買収とは?意味やM&Aとの違い、メリット・デメリットを解説! 

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買収とは、他社の事業や経営権を取得することで、企業の成長戦略や事業承継において重要な役割を果たすM&A手法です。近年、中小企業においても後継者不足や競争力強化を背景に、買収を活用する企業が急速に増加しています。 

しかし、買収には大きなメリットがある一方で、高額な費用負担や統合の複雑さなど、注意すべきリスクも存在します。成功するためには、買収の基本的な仕組みを理解し、適切な手法選択と綿密な準備が不可欠です。 

本記事では、買収の基本的な定義からM&Aとの違い、メリット・デメリット、実行手法、成功のポイントまで、中小企業の経営者が知っておくべき重要な情報を分かりやすく解説します。買収を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。 

買収とは 

買収とは、他社の事業や経営権を買い取ることで、企業の成長戦略や事業拡大を実現するM&A手法の一つです。近年、中小企業においても事業承継や競争力強化の手段として、買収が注目を集めています。 

企業の経営環境が急速に変化する現代において、自社の力だけで事業を拡大することは困難になっており、他社の経営資源を活用することで迅速な成長を実現する買収は、多くの企業にとって重要な選択肢となっています。 

買収の基本的な定義 

買収とは、他社が持つ事業や企業の経営権を金銭や株式などの対価を支払って取得することです。買収により、買い手企業は売り手企業が持つ人材、技術、ノウハウ、販路、設備などの経営資源を獲得できます。 

買収の対象となるのは株式や事業資産であり、株式を取得する場合は議決権の過半数以上を取得することで経営権を掌握できます。一般的に、議決権の50%超で経営権の取得、3分の2以上で完全な経営支配が可能となります。 

中小企業の買収では、オーナー経営者が保有する株式の大部分または全部を譲渡するケースが多く、事業の継続性を保ちながら新たな経営体制に移行することが可能です。 

企業買収と事業買収の違い 

買収は取得する範囲によって「企業買収」と「事業買収」に分類されます。 

企業買収は、対象企業の株式を取得することで会社全体の経営権を取得する手法です。買収後も売り手企業の法人格は存続し、買い手企業の子会社または関連会社として事業を継続します。企業買収では、対象企業のすべての資産・負債、契約関係、従業員を引き継ぐことになります。 

一方、事業買収は企業内の特定の事業部門や事業資産のみを取得する手法です。必要な事業だけを選択的に取得できるため、不要な負債や事業を引き継ぐリスクを回避できます。ただし、許認可の再取得や契約の個別移転など、手続きが複雑になる場合があります。 

中小企業では、事業の全体的な承継を目的とする企業買収が一般的ですが、特定分野への参入や事業の選択と集中を図る場合には事業買収が選択されます。 

M&Aや合併との関係性 

買収はM&A(MergersandAcquisitions)の代表的な手法の一つです。M&Aは「合併と買収」を意味し、企業の統合や再編を行う取引の総称として使用されます。 

買収と合併の最大の違いは、売り手企業の法人格が存続するかどうかです。買収では売り手企業の法人格が残り、買い手企業の傘下で事業を継続します。これに対して合併では、複数の企業を一つの法人に統合するため、合併により消滅する企業が発生します。 

M&Aの範囲は広く、買収や合併のほかに、業務提携、資本提携、第三者割当増資なども含まれます。中小企業のM&Aでは、株式譲渡による買収が最も多く用いられており、手続きが比較的簡単で、事業の継続性を保ちやすいという特徴があります。 

このように、買収はM&Aの中核的な手法として、企業の成長戦略や事業承継において重要な役割を果たしています。 

買収の種類と中小企業での位置づけ 

買収は、売り手企業の同意を得ているかどうかによって「友好的買収」と「敵対的買収」に分類されます。これらの違いを理解することは、中小企業が買収を検討する際の重要なポイントとなります。 

友好的買収と敵対的買収の特徴 

友好的買収とは、買収対象となる企業の経営陣から事前に同意を得て実施される買収です。売り手と買い手の双方が買収条件や価格について合意したうえで進められるため、円滑な交渉と統合が可能です。 

日本で実施されるM&Aの大部分は友好的買収であり、特に中小企業では株式に譲渡制限が設けられているため、オーナーの同意なしに株式を取得することは実質的に不可能です。友好的買収では、トップ面談や条件交渉を通じて相互理解を深め、買収後の経営統合もスムーズに進められます。 

一方、敵対的買収とは、売り手企業の経営陣の同意を得ずに実施される買収です。主に上場企業を対象とし、TOB(株式公開買付)により市場から株式を取得して経営権の掌握を目指します。しかし、日本では株式持ち合いなどの企業文化もあり、敵対的買収の成功率は低く、実施されるケースは限定的です。 

中小企業における買収の現状と背景 

M&Aは近年急速に増加しており、M&A調査のレコフデータによると、2024年には過去最多の4,700件に達しました。この背景には、経営者の高齢化と後継者不足という深刻な課題があります。 

中小企業庁の過去の推計によると、2025年までに約127万社の中小企業が「後継者未定」の状態となり、また経営者の6割以上が70歳を超えると予測されていました。 

このような状況を受けて、政府は事業承継・引継ぎ支援センターを全都道府県に設置し、M&Aマッチングの強化を図っています。また、事業承継税制の拡充や補助金制度の充実により、M&Aによる事業承継を積極的に支援しています。 

事業承継手段としての買収活用 

中小企業の事業承継は従来、親族内承継が主流でしたが、帝国データバンクによると、少子高齢化の影響により親族以外への承継が6割を超えています。(内部昇格・外部招聘・M&Aなど含む)

このような変化の中で、第三者への事業承継手段としてM&Aが注目されています。 

事業承継型M&Aは、単なる経営権の移転ではなく、企業の持続的成長を実現する有効な手段として位置づけられています。売り手企業にとっては、後継者問題の解決、従業員の雇用維持、株式売却による利益獲得といったメリットがあります。 

買い手企業にとっても、新規事業への参入、既存事業の拡大、優秀な人材の獲得などのメリットを短期間で実現できるため、成長戦略の重要な選択肢となっています。 

買収がもたらすメリット4つ 

買収は企業の成長戦略において強力な手段であり、自社の力だけでは時間がかかる課題を短期間で解決できます。中小企業にとって買収がもたらす代表的なメリットを4つの観点から詳しく解説します。 

既存事業の拡大とスケールアップ 

買収により既存事業を大幅に拡大し、市場での競争力を強化できます。同業他社を買収することで、売上規模の拡大、市場シェアの向上、コスト効率の改善を一度に実現できるのが最大のメリットです。 

事業規模の拡大により、仕入れや製造における規模の経済効果を享受できます。大量発注による原材料費の削減、生産効率の向上、管理コストの最適化など、単独では実現困難なコスト競争力を獲得できます。また、販売網の統合により営業効率も大幅に向上します。 

地域展開の観点でも、買収は極めて有効です。新しい地域に一から拠点を構築するには多額の投資と時間が必要ですが、その地域で既に事業基盤を持つ企業を買収することで、迅速な市場参入と顧客基盤の獲得が可能になります。 

新規事業への迅速な参入 

買収は新規事業分野への参入において、効率的かつリスクの低い手段です。自社で一から新事業を立ち上げる場合、市場調査、商品開発、販路開拓、人材採用など、多くの時間と資源が必要になります。 

既に当該分野で事業を軌道に乗せている企業を買収することで、必要な経営資源が揃った状態からスタートできます。市場での実績、顧客基盤、ノウハウ、許認可などを一括で取得できるため、新規参入のリスクを大幅に軽減できます。 

特に中小企業にとって、新規事業の失敗は経営に深刻な影響を与える可能性があります。買収により実績のある事業を取得することで、安定した収益基盤を確保しながら新分野でのチャレンジが可能になります。多角化による事業リスクの分散効果も期待できます。 

優秀な人材と技術の獲得 

買収により、自社にない専門知識や技術を持つ優秀な人材を獲得できます。これは特に技術集約型の中小企業にとって重要なメリットです。新たに人材を採用し、教育するには長期間を要しますが、買収により即戦力を確保できます。 

買収対象企業が保有する特許、ノウハウ、技術力は、自社の競争力向上に直結します。研究開発に数年かかる技術も、買収により短期間で自社のものにできます。また、業界特有の専門知識や顧客との関係性も重要な無形資産として活用できます。 

  • 即戦力人材の確保:採用・教育コストの削減
  • 技術力の向上:研究開発期間の短縮
  • 専門ノウハウの取得:業界知識の蓄積 

人材の定着率向上も重要なポイントです。友好的買収により従業員のモチベーションを維持し、貴重な人的資源の流出を防ぐことで、買収効果を最大化できます。 

シナジー効果による競争力強化 

買収の最大の魅力は、1+1が2以上の効果を生み出すシナジー効果です。売上シナジー、コストシナジー、財務シナジーの3つの観点から、単独では実現できない競争力を獲得できます。 

売上シナジーでは、相互の顧客基盤を活用したクロスセル、商品ラインの拡充による提案力向上、ブランド力の相乗効果などにより売上拡大を実現できます。販売チャネルの共有により、新商品の市場投入も効率化されます。 

コストシナジーでは、重複部門の統合、共同購買による調達コストの削減、生産拠点の最適化などにより、大幅なコスト削減が可能です。管理部門の統合により、間接費の効率化も図れます。 

財務シナジーでは、信用力の向上による資金調達コストの削減、キャッシュフローの安定化、節税効果の活用などにより、財務基盤の強化を実現できます。これらのシナジー効果により、市場での競争優位性を確立し、持続的な成長基盤を構築できます。 

買収のデメリットと注意点4つ 

買収には多くのメリットがある一方で、重大なリスクも存在します。特に中小企業にとって買収の失敗は経営に深刻な影響を与える可能性があるため、事前にデメリットを理解し、適切な対策を講じることが重要です。 

高額な買収費用と資金負担 

買収には多額の資金が必要であり、中小企業にとって大きな財務負担となります。買収価格だけでなく、仲介手数料、法務費用、税理士費用、デューデリジェンス費用など、関連する様々なコストが発生します。 

買収価格の算定では、対象企業の将来性やシナジー効果を見込んで「のれん代」が上乗せされることが一般的です。しかし、期待した成果が得られない場合、投資回収が困難になるリスクがあります。特に競争の激しい入札では、価格が釣り上がって「高値掴み」となる危険性があります。 

また、資金調達の面でも課題があります。自己資金だけでは買収資金を賄えない場合、金融機関からの借入が必要になりますが、買収後の返済負担が経営を圧迫する可能性があります。また、買収後の統合コストや設備投資なども考慮すると、想定以上の資金が必要になることがあります。 

中小企業が買収を検討する際は、自社の財務体力を十分に分析し、無理のない資金計画を立てることが不可欠です。買収価格の妥当性を慎重に検証し、複数の専門家から意見を求めることも重要です。 

統合プロセスの複雑さ 

買収後のPMI(PostMergerIntegration:経営統合)は、買収の成否を左右する重要なプロセスですが、同時に最も困難で複雑な作業でもあります。異なる企業文化、システム、制度を統合するには、膨大な時間と労力が必要です。 

経営システムの統合では、会計システム、人事制度、給与体系、就業規則などを一元化する必要があります。それぞれの企業で異なるルールや慣習があるため、統合作業は想定以上に複雑になることがあります。ITシステムの統合も技術的な困難を伴い、データ移行や新システムの導入には時間とコストがかかります。 

組織統合では、役職や責任の再配置、報告系統の整理、意思決定プロセスの統一などが必要です。これらの変更により一時的に業務効率が低下したり、従業員の混乱を招いたりする可能性があります。 

  • システム統合:会計・人事・ITシステムの一元化
  • 組織再編:役職・部門・報告系統の整理
  • 制度統一:就業規則・評価制度・福利厚生の調整 

PMIの失敗は買収効果を大幅に減じるため、買収前から詳細な統合計画を策定し、専門家のサポートを得ながら進めることが重要です。 

人材流出とカルチャーの衝突 

買収により企業文化や労働環境が変化することで、優秀な人材の流出リスクが高まります。特に、買収対象企業の従業員にとって、新しい経営方針や企業文化への適応は大きなストレスとなる可能性があります。 

経営方針の違いから生じる価値観の衝突は、深刻な問題となることがあります。意思決定のスピード、リスクに対する考え方、顧客対応の方針などの違いが、現場レベルでの混乱や対立を招く可能性があります。 

待遇や労働条件の変更も人材流出の要因となります。給与体系の見直し、福利厚生の変更、勤務時間の調整などが従業員の不満を招き、転職を考える契機となることがあります。特に、買収対象企業の核となる技術者や営業担当者の離職は、買収効果を大幅に減じる結果となります。 

コミュニケーション不足も重要な問題です。買収の理由や今後の方針について十分な説明がないと、従業員の不安や憶測を招き、組織の結束力を損なう可能性があります。定期的な説明会や個別面談を通じて、従業員の理解と協力を得る努力が不可欠です。 

期待した効果が得られないリスク 

買収において最も深刻なリスクは、期待した効果が得られず、投資回収ができなくなることです。このリスクは複数の要因から生じる可能性があります。 

のれんの減損リスクは特に重要です。買収価格に含まれる「のれん」は、将来の収益力やシナジー効果を見込んだ部分ですが、実際の業績が期待を下回った場合、会計上の減損処理が必要になります。これにより、大幅な損失を計上する事態となる可能性があります。 

簿外債務や偶発債務の発覚も重大なリスクです。貸借対照表に記載されていない未払い賃金、退職給付債務、債務保証、訴訟リスクなどが買収後に判明した場合、予想外の財務負担を負うことになります。デューデリジェンスの不備により、これらのリスクを見逃すケースがあります。 

市場環境の変化も買収効果に大きな影響を与えます。買収時の前提条件が変化し、想定していた市場成長や収益性が実現しない場合、買収投資の回収が困難になります。

  • のれんの減損:期待収益の未達による損失計上
  • 隠れた債務:未把握の財務リスクの顕在化
  • 市場変化:前提条件の変化による収益性悪化 

これらのリスクを最小化するためには、徹底したデューデリジェンス、適正な買収価格の設定、詳細な統合計画の策定が不可欠です。 

買収の実行手法と適切な選択 

買収を実行する際は、目的や状況に応じて最適な手法を選択することが重要です。中小企業のM&Aで主に用いられる手法の特徴を理解し、自社に適した方法を選択しましょう。 

株式譲渡による買収の特徴 

株式譲渡は中小企業のM&Aで最も多く用いられる手法で、売り手企業の株式を買い手企業が取得することで経営権を獲得します。会社の法人格がそのまま存続するため、事業の継続性を保ちながら経営権の移転を実現できます。 

株式譲渡の最大のメリットは手続きの簡便性です。株主総会決議や債権者保護手続きが不要で、株式譲渡契約の締結と株主名簿の書き換えにより買収が完了します。許認可や各種契約も原則として引き継がれるため、事業運営に支障をきたすリスクが少なくなります。 

ただし、会社全体を買収するため、不要な資産や負債も含めてすべて引き継ぐことになります。簿外債務や偶発債務のリスクもあるため、事前のデューデリジェンスが極めて重要です。また、売り手の株主が個人の場合、譲渡所得税(所得税、住民税、復興特別所得税を合わせて20.315%)が課税される点も考慮が必要です。 

株式譲渡は、対象企業の事業全体を取得したい場合や、許認可事業の承継を重視する場合に適した手法です。中小企業では、事業承継を目的とする買収の大部分で株式譲渡が選択されています。 

事業譲渡による買収の活用法 

事業譲渡は、会社の特定事業や事業資産のみを選択的に取得する手法です。必要な事業だけを買収し、不要な負債や事業を除外できるため、リスクを限定した買収が可能になります。 

事業譲渡の大きなメリットは、買収範囲を柔軟に設定できることです。優良事業のみを取得し、不採算部門や簿外債務を回避できるため、買収リスクを大幅に軽減できます。また、買収価格も必要な部分のみとなるため、資金負担を抑えることが可能です。 

一方で、手続きが複雑になるデメリットがあります。資産・負債の個別移転、契約の再締結、従業員の個別同意取得など、多くの手続きが必要です。許認可についても、新たに取得が必要になる場合があります。また、消費税の課税対象となる場合もある点にも注意が必要です。 

  • 選択的買収:必要な事業のみを取得
  • リスク回避:不要な負債の除外
  • 手続き負担:個別移転手続きの必要性 

事業譲渡は、多角化企業の特定部門のみを買収したい場合や、新規事業参入で特定のノウハウ・技術のみを取得したい場合に適しています。 

中小企業に最適な手法の判断基準 

買収手法の選択にあたっては、買収目的、対象企業の状況、自社の方針などを総合的に検討する必要があります。以下の判断基準を参考に、最適な手法を選択しましょう。 

買収目的による選択では、事業承継や企業全体の取得が目的の場合は株式譲渡が適しています。一方、新規事業参入や特定技術の取得が目的の場合は事業譲渡が有効です。グループ内再編が目的の場合は、株式交換や株式移転も検討できます。 

対象企業の状況も重要な判断要素です。許認可事業を営んでいる場合は、許認可の承継が容易な株式譲渡が有利です。負債が多い企業や不採算部門を抱える企業の場合は、リスク回避が可能な事業譲渡を検討すべきです。 

税務面の検討も不可欠です。売り手が個人株主の場合、株式譲渡では譲渡所得税(20.315%)が課税されますが、事業譲渡では売り手法人に法人税等(実効税率約30~34%程度)が課税されます。買い手側では、事業譲渡の資産が課税対象の場合に消費税が課税される点を考慮する必要があります。 

資金面では、株式譲渡は会社全体の価値に基づく価格となりますが、事業譲渡は必要な部分のみの価格となります。資金制約がある場合は事業譲渡が有効ですが、シナジー効果を重視する場合は株式譲渡が適しています。 

最終的には、専門家と相談しながら、自社の状況と目的に最も適した手法を選択することが重要です。手法の選択により買収の成否が大きく左右されるため、慎重な検討が必要です。 

買収を成功に導く実践的な3ステップ 

買収の成功率を高めるためには、体系的なアプローチが不可欠です。多くの失敗事例を分析すると、準備不足や戦略の曖昧さが主な原因となっています。ここでは、中小企業が買収を成功させるための実践的な3ステップを詳しく解説します。 

ステップ1:買収の目的と戦略を明確化する 

買収成功の第一歩は、なぜ買収を行うのか、何を実現したいのかを明確にすることです。目的が曖昧なまま買収を進めると、適切な相手企業を選定できず、期待した成果を得られないリスクが高まります。 

買収目的の明確化では、現在の事業課題と将来のビジョンを整理することから始めます。既存事業の拡大なのか、新規分野への参入なのか、人材・技術の獲得なのか、具体的な目標を設定しましょう。数値目標も重要で、売上規模、市場シェア、収益性の改善など、定量的な成果指標を設定します。 

戦略の策定では、買収により実現したいシナジー効果を具体的に描きます。売上シナジーでは、クロスセル機会の創出、販路の相互活用、ブランド力の相乗効果などを検討します。コストシナジーでは、重複業務の統合、共同購買による調達コスト削減、間接費の効率化などを計画します。

  • 現状分析:自社の強み・弱みの把握
  • 目標設定:具体的で測定可能な成果指標
  • シナジー計画:売上・コスト・財務面での効果試算 

投資回収計画も重要な要素です。買収投資をいつまでに、どのように回収するかを明確にし、キャッシュフロー予測と投資判断基準を設定します。これらの検討により、買収予算の上限や優先する買収条件も明確になります。 

ステップ2:最適な買収相手を選定する 

明確な戦略に基づいて、最適な買収相手を選定します。候補企業の発掘から最終的な選定まで、段階的かつ慎重に進めることが重要です。 

候補企業の発掘では、複数のチャネルを活用します。M&A仲介会社の保有案件、業界ネットワークからの紹介、公開情報による調査など、幅広い情報収集を行います。最初は20~30社程度の候補をリストアップし、段階的に絞り込んでいきます。 

一次スクリーニングでは、事業内容、規模、立地、財務状況などの基本情報で候補を絞り込みます。自社の戦略に合致するか、シナジー効果が期待できるか、文化的な適合性はあるかなどを評価します。この段階で5~8社程度に絞り込みます。 

二次スクリーニングでは、より詳細な情報を基に評価を行います。財務内容の詳細分析、事業の将来性評価、経営陣との相性確認などを通じて、最終候補を2~3社に絞り込みます。この段階では、実際にトップ面談を実施し、相互の理解を深めることが重要です。 

企業評価では、定量面と定性面の両方を総合的に判断します。定量面では、売上・利益の成長性、財務安全性、収益性などを分析します。定性面では、経営陣の資質、従業員のモチベーション、技術力、ブランド価値などを評価します。 

最終選定では、戦略との適合性、シナジー効果の大きさ、買収実現可能性、統合の難易度などを総合的に判断し、最も成功確率の高い企業を選定します。 

ステップ3:専門家と連携して確実に実行する 

買収の実行段階では、様々な専門知識が必要となるため、適切な専門家チームを組成し、連携して進めることが不可欠です。専門家の選定と役割分担を明確にし、効率的な実行体制を構築しましょう。 

M&Aアドバイザーの選定は最も重要です。仲介会社かFAかの選択、得意分野や実績、報酬体系などを検討し、自社に最適なアドバイザーを選定します。中小企業のM&Aに精通し、業界知識が豊富で、信頼できる実績を持つアドバイザーを選ぶことが重要です。 

デューデリジェンス体制では、財務、法務、税務、ビジネスの各分野で専門家を確保します。公認会計士による財務調査、弁護士による法務調査、税理士による税務調査などを並行して実施し、包括的なリスク分析を行います。 

  • M&Aアドバイザー:全体進行管理と戦略アドバイス
  • 公認会計士:財務デューデリジェンスと企業価値評価
  • 弁護士:法務調査と契約書作成・チェック
  • 税理士:税務調査と税務ストラクチャー検討 

交渉段階では、価格交渉だけでなく、従業員の処遇、経営方針、統合計画などについても詳細に協議します。売り手の懸念事項に丁寧に対応し、双方が納得できる条件を構築することが、成功する買収の鍵となります。 

クロージング後のPMI計画も事前に準備します。組織統合、システム統合、企業文化の融合など、統合作業の詳細計画を策定し、実行体制を整えます。PMIの成否が買収の最終的な成果を決定するため、十分な準備と専門家のサポートが必要です。 

専門家との連携により、リスクを最小化しながら買収を確実に実行し、期待した成果を実現できる可能性が大幅に高まります。 

まとめ|買収で企業の持続的成長を実現しよう 

買収は、中小企業が経営課題を解決し、持続的成長を実現する有効な戦略的手段です。他社の事業や経営権を取得することで、既存事業の拡大、新規事業への参入、優秀な人材の獲得、シナジー効果による競争力強化を短期間で実現できます。

一方で、高額な費用負担、統合の複雑さ、人材流出リスクなどのデメリットも存在するため、適切な準備と専門家のサポートが不可欠です。買収成功の鍵は、明確な目的設定、最適な相手選定、専門家との連携にあります。変化の激しい経営環境において、買収は中小企業の競争力維持と発展のための重要な選択肢となるでしょう。 

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