着手金・中間金無料 完全成功報酬型
資本業務提携とは、企業同士が資本の移動を伴いながら業務面でも連携を図る、いわばハイブリッド型の企業連携です。
経営的な結び付きを強めつつ、共同開発や販路拡大など実務面での協業を行うことで、単独では得られないシナジーの獲得が期待できます。
この記事では、資本業務提携の基本的な仕組みや他の企業提携との違い、メリット・デメリット、手続きの流れ、契約書の記載項目、そして実際の国内事例を解説します。
目次
まず、資本業務提携の基本的な知識について解説します。
資本業務提携とは、業務提携に資本移動を加えた企業提携の形態をいいます。単なる業務提携よりも関係性が強固になる点が特徴です。
単独で実現困難な目標でも、資本業務提携によって提携相手のノウハウ・人材・資金力を活用することで達成可能となることがあります。
なお、資本業務提携は、出資比率が経営権に影響しない水準にとどめられることが多いです。そのため、緩やかな協力関係の構築に適していますが、将来的なM&Aの前段階として活用されることもあります。
業務提携とは、企業が株式の持ち合いなどを行わずに、技術協力や販売連携、物流共有などの業務面で協力する契約関係です。具体的には、新製品の共同開発、研究資源の相互活用などが該当します。
業務提携は、資本リスクを取ることなく連携が可能であり、比較的柔軟かつ短期間で締結されやすい点が特徴です。一方、資本業務提携では、これに加えて資本関係を構築することで、信頼関係を高め、中長期的な協力体制を築きます。
資本提携は、企業同士が株式を取得・保有し合うなどして資本的なつながりを持つ企業提携の形態です。業務面での連携がない場合でも成立する点が、資本業務提携との違いです。
例えば、金融支援や資本政策の一環として一方的に株式を保有する場合も資本提携に含まれます。これに対し資本業務提携は、業務上の協力関係が前提となっており、販売連携や技術提携といった実務面での協業が伴います。
資本提携は「関係強化の手段」にとどまる一方、資本業務提携は「共通の事業目的達成のための連携」といえます。
M&A(合併・買収など)は、経営権を取得し、組織を実質的に統合・支配することを目的としています。合併では法人格の統合、買収では株式の過半数取得により支配関係が生まれます。
M&Aは資金負担や統合リスクが大きく、失敗時の損失も甚大となる一方、経営資源の全面的活用や迅速な意思決定が可能です。
一方、資本業務提携は、企業が独立性を保ったまま資本と業務の両面で連携し、相互の強みを生かして成長を目指す手法です。通常は持ち株比率を3分の1未満に抑え、経営権には干渉せずに信頼関係を強化し、販路拡大や技術開発などで協業を行います。
なお、資本業務提携はその性質から、広義のM&Aとみなされることもあります。
資本業務提携は、企業が上場しているかで次の三つのパターンに分類できます。
それぞれの場合の特徴について解説します。
上場企業同士が資本業務提携を行う場合、双方が第三者割当増資を通じて相手企業の株式を取得し、株式持ち合いの形をとることが一般的です。
また、合弁会社を設立し、折半出資によって共同事業を推進するケースも見られます。このような提携では、対等な立場でのシナジー効果の追求が重視され、技術力や販売力、人材などの経営資源を統合的に活用することが目的です。
互いに独立性を維持しながら協業することで、新規市場開拓やイノベーション創出につながるケースが多く、大規模なM&Aに比べて柔軟かつ段階的な連携が可能である点も特徴です。
上場企業と未上場企業の資本業務提携では、上場企業が未上場企業に対して出資を行い、株式の一部を取得するパターンが一般的です。
未上場企業にとっては、財務基盤の強化や設備・販路の活用といった成長の加速につながり、上場企業側も有望な技術やノウハウを外部から取り込むメリットがあります。
通常、経営権に干渉しない程度の持ち株比率にとどめ、企業の独立性を尊重した協業が前提です。しかし、将来的に上場企業が出資比率を高め、完全子会社化に至るケースも少なくありません。
未上場企業同士の資本業務提携は、規模や経営資源に限りのある企業同士が、相互出資や共同開発などを通じて競争力を高めるための手段として用いられます。
例えば、技術系スタートアップ同士がノウハウを持ち寄って新製品を開発したり、販路を共有して新市場に進出したりするケースがあります。
上場企業との提携に比べ、契約条件やガバナンス面の調整が柔軟である一方、財務的な安定性や情報開示に対する信頼性の確保が課題となることもあります。
THANK YOU
お問い合わせが
完了しました
ご記入いただきました情報は
送信されました。
担当者よりご返信いたしますので、
お待ちください。
※お問い合わせ後、
2営業日以内に返信がない場合は
恐れ入りますが
再度お問い合わせいただきますよう、
よろしくお願い致します。
お急ぎの場合は
代表電話までご連絡ください。
本項では、実務上よく用いられる「株式譲渡」と「第三者割当増資」の二つの手段について解説します。
資本業務提携には「株式交換」「株式移転」といった手法が含まれることがあります。しかし、いずれも大量の株式を取得することを前提としたものであることから本記事では除外しています。
株式譲渡は、既存の株主が保有する株式を提携先企業に売却し、その企業が資本参加する方法です。資本業務提携においては、手続きが比較的簡易で迅速に実行できるため、頻繁に用いられています。
また、譲渡によって提携先に資本関係を構築できる一方、譲渡元に資金が入るという特徴もあります。
例えば、スタートアップ企業が資金調達と提携を両立させたい場合、保有株式の一部を大手企業に譲渡することで、協力関係の基盤を築くケースが見られます。
なお、譲渡にあたっては、譲渡契約の締結、株主名簿の書き換えなどの対応が必要です。
第三者割当増資とは、会社が新たに株式を発行し、特定の第三者(多くは提携先企業)に引き受けてもらうことで資金を調達しつつ、資本関係を構築する方法です。
例えば、スタートアップが大企業と提携する際、自社株を新たに発行し相手に引き受けてもらうことで、資金だけでなく事業ノウハウや販路なども獲得できます。
こちらの方法でも株主総会の特別決議や登記など、手続き上の要件も多く、事前準備が必要です。
資本業務提携の目的は、業界ごとに異なる傾向があります。次のような業界では、特有の狙いがあります。
それぞれについて解説します。
IT業界における資本業務提携は、主に技術力の強化と市場拡大を目的としています。
提携先との共同開発やエンジニアの人材交流によって、新サービスや製品の競争力を高めるとともに、急速に変化する技術環境への対応力を向上させる狙いがあります。
また、ビッグデータやAIといった成長分野への参入や海外進出を見据えて、リソース補完や販路連携を図る事例も多く見られます。
製造業界では、生産効率の向上とビジネスモデルの革新を目的に資本業務提携が行われます。
工場の相互利用や部品供給網の最適化などを通じ、スケールメリットを追求するほか、技術や設備の共同利用により、設備投資や研究開発コストの負担軽減を図るケースもあります。
また、顧客ニーズの多様化に応じた新製品開発の加速や、異業種との連携による製品価値の高度化も注目される目的です。
小売業界における資本業務提携の主な目的は、販売チャネルの多様化と新市場への進出です。
特にEC市場の成長に対応し、リアル店舗とオンラインの融合を図るため、IT企業や異業種との提携が活発化しています。オムニチャネル戦略の実現や、物流・決済といった周辺機能の補完も重要な提携動機です。
また、人口減少や消費行動の変化を背景に、未進出地域や海外市場への展開を進める上でも、現地企業との資本業務提携が有効な選択肢とされています。
資本業務提携のメリットとして、次の点が挙げられます。
それぞれについて解説します。
資本業務提携では、持株比率を一定水準に抑えることで、経営の独立性を維持しつつ、強固な協力体制を構築できます。
例えば、持株比率を3分の1未満にすることで、経営権に影響を与えずに出資関係を結べます。
合併や子会社化と異なり、各社の独自性を尊重しながら長期的な協力関係を築ける点が、多くの企業に選ばれる理由です。
資本業務提携の大きな魅力の一つは、自社単独では時間を要する成長戦略を、提携によって迅速に実現できる点です。
提携先の販路や顧客基盤を活用することで、新規事業や異業種への参入が容易になり、競合他社に劣らない体制を早期に構築できます。
また、ゼロから技術開発や人材確保を行う必要がないため、コストや時間の面でも効率的です。
資本業務提携を通じて、単なる資金援助にとどまらず、技術・生産設備・販売網・人材などの経営資源を取り込めます。
特に自社での整備に時間やコストを要する分野では、既にリソースが整った企業との連携によって、体制構築のスピードを飛躍的に高められます。
優れた技術力を持つ企業と提携することで、自社だけでは難しい製品開発の加速が実現します。
資本業務提携では、企業間の関係性が深まることにより、相互補完的なシナジー効果が期待できます。
売り上げ面では、相互の顧客基盤を活用したクロスセリングやブランド連携が可能です。また、コスト面では、調達や物流の一元化による効率化が見込まれます。
さらに、研究開発分野では、設備やノウハウの共有を通じて開発コストや時間の削減が図れます。こうした包括的な連携により、企業価値の向上が期待されます。
提携による出資は、自己資本比率の改善や信用力の向上に直結し、資金調達面でもプラスに働きます。
新規事業への挑戦に際しては、提携先とリスクを分担できるため、単独では実現困難な戦略的投資も選択肢に入ります。
こうした環境が整えば、事業の多角化や海外展開などにも踏み出しやすくなり、企業にとって柔軟かつ持続的な成長への道が開かれます。
資本業務提携のデメリット・リスクは次のとおりです。
それぞれについて解説します。
資本業務提携を行う際には、第三者割当増資や株式譲渡によって株式を取得することが一般的であり、一定の資金が必要です。M&Aと比較すれば負担は軽いものの、出資額が億単位に及ぶことも少なくありません。
また、取得した株式の価値が後に下落した場合には、含み損を抱えることにもつながります。
資本業務提携の主目的であるシナジー効果や事業成長は、実際には期待どおりに実現しない可能性があります。
企業文化の不一致や経営方針の相違、市場環境の変化などによって、提携が思うように機能しないリスクも存在します。
資本業務提携を行うと、提携先が一定割合の株式を保有するため、経営の意思決定に対して発言権を持つ可能性があります。
たとえ議決権が3分の1未満でも、持株比率や関係性によっては、経営方針や取締役人事に干渉される恐れがあります。
提携によって相手企業との調整が必要となるため、単独での意思決定が難しくなる場面があります。特に経営方針や新規事業の展開において相手の理解や同意を得る過程が加わることで、対応の迅速さが損なわれることがあります。
競争の激しい業界ではこの遅延が致命的なハンディキャップとなり得ます。
資本業務提携は一度締結すると、解消が困難になるという性質があります。
特に出資を受けた相手が株式を保有している場合、提携を解消するには株式の買い戻しが必要です。買戻しには多額の資金を要するだけでなく、株価の変動や買取価格の交渉によってさらなる摩擦が生じることもあります。
資本業務提携を行う際に注意すべき点は次のとおりです。
それぞれについて解説します。
資本業務提携では出資比率が提携関係の力関係を左右するため、慎重に設計する必要があります。
例えば、議決権の3%以上で帳簿閲覧権、20%以上で持分法適用会社、50%超で実質的な経営支配が可能です。さらに、2/3以上の議決権を取得すれば、定款変更やM&A承認も単独で可能です。
そのため、「どの程度の関与を許容するのか」を明確にした上で契約交渉を行うことが重要です。
経営の独立性を維持したい場合は、出資比率の上限設定や特別決議事項の取り決めも有効です。
資本業務提携は投資家の期待値に影響するため、提携の発表によって株価が大きく変動する可能性があります。
一般的には、提携による業績向上が期待されれば株価は上昇しますが、提携相手の業績不振や協業内容の不透明さが懸念されれば、逆に下落することもあります。
特に時価総額の小さい企業は、資本業務提携による影響が経営全体に及びやすく、株価の変動幅も大きくなりがちです。
そのため、提携内容や今後の見通しについて投資家に正確かつ具体的に開示し、過度な期待や誤解を招かないようにすることが重要です。
資本業務提携では、契約の内容次第で一方の企業にだけ有利になるケースが発生することがあります。
特に、資本の注入や業務協力の範囲に偏りがあると、不公平な協力関係が長期的な摩擦を引き起こすおそれがあります。
会社法では資本提携に関する明確な定義がなく、内容次第でどちらかが不利な契約も法的には成立してしまうため注意が必要です。
契約時には、双方が享受するメリットのバランスを確認し、不測の事態に備えて契約内容の見直し条項や解除条件を設けることも検討すべきです。
資本業務提携の手続きの流れは次のとおりです。
それぞれを順番に解説します。
資本業務提携を進める上で最初に必要なのは、提携の目的を明確にすることです。
例えば、「新規市場への参入」「技術力の補完」「コスト削減」といった狙いを具体化し、自社の課題や戦略と照らし合わせて整理することが求められます。
この段階で目的が曖昧なままだと、提携後の方向性が不明確になり、意思決定や業務の進行に支障が出る恐れがあります。社内での議論や市場分析を通じて、資本業務提携が本当に最適な手段なのかも含めて慎重に検討します。
目的が固まったら、その実現に向けて最適な提携先を探します。市場における技術力、販売網、ブランド力、財務健全性などの視点から複数の候補を評価し、相性や将来的な協業の可能性も含めて検討します。
提携関係は長期的なパートナーシップになるため、短期的な利点だけでなく、経営理念や企業文化との親和性も重要な要素です。M&A仲介業者や経営コンサルタントなどを活用すれば、非公開情報の収集や候補の選定を円滑に進められます。
提携先と協議を進める中で、資本と業務の両面で「何をどこまで連携するのか」というゴールをすり合わせることが必要です。
例えば、出資比率の範囲や経営関与の程度、共同事業の内容、ノウハウ共有の範囲などを明文化し、認識の齟齬(そご)が起きないようにします。
提携範囲が広いほど成果も大きくなりますが、リスクも比例して増大します。そのため、段階的な連携や試験的な業務提携から始める方式も検討に値します。
提携内容の基本方針が固まったら、実務レベルでの条件交渉に移ります。
出資の方法(株式譲渡や第三者割当増資)や出資比率、議決権、利益配分、業務範囲などについて、双方が納得する条件を詰めていきます。
また、将来の提携解消や紛争時の対応策もこの段階で協議しておくと安心です。法的拘束力のある契約書の作成を見据え、弁護士やM&Aの専門家を交えた交渉が望ましく、交渉過程の記録も正確に残しておきましょう。
交渉が整えば、最終的に資本業務提携契約を締結します。
必要に応じて、基本合意書、業務提携契約書、株式引受契約書などを段階的に交わす場合もあります。契約には法的拘束力があるため、締結前には弁護士のチェックを受けましょう。
契約締結後は、社内外への情報発信を行い、提携の実行段階に入ります。
資本業務提携契約書の主な記載項目は次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
資本業務提携契約書の中核を成す内容が「目的条項」です。この条項では、提携の背景や両社の協業によって目指す社会的・経済的意義を明確に記載します。
目的を明文化することで、今後の協議において解釈の相違が生じた際にも、判断の基準となる指針を示せます。また、提携内容が複雑化した場合にも、原点である目的条項に立ち返って調整を行えるため、信頼関係の維持にも寄与します。
契約の方向性を決める重要な条項であり、抽象的すぎず、具体的なゴールと提携の意義を丁寧に記述する必要があります。
資本業務提携を実行するタイミングも、契約書上で明確に定めることも大切です。開始時期が不明確であると、スケジュールの遅延や準備不足によって提携効果の発揮が妨げられる恐れがあります。
例えば、「本契約締結後30日以内に提携を開始する」など、具体的な実行時期を定めておくことが重要です。
また、相手方の社内決裁や株主総会の承認が必要な場合、そのスケジュールとの整合性も考慮しておく必要があります。
資本業務提携においては、両社が担う具体的な業務とその責任分担を明確にすることが極めて重要です。業務内容の範囲や、どちらがどの業務を担うのかを契約書に詳細に記載することで、提携後の混乱や責任の押し付け合いを防げます。
例えば、製品開発は自社、販売は提携先が担当するといった役割分担や、トラブル発生時の対応責任の所在についても、あらかじめ取り決めておく必要があります。
資本業務提携を実行するまでのスケジュールを明記しておくことで、各関係者の行動計画を明確にし、提携準備を円滑に進められます。
特に重要なのは、株主総会の承認時期や契約締結日などの具体的な日付や期限です。例えば、「202X年X月までに契約締結」「同年X月に株主承認取得予定」といった形で記載します。これにより、不要な遅延や情報伝達の混乱を避けることができます。
曖昧な日程設定は、トラブルの温床となり得るため、注意が必要です。
資本業務提携に伴って共同で開発される成果物や発生する知的財産権について、帰属先を契約上明記することは不可欠です。どちらの企業に権利が帰属するのか、または共同所有とするのかなど、あらかじめ明確に定めておかないと、後日、知的財産の取り扱いを巡って紛争が発生する恐れがあります。
特にAIやソフトウエアなどの技術分野では、成果物の経済的価値が高いため、帰属の判断が企業の利益に直結します。また、第三者へのライセンス提供の可否や範囲についても取り決めておくことで、提携後も円滑に活用できます。
資本業務提携では、両社が業務遂行のために機密情報の共有が重要です。そのため、秘密保持義務に関する条項は契約書に欠かせない要素です。提携関係にあるからといって、全ての情報の取り扱いが自由になるわけではありません。
秘密保持条項では、情報の範囲、管理方法、利用目的の限定、第三者開示の禁止などを明記します。また、契約終了後も一定期間、秘密保持義務が継続する旨を定めることが一般的です。
提携から生じる収益の分配方法や、必要となる費用の負担割合についても契約書で明記しておくことが望ましいです。例えば、「売り上げの50%を各社で折半する」「システム開発費はA社が全額負担」といった形で具体的に記載します。
この記載が不明確だと、提携開始後に利益配分や費用負担をめぐる紛争が生じる恐れがあります。特に、想定以上のコストが発生した場合や、収益が当初見込みよりも大きく変動した場合には、曖昧な取り決めがトラブルを引き起こす要因となりかねません。
提携先企業が第三者に買収されるなどして経営支配権が変わる可能性も考慮し、その際の対応方針を契約書に明記しておくことが重要です。
例えば、「相手企業に支配権の変更が生じた場合、直ちに契約を解除できる」といった条項を盛り込むことで、提携先が競合企業の傘下に入った場合でも、企業秘密や事業計画が漏れるリスクを最小限に抑えることができます。
資本業務提携契約における有効期間を明記することで、提携の終了時期や更新の要否を明確にできます。契約期間を定めないと、提携の継続可否を巡って意見が対立する可能性があります。
例えば、「契約期間は3年間とし、双方の合意により更新可能」などと記載することで、関係の見直しや再評価の機会を確保できます。
また、契約終了後に継続すべき義務(秘密保持や知的財産の取り扱い)についても、明文化しておくことが必要です。
資本業務提携においても、実務上は「親会社と下請会社」の構造に類似する取引関係が発生する場合があります。このような場合、下請代金支払遅延等防止法(いわゆる「下請法」)が適用される可能性があるため、契約書の条文が法令に抵触しないよう注意が必要です。
契約当事者は、自社の取引形態が下請法の対象かどうかを事前に確認し、必要に応じて弁護士や専門家の助言を得ながら契約内容を整えることが推奨されます。
国内における資本業務提携の実例を紹介します。提携によって成果を上げた成功事例に加え、期待どおりの効果が得られず不調に終わったケースも紹介します。
2025年1月、noteはGoogleと資本業務提携契約を締結し、第三者割当増資によりGoogleに対し約6.01%の株式を発行しました。この提携は、noteが展開するクリエイタープラットフォームにおいて、生成AIの共同開発を推進することを目的としています。
noteは従来からAIを活用したレコメンドや監視機能を導入しており、Googleとの連携によりAIによる文章生成や編集支援機能の高度化を図ります。
一方、Googleはnoteが有する大規模なクリエイター基盤と連携することで、日本のクリエイターエコノミー分野での存在感強化を目指しています。
2024年11月、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)は楽天カードとの資本業務提携を発表しました。本提携により、みずほFGは楽天グループから楽天カードの普通株式14.99%を取得し、フィンテック分野における連携を強化します。
楽天カードは、クレジットカードやカードローン事業を手がける楽天グループの中核企業であり、今回の提携を通じて、みずほ銀行をはじめとするグループの金融サービスとのシナジー創出が期待されています。今後は、ポイントサービスや決済インフラなど幅広い領域で協業を深める方針です。
2024年10月、京成電鉄とイオンは資本業務提携契約を締結しました。イオンは京成電鉄に自己株式約395万4000株(約150億円相当)を第三者割当により割り当て、イオンも同額程度の京成電鉄株式を市場等で取得する計画です。
この提携は、千葉県を中心とした地域において、両社のアセットとノウハウを生かして地域活性化を図ることを目的としています。具体的には、商業施設や駅ナカの共同開発、施設価値の向上、小売・交通・金融事業での連携を予定しています。
2024年6月、オリオンビールと近鉄グループホールディングスは資本業務提携に合意し、沖縄における観光・ホテル事業などで連携を進めることを発表しました。
オリオンビールは、地域密着型のビールメーカーとして観光・ホテル事業にも注力しており、近鉄グループは1974年から40年以上にわたって沖縄でのホテル経営に携わってきた実績を持ちます。
今回の提携により、オリオンビールが所有する不動産の有効活用やホテル運営支援、観光や小売分野での協業を推進し、双方の事業基盤とノウハウを生かして地域貢献と企業価値の向上を図ることが期待されます。近鉄グループにとっても、沖縄を重要な成長拠点と位置付けた中での新たな展開へとつながる取り組みといえるでしょう。
2020年3月、NTTとトヨタ自動車は、スマートシティ事業における資本業務提携を締結しました。両社は相互に約2,000億円相当の株式を取得し合い、長期的かつ継続的な協業体制を築いています。
この提携の背景には、両社がコネクティッドカー分野で既に協業実績を有していたことがあり、今回の資本関係の強化により、協業範囲を都市開発全体に拡大しました。
具体的には、静岡県裾野市の「Woven City」や東京・品川駅前街区を起点としたスマートシティの共同開発を進めています。ICT・通信基盤に強みを持つNTTと、モビリティ・都市開発分野で実績のあるトヨタが連携することで、国内外での次世代都市モデルの構築が期待されています。
2019年12月13日、KDDI株式会社は三菱商事株式会社から、共通ポイント事業を展開する株式会社ロイヤリティ マーケティング(LM社)の発行済株式の20%を取得し、LM社との間で資本業務提携を締結しました。
この連携の目的は、KDDIの「au WALLETポイント」とLM社の「Ponta」を統合し、1億人規模のポイント会員基盤を構築することにありました。当時、楽天やTポイントが先行する中で、両社の顧客基盤を連携させることにより、競争力強化を図りました。
2020年5月にはポイントの統合が実施され、au経済圏との融合によってPonta加盟店の拡大、新規会員獲得の加速、au PAY利用率の上昇など、双方に成果が表れています。
2002年、西友とウォルマートは資本業務提携を締結し、ウォルマートは段階的に出資を進めました。2008年には西友を完全子会社化し、アメリカで成功した低価格戦略を日本市場に展開しました。
しかし、日本では既に価格競争が激化していた上、人口減少などの構造的な課題も重なり、ウォルマートの戦略は十分に機能しませんでした。業績改善が進まない中、2020年には西友株の85%を楽天(20%)と米投資ファンドのKKR(65%)に売却しました。
総投資額約2,500億円に対し、売却時の評価額は約1,725億円とされ、結果として大幅な減損が発生しました。なお、ウォルマートは15%の株式を引き続き保有し、提携関係を維持しています。
最後に、資本業務提携に関するよくある質問とその回答を紹介します。
資本業務提携と資本参加は混同されがちですが、その性質は異なります。
資本参加は、一方の企業が他方の企業に出資し、関係を強化することを目的とする行為であり、必ずしも業務面での連携を伴うわけではありません。
これに対し、資本業務提携は、出資とともに具体的な業務連携(商品開発、顧客基盤の共有など)を行うことを目的としており、戦略的な協業の色合いが強いものです。
将来的には、資本参加から業務提携や経営統合に発展するケースもありますが、両者は出発点と目的が明確に異なる制度です。
業務委託とは、企業が他社に特定業務を外部委託し、対価として報酬を支払う契約形態です。発注者と受託者という主従関係に基づいており、業務の遂行責任は受託者側にあります。
これに対して業務提携は、複数の企業が対等な立場で協力し合う関係です。共同開発や販路共有などを通じて、相互の強みを生かすことが目的とされます。
M&Aや経営課題に関するお悩みはM&Aロイヤルアドバイザリーへご相談ください。
CONTACT
当社は完全成功報酬ですので、
ご相談は無料です。
M&Aが最善の選択である場合のみ
ご提案させていただきますので、
お気軽にご連絡ください。