に加え、所有権の確実性(借地権付きの場合の期限・契約内容など)や法令・都市計画上の問題がないことも必要です。

    Q.アセットマネージャーとは

    A.特定目的会社は、資産の流動化を目的とした法人であり、自らは営業活動を行わず、法的な制約により役職員を常時雇用できません。そのため、実際の資産管理・運用業務は外部の専門家に委託する形で運営されます。この際、資産運用の実務をアセットマネージャーが担います。 

    アセットマネージャーの業務は、不動産を対象とする場合、対象資産の選定から取得交渉、テナント管理、物件改善、売却戦略の立案まで多岐にわたります。特定目的会社の持つ資産の取得・管理・処分といった一連のプロセスを、専門的知見を持つアセットマネージャーが補完・代行することで、資産の収益性や流動性を最大化します。

    Q.ノンリコースローンとは

    A.ノンリコースローンとは、借入先(債務者)がローン返済に対して個人保証や追加弁済義務を負わず、返済原資が特定の事業や資産からの収益に限定される融資形態です。 

    特定目的会社においては、投資家のリスクを限定し、資産ごとの責任分離を実現するために、ノンリコースローンが標準的に用いられます。例えば、特定目的会社が保有するオフィスビルの賃料収入を返済原資とし、返済不能に陥った場合でも、スポンサー企業や出資者には返済責任が及びません。これにより、倒産隔離が成立し、資産と負債の関係が閉じたスキームとなります。 

    一方、貸し手にとっては回収リスクが高いため、資産価値や契約条件に対する厳格な審査が求められ、金利は通常の融資よりやや高めに設定されることが一般的です。

    Q.匿名組合(TK)との違い

    A.特定目的会社と匿名組合(TK)は、資産流動化や不動産投資で利用されるスキームですが、法律構造や投資家保護に違いがあります。

    匿名組合(TK)は法人格を持たず、出資者は営業者(合同会社など)に対して間接的に出資します。出資者は営業の損益に応じた分配を受けますが、経営に関与せず所有権も持ちません。設立・運営コストが低く柔軟性がありますが、営業者の信用リスクが影響する可能性があります。

    一方、特定目的会社は資産流動化法に基づく法人格を持ち、証券化や倒産隔離により投資家保護が手厚いです。また、税務透明性や税制優遇措置を利用できる点で、大型案件や制度的信頼性を重視するプロジェクトに適しています。

    まとめ|TMKを活用し、最適な資産運用を

    TMK(特定目的会社)とは、流動性の低い資産を適切に活用するための仕組みであり、資産を効率的に証券化し、財務構造の最適化を図る手段として多くの企業に活用されています。TMKを利用することで、企業は資産の流動性を高め、資金調達の幅を広げることが可能です。

    しかし、運用には厳密なルールが定められており、特定の手続きや注意点が伴うため、事前の理解と計画が不可欠です。本記事で紹介したTMKのメリットや設立手順を参考に、資産運用の最適化を目指してみてください。TMKの活用についてさらに詳しく知りたい方は、専門家に相談することも一つの方法です。これにより、より効果的な資産管理や運用戦略を構築できるでしょう。

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