デットファイナンスとは?種類とメリット・デメリット、活用法を解説

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デットファイナンス(Debt Finance)とは、金融機関からの融資や社債の発行など、返済義務のある資金調達手段です。返済義務がある一方で、経営権を維持しやすいという利点があり、多くの企業が活用しています。 

本記事では、デットファイナンスの仕組みやメリット・デメリット、エクイティファイナンスとの違い、さらに適した企業の特徴についても分かりやすく解説します。 

デットファイナンスとは

まず、デットファイナンスの基本的な知識について解説します。 

有利子負債による資金調達方法のこと 

デットファイナンス(Debt Finance)とは、企業や個人が有利子負債によって資金を調達する方法を指し、日本語では「借り入れ金融」とも呼ばれます。 

具体的には、銀行などの金融機関からの融資や社債の発行などがこれに該当します。この方法によって調達された資金は返済義務があり、元本に加えて利息を支払う必要があります。 

デットファイナンスの語源 

デットファイナンスの語源は、英語の「Debt(借金・負債)」と「Finance(資金調達・財務)」に由来します。 

「Debt」 は古フランス語の「dette」、さらにさかのぼるとラテン語の「debitum(貸し、債務)」に起源を持ち、「支払うべき義務」を意味します。 

デットファイナンスが利用される場面 

デットファイナンスは、新規事業の立ち上げや設備投資や運転資金の確保、買収・合併M&A)の実行など、短期間でまとまった資金を必要とする場面で多く利用されます。 

また、デットファイナンスは実行から融資までのスピードが比較的早く、事業計画の内容や信用状況に応じて多額の借り入れが可能である点が特徴です。自己資本を使わずに資金を確保できるため、資本構成を維持しつつ迅速に事業展開を図る際に有効です。 

デットファイナンスの種類

デットファイナンスを利用する際は、さまざまな方法を選択できます。 

  • 公的融資 
  • 銀行融資 
  • ビジネスローン 
  • 公募債(普通社債) 
  • 私募債 
  • コマーシャルペーパー 
  • シンジケートローン 
  • ソーシャルレンディング 
  • レベニュー・ベースド・ファイナンス 

それぞれについて解説します。 

公的融資 

公的融資とは、政府や自治体などの公的機関が提供する融資制度のことで、創業期の企業や中小企業の資金調達手段として広く活用されています。代表的なものに、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」や、地方自治体・信用保証協会・金融機関が連携する「制度融資」があります。 

日本政策金融公庫は、政府100%出資の金融機関です。「新創業融資制度」は無担保・無保証人で最大3,000万円までの融資が受けられる制度です。融資期間が長く、民間よりも借り入れしやすい点が特徴です。 

一方、「制度融資」は、地方自治体・金融機関・信用保証組合が連携して提供している融資です。地方自治体からの利子負担軽減と信用保証協会による信用保証が受けられ、民間よりも低金利かつ長期の資金調達が可能です。 

ただし、公的融資は審査期間が長く、融資実行までに数カ月を要する点に注意が必要です。 

銀行融資 

銀行融資とは、都市銀行や地方銀行、インターネット銀行などの民間金融機関から受ける融資を指します。銀行と直接契約する「プロパー融資」や、信用保証協会という組織が保証してくれる「保証付き融資」など、いくつかの種類があります。 

銀行融資のメリットは、比較的低金利で多額の融資を受けられる点にありますが、反面、審査が厳格であり、必要書類が多く、申し込みから実行までに時間がかかるケースも少なくありません。また、希望通りの融資が受けられない可能性もあります。 

ビジネスローン 

ビジネスローンとは、開業資金や運転資金、設備投資など、事業目的に限定して利用されるローン商品です。銀行の他、信販会社や消費者金融なども取り扱っており、特に小規模事業者や個人事業主によく利用されています。 

最大の特徴は、審査が比較的緩やかな点であり、無担保・無保証人でも利用可能な点です。また、申し込みから融資実行までのスピードが早く、急な資金需要にも対応できます。一方で、銀行融資と比較すると金利が高く、借入限度額が低めに設定されている点がデメリットです。 

公募債(普通社債) 

公募債とは、企業が広く一般の投資家に向けて発行する社債で、「普通社債」とも呼ばれます。発行時には、発行金額・利率・償還期限などの条件をあらかじめ定めた上で、投資家に販売し、資金を調達します。 

満期一括償還型が一般的であり、返済が後ろ倒しとなるため、資金繰りに一定の余裕を持てる点が特徴です。また、資金の使途に制限がないという利便性もあります。 

一方で、有価証券報告書の提出など、金融商品取引法に基づく厳格な開示義務と事務手続きが伴うため、一定以上の組織体制や信用力が求められます。 

私募債 

私募債とは、特定の投資家に限定して発行される社債です。公募債と異なり、金融商品取引法上の開示手続きが不要なため、発行にかかる手続きが簡素で柔軟な条件設定が可能です。 

中小企業では「銀行保証付私募債」や「信用保証協会保証付私募債」が多く活用され、一定の財務基準を満たす優良企業のみが利用できます。企業の信用力や財務健全性の証明にもなり、取引先や地域社会へのPR効果が見込まれる他、満期一括償還の形式で発行されることが多く、日常的な資金流出を抑えられる利点もあります。 

一方で、保証料・手数料・利息などのコスト負担が大きくなりがちで、特に銀行引受型では調達コストがかさむ傾向にあります。また、公募とは異なり私募債は募集対象となる投資家の人数に制限があるため、一度に調達できる金額は比較的小規模です。 

コマーシャルペーパー 

コマーシャルペーパーとは、企業が短期間の資金調達を目的として、公開市場にて割引形式で発行する無担保の約束手形です。社債と同様に証券会社や金融機関を通じて投資家に販売されますが、社債が1年以上の償還期間であるのに対し、コマーシャルペーパーは償還期間が1年未満(多くは1〜3カ月)である点が特徴です。 

発行に際して担保は不要であるため、発行できるのは信用力が高く、財務内容が良好な大企業に限られます。額面は1億円以上とされ、発行企業の信用格付や財務状況に応じて金利条件が決定されます。低金利かつ短期での柔軟な資金調達が可能である一方で、中小企業や非上場企業では利用が難しいといえます。 

シンジケートローン 

シンジケートローンとは、複数の金融機関から構成される「シンジケート団」から一括して融資を受ける資金調達手法です。幹事役となるアレンジャー(幹事金融機関)が参加金融機関を募り、ひとつの融資契約書に基づき、各行が同条件で融資を行います。これにより、同一条件で複数の金融機関から効率的に資金を調達できる点が特徴です。 

借り入れ条件や返済スケジュールの設定が柔軟であり、アレンジャーのサポートにより企業側の事務負担が軽減されるメリットがあります。また、一度に大口の資金を調達できることから、M&Aや大型投資の資金源としても利用されています。 

一方、審査が厳格であるため、一定以上の信用力と情報開示が求められます。さらに、融資に伴いさまざまな手数料が発生するため、コスト負担が増大しやすいです。 

ソーシャルレンディング 

ソーシャルレンディングとは、資金を借りたい企業と、運用益を求める個人投資家をマッチングする融資型クラウドファンディングの一種です。金融機関を介さず、インターネット上でソーシャルレンディング事業者がファンドを募集し、集めた資金を企業へ貸し付けることで、資金調達を実現します。 

企業にとっては、銀行融資よりも審査が比較的柔軟で、資金調達までのスピードが速いという利点があり、特に中小企業や新興企業にとって有用な手段です。一方、金利は銀行融資より高めに設定される傾向があり、返済負担が重くなる場合があります。 

投資家側にとっては、1万円程度から少額で投資が可能で、銀行預金より高い利回りを狙える点が魅力です。ただし、元本保証はなく、借り手の信用リスクを直接負うことになります。 

レベニュー・ベースド・ファイナンス 

レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)とは、将来の売り上げ予測に基づき、その一部を現金化して資金調達を行う手法です。お金を借りるのではなく、将来の売り上げを譲渡します。 

サブスクリプション型の安定した収益を持つビジネスとの相性が良く、企業成長を加速させる手段として注目されています。返済は売り上げに応じて行われるため、負担が軽減される点が特徴です。 

欧米ではスタートアップを中心に導入が進んでおり、日本でも新たな資金調達手段として期待されています。 

企業のライフステージ別のデットファイナンス戦略

企業のライフステージは、次の五つに分類できます。 

  • 創業初期 
  • 成長期(事業拡大フェーズ) 
  • 成熟期(安定経営フェーズ) 
  • 衰退期(業績悪化フェーズ) 
  • 再建期(経営再生フェーズ) 

それぞれの段階において適したデットファイナンス戦略について解説します。 

創業初期 

創業直後の企業は実績や担保資産に乏しく、一般的な銀行融資の審査を通過することが難しい段階です。そのため、政府系金融機関による創業融資や、信用保証協会付きの制度融資など、公的支援を活用したデットファイナンスが中心となります。 

また、ベンチャーデットやクラウドレンディングなどの新興の融資形態も選択肢となり得ますが、いずれも返済能力の見通しを示すことが求められます。個人保証や経営者保証が必要となるケースも多く、返済リスクや財務負担を慎重に見極めながら計画を立てる必要があります。 

成長期(事業拡大フェーズ) 

事業が軌道に乗り始めた成長期の企業では、売り上げ拡大に伴って運転資金や設備投資、人材採用など多面的な資金需要が増大します。この段階では、一定の信用力を背景に金融機関からのプロパー融資や、複数の金融機関から資金を調達するシンジケートローンの活用が検討されます。 

短期の資金調達では、コマーシャルペーパーも有効です。資金調達の選択肢が広がる一方で、金利や返済条件、担保の有無などの比較検討が重要になります。資金使途を明確にし、返済計画と成長戦略を整合させることで、信用力をさらに向上させ、次のフェーズへの布石とすることが求められます。 

成熟期(安定経営フェーズ) 

成熟期の企業は、事業基盤やキャッシュフローが安定しており、金融機関や市場からの信用も高いことから、長期・低利の資金調達が可能になります。特に公募債の発行は、安定した返済能力を前提とする代表的な手法です。 

設備更新やM&A資金など、中長期の投資に向けて、資本コストを抑えながら調達できる点が成熟企業の強みです。一方で、自己資本比率の低下や過度な財務レバレッジを避けるためにも、定期的な財務戦略の見直しが必要です。 

衰退期(業績悪化フェーズ) 

業績の低迷や資金繰りの悪化が顕在化し始める衰退期では、デットファイナンスの実行には特に慎重な対応が求められます。新規融資は難航し、借り入れ条件も厳しくなりがちなため、無理な借り入れはかえって財務悪化を招く恐れがあります。 

この段階では、資金調達よりもコスト削減や事業整理などの内部改善による資金流出抑制が優先されることが多く、必要最小限の資金調達に留める戦略が一般的です。また、既存の金融機関とは密な対話を通じ、リスケジュールや条件変更を模索することも重要です。 

再建期(経営再生フェーズ) 

経営再建に本格的に取り組む再建期では、デットファイナンスは再生計画に沿った選択的な活用が求められます。既存債務のリスケジュールに加え、金融支援機関や再生ファンドによる特別融資などが現実的な選択肢となります。 

また、民事再生法や会社更生法などの再建型倒産手続中には、DIPファイナンス(倒産手続中における金融機関からの資金調達)が活用されることもあります。 

資金調達の可否は、明確な再建シナリオと将来キャッシュフローの裏付けが前提となるため、債権者・投資家との信頼回復が不可欠です。 

デットファイナンス以外の資金調達方法

デットファイナンス以外の資金調達方法には次の方法があります。 

  • エクイティファイナンス 
  • メザニンファイナンス 
  • ベンチャーデット 
  • アセットファイナンス 
  • 補助金 
  • 助成金 
  • クラウドファンディング 

それぞれについて解説します。 

エクイティファイナンス 

エクイティファイナンスとは、株式を発行することによって投資家から出資を受け、自己資本を増やす資金調達手法です。資金調達の方法としては、「公募増資」や「株主割当増資」「第三者割当増資」などがあり、いずれも返済義務がない資金である点が最大の特徴です。 

このため、エクイティファイナンスは、新規事業・研究開発・成長投資など、長期的視点での資金需要に適しています。 

一方で、株式を発行することで既存株主の持株比率が希薄化し、経営権の分散や意思決定の複雑化といったリスクが伴うこともあります。また、出資者には配当金の支払いや、株価上昇によるキャピタルゲインの提供といった形で利益を還元しなければなりません。 

メザニンファイナンス 

メザニンファイナンスとは、デットファイナンスとエクイティファイナンスの中間に位置する資金調達手法であり、その名のとおり「中二階(mezzanine)」的な位置付けにあります。M&Aや事業再編、大型プロジェクトなどで利用される高度な調達手段です。 

主なものとして、劣後ローンや優先株式、転換社債型新株予約権付社債(CB)などが挙げられます。これらは、通常の融資よりも返済順位が低くリスクが高い反面、高金利や株式転換オプションなどを条件に設定することで投資家にリターンを提供します。また、議決権の希薄化を回避しつつ資金調達が可能なため、経営権を維持したい企業に適した手段でもあります。 

一方で、金利負担が重くなりがちであり、手法が複雑で法務・財務の専門知識が必要になるため、活用には一定の体制と理解が求められます。 

ベンチャーデット 

ベンチャーデットとは、メザニンファイナンス同様にデットファイナンスとエクイティファイナンスの中間的性質を持つ資金調達手法で、主にスタートアップやベンチャー企業を対象に提供されます。過去の財務実績や担保の有無ではなく、将来性や成長性に着目して融資が行われる点が特徴です。 

この手法では、金融機関やベンチャーキャピタルが融資を実行する際に、信用リスクを補完する目的で、新株予約権や転換社債型新株予約権付社債などの株式に転換できる権利を付与することがあります。これにより、貸し手は企業の成長に応じた利益を享受できます。 

一方で、担保のない高リスクな貸し付けであることから、金利は一般の融資よりも高く設定される傾向があります。 

アセットファイナンス 

アセットファイナンスとは、企業が保有する資産や、それら資産が将来生み出すキャッシュフローを基に資金を調達する手法です。対象となる資産には、不動産や機械設備、有価証券、売掛金、知的財産権などが含まれます。自己資産を活用することで、他の手法より柔軟な調達が可能です。 

代表的な手法として「ABL(アセット・ベースト・レンディング)」があり、売掛金や在庫、設備などを担保に借り入れを行う方法で、資産を保持したまま資金化できます。また、「ABS(資産担保証券)」は、ローンやリース債権などを裏付けとした証券を発行し、市場から資金を調達する仕組みです。中でも「MBS(住宅ローン担保証券)」は、住宅ローン債権を担保にしたABSの一種です。 

さらに、「ABCP(資産担保コマーシャルペーパー)」は、短期資金の調達を目的とした有価証券であり、ABSと類似の構造を持ちます。一方、「ファクタリング」は、売掛債権をファクタリング会社に売却して即時に資金化する手法であり、ABLと異なり資産の所有権が移転する点が特徴です。 

補助金 

補助金は、国(主に経済産業省)や自治体の政策目標に沿った事業に対し、費用の一部を給付する制度です。 

創業支援や設備投資、IT導入、地域活性化など幅広い分野で募集されており、基本的に審査・採択制です。申請が通らなければ受給できませんが、基本的に返済義務はありません。 

助成金 

助成金は、厚生労働省を中心に、雇用促進や労働環境の改善などに取り組む企業に対して給付される制度です。 

例えば、育児休業制度の導入や人材育成に関する施策が対象となります。補助金と異なり、要件を満たせば原則受給できる(先着順や予算上限あり)点が特徴で、基本的に返済不要です。 

クラウドファンディング 

クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から少額ずつ資金を集める仕組みで、企業・個人問わず利用されます。 

製品開発や社会的活動、イベント開催などを目的とし、支援者にはリターンを提供する「購入型」や、出資・融資型など多様な方式があります。信用力よりも企画力や共感力が資金調達の鍵となります。 

デットファイナンスのメリット

デットファイナンスにはさまざまなメリットがあります。 

  • 経営権に影響がない 
  • 利息の支払いに節税効果がある 
  • 返済実績により信用力が向上する 
  • 資本金が増加しない(支払う税金への影響が少ない) 
  • 資金計画が立てやすい 

それぞれについて解説します。 

経営権に影響がない 

デットファイナンスは、借り入れや社債などを通じて資金を調達する方法であり、株式を発行しないため、経営権に影響を及ぼさないという点が大きなメリットです。エクイティファイナンスのように出資者に議決権を与えることがないため、既存の株主構成や経営体制を維持したまま資金調達が可能です。 

ただし、経営状態が悪化した場合には、融資元の金融機関などから経営改善の要請や助言を受ける可能性があり、間接的に経営に影響を及ぼすケースもあります。 

利息の支払いに節税効果がある 

デットファイナンスによって得た資金を返済する際は、元金に加えて利息の支払いが発生します。この利息は、税務上「損金」として扱われるため、課税所得から控除が可能です。その結果、支払利息分に相当する法人税が軽減されるため、一定の節税効果が得られます。 

法人税率が高い企業や、借入額が大きい場合には、法人税軽減によるメリットが顕著になります。こうした税負担の軽減によって、実質的に企業価値が増加する現象は、一般に「負債の節税効果」と呼ばれます。 

返済実績により信用力が向上する 

デットファイナンスによって資金調達を行い、契約通りに返済を継続することで、金融機関などからの信用を高められます。 

返済実績は、金融機関が融資判断を行う際の重要な評価要素であり、過去に滞りなく借入金を返済してきた記録がある企業は、将来的に新たな融資を受けやすくなる傾向があります。 

また、信用が蓄積されることで、より有利な金利条件や借り入れ枠の拡大といった恩恵を受けられる可能性があります。 

資本金が増加しない(支払う税金への影響が少ない) 

デットファイナンスは、負債による資金調達であり、資本金の増加を伴わないため、税務上の影響を最小限に抑えられます。 

一方、エクイティファイナンスでは株式発行により資本金が増加するため、法人住民税の均等割や交際費の損金不算入、少額減価償却資産の特例などに不利な影響を及ぼす場合があります。特に、資本金が1億円を超えると中小企業向けの各種軽減税制の適用対象外となるため、税負担が増加するリスクがあります。 

資金計画が立てやすい 

デットファイナンスでは、返済義務があるのは元金と利息のみです。そのため、特に利率が固定されている場合には、資金調達時点で将来の返済総額や返済スケジュールを明確に把握できるため、長期的な資金繰りや経営計画を立てやすくなります。 

また、デットファイナンスは銀行融資や社債、私募債など多様な選択肢から調達方法を選べます。企業は自身の経営方針や返済能力に応じて、条件の合う貸し手や商品を選定できるため、より現実的で柔軟な資金計画の構築が可能です。 

デットファイナンスのデメリット

デットファイナンスのデメリットは次のとおりです。 

  • 負債が発生する 
  • 返済期限がある 
  • 利息や追加コストを返済をする必要がある 
  • 自己資本比率が低下する 

それぞれについて解説します。 

負債が発生する 

デットファイナンスによって調達した資金は、貸借対照表上で「負債」として計上されます。 

負債自体は必ずしも否定されるべきものではありませんが、過度な借り入れによって債務超過に陥ると、企業の信用力が大きく損なわれます。特に金融機関への融資申請時や投資家との交渉が上手く進まなくなる恐れがあります。 

返済期限がある 

デットファイナンスは、借り入れや社債など返済義務を伴う資金調達手段であるため、全ての手段に返済期限が設けられています。資金繰りが順調であれば問題はありませんが、返済期日に間に合わなければ債務不履行(デフォルト)として扱われ、延滞利息の請求や強制執行(資産差押えなど)に発展する可能性があります。 

特にキャッシュフローが悪化している状態では、追加融資の審査にも影響し、資金調達が困難になるリスクがあります。 

利息や追加コストを返済をする必要がある 

デットファイナンスは、資金調達後に元金だけでなく利息の支払いも求められる点もデメリットです。利息は借入金額や契約内容に応じて毎月または定期的に発生し、たとえ利益が出ていなくても支払い義務があるため、キャッシュフローに継続的な負担を与えます。 

さらに、融資元によっては、事務手数料や契約書作成費用、繰上返済手数料などの追加コストが発生する場合もあり、実質的な資金調達コストは元本以上に膨らむことがあります。こうした見えにくいコストを含めて返済総額を把握し、資金繰りに無理がないかを事前に検討することが重要です。 

自己資本比率が低下する 

デットファイナンスによって調達した資金は「他人資本」として負債に計上されます。その結果、自己資本比率(総資本に占める自己資本の割合)が低下するというデメリットがあります。自己資本比率は、企業の財務的な安定性や信用力を測る指標のひとつであり、低下すると「資金力の弱い企業」と見なされる可能性が高くなります。 

自己資本比率が低くなると、金融機関からの融資審査が厳しくなる他、補助金や助成金の対象から外されることもあります。また、取引先や投資家からの信用評価にも悪影響を及ぼし、企業活動のあらゆる面で不利になる可能性があります。 

デットファイナンスを利用する際に注意すべきポイント

デットファイナンスを利用する際に注意すべきポイントは次のとおりです。 

  • 返済計画は必ず立てる 
  • 借り入れ条件をしっかり確認する 
  • 借り入れへの担保を用意する 

それぞれについて解説します。 

返済計画は必ず立てる 

デットファイナンスは、元本と利息の返済が義務付けられる資金調達手段であるため、事前に綿密な返済計画を立てることが不可欠です。 

特に注意すべきは、キャッシュフローを悪化させない使い方を意識することです。一時的な資金不足を補うためのデットファイナンスであっても、返済額が実力を超えていれば逆効果となります。中小企業の中には、無理な返済によって多重債務に陥り、倒産に至るケースも少なくありません。 

このようなリスクを防ぐために、資金繰り表を用いて収支を予測し、返済能力を客観的に把握しましょう。加えて、将来の売り上げやコストの見通しを立て、具体的な数値目標と行動計画を伴った資金活用シナリオを描くことが重要です。 

借り入れ条件をしっかり確認する 

デットファイナンスを活用する際は、融資元によって条件が大きく異なるため、事前の比較と検討が非常に重要です。 

金利だけでなく、融資限度額や返済期間、返済方法、手数料の有無といった各種条件を細かく確認し、自社の経営状況に最も適した借入先を選びましょう。 

特に返済負担は、金利だけで判断せず、返済スケジュールや手数料体系まで総合的に評価することが重要です。特定の金融機関と継続的な関係を築くことで、金利の優遇や条件の柔軟化が期待できる場合もあります。 

また、資金調達に焦りがあるときほど悪徳業者に注意が必要です。特に公的機関・銀行以外の金融機関を利用する場合には、貸金業登録の有無や運営実績など、業者の信用性をしっかり確認する必要があります。安易な契約は絶対に避けましょう。 

借り入れへの担保を用意する 

デットファイナンスは全ての企業が利用できるわけではありません。特に、返済能力に乏しい個人事業主や設立間もない法人など、経営基盤が脆弱な事業者は、金融機関からの融資を受けられない可能性が高いです。 

金融機関は融資実行にあたり、事業の収益性や資産状況、自己資本比率、キャッシュフローなどを厳しく審査します。信用力が不足していると判断されれば、借り入れの機会すら与えられないこともあります。

こうした場合に有効なのが、担保の提供です。万が一返済不能に陥った際に金融機関がリスクを回収できるため、信用力を補完し、融資の可能性を高められます。不動産や機械設備、売掛金などの担保にできる資産を事前に把握しておきましょう。 

デットファイナンスに関するQ&A

最後に、デットファイナンスに関するよくある質問とその回答を紹介します。 

デットファイナンスに向いているのはどのような企業か 

デットファイナンスは、経営権への影響を抑えつつ資金調達を行いたい企業に適しています。株式を発行せずに済むため、既存株主の持株比率や議決権に影響を与えることなく、経営の自由度を高く保てる点が大きな利点です。 

一定の業歴があり、安定した収益があって今後の成長が見込まれる場合は、利息負担を抑えつつ効果的に資金を活用できます。 

また、直近の決算が好調な企業は、財務の健全性を示す材料がそろっているため、審査面で有利になります。 

シニアファイナンスとは何か 

シニアファイナンスとは、他の債権より優先的に弁済される、相対的にリスクの低い負債のことをいいます。 

デットファイナンスでは銀行融資や社債などがシニアファイナンスに当たり、これらはシニアローンと呼ばれます。企業が倒産した場合、シニアファイナンスは他の債務より優先して返済されるため、金融機関などの貸し手にとって比較的リスクが低いとされます。 

DIPファイナンスとは何か 

DIPファイナンス(Debtor in Possession Finance)とは、企業が民事再生法や会社更生法などの再建型倒産手続中に、事業を継続するために外部から受ける資金調達のことです。「破産ではなく再建を前提とした企業」への融資であり、既存債権者よりも優先的な返済順位が認められる点が特徴です。 

主な資金使途は、再建期間中の人件費や仕入代金、賃料などの運転資金です。 

劣後ローンとは何か 

劣後ローンとは、通常の融資(シニアローン)に比べて返済の優先順位が低く設定されている融資のことです。企業が倒産や清算に至った場合、一般の債権者への返済が優先され、劣後ローンはその後に支払われます。このため、リスクが高い反面、貸し手にとっては高金利が期待できる資金提供手段となります。 

借り手側にとっては、資本と負債の中間的な性質を持ちます。5年超の劣後ローンは貸借対照表上では資本とみなされるなど、財務諸表上の自己資本比率を改善する効果があります。 

デットファイナンスとデフォルトはどんな関係か 

デットファイナンスとは、有利子負債(借入金や社債など)によって資金を調達する手法ですが、その最大のリスクのひとつが「デフォルト(債務不履行)」です。 

借入には必ず元本返済と利息支払いの義務が伴うため、キャッシュフローの悪化や業績不振により返済不能に陥ると、信用不安や金融機関との関係悪化を招く可能性があります。 

特に、返済能力を超えた過剰な借り入れは、デフォルトのリスクを高める要因になります。デフォルトが発生すると、新たな資金調達が極めて困難となるだけでなく、法的整理や倒産に発展する恐れもあるため、デットファイナンスを活用する際には、返済可能性や資金繰り計画の慎重な設計が不可欠です。

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