分社化とは?メリット・デメリットや子会社化との違いを徹底解説!

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分社化とは、企業が事業の一部を切り離し、新たな法人として会社を設立することをいいます。分社化により、独立した会社となるため、企業はさまざまなメリットを享受することができます。本記事では、分社化とは何かといった基礎知識から、メリット・デメリット、子会社との違い、種類や手法、成功させるためのポイントや注意点についてわかりやすく解説します。

分社化とは

分社化とは企業の経営戦略の一つであり、既に法人として運営している企業の事業を切り離すことで、経営効率を向上させ、専門性の高い事業展開が可能となります。また、親会社と新設会社が別の法人として独自性を持って経営を行うため、それぞれ異なる市場ニーズに迅速に対応でき、競争優位性を強化することができます。

分社化の定義

分社化とは、企業が経営する事業の一部を独立させ、新たに法人を設立することを指します。分社化を行うと、元の企業が親会社となり、新設された会社は子会社となります。分社化では親会社が子会社に対して100%出資を行い、完全な支配関係を持つケースが一般的です。

分社化をした後は、親会社と子会社は法的に別々の組織として運営されることになります。分社化することで、各事業部門は独自の経営方針と戦略を持つことができ、親会社に依存しない迅速な意思決定や市場への対応が可能になります。

また、分社化は企業のリスク分散としての役割も担います。事業を分けることにより、親会社のリスクを軽減することができます。他にも、分社化は経営資源を最適に配分し、各事業の収益性を向上させるための戦略的手段としても用いられます。

分社化の目的

分社化とは、企業の経営戦略として有効な手法の一つです。分社化の主な目的として以下が挙げられます。

経営効率の向上

大規模な組織では、報告や承認プロセスが複雑化するため、意思決定が遅くなりがちです。しかし、分社化によって事業を子会社として独立させることで、親会社が全体を統括しつつも、子会社が独自の意思決定権を持てるようになり、迅速な対応が可能になります。

また、大規模な組織では複数の部門間で調整が必要になることが多いですが、分社化することでこうした調整が不要となり、経営効率の向上につながります。

事業の専門性の強化

分社化によって、特定の事業に特化した子会社を設立することで、専門性の強化が可能になります。親会社が複数の事業を抱えている場合、経営資源(人材、設備、資金、時間など)が分散しがちです。しかし、分社化によって事業を子会社として独立させることで、子会社がその事業に専念できるため、資源を特定の事業に集中させることが可能となります。

これにより、専門性の強化ができ、市場での競争力が向上します。また、専門性を持つ子会社は、市場のニーズに的確に応える商品やサービスを提供しやすくなります。結果として、事業の成長が促進され、企業全体の価値向上にもつながります。

リスク分散

企業のリスク分散においても、分社化は有効な手段です。企業が複数の事業を直轄している場合、1つの事業が不振に陥ると、他の事業や企業全体に悪影響が及ぶ可能性があります。また、市場や顧客層が重複している場合、特定の市場が悪化すると、複数の事業が同時に影響を受けるリスクも高まります。

しかし、分社化によって事業が独立することで、特定の事業が不振に陥った場合でも、他の事業への影響を抑えることができます。例えば、財務面での損失や市場の変動といったリスクが発生しても、それが親会社や他の事業に直接的な負担として波及するのを防ぐことができるため、企業グループ全体の安定性を保つことが可能です。

後継者の育成

分社化は、後継者の育成に効果的な手段として活用することができます。分社化した子会社の運営を任せることで、後継者に実践的な経営経験を積ませることが可能です。企業全体をいきなり引き継がせるのではなく、まずは子会社の運営を経験させることで、経営に必要なスキルや判断力を磨くことができます。

例えば、事業計画の策定や資金調達、従業員管理など、具体的な経営課題に取り組むことで、後継者は経営者としての視野や能力を養うことができます。また、子会社という独立した組織で実績を積むことは、後継者に自信を与えるとともに、経営を引き継ぐ準備を整える上で大きな意味を持ちます。

分社化と子会社化の違い

分社化は、企業が事業の一部を別法人として切り離すのに対し、子会社化はM&Aなどによって別会社の株式を取得し、経営権を握ることを言います。分社化も子会社化も、親会社の子会社として存在することになりますが、分社化は出資比率100%が一般的であるのに対し、子会社化の出資比率は目的によって異なります。

また、分社化と子会社化では目的と役割も異なります。分社化の主な目的は、特定の事業に経営資源を集中させ、専門性を高めることです。これにより、各事業が独自の市場戦略を展開し、競争優位性を高めることが可能になります。また、分社化は倒産リスクを分散する効果もあり、特定の事業が失敗した場合でも他の事業に影響を及ぼすことを防ぎます。節税効果を狙う場合もあるでしょう。

一方、子会社化は、他の企業を買収することにより、新規事業の参入や企業のシナジー効果を狙い、事業拡大を目指します。分社化が企業の「選択と集中」「リスク分散」であるとしたら、子会社化は他の会社を傘下に迎えることで事業展開を大きくする「多角化経営」とも言えるでしょう。

このように、分社化と子会社化はどちらも経営戦略の一環ですが、どの手法を選択するかは企業の状況や目的によって変動します。

項目分社化子会社化
メリット事業の選択と集中、スリム化事業の拡大、多角化経営
デメリット資源の分散、ブランド力の低下コストの増加、親会社のリスク
特徴親会社の事業の一部を法人化外部の企業の経営権を支配

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    分社化のメリット

    分社化によって、企業はさまざまなメリットを享受し、企業価値の向上を目指すことができます。その結果、持続的な成長を促進するとともに、市場での競争力を強化することが可能になります。以下では、分社化による具体的なメリットについて解説します。

    • 経営資源の最適化
    • 意思決定の迅速化
    • 節税効果と資金調達の改善
    • 倒産リスクの軽減
    • 事業承継問題の解決

    経営資源の最適化

    分社化のメリットの1つ目は、経営資源の最適化です。分社化は、企業が特定の事業を独立した法人として分割する手法であり、経営効率を向上させるための有効な選択肢の一つです。分社化を行うことで親会社の負担が軽減され、組織全体のスリム化が進みます。

    さらに、各事業部門が独立して運営されることで、組織の柔軟性が強化されます。独立した法人としての分社は、それぞれの事業が持つ特性や市場環境に応じて最適な資源配分を実現できるため、経営資源の無駄を削減することが可能です。また、分社化によって事業部門ごとの業績が明確に把握できるようになり、各部門の収益性や効率性を直接評価することができる点も大きなメリットです。

    これらの効果によって、経営陣はより的確な改善策を講じ、企業全体の競争力を高めることができます。つまり、分社化は組織の再編成を通じて経営効率の向上に大きく寄与し、企業にとって多くのメリットをもたらす手法と言えます。

    意思決定の迅速化

    分社化のメリットの一つに、意思決定の迅速化があります。大企業では、組織の階層が多いため、意思決定に時間がかかることが一般的です。しかし、分社化によって各分社が独立した組織として運営されることで、迅速な意思決定が可能になります。特に、現場に近いレベルでの判断が求められる場合、複雑な承認プロセスが省略され、スピード感を持った対応が可能となることは、分社化の大きなメリットです。

    迅速な意思決定は、変化の激しいマーケット環境や競争に即座に対応する力を高め、ビジネスチャンスを逃さないことにつながります。さらに、分社化によって独立した経営体としての責任感が生まれ、社員一人ひとりが自社の成長に直接貢献しているという意識を持てるため、社員のモチベーションの向上にも寄与します。その結果、企業全体のパフォーマンスにも良い影響を与えることが期待されます。

    このように、意思決定のスピードがビジネスの成功に直結する現代において、分社化は戦略的な優位性をもたらす手段と言えるでしょう。

    節税効果と資金調達の改善

    分社化のメリットの3つ目が、節税効果と資金調達の改善です。分社化によって法人税の軽減が可能となります。通常、普通法人の法人税は23.2%ですが、事業の一部を分割することで、子会社はその事業の課税所得に対しての法人税が適用されます。

    具体的には資本金が1億円以下の場合、800円以下の部分に対しては軽減税率が適用され、15~19%の課税所得となります。また、特定の要件を満たせば新たに設立された会社は消費税も2年間納税義務を免除されます。これにより、企業全体の税負担を減少させることができます。

    資金調達の面では、独立した法人としての分社は、親会社の借入などが反映されないため、融資を受けやすくなり、新たな資金調達の機会を得ることができます。また、分社化された企業は独自に株式や社債を発行することが可能となり、資金調達手段の多様化につながります。これにより、親会社の財務状況に依存せず、資金を効率的に確保できるようになります。

    さらに、分社化により事業ごとの財務状況が明確化されるため、透明性が高くなり、投資家や金融機関からの評価が向上します。その結果、企業価値の向上や、より有利な条件での資金調達が可能になることもあります。このように、分社化は税務上の負担を軽減し、独自の財務戦略を立てることことで資金調達の選択肢を広げることが可能となります。

    倒産リスクの軽減

    分社化のメリットの4つ目は、企業全体のリスク分散です。複数の事業体に分割することで、一部の事業が失敗した場合でも、他の事業がその影響を緩和し、企業全体の存続を可能にします。特に、異なる市場や製品を扱う事業を分社化することで、それぞれの事業が独立してリスクを管理できるため、特定の市場や製品に依存することによるリスクを軽減できます。

    さらに、分社化された各事業体は独自の財務戦略を立て、資金調達を行うことができるため、親会社が抱える負債の影響を受けにくくなり、倒産リスクの低減につながります。また、分社化は事業体ごとに異なる戦略や運営方針を採用することができるため、環境変化への柔軟な対応を可能にします。このように、企業は、分社化を通じてリスクを分散し、経営資源を効率的に活用することで、倒産の危機を回避することができます。

    事業承継問題の解決

    分社化のメリットの5つ目が事業承継の課題解決です。事業承継問題は多くの企業にとって重大な課題です。特に、中小企業では後継者不足が深刻な問題となっています。分社化により事業を分割することで、後継者がそれぞれの事業を管理しやすくなり、承継の負担が軽減されます。

    さらに、分社化は後継者育成の一環として機能します。新たに設立された会社の経営を任せることで、後継者は実践的な経営スキルを磨くことができます。また、分社化により個々の事業の独立性が高まるため、後継者は自分の判断で意思決定を行う機会が増え、自立した経営者としての成長が期待されます。

    加えて、分社化を通じて、企業は新たな資金調達の道を開くことができます。分社された事業が独自に資金を調達することで、事業の拡大や新規プロジェクトへの投資が可能となったり、事業の売却がしやすくなったりといったメリットもあります。このように分社化は事業承継の問題解決の手段としても有効です。

    分社化のデメリット

    分社化は企業に多くのメリットをもたらしますが、いくつかのデメリットも存在します。分社化を検討する際にはメリットだけでなく、デメリットも把握しておきましょう。分社化のデメリットとして主に以下が挙げられます。

    • 手続きの複雑さ
    • コストの増加
    • 株主の同意が必要
    • ブランド価値の低下リスク

    手続きの複雑さ

    分社化のデメリットの1つ目が手続きの複雑さです。分社化を行う際には、法律や会計の専門知識が必要となり、手続きが非常に複雑です。

    まず、分社化の具体的な方法を選定する段階から、多くの法的手続きや書類の準備が求められます。例えば、分社化に伴う契約の見直しや新たな契約の締結、税務上の検討、そして必要に応じて関係当局への届出が必要です。これらに加え、従業員や取引先、株主とのコミュニケーションを適切に行い、彼らの同意を得るプロセスも伴います。

    また、分社化後の組織構造や業務フローの再設計も必要で、これに伴う業務の見直しや人員配置の調整が求められます。これらの手続きは、時間と労力を要し、特に初めて分社化を行う企業にとっては大きな負担となる可能性があります。

    分社化の手続きに不備があれば、法的な問題や経営上のリスクが発生する可能性があるため、慎重な対応が必要です。このため、分社化を計画する際には、事前に専門家と相談し、具体的な手続きの流れを把握することが成功の鍵となります。

    コストの増加

    分社化のデメリットの2つ目はコストの増加です。分社化を進めるためには法的手続きや書類の作成が必要で、これに伴う弁護士や会計士の費用が発生します。さらに、新たに設立する会社の運営には、独自の管理システムやITインフラが必要となり、これらの導入・維持にかかるコストも無視できません。

    また、分社化によって社内の人員配置や業務プロセスを再編する必要があり、人件費や人材教育にも費用が発生します。そのため分社化の初期費用は企業にとって大きな負担となることがあります。さらに、分社化後の会社が独立した法人として運営されるためには、独自のマーケティング戦略やブランド戦略を展開する必要があり、これもまた費用の増加要因となります。

    企業は分社化に生じるこれらのコストを事前に予測し、適切な資金計画を立てることが大切です。コスト管理を怠ると、分社化のメリットを享受する前に財務的な問題に直面する可能性があるため、慎重な計画と実行が求められます。

    株主の同意が必要

    分社化のデメリットの3つ目は、株主の同意が必要であることです。分社化など企業が重要な組織再編を行う際には、株主の利益に影響を与える可能性があるため、法律上や企業の定款に基づいて株主総会での承認を受けることが一般的です。株主の同意を得るためには、分社化の目的やメリット、デメリットについて十分に説明し、株主が納得できるような透明性のあるプロセスを確保することが求められます。

    企業は株主に対して十分な情報提供とともに、株主からのフィードバックを積極的に取り入れる姿勢が求められます。これにより、株主の懸念を軽減し、分社化に対する支持を得やすくなります。特に、分社化が経営陣の戦略的決定である場合、その決定が長期的に企業価値を向上させるものであることを証明する根拠を説明することが大切です。

    以上のように、株主の同意を得ることは、分社化を進める上で重要なプロセスです。適切なコミュニケーションと透明性のある説明が、株主との信頼関係を築き分社化を成功させる上で欠かせません。

    ブランド価値の低下リスク

    分社化のデメリットの4つ目がブランド価値の低下です。分社化は企業が自社の事業を細分化し、各部門を独立した法人として運営する戦略ですが、この過程でブランド価値が分散または低下するリスクが存在します。

    分社化によって各部門が独立することで、統一されたブランドイメージが失われる可能性や、分社化後の各子会社が独自のマーケティング戦略を採用する場合、ブランドの一貫性が損なわれるリスクもあります。

    このようなリスクを軽減するためには、分社化の計画段階からブランド戦略を慎重に設計し、各子会社がブランドの核となる価値やメッセージを共有するよう努めることが重要です。分社化後の事業経営を成功させあるためには、事前にブランド戦略を明確にし、各子会社がその戦略に沿った活動を行うようにすることが求められます。

    分社化の方法

    分社化にはいくつかの方法があり、企業の戦略的目的に応じて選択されます。主な手法として、「単独型新設分社型分割」「共同新設分社型分割」「分社型吸収分割」があります。それぞれの特徴とポイントを見ていきましょう。

    • 単独型新設分社型分割:自社内の一部門を独立会社として設立し、特定事業に特化した経営を実現します。
    • 共同新設分社型分割:複数企業が新会社を共同設立し、技術や資源を結集して新市場へ参入します。これによりリスク分散とシナジー創出が可能です。
    • 分社型吸収分割:特定事業を他企業に吸収させつつ、独立法人として存続させ、資産や人材を有効活用します。

    それぞれの手法について解説します。

    単独型新設分社型分割

    単独型新設分社型分割は、企業が事業の一部を切り離し、新たに設立した会社にその事業を移転する手法です。特定の事業を独立させることで、経営資源の集中や専門性の強化を図り、迅速な意思決定や柔軟な経営を実現することが可能となります。

    単独型新設分社型分割のメリットとしては、事業の独立性を高めることで、特定の事業分野における競争力の向上が期待できます。また、新会社の設立により、組織の再編成が進めやすくなり、効率的な経営体制の構築が可能です。さらに、新規事業に対するリスクを既存の会社から切り離すことで、全体のリスク管理がしやすくなる点も挙げられます。

    一方で、デメリットとしては、新会社の設立に伴う手続きの複雑さやコストの増加が考えられます。また、社内外の調整が必要となるため、手続きに伴う業務負担が増える可能性があります。さらに、新会社が独立することにより、ブランド価値が分散するリスクも存在します。新会社のブランドが確立されるまでに時間がかかることもあるため、既存のブランド力を活用するには戦略的な対応が求められます。

    共同新設分社型分割

    共同新設分社型分割は、複数の企業が協力して新たに会社を設立する手法で、それぞれの企業が持つ特定の事業部門や資産を新会社に移管することを目的としています。この手法は、異なる企業がそれぞれの強みを結集し、新たな市場やビジネスチャンスを追求する際に用いられることが多いです。

    共同新設分社型分割は、参加する企業が事業の拡大やスリム化を図るための戦略的な手段として位置づけられます。この分割方法は、各企業がそれぞれの専門性や技術を持ち寄ることで、新会社の競争力を高めることができます。新会社が設立されることで、各参画企業は、資産の有効活用や市場シェアの拡大、競争力の強化といった成果を期待できます。ただし、企業間の合意形成には時間と労力がかかるため、プロジェクトの計画段階から慎重に進めることが求められます。

    分社型吸収分割

    分社型吸収分割とは、企業が特定の事業部門を切り離し、他の企業にその部門を吸収してもらう形で行う分社化の方法です。この手法は、事業の選択と集中を目指す企業にとって有効な手段です。

    具体的には、分社化する事業部門の資産・負債や雇用を、吸収先企業に移転することで、企業の経営資源をより戦略的に配分できるようになります。これにより、親会社は本来の中核事業に集中でき、吸収する側の企業は新たな事業領域を獲得する機会を得ることが可能です。

    実施にあたっては、対象となる事業の評価や、移転する資産・負債の精査、従業員の雇用条件の見直しなど、詳細な準備が必要です。また、法的手続きや株主の承認を得るためのプロセスも重要で、これらを適切に行うことで、円滑な分社型吸収分割が実現します。

    分割タイプ特徴メリットデメリット
    単独型新設分社型分割企業が独自に新会社を設立し、事業を移管経営資源の集中
    意思決定の迅速化
    リスク分散
    初期コスト増加
    ブランド価値の低下
    リソース分散
    共同新設分社型分割複数企業が共同で新会社を設立し、事業を移管事業拡大
    協力関係強化
    新規事業参入
    意思決定に時間がかかる
    利益分配の問題
    分社型吸収分割別会社が既存の事業を吸収し、運営を開始事業拡大
    事業再生
    承継時の債務引継ぎリスク
    経営統合の適合課題

    分社化の流れ

    分社化の一連の流れを見ていきましょう。基本的に分社化(単独新設分社型分割)は以下の手順で進められます。

    1.分割計画書の作成と事前開示
    2.事前開示・公告
    3.債権者保護手続き
    4.株式買取請求の通知
    5.株主総会の承認
    6.登記変更と設立登記
    7.開示書類の備置き

    分割計画書の作成と事前開示

    分社化を実施するにあたり、企業は分割計画書を作成します。分割する事業を分析し、移管する資源を決定する必要がありますが、そのためには事前に分社化の目的を明確にする必要があります。分割計画書に記載する項目として以下があります。

    • 新設会社の商号
    • 所在地
    • 事業目的
    • 発行可能株式の総数
    • 新設会社の役員の氏名
    • 新設会社に移管する資産や債務、権利義務に関する事項
    • その他定款に定める事項

    分割計画書を作成後は取締役会での承認が必要です。これらは法的な書類となるため、専門家のチ確認を受けることが推奨されます。

    事前開示・公告

    分社化では株主の同意が必要なため、株主総会を開催します。分割計画書および必要書類は株主総会の開催日の2週間以上前から分割の効力発生後6か月経過するまで親会社(分割会社)の本社に備置します。

    その後、官報および債務者への公告も必要です。官報は分社化の効力発生の1ヶ月前までに行います。また、個別で債権者への催告も行う必要がありますが、日刊新聞への掲載や電子公告での公告を定款で定めている場合には債権者への個別勧告は省略できます。

    また、分社化で新設会社へ移籍する従業員への事前通知も忘れずに行いましょう。

    債権者保護手続き

    債権者保護手続きは、債権者の利益を保護する上で重要な手続きです。合併や会社分割など組織再編を行うことで、債権者に影響を与える可能性があるためです。

    分社化においても債権者保護は重要であり、企業は1ヶ月以上の異議申し立て期間を設ける必要があります。期間内に異議申し立てがなされた場合は、債務の弁済等の対応を行います。

    株式買取請求の通知

    企業は債権者だけでなく、株主や新株予約権者に対しても異議申し立ての機会を与えることが求められます。株主買取請求とは、分社化に反対する株主や新株予約権者の株式を企業が買い取る行為であり、株式買取請求の通知は分社化の効力が発生する20日前までに行うことが定められています。

    分社化に反対する株主は効力発生日の前日までに異議申し立てを行います。異議申し立てがなされた場合、企業は反対株主の株式を適正な価格で買い取ります。

    株主総会の承認

    分社化を実施するためには、効力発生日の前日までに株主総会を開催し、株主の承認を得る必要があります。この株主総会では、分社化に関する重要な事項が議論され、最終的な決定が下されます。分社化の承認は、特別決議が必要となるため、議決権を持つ株主の過半数以上が出席し、そのうち3分の2以上の賛成を得ることが条件となります。このように、分社化は株主の賛同があって初めて実現可能となります。

    また、株主総会の開催にあたっては、招集通知を開催日の2週間以上前に送付する必要があります。この通知には、分社化の目的、分割計画書の内容、分割後の企業の見通しなど、株主が適切に判断できるための詳細な情報が含まれていなければなりません。これにより、株主が十分な情報をもとに意志表示を行える環境を整えることができます。なお、こうした手続きを通じて、企業は株主との信頼関係を維持するとともに、分社化を円滑に進める基盤を築くことができます。

    登記変更

    分社化の効力が発生後、子会社へ資産や債務、権利義務等を承継します。また、分割会社である親会社と新設された子会社はそれぞれ登記を行う必要があります。親会社は変更登記、子会社は設立登記を行います。

    登記には登録免許税が発生します。分割会社である親会社の変更登記は3万円、新設会社の設立登記は資本金額の0.7%です。ただし、この計算が3万円に満たない場合は申請1件につき3万円となります。

    開示書類の備置

    分社化の効力が発生した後、親会社および新設された子会社は、それぞれ必要書類を一定期間、備え置くことが義務付けられています。具体的には、株主総会で承認された分割計画書や関連する重要書類を、分社化の効力発生日から6か月間、親会社と子会社の本社に保管しておく必要があります。この措置は、株主や利害関係者がこれらの書類をいつでも閲覧できるようにするためのものです。

    この仕組みは、分社化の過程が透明かつ公正に行われたことを証明する役割を果たします。また、株主や債権者に対して必要な情報を提供することで、企業に対する信頼感を高めることができます。さらに、これらの書類は、分社化後の事業運営や戦略の見直しの際にも重要な参考資料となります。分社化を円滑に進めるためには、このような法的な手続きを正確に遂行することが不可欠です。

    分社化の事例

    分社化を実施した企業の事例を紹介します。

    有限会社やまぎんの事例

    2024年11月、有限会社やまぎんはアパレル部門を分社化し、新たに株式会社ワイイノベーションズを設立しました。分社化の背景には、世界的に環境意識が高まる中、ファッション業界が持続可能性を追求する大きな変革期を迎えているという状況があります。

    これまで、やまぎんは廃棄された衣料やテキスタイルに新たな価値を見出し、循環型の取り組みを業界の先導役として推進してきました。ワイイノベーションズは今後、環境負荷の少ない素材の開発と普及、デザイン性と機能性を兼ね備えたアパレル商品の展開、廃棄衣料を活用したリサイクル事業の強化、そしてグループ企業と連携したCO2削減の可視化など、4つの重点分野を軸に事業を展開していく予定です。

    これまでの実績を土台に、ワイイノベーションズは持続可能なファッションを社会に広める新たな挑戦を加速させていくことでしょう。

    参考:株式会社ワイイノベーションズ設立のお知らせ

    株式会社ハウテレビジョンの事例

    2024年2月、株式会社ハウテレビジョンは、多様化するキャリア観や働き方への迅速な対応を目指し、若手ハイクラス人材向けキャリア支援プラットフォーム「Liiga」を運営する新会社、Liiga株式会社を設立しました。

    ハウテレビジョンは2010年の創業以来、「全人類の能力を全面開花させ、世界を変える。」をミッションに、キャリア支援事業を展開。今回の分社化を通じてLiigaのサービスをさらに進化させます。スカウト機能や特別求人、口コミ評価などの充実を図ることで、業界の常識にとらわれない柔軟なキャリア選択を支援し、ユーザーの能力開花をより強力にサポートしていく方針です。

    参考:Liiga株式会社設立のお知らせ

    クックパッド株式会社の事例

    2018年4月、クックパッド株式会社は料理動画事業を分社化し、新会社CookpadTV株式会社を設立しました。この分社化は、迅速な意思決定を可能にし、料理を楽しむ人々を増やすというミッションのもと、事業拡大を目指す戦略的な一歩です。

    CookpadTVは、大手流通チェーンと連携した料理動画配信サービス「cookpad storeTV」や、ユーザー投稿型動画撮影スタジオ「cookpad studio」を展開。2017年12月に開始した「cookpad storeTV」は2021年には全国約6,000店舗に導入されています。

    さらに、クッキングライブアプリ「cookpadLive」の運営を中心に事業を拡大し、2022年7月にはCookpadTVからクックパッドライブ株式会社へ社名を変更。経営資源をライブ配信事業に集中させ、料理の新しい楽しみ方を提案する革新的な取り組みを加速しています。この分社化は、料理体験を進化させる事例として注目されています。

    参考:CookpadTV株式会社設立のお知らせ

    中小企業における分社化成功のポイント

    分社化を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。中小企業が分社化を実施する上で気を付けるべき注意点を紹介します。

    目的と効果に応じた方法選定

    分社化を成功させるためには、目的と効果に応じた適切な方法を選定することが重要です。企業が分社化を考える理由はさまざまで、業務効率化や経営資源の集中、新規事業への参入、または事業承継といった異なる目的があります。

    自社の目的に応じて、分社化の方法を選ぶことで、最大限の効果を引き出すことが可能となります。経営陣は、分社化の目的を明確にし、それに合致する方法を選定することで、分社化の成功率を高めることができます。

    実施時期の見極め

    分社化の成功を左右する要素の一つに、適切な実施時期の見極めがあります。タイミングは、企業の現状や市場環境、競争状況など多くの要素に依存します。

    まず、企業内部の状況を考慮することが必要です。例えば、経営資源の再配置や新たな事業機会の取り込みが必要である場合、その準備が整ってから実施することが大切です。また、分社化によって生じる業務の再編成が、既存のビジネスにどのように影響を与えるかを慎重に評価することも欠かせません。

    次に、外部環境の変化に対する見極めがあります。市場の変動や法律・規制の変更、競争相手の状況により、分社化を進めるべきかどうかを判断をする必要があります。こうした外部要因が企業の戦略にどのように影響するかを見極め、分社化の実施時期を決定することが、成功を導く鍵となります。

    さらに、株主や従業員を含むステークホルダーの理解と支持を得るための時間的余裕を持つことも不可欠です。分社化は組織全体に影響を及ぼすため、関係者に対する十分な説明と納得を得るためのプロセスを踏む必要があります。適切なタイミングでの分社化は、企業の競争力を強化し、持続的な成長を支えることにつながります。

    専門家の意見の活用

    分社化を成功させるためには、専門家の意見を活用することが大切です。分社化は法的、財務的、経営的な側面を含む複雑なプロセスであり、各ステップでの適切な判断が求められます。

    まず、法務の専門家は、分社化に伴う法的手続きをスムーズに進めるためのサポートを行います。特に、会社法や税法に精通した弁護士や税理士は、法的リスクを最小限に抑えるために重要です。

    次に、財務の専門家は、企業価値の評価や資金調達の計画をサポートします。また、経営コンサルタントは、分社化後の組織運営や人材配置に関するアドバイスを提供します。これにより、分社化による経営効率の向上を最大化し、組織全体のシナジーを引き出すことが可能です。

    さらに、専門家のネットワークを活用することで、分社化に伴う未知の課題に対処するための情報やノウハウを得ることができます。専門家の意見を活用することは、分社化の成功に向けた重要な要素であり、企業が持続的な成長を遂げるための鍵となるのです。

    まとめ|分社化のメリットを最大化させるために

    分社化は企業が成長し続けるための重要な戦略の一つです。特に、経営効率の向上や意思決定の迅速化、さらには節税効果や資金調達の改善といった具体的なメリットがあります。これらは、企業が市場の変化に柔軟に対応し、競争力を維持するために必要な要素です。しかし、分社化を成功させるためには、手続きの複雑さやコストの増加といったデメリットについても理解し、適切な戦略を立てることが重要です。

    もし貴社が自社の未来を考え、分社化の可能性を検討しているのであれば、まずは専門家の意見を取り入れ、具体的な目的と戦略を明確にすることをお勧めします。分社化と子会社の違いや一つひとつのポイントをクリアすることで、分社化のメリットを最大限に活用し、企業が抱える課題を解決する手助けとなるでしょう。

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