着手金・中間金無料 完全成功報酬型

プットオプションとは、コールオプションと並ぶ、株式売買におけるオプション条項の一つです。M&Aや事業承継では、プットオプションが将来の売却に直結することがあるため、契約の仕組みを正しく理解したうえで判断することが重要です。
本記事では、プットオプションの基本的な定義から、M&A実務での活用パターン、得られるメリット、そして見落としやすいリスクまでを整理して解説します。専門家との協議を進めるための基礎知識として、ぜひご活用ください。
目次
プットオプションとは、条件が満たされた場合に、株式の売却を相手に求められる権利です。証券市場でも使われる考え方ですが、M&Aでは、この権利が契約書に条項として盛り込まれることがあります。ここでは、プットオプションの意味と、コールオプションとの違いをわかりやすく解説します。
プットオプションとは、ある資産を将来の特定の日までに、あらかじめ決めた価格で「売る権利」を指します。例えば、保有する株式の価格が将来下がるリスクに備えて、1株100円で売れる権利をあらかじめ買っておけば、たとえ市場価格が80円に下落しても100円で売却できます。この「下落リスクに対する保険」としての機能が、プットオプションの本質的な役割です。
この権利を手に入れるには、「プレミアム」と呼ばれるオプション料を支払う必要があります。一方、権利を売る側はプレミアムを受け取る代わりに、相手が権利を行使した場合にはあらかじめ決めた価格で資産を買い取る義務を負います。
プットオプションとは「権利を持つ側」と「義務を負う側」が明確に分かれる非対称な契約構造であり、この点を理解することが重要です。金融市場では株式や株価指数、為替などが対象資産となりますが、M&Aの世界では「非上場企業の株式」が対象となり、契約書の中で将来の株式売却の条件として規定される傾向があります。
プットオプションの対になるのがコールオプションです。コールオプションは「将来、あらかじめ決めた価格で資産を買う権利」であり、プットオプションの「売る権利」と逆の性質を持ちます。
プットオプションとコールオプションの違いを以下の表にまとめます。
| 項目 | プットオプション | コールオプション |
|---|---|---|
| 権利の内容 | あらかじめ決めた価格で売る権利 | あらかじめ決めた価格で買う権利 |
| 利益が出る場面 | 対象資産の価格が下落したとき | 対象資産の価格が上昇したとき |
| M&Aでの典型的な利用者 | 売り手側(創業者・少数株主) | 買い手側(投資家・ファンド) |
M&Aの株主間契約では、売り手にプットオプションを、買い手にコールオプションを付与することで、将来の株式移転の条件を双方にとって公平に設計するケースが多く見られます。両者をセットで理解しておくと、契約全体の構造が見えやすくなるでしょう。
プットオプションには必ず「買い手」と「売り手」が存在します。買い手とは権利を取得する側であり、将来の不利な価格変動から自分を守ることが主な目的です。一方の売り手は、プレミアムという収入を得る代わりに、相手が権利を行使した際には指定価格で資産を引き取る義務を負います。
M&Aにおいては、創業者が権利者であれば、将来一定の条件のもとで保有株式を買い手企業やファンドに売却できます。逆に、投資家が権利者であれば、契約違反などが発生した際に保有株式を創業者や対象会社に売却する権利を持つことになります。
M&A契約を締結する際には、自分が「権利を持つ側」なのか「義務を負う側」なのかを正確に把握することが重要なポイントです。例えば、投資家から提示された契約書に「株式買取請求権」という条項があれば、それは投資家側のプットオプションである可能性が高く、創業者個人が買取義務者に含まれていないかを確認することが推奨されます。
プットオプションを構成する3つの基本要素は、権利行使価格、満期、プレミアムです。
権利行使価格の算定方法が固定額か業績連動かによって、将来受け取れる金額が大きく変わるため、この点は契約交渉の核心といえます。特に中小企業オーナーの場合、自社の将来の成長性を踏まえたうえで、どの算定方式が自分にとって最も合理的かを専門家と一緒に検討することが欠かせません。
THANK YOU
お問い合わせが
完了しました
ご記入いただきました情報は
送信されました。
担当者よりご返信いたしますので、
お待ちください。
※お問い合わせ後、
2営業日以内に返信がない場合は
恐れ入りますが
再度お問い合わせいただきますよう、
よろしくお願い致します。
お急ぎの場合は
代表電話までご連絡ください。
プットオプションについて、金融商品としての基本を踏まえたうえで、ここからはM&A実務における具体的な活用場面を見ていきましょう。中小企業オーナーにとって身近なシーンを中心に解説します。
ジョイントベンチャー(JV)や業務提携の契約では、将来パートナーとの関係が悪化した場合に備え、あらかじめ解消のルールを定めておくことが重要です。プットオプションは、JV契約上の義務違反が生じた場合などに、一方の当事者が自らの持分を相手に売り渡す権利として設計されることがあります。
例えば、A社とB社が50%ずつ出資して合弁会社を設立したケースを想定しましょう。B社が契約で定めた競業避止義務に違反した場合、A社はプットオプションを行使して自社の持分をB社にあらかじめ定めた価格で売却し、JVから離脱できるようにしておきます。このような取り決めがなければ、義務違反があっても持分の売却先が見つからず、関係が膠着状態に陥るリスクが生じます。
プットオプションがJV契約に含まれていれば、相手方の義務違反という事態にも、あらかじめ定めた条件で撤退する道筋を確保しやすくなります。出口が規定されていない提携は、状況変化の際に関係を解消しにくくなるリスクがあるため、JV締結時にこうした条項の有無を確認することが望ましいです。
M&Aの一部株式譲渡スキームでは、創業者が過半数の株式を買い手に売却した後も、残りの株式を保有し続けるケースがあります。この場合、創業者は少数株主となりますが、非上場株式には証券取引所のような公開市場が存在しないため、将来その株式を現金化する手段が限られてしまいます。
ここでプットオプションが活用されます。例えば、「株式譲渡後3年が経過した時点で、創業者は残りの株式を買い手にEBITDAの5倍の価格で売却できる」という条項を契約に盛り込んでおくことで、創業者は一定期間後にイグジットする道筋を確保しやすくなります。
以下は、少数株主保護に活用されるプットオプションの典型的な設定項目です。
プットオプションによるイグジット保証は、非上場株式の流動性リスクを大幅に軽減し、創業者が安心して一部株式を保有し続けられる仕組みです。事業承継ファンドとの取引では特に重要な条項となるため、具体的な条件設定まで踏み込んで交渉することが望まれます。
スタートアップや中小企業への投資契約では、投資家が保有する株式を対象会社や創業者に売却できる「株式買取請求権」が規定されることが一般的です。これは実質的に投資家側のプットオプションであり、投資実行後に契約上の重大な義務違反が発生し一定期間内に治癒されない場合や、表明保証条項への違反が判明した場合などに行使されます。
投資家にとっては、この権利があることで契約違反時の投資回収手段を確保できるため、合理的なリスク管理手段といえます。しかし創業者にとっては、買取義務者に個人が含まれている場合、将来多額の買戻し資金を個人として調達しなければならないリスクを負うことになります。
例えば、投資家が1億円で取得した株式について株式買取請求権を行使した場合、創業者個人が資金を用意して買い戻さなければならないケースが考えられます。株式買取請求権の買取義務者に自分が含まれていないかを確認することは、創業者にとって重要なチェック項目です。
この条項の存在を見落としたまま契約に署名すると、事業がうまくいかなかった場合に個人の財産にまで影響が及ぶ可能性があるため、弁護士やM&Aアドバイザーに必ず確認を依頼しましょう。
プットオプションは、設計次第でオーナーの権利保護にも、負担にもなり得ます。ここではメリットとリスクの両面を具体的に整理し、判断のポイントを解説します。
会社売却を検討する中小企業オーナーにとって、プットオプションが適切に設計されていればリスク管理に役立ちます。
第一のメリットは、将来の売却価格にフロア(下限)を設定できる点です。業績悪化や市場環境の変化によって企業価値が下がっても、あらかじめ合意した価格で売却できるため、創業者利益の一定ラインを確保しやすくなります。
第二のメリットは、段階的な売却スキームにおけるイグジットの合理性です。事業承継ファンドやPEファンドとの取引では、最初に過半数株式を売却し、残りを数年後に売却する段階的なスキームが採用されることがあります。残余株式にプットオプションが設定されていれば、引き継ぎ期間の終了後に残り株式を売却しやすくなり、事業承継とイグジットの両立を図れます。
第三のメリットは、少数株主として取り残されるリスクの軽減です。非上場株式は市場で自由に売買できないため、少数株主にとっては株式の現金化が困難になる恐れがあります。プットオプションがあれば、一定条件のもとで株式を買い手に売却する権利が保証されるため、非上場株式の流動性リスクを大幅に低減できるのです。
これら3つのメリットを理解したうえで、契約条件の妥当性を判断していくことが重要です。
一方で、プットオプションの設計次第では、オーナーにとって深刻なリスクが生じる場合があります。最も注意すべきリスクは、投資家側のプットオプション(株式買取請求権)により、創業者個人が将来の買取義務を負うケースです。
事業承継や投資契約において、投資家が契約違反等を理由に株式の買い取りを請求した場合、その買取資金を個人の財産から捻出しなければならない可能性があります。
以下の表は、オーナーが直面しうる代表的なリスクとその内容です。
| リスクの種類 | 具体的な内容 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 個人への買取義務 | 創業者個人が買取義務者とされている場合、投資家のプットオプション行使時に個人で買取資金を負担するリスクがある | 買取義務者の範囲を法人に限定するよう交渉する |
| 価格条件の不利 | 行使価格が固定額または限定的な算式の場合、企業価値上昇分が十分に反映されない可能性がある | 業績連動方式や第三者評価方式の採用を提案する |
| 曖昧な行使条件 | トリガーの定義が不明確だと、想定外のタイミングで行使されるおそれがある | 行使事由を具体的かつ限定的に規定する |
| 事業承継への悪影響 | 経営者の退任や死亡等がトリガーとなる場合、相続・事業承継時に予期せず行使されるおそれがある | 相続・事業承継シナリオとの整合性を事前に検証する |
これらのリスクは契約段階での条件設定によって大きく軽減できるため、署名前に弁護士やM&Aアドバイザーと詳細に検討することが不可欠です。特に行使条件のトリガーが曖昧なまま合意してしまうと、将来的に解釈の相違から紛争に発展する恐れがあります。
プットオプションに関する契約交渉では、行使条件(トリガー)と行使価格の算定方法が最大の論点となります。行使条件としては、一定期間内のIPO未達成、経営者の退任や死亡、重要な契約違反、業績目標の未達などが典型的です。これらのトリガーが自分にとってコントロール可能な範囲にあるかどうかを見極めることが第一歩となります。
行使価格の算定方法には、固定額方式、EBITDA倍率などの業績連動方式、独立した第三者機関による評価方式などが代表的です。固定額方式はシンプルで分かりやすい反面、将来の企業価値変動に対応できません。
業績連動方式は企業価値の成長を反映しやすいものの、EBITDAの定義や調整項目をめぐって争いが生じるリスクがあります。第三者評価方式は客観性が高い一方で、評価プロセスに時間とコストがかかる点がデメリットです。
行使条件は具体的かつ限定的に定め、価格算定方法は自社のビジネスモデルや成長見通しと整合する方式を選択することが、オーナーを守る鍵となります。自社の業種や将来の収益構造を踏まえて、どの算定方式が最もフェアかを検討し、交渉に臨んでください。
税務面では、プットオプション行使による株式売却のタイミングが譲渡所得税(約20%)の負担額に影響することもあるため、税理士への事前相談も検討しましょう。
M&Aの株主間契約においては、プットオプションは単独で存在するものではなく、株主間契約や投資契約の中で他の条項と組み合わせて機能します。関連条項との関係性を把握し、契約書を読み解く実践力を身につけましょう。
M&Aの株主間契約には、プットオプション以外にもコールオプション・タグアロング・ドラッグアロングなど、株式の移転に関わる重要な条項が複数存在します。コールオプションは、買い手側が一定の条件の下で相手方に株式の売渡しを求めることができる権利です。プットオプションと組み合わせることで、当事者双方の株式移転に関するルールを柔軟に設計することができます。
例えば、ファンドが「5年後に残余株式をEBITDA6倍の価格で取得できるコールオプション」を持ち、同時に創業者が「5年後にEBITDA5倍を下限とするプットオプション」を持つ設計がなされることがあります。
タグアロング条項(共同売却請求権)は、支配株主が第三者に株式を売却する際に、少数株主が同一条件で自分の株式も一緒に売却できる権利です。ドラッグアロング条項(強制売却条項)はその逆で、支配株主が第三者に売却する場合に、少数株主にも同条件での売却を義務付けるものです。
以下の表で各条項の特徴を比較します。
| 条項名 | 権利を持つ側 | 主な目的 |
|---|---|---|
| プットオプション | 株式を売りたい側 | 将来の株式売却権を確保する |
| コールオプション | 株式を買いたい側 | 将来の株式取得権を確保する |
| タグアロング | 少数株主 | 支配株主の売却に便乗してエグジットする |
| ドラッグアロング | 支配株主 | 全株取得を前提としたM&Aを円滑に進める |
これらの条項は相互に連動するため、プットオプションだけを切り取って評価するのではなく、契約全体の中での位置づけを把握することが重要です。契約書のドラフトを受け取ったら、これらの条項がどのように組み合わされているかを一覧表にして整理すると、全体像が見えやすくなるでしょう。
後継者不在の中小企業において、事業承継ファンドの活用は選択肢の一つです。事業承継ファンドはPEファンドの一種であり、株式取得後に経営支援を行い、企業価値を高めたうえでイグジットする流れが設計されています。このスキームにおいてプットオプションは、創業者のイグジットを保証する手段や、ファンドのイグジット手段として活用されます。
例えば、創業者が70%の株式をファンドに売却し、30%を継続保有するスキームでは、一定期間経過後に残り30%の株式をファンド等に売却できるプットオプションを創業者に付与するケースがあります。これにより、創業者は引き継ぎ期間中の経営に関与しつつ、将来の残余株式の売却ルートを確保できます。
事業承継ファンドとの取引では、プットオプションが「ファンドのイグジットのため」か「創業者のイグジット保証のため」かを区別して理解することが重要です。ファンド側にプットオプションが付与されている場合、ファンド側のタイミングで権利が行使される可能性があり、事業運営に影響を与えることも考えられます。契約書の条項を読む際には、「この権利は誰のためのものか」という視点を常に持つようにしてください。
プットオプションに関する条項を含むM&A契約の締結前に、以下の項目を確認することが推奨されます。専門家に相談する前の整理としてご活用ください。
このリストをもとに専門家と論点を共有することで、交渉の円滑化につながります。契約書を確認する際は、「誰が」「いつ」「いくらで」「どのような条件で」権利を行使できるのかを明確にすることが重要です。各条件を十分に検証したうえで合意することが、適切なM&Aにつながります。
プットオプションとは、将来あらかじめ決めた価格で資産を売る権利であり、M&Aの契約では創業者や少数株主のイグジット保証、投資家のリスク管理手段として幅広く活用されています。自分が権利者なのか義務者なのかを正しく把握し、行使条件や価格算定方法を理解したうえで交渉に臨むことが重要です。
プットオプションの条項は、創業者利益の確保や事業承継の設計に直結する重要なテーマです。本記事で得た知識をもとに、弁護士や税理士、M&Aアドバイザーに具体的な質問を投げかけ、ご自身が納得できる条件を一緒に検討してください。
M&Aロイヤルアドバイザリーでは、M&Aや事業承継に関するご相談を承っております。M&Aや経営課題に関するお悩みはお気軽にお問い合わせください。
CONTACT
当社は完全成功報酬ですので、
ご相談は無料です。
M&Aが最善の選択である場合のみ
ご提案させていただきますので、
お気軽にご連絡ください。