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相対取引とは、証券取引所などの市場を介さず、売り手と買い手が直接交渉して行う株式や資産の売買手法です。
市場価格に縛られず柔軟な価格交渉が可能で、プロの投資家やM&A現場でも活用される一方、思わぬ落とし穴やリスクも潜んでいます。
本記事では、相対取引の特徴からメリット・デメリットや具体的なスキーム、価格決定方法、他手法との違い、税金の扱いまで詳しく解説します。
目次
まず、相対取引に関する基本的な知識について解説します。
相対(あいたい)取引とは、市場を介さず、売り手と買い手が一対一で取引条件を直接決めて行う取引方法です。株式や外貨、仮想通貨、不動産などの多様な分野で活用されており、「相対売買」や「OTC(Over The Counter)」とも呼ばれます。
取引所を通さないため、価格や数量、決済方法を当事者間で自由に設定できる点が最大の特徴です。特に、非上場株式や不動産のように同一条件の商品が存在しない場面で有効です。
相対取引と市場取引の主な違いは、価格決定の仕組みと取引対象資産の性質です。相対取引では当事者間の交渉で価格が決まるのに対し、市場取引では需要と供給のバランスによって自動的に価格が形成されます。
また、市場取引は上場株式や通貨のように流動性が高く、同種の商品が多数存在する場面に適しており、価格の透明性と公正性が確保されやすい特徴があります。
一方、相対取引は、非上場株式や不動産、事業などのように希少性が高く、比較対象の少ない資産に適しています。取引所を経由しない分柔軟性がある反面、価格の妥当性や取引の安全性には留意が必要です。
相対取引は次のような場面で主に用いられています。
それぞれについて解説します。
株式や証券分野における相対取引は、特に非上場株式やM&Aにおいてよく用いられる手法です。市場を通さずに、売り手と買い手が一対一で条件を交渉し、価格や数量を合意して売買します。柔軟な取引条件を設定できることから、希少性の高い株式や大量保有株の譲渡などに活用されます。
例えば、中小企業の株式譲渡や大株主間の取引では、市場での価格形成が困難なため、相対取引が主流です。実務では仲介業者を介すことで、安全性とスピードを確保するケースも多く見られます。
FXにおける相対取引とは、投資家とFX業者が直接取引を行う「店頭FX」のことを指し、日本国内のFX取引の中心的な仕組みです。
この方式では、取引所を介さずに当事者間で価格や数量などを決定します。つまり、投資家がドル円を買う場合の「売り手」は、FX業者そのものです。
取引条件が業者ごとに異なるのはこの仕組みに由来し、為替レートやスプレッド、スワップポイントも業者によって差が出る点が特徴です。
一方、相対取引の反対にあたる方法が「取引所取引」で、国内では東京金融取引所の「くりっく365」が該当しますが、現在は取り扱う会社が減少傾向にあります。
仮想通貨の分野では、取引所を介さずに投資家同士が直接売買する相対取引(OTC取引)が広がっています。これは取引量の多い大口投資家にとって、価格変動の影響を抑えながら取引を進める有効な手段です。
例えば、ビットコインを大量に売買した場合、取引所では価格が乱高下しますが、相対取引では相場に影響せずに安定的な取引が可能です。そのため、金融規制の厳しい地域では、相対取引の需要が急増しています。
実際にはCoincheckなどが提供するOTCサービスのように、交換業者が仲介する形式もあります。加えて、個人間取引ではLINEやSkypeを通じて取引条件をやり取りする例もあります。
不動産取引も、典型的な相対取引の一つです。土地や建物は一つ一つ性質が異なるため、同一条件の商品が存在せず、市場価格が形成しにくいためです。
売買は当事者同士の合意により、価格や引渡条件、支払方法などを自由に設定できます。多くの場合、不動産会社が仲介役を担い、適正な価格評価や契約手続きのサポートを行います。
また、大手デベロッパーや不動産ファンドによる不動産M&Aでは、物件のポートフォリオ単位での大口相対取引も行われます。
株式の相対取引が行われる代表的な場面は次のとおりです。
それぞれについて解説します。
ブロックトレードとは、同一銘柄の株式を大量に一括売買する相対取引です。証券会社を通じて大口投資家同士が取引を行い、市場価格への影響を抑える目的で用いられます。
この取引は取引所の通常の立会時間外に行われる「立会外取引」の一種で、流動性の低下や価格変動を回避しながら迅速な取引を実現できる点が特徴です。取引所を通さず、当事者間の合意に基づいて価格や数量を決定します。
例えば、年金基金や機関投資家が保有株式を売却する際、ブロックトレードを利用することで価格下落リスクを回避できます。証券会社は自己勘定でいったん引き受けるケースや、国内外の他の大口投資家と付け合わせる形で対応します。
M&Aにおける株式譲渡は、典型的な相対取引の形態です。特に非上場企業の買収では、経営者や主要株主が直接買い手と交渉し、株式を譲渡します。市場を介さず、価格・譲渡条件などを当事者間で合意して取引を成立させます。
この取引方法は非公開で進められるため、交渉の柔軟性や機密性の高さが魅力です。買収価格はDCF法などによる企業価値評価を基に算定されますが、株主ごとに異なる条件が提示されることもあります。
ただし、株主が複数いる場合、個別交渉は煩雑になりやすく、全株式の一括取得を目指す場合には調整が必要です。実務上は同一価格で買い集めることが多く、M&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)が交渉を円滑に進める役割を担います。
相対取引は当事者同士または専門家を介して取引が行われます。それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
相対取引は、売り手と買い手が直接交渉し、価格や数量などの条件を合意して取引を行う方法です。特にM&Aや非上場株式の取引では、このような当事者同士の取引が見られます。例えば、特定の中小企業同士が秘密裏に株式譲渡を進める際、当事者間での直接交渉が行われるケースが多いです。
この方法のメリットは、仲介会社への手数料がかからず、コストを抑えながら柔軟な交渉が可能な点です。また、取引の場所やタイミングを当事者間で自由に設定できるため、迅速な意思決定が期待できます。
一方で、契約の手続きが煩雑になりやすく、法的な不備や詐欺被害のリスクも伴います。従って、当事者同士で相対取引を行う際は、書面での合意や慎重な確認が不可欠です。
相対取引をより安全かつ効率的に進めたい場合、専門家や仲介業者を介する方法が有効です。M&Aや大口株式取引においては、取引のリスクを軽減しながら進行管理を行える手段として重宝されます。
専門業者を利用することで、相手方の信用調査や契約書作成、条件交渉、スケジュール管理などを一括して任せられます。これにより、詐欺や手続きミスのリスクを抑え、取引の安全性が高まります。
デメリットとしては、手数料などのコストが発生する点が挙げられますが、特に高額な資産が関わる場合は、信頼性と法的安定性を重視して専門家を介する方が望ましい選択です。
相対取引のメリットとして、次の点が挙げられます。
それぞれについて解説します。
相対取引の大きな利点は、価格を当事者間で自由に決定できる点です。市場価格に縛られることなく、双方の合意に基づいて柔軟な価格設定が可能です。
市場取引では相場が存在するため、売買価格は基本的に需給によって左右されます。しかし相対取引では、現在の業績や資産価値、将来の成長性や無形資産などを加味して、当事者が納得する価格を設定できます。
例えば、M&Aにおいては、単純な利益指標だけでなく、事業シナジーやブランド価値を考慮した価格交渉が行われることが一般的です。
相対取引では、価格だけでなく決済方法も当事者間の合意で自由に設定できます。これは取引の柔軟性と実務効率の両面で大きなメリットです。
一般的に、取引成立と同時に代金が一括で支払われるケースが多いですが、条件を設定した分割払いや業績連動型の支払い、あるいは成果確認後の後払い方式など、さまざまな決済手段が採用可能です。
ただし、決済条件が複雑になるほど契約管理やトラブル対応の負担も増えるため、相対取引における決済方法の選定は、双方の信頼関係と実務的な管理能力が前提となります。
相対取引のメリットの一つは、市場相場の変動に影響されずに取引価格を決められる点です。特に、相場が不安定な局面でも安定的に取引できるという利点があります。
市場取引では、買い手が多ければ価格が上昇し、売り手が多ければ価格が下落するという需給バランスによって価格が決まります。そのため、大量に株式を取得しようとすると、かえって価格が上昇してしまうことがあります。
特に、M&Aにおいては買収対象の株式を市場で買い集めようとすると、途中で価格が変動し、当初の予算を上回る可能性があります。一方で相対取引では、事前に合意した価格で必要数量をまとめて取得できるため、コストの管理がしやすいです。
相対取引は市場を通さずに行われるため、株式市場に与える影響を最小限に抑えられます。これは特に、大口取引や戦略的譲渡を行う場合に大きなメリットです。
市場取引で大量の株式を売却すれば、売り圧力によって株価が下落し、他の投資家にも悪影響を及ぼします。また、買い集めによって価格が急騰することもあり、市場全体が混乱する恐れもあります。
しかし、相対取引では当事者間で価格と数量が決まっているため、市場に情報が波及せず、価格形成に影響を与えません。例えば、親会社が子会社株式を譲渡する際や、大株主が保有株を一括で売却する際には、相対取引が選ばれることが一般的です。
このように、市場への影響を避けつつ機動的に取引を進められる点も、相対取引が選ばれる大きな理由の一つです。
相対取引のデメリットとして、次の点が挙げられます。
それぞれについて解説します。
相対取引では価格を当事者間で自由に決められる反面、不公平な取引が成立するリスクがあります。特に相手との間で持っている情報に差があると、一方が知らないうちに不利な条件で取引してしまうことがあるため、注意が必要です。
市場取引では需要と供給のバランスによって客観的な価格が形成されますが、相対取引ではその合理性が保証されません。価格が市場水準より高すぎたり低すぎたりしても、交渉が成立すれば取引は完了してしまいます。
このような不公正な取引を防ぐには、適切なデューデリジェンスを実施し、専門家の意見を取り入れるなどの対策が不可欠です。
相対取引は、取引条件を当事者間で一つずつ交渉して合意する必要があるため、成立までに時間がかかるというデメリットがあります。
相対取引では価格や数量、決済方法、引渡条件など、細かい項目を個別に決めていく必要があります。交渉が難航すれば、数週間から数カ月に及ぶケースも珍しくありません。複数の株主との価格交渉や契約書作成に時間がかかり、資金調達やスケジュールに遅延が生じることもあります。
時間的コストは交渉リスクや市場環境の変化にもつながるため、相対取引を検討する際は、余裕を持ったスケジュール設計が必要です。
相対取引は当事者間で取引条件を自由に決められる反面、誤解や認識の相違によるトラブルが発生しやすいというリスクがあります。
市場取引では取引所が標準化されたルールに基づいて運営されているため、手続きや価格の透明性が担保されており、トラブルの発生を最小限に抑える仕組みがあります。
一方、相対取引では、契約条件や履行内容に曖昧な点があると、後から「言った・言わない」などのトラブルに発展することがあります。
このようなリスクを回避するためには、書面による明確な契約書の作成や、信頼できる第三者を介した取引管理が重要です。
相対取引では、取引所を通さずに当事者同士で直接交渉を行うため、詐欺被害のリスクが市場取引よりも高いという弱点があります。
市場取引では、証券会社や取引所が間に入ることで、一定の信頼性や安全性が担保されていますが、相対取引では相手方の信用を見極める責任が全て自己にあります。株式や仮想通貨などを相手に引き渡した後、約束された対価が支払われず、そのまま相手と連絡が取れなくなるといった事例もあります。
このような被害を防ぐためには、信用調査やエスクローサービスの利用、あるいはM&A仲介会社など専門家を介して取引を行うことが有効です。
相対取引における株式の価格を決定するためには、まず企業全体の価値を評価し、そこから株式の価値を導き出す必要があります。その際に用いられる方法が、次の三つのアプローチです。
それぞれの特徴や、具体的な算出方法について解説します。
インカムアプローチとは、企業が将来に生み出す利益やキャッシュフローに着目して、現在の企業価値を算定する評価手法です。過去の実績よりも将来の収益力を重視する点が最大の特徴です。
この手法では、企業が将来的に獲得するであろう利益を、リスクなどを加味した割引率で現在価値に換算します。M&Aの際の株式価値評価や、新規事業への投資判断、金融機関の融資判断など、幅広い場面で用いられています。
インカムアプローチには複数の手法があり、代表的なものに「DCF法」と「収益還元法」があります。前者は将来キャッシュフローの精密な予測に基づく詳細な分析に適しており、後者は簡便さを重視した評価に適しています。
DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュフロー法)とは、将来企業が生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)を現在価値に割り引いて企業価値を算出する手法です。インカムアプローチの代表格であり、将来の収益力を評価の軸とします。
具体的には、5年程度の将来FCFを予測し、WACC(加重平均資本コスト)を割引率として現在価値を算出します。さらに、予測期間以降の永続的なFCFの価値=ターミナルバリューも加味して、事業価値を導きます。
ただし、DCF法は収益予測や割引率設定などに高度な知識が必要であり、情報の前提が変われば結果も大きく変動します。従って、適切な財務分析と合理的な前提条件の設定が不可欠です。
収益還元法とは、将来得られる収益を基に現在価値を算出する評価手法です。予想収益を一定の成長率で見積もり、資本還元率で割り引いて企業や株式の価値を求めます。DCF法のように年ごとのキャッシュフローや終価(ターミナルバリュー)の設定を要せず、比較的簡便な評価が可能です。
特に、利益水準が安定している不動産賃貸業などでは有効で、低コストかつ迅速に評価できる点も利点です。一方で、業績が変動しやすい成長企業やベンチャーなどには不向きとされ、正確な評価にはDCF法などとの併用が推奨されます。
コストアプローチとは、企業の保有資産と負債の差額、つまり純資産に基づいて企業価値を評価する方法です。財務諸表、とりわけ貸借対照表を基に算定されるため、客観性と計算の簡便さが特徴です。
企業が過去に積み上げてきた資産構成を反映するため、将来性よりも現時点の財務的な健全性を重視する評価手法といえます。
不動産を多く保有する中小企業や、事業の収益性が安定している企業の評価に向いています。一方で、成長性やブランド力、将来キャッシュフローなどが考慮されないため、成長企業やベンチャーには不向きです。
代表的な評価法には、貸借対照表の数値をそのまま用いる「簿価純資産法」と、資産・負債を時価で評価し直す「時価純資産法」があります。
簿価純資産法とは、貸借対照表の資産総額から負債を差し引いた「簿価ベースの純資産」によって企業価値を算出する方法です。算定方法がシンプルで、発行済株式数で割れば1株当たりの価格も容易に計算できます。
この手法の利点は、計算が簡便で、特別な資料や専門知識が不要な点です。例えば、不動産鑑定や時価評価のコストをかけられない小規模取引では有効な選択肢です。
ただし、貸借対照表は原則として取得原価主義で作成されるため、実際の資産価値や含み損益を反映しきれない可能性があります。そのため、実態との乖離(かいり)が生じやすく、将来性も反映できないという弱点があります。
従って、成長企業や時価と簿価の差が大きい企業には適さず、財務が安定しており資産内容も大きく変動しない企業向けの評価方法です。
時価純資産法は、企業の資産および負債を時価で評価し直した上で、純資産額を算出して企業価値を評価する方法です。簿価純資産法と異なり、現時点での実態に即した財務状態を反映できる点が最大の特徴です。
この手法では、不動産や有価証券、遊休資産などの資産について時価評価を行い、帳簿と乖離(かいり)がある場合には修正を加えます。その結果、評価の精度が高まり、より適正な株価算定が可能です。
例えば、清算を前提とした企業や、資産構成が価値評価の中心となる企業において多く用いられます。実際に全ての資産を処分し、負債を返済した場合に残る価値を示すため、保守的な評価としても活用されます。
ただし、評価には専門的知識と手間がかかるため、簡易評価には向いていません。必要に応じて不動産鑑定士など専門家の関与が必要となる場合もあります。
マーケットアプローチとは、株式市場で形成された価格や、上場企業の財務指標を基に、対象企業の価値を評価する手法です。実際の市場で取引されている価格を活用することで、客観的かつ説得力のある企業価値の算定が可能です。
このアプローチでは、主に「市場株価法」と「類似会社比較法(マルチプル法)」の二つが代表的です。前者は対象企業の自社株の市場価格に基づく方法であり、後者は同業の上場企業と財務指標を比較して企業価値を見積もります。
いずれの手法も、市場の公正な価格形成をベースにするため、実態に即した評価ができる一方、市場環境に左右されやすい点には留意が必要です。
市場株価法とは、対象企業の株価を一定期間にわたって平均し、その数値を企業評価の基準とする手法です。マーケットアプローチの中でも、上場企業に対してのみ適用される評価方法です。
この手法の利点は、株式市場という公的な場で形成された価格に基づくため、需給を反映した客観的な企業価値を算定できる点です。さらに、一定期間(例えば3カ月〜6カ月)の平均株価を使うことで、短期的な株価変動の影響を排除できます。
ただし、株価は市場心理や一時的なイベントに左右されやすく、企業の本源的な価値を必ずしも正確に反映しているとは限りません。従って、補完的な評価手法との併用が推奨されます。
類似企業比較法(マルチプル法)とは、評価対象企業と同業の上場企業の財務指標を比較し、その倍率(マルチプル)を用いて株式価値を算定する方法です。マーケットアプローチの一環として、特に未上場企業の評価において有効です。
この手法では、売上高やEBITDA、営業利益、純資産などの指標に対する株価や企業価値の倍率を類似企業から抽出し、それを対象企業の数値に掛け合わせて価値を推定します。
例えば、同業上場企業のEV/EBITDA倍率が8倍であり、対象企業のEBITDAが10億円であれば、企業価値は約80億円と見積もられます。
情報が比較的入手しやすく、実務でも広く活用されている方法ですが、完全に類似する企業が存在しないことや、倍率に市場の変動要素が含まれる点には注意が必要です。複数の類似企業を選定し、平均値を取るなどの工夫が求められます。
M&Aにおける売却手法として、「相対取引」と「オークション方式」は代表的な選択肢です。それぞれに明確なメリットとデメリットがあり、売却対象の性質や取引目的によって最適な方法は異なります。
オークション方式とは、M&Aにおいて売却対象企業に複数の買い手候補を募り、入札形式で最良条件を提示した企業に交渉権を与える方法です。
単なる価格競争にとどまらず、経営方針やスキームを含めた総合的な条件で評価されます。
オークション方式の最大のメリットは、複数の買い手候補を競わせることで、より良い条件を引き出せる点にあります。価格だけでなく、経営方針や統合スキームなども提案対象となるため、総合的に有利な条件を得やすくなります。
例えば、ある企業が複数の買い手から入札を受けた場合、提示金額に加えて雇用維持やブランド活用方針なども比較できるため、売り手にとって納得のいく相手を選びやすくなります。
また、競争によって条件が自然と引き上がることから、高値での売却が期待できるでしょう。
オークション方式では、買い手同士の競争によって好条件を引き出せる反面、注意すべき点もあります。特に、売り手が「この企業と直接取引したい」と考えている場合でも、その企業が競争を避けたいという理由で参加を見送ることがあります。
また、売り手が将来のビジネス連携を期待していた相手がいても、オークション形式にしたことでその相手が辞退し、話し合いの機会すら持てなくなることもあります。
さらに、プロセスが煩雑になり、デューデリジェンスの対応や開示資料の整備など、売り手側の負担が大きくなる点も注意が必要です。
オークション方式は、競争環境が整っており、できるだけ高条件で売却したい場合に有効な手段です。一方、特定の企業に譲渡したい、時間や情報管理の簡素さを重視したいといった場合には、相対取引のほうが適しているでしょう。
売却戦略や対象企業の特性を踏まえ、最適な手法を選ぶことが重要です。
最後に、相対取引に関するよくある質問とその回答を紹介します。
相対取引は、原則として違法ではありません。実際、国税庁も「証券会社等を通さずに行う株式等の取引」として相対取引を説明しており、違法性を指摘していません。
ただし、相対取引が違法となるケースもあります。例えば、未公開情報を利用したインサイダー取引や見せかけの売買を行う仮装売買、公開買付け規制を無視した株式取得などです。
なお、相対取引で発行済株式の5%超を取得した場合は「大量保有報告書(5%ルール)」の提出義務が生じます。取得日から5営業日以内に内閣総理大臣(財務局)へ提出する必要があり、違反すれば課徴金などの罰則が科される可能性があります。
公開買付け(TOB)と相対取引は、いずれも市場を通さずに株式を取得する手法ですが、その仕組みや透明性に大きな違いがあります。
TOB(Take-Over Bid)は、買付価格・期間・株数などを公告し、不特定多数の株主に対して株式の売却を呼びかける制度です。買付価格には通常プレミアムが上乗せされ、株主にとっては市場価格より有利な条件で売却できることがあります。
一方、相対取引は特定の相手と個別交渉で取引条件を決める非公開の取引で、価格や条件の自由度が高い反面、透明性や公平性には注意が必要です。
TOBは金融商品取引法に基づき厳格な情報開示義務があり、M&Aなどの場面で経営権取得の手段として用いられます。対して相対取引は、非上場株や大口株主間の合意形成に利用されるケースが多く、手続きは柔軟ですが、一定の規模を超えるとTOB規制の対象となります。
公開買付け(TOB)規制とは、特定の買付者が証券市場外で株式を取得しようとする際、一定の条件を満たす場合に、事前に買付け内容を公告して広く一般株主から株式を取得するよう義務付ける制度です。買収による支配権の移転が株主や市場に重大な影響を及ぼす可能性があるため、透明性・公平性の確保を目的としています。
具体的には、証券市場外で株式を取得した結果、保有割合が発行済株式総数の5%を超える場合や、保有割合が3分の1を超える場合には、原則として公開買付け(TOB)を通じて取得する義務が発生します。
ただし、同一企業グループ内での株式移転や、10人以内の少数株主からの取得、新株予約権の行使など、特定のケースではTOB義務が免除される例外も存在します。違反した場合は、金融商品取引法違反として課徴金や取得無効のリスクが生じます。
株式の相対取引でも、通常の株式売買と同様に税金がかかります。市場を介さない取引であっても、税務上は課税対象として取り扱われます。
個人が株式を相対取引で売却した場合、売却益は譲渡所得として扱われ、所得税および住民税が課税されます。具体的には、譲渡所得に対して合計20.315%(所得税 + 復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率が適用されます。
例えば、100万円で取得した株式を150万円で相対売却し、手数料などが5万円かかった場合、譲渡所得は45万円となり、税金は約9.14万円です。
法人が売却した場合には、売却益は法人税の課税対象となります。また、税務署は証券口座を経由しない取引であっても調査可能であり、申告を怠れば脱税とみなされ重い罰則が科される恐れがあります。
競争売買と相対取引は、株式の価格決定や取引方式において大きく異なります。
競争売買は、取引所において複数の売り手・買い手が集まり、最も有利な条件で取引が成立する仕組みです。成行注文が指値注文より優先されるなど、公平性が重視されています。
一方、相対取引は当事者同士が取引価格や数量、時期などを自由に決定できる非公開の取引です。相場に影響を与えず、柔軟な交渉が可能な点が特徴です。
株式売買では、証券取引所を通じて株式を売買する方法が競争売買であり、個人や企業間で個別に株式を譲渡する方法が相対取引です。
店頭取引は、相対取引の一形態であり、実店舗などを介して当事者同士が直接売買を行う形式です。銀行や証券会社、不動産業者などが取引の場を提供します。
相対取引全体の中で、店頭取引は「対面型」の位置付けにあり、価格や条件を相談しながら決定できる柔軟性があります。
ToSTNeT取引とは、東京証券取引所が提供する立会時間外の取引制度で、「Tokyo Stock Exchange Trading NeTwork System」の略称です。主に大口取引や複数銘柄の一括売買(バスケット取引)など、市場価格に大きな影響を与える恐れのある取引を円滑に実施するために設けられました。
取引方式は4種類あり、個別銘柄を売買する「単一銘柄取引」と、複数銘柄をまとめて取引する「バスケット取引」、終値を基準に取引する「終値取引」、企業が自社株を買い取る「自己株式立会外買付取引」があります。
相対取引は金融分野に限らず、農業流通や製造業における取引でも広く用いられています。
例えば、青果市場では従来「せり取引」が中心でしたが、大手量販店による安定価格と大量調達のニーズに対応するため、相対取引の比率が高まっています。
近年では、中央卸売市場における取引の多くが相対取引へと移行しつつあり、「予約相対取引」「先取り」などの多様な形態で実施されています。取引当事者が条件を事前に調整できることで、価格の安定や物流の効率化が図られています。
「相対取引価格」とは、取引所などの市場を介さずに、売り手と買い手が直接交渉して決定する価格のことです。ただし、一般的には主に「米」の取引に関する文脈で用いられる用語として広く浸透しています。
特に、全国農業協同組合連合会(JA全農)や各地の農協などの出荷団体が、卸売業者と主食用米を売買する際に結ばれる契約価格が「コメの相対取引価格」として知られています。
農林水産省はこの価格を、毎月各団体からの報告に基づいて集計し、公表しています。とりわけ9月以降は、その年に収穫された新米の価格に切り替わるため、注目度が高い指標となっています。
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