CAとは?M&Aにおける意味や目的、NDAとの違いも解説

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CAとは何か、ご存じでしょうか?
M&Aの交渉現場では、企業の財務情報、顧客データ、従業員情報など、第三者に知られてはならない機密情報が数多く取り扱われます。これらの情報を相手方に安心して提供し、かつ不正使用や漏えいを防ぐために不可欠な契約がCA(秘密保持契約)です。CAとは、情報を開示する側・される側の信頼関係を築くための「信頼のバリア」と言えます。 
本記事では、CAとは何か、その基本的な定義から、NDAとの違い、主な契約内容、締結の流れ、関連する法律までを、実務目線で分かりやすく解説します。

CAとは

まず、CA(秘密保持契約)の基本的な知識について解説します。

CAとは「秘密保持契約」のこと

CAとは、日本語で「秘密保持契約」あるいは「守秘義務契約」と訳される契約を指します。特にM&A(企業の合併・買収)の交渉過程において、相手方の財務情報や経営戦略などの機密情報を第三者に漏らさないこと、また目的外に利用しないことを義務付ける契約をCAと呼びます。 
売り手と買い手の間で直接締結されるほか、M&A仲介会社を通じて取り交わされることもあります。CAを締結することで、安心して詳細な企業情報の開示が可能となり、適切な判断材料を得られます。 
なお、CAはM&Aに限らず、業務提携や共同開発、技術提供、資本提携など、企業間で機密情報をやり取りするあらゆる場面で締結される一般的な契約です。

CAの語源

CAは「Confidentiality Agreement」の略で、直訳すると「秘密の契約」という意味です。「Confidentiality」は機密性、「Agreement」は契約・合意を指す語で、契約当事者間での秘密情報の取り扱いを取り決めたものです。 
ただし、日本語での「CA」はかなり多義的で、文脈によっては航空業界の「キャビンアテンダント(Cabin Attendant)」や、IT分野での「Configuration Analyzer(構成分析ツール)」、または電子認証の「認証局(Certificate Authority)」などを指す場合もあります。

CAとNDAとの違い

CAとNDA(Non-Disclosure Agreement)は、どちらも秘密保持契約を意味し、法律的な効力や内容に違いはほとんどありません。両者の違いは主に使用される業界や慣習にあります。 
CAは主にM&A業界で主に使用される用語であり、M&A仲介会社や企業同士が情報開示の前提として交わす契約書として定着しています。一方、NDAはより汎用的に用いられ、技術提携・共同開発・業務委託など、幅広いビジネスシーンで利用されています。不動産取引やベンチャー投資においてもNDAという名称が一般的です。

秘密保持契約の種類

秘密保持契約は「片務型」と「双務型」に分類されます。

片務型

片務型の秘密保持契約とは、当事者の一方だけが秘密保持義務を負う契約構造です。例えば、ある企業が特許技術や営業情報などを一方的に開示するが、相手からは何も情報を受け取らない場合などに用いられます。 
典型的な例としては、技術提供や製品評価などの場面が挙げられます。契約上は、情報を受け取る側が秘密保持義務を負い、開示側は何らの義務を負わない構造です。 
片務型の契約方式となる場合、一方の当事者(情報を受け取る側)のみが署名・押印して相手方に提出する「差入方式」の契約形態となる場合が多いです。

双務型

双務型の秘密保持契約は、当事者の双方が秘密保持義務を負う形式であり、M&Aや共同開発、業務提携などの相互に情報を開示し合う状況に適しています。 
M&Aにおいては、売り手が自社の企業情報を開示する一方で、買い手も検討状況や投資方針といった戦略情報を開示する場面が多く、相互に守秘義務を負う必要があります。また、M&A自体が公になることで株価や従業員心理に影響を及ぼすため、交渉の事実そのものを秘密情報と位置付けられるため、双方に秘密保持義務を課す双務型契約が一般的です。 
双務型の場合、双方が署名・押印することで秘密保持契約書を成立させる「契約書方式」の契約形態が一般的です。

CAの目的

CAを締結する目的は次のとおりです。 

  • 情報漏えい対策
  • 目的外使用対策
  • 責任の所在の明確化 

それぞれについて解説します。

情報漏えい対策

CA(秘密保持契約)の最も重要な目的のひとつは、情報漏えいの防止です。 
M&Aにおいては、売り手企業が買い手企業に対して財務状況や取引先情報、人事情報などの極めて重要な非公開情報を開示する必要があります。こうした情報が意図せず外部に漏れると、取引先や従業員との信頼関係の悪化、競合企業への優位性の流出など、企業運営に大きな悪影響を及ぼします。 
CAを締結しておくことで、万一情報が漏えいした際にも、契約違反として責任追及や損害賠償請求を行う根拠を確保できるとともに、契約の存在自体が漏えいの抑止力としても機能します。

目的外使用対策

CAは、開示された秘密情報の目的外使用を防止するためにも締結されます。M&Aの検討過程で取得した情報は、あくまで譲受判断のためにのみ使用されるべきものであり、それ以外の用途、例えば営業活動への転用や第三者への提供などに使われることは許されません。 
特に技術情報、顧客名簿、人材構成などの重要情報は、M&Aが不成立となった場合でも、相手にとって有益な情報となり得るため、悪用リスクが伴います。CAにより利用目的を明確に限定しておくことで、情報の流用を禁止し、企業価値や信用を守れます。

責任の所在の明確化

CAを締結することで、秘密情報に関する管理責任と違反時の責任の所在を明確にできます。情報漏えいや目的外使用があった際、事前に契約がなければ法的に責任を問うことが難しく、損害賠償を請求できない可能性もあります。 
CAでは、違反があった場合の救済措置や損害賠償請求の可否、行為差止請求の手段、さらにどの裁判所を管轄とするかなども定められるため、万一のトラブル時にも迅速かつ適切に対応できます。

CAのメリット

CAのメリットは次のとおりです。 

  • 詳細な情報収集が可能になる
  • 情報利用の法的範囲が明確になる
  • 買い手は売り手からの信頼を得られる 

それぞれについて解説します。

詳細な情報収集が可能になる

CAを締結することで、安心して企業の内部情報を開示できます。その結果、財務状況や、人材構成、業務フロー、契約関係など、精度の高い情報を入手しやすくなります。 
こうした詳細情報を基にデューデリジェンス(財務状況などの調査)を実施することで、買い手・売り手共に正確な情報を把握でき、交渉や意思決定の精度が格段に向上します。 
特に買い手は、売り手の財務的な問題や訴訟リスク、取引先との契約リスクなどを把握することで、買収後のトラブル発生を防ぎ、買収リスクを抑えられます。また、統合プロセス(PMI)もスムーズになります。

情報利用の法的範囲が明確になる

CAには、開示された情報の使用目的や範囲が具体的に明記されているため、買い手・売り手共にその情報をどこまで利用できるかが明確になります。 
これにより、社内での共有範囲や使用制限が明確化され、誤った取り扱いによる契約違反やトラブルを未然に防げます。

買い手は売り手からの信頼を得られる

CAを締結することで、買い手は売り手に対して誠実に交渉に臨む姿勢を示すことができ、信頼関係を築く第一歩となります。 
売り手が安心して情報を開示できる環境を整えることで、交渉が円滑に進み、M&Aプロセス全体の進行をスムーズにする効果もあります。

CAのデメリット・リスク

CAのデメリット・リスクは次のとおりです。 

  • 売り手側は不利な条項を見落としやすい
  • 過剰な制限条項が実務に支障をきたす恐れがある
  • 交渉不成立時の情報管理が難しくなる 

それぞれについて解説します。

売り手側は不利な条項を見落としやすい

CAは買い手が提示したひな形で進むことが多く、売り手が内容を十分に確認せず署名してしまうと、情報管理義務や責任範囲について自社に不利な条項が含まれている場合があります。 
特に、中小企業では法務の専門家が不在なケースもあり、ドラフトの内容をそのまま受け入れてしまう傾向があります。その結果、後にトラブルが発生した際に、想定していなかった責任を負うリスクが生じかねません。

過剰な制限条項が実務に支障をきたす恐れがある

CAの中には、情報の使用目的や共有範囲、利用期間などについて、過度に制限的な条項が盛り込まれていることがあります。 
弁護士・会計士・税理士といった第三者専門家への共有が禁止または事前承諾制となっている場合、迅速な助言が得られず、重要な判断に遅れが生じることがあります。

交渉不成立時の情報管理が難しくなる

CAを締結して情報を開示した後に交渉が中断・破談となった場合でも、既に提供した秘密情報が相手側に残り続けるリスクがあります。返却・破棄を求めても確実に履行されるとは限らず、情報管理の不備から、後に漏えいや不正利用される恐れがあります。 
契約条項として返却・破棄義務や報告書提出を明記するなど、万が一に備えた対応が必要です。 
また、CAによって課される秘密保持義務の期間が3年、5年、または無期限とされているケースもあります。交渉が既に終了しているにもかかわらず、義務だけが長期間残ることで、買い手側には情報管理コストや社内統制の負担が生じます。


CA締結の流れ

CAは次の流れに沿って締結されます。 

  • 秘密保持契約書のひな型作成・確認
  • 買い手・売り手双方の確認・合意
  • 契約書への署名・記名の押印 

それぞれ順番に解説します。

秘密保持契約書のひな型作成・確認

CAの締結にあたって、まず行うべきは秘密保持契約書のひな型の作成です。 
一般的には、情報を開示する側(売り手または仲介会社)がひな型を用意しますが、どちらの当事者が作成しても問題はありません。ただし、ひな型を作成した側に有利な内容になっていることが多いため、提示された文面は必ず相手方も精査する必要があります。 
契約書には、秘密情報の定義や使用目的、開示範囲、返還義務など、実務上重要な条項が含まれるため、契約リスクを最小化する観点からも、専門家によるリーガルチェックを受けることが望ましいです。

買い手・売り手双方の確認・合意

ひな型が完成したら、当事者双方で契約内容を確認し合意形成を行います。 
この段階では、自社にとって不利益な条項や過度に拘束力の強い内容(例えば秘密保持期間が不当に長い、第三者共有への制限が過剰など)が含まれていないかを慎重に確認する必要があります。自社での確認に加え、専門家にチェックを依頼することで、将来的な紛争リスクを低減できます。 
内容に合意したら、署名準備として契約書原本を当事者数分(通常は2通)用意しておきましょう。

契約書への署名・記名の押印

契約内容に双方が合意したら、最終ステップとして契約書に署名・記名押印を行います。 
署名は原則として各法人の代表者が行い、原本は2通(各当事者が1通ずつ保管)作成します。押印は実印が推奨されますが、認印でも法的には有効です。文書の信頼性を高めるため、契約書が複数ページにわたる場合は「契印」、2通間の関係性を示すためには「割印」を押す方法が一般的です。 
紙の契約に代わって電子契約を用いるケースも増えていますが、その場合でも法的効力を確認し、事前に相手方と方法を調整しておくことが望まれます。締結後は適切に保管し、必要時に速やかに参照できる体制を整えておきましょう。

CAに記載する主な内容・ポイント

M&Aにおいて交わされるCAに記載する主な内容やポイントは次のとおりです。 

  • 秘密情報の定義
  • 秘密情報の開示可能な範囲の設定
  • 秘密情報の利用目的の制限(目的外使用の禁止)
  • 利用終了時の秘密情報の取り扱いの設定
  • 秘密保持義務違反の場合の制裁・救済措置の設定
  • 有効期間・存続条件の設定
  • 準拠法および管轄裁判所の設定 

それぞれについて解説します。なお、実務における契約前には、内容について専門家の助言を強く推奨します。

秘密情報の定義

秘密情報の定義は、CAにおいて最も重要な項目のひとつです。定義が曖昧だと、後に「この情報は秘密ではなかった」としてトラブルになる可能性があります。 
一般的には、文書・口頭・電子データなど形式を問わず、M&Aの過程で開示された情報全てを秘密情報と定義します。ただし、既に公知の情報、受領者が独自に保有していた情報、または第三者から正当な手段で取得した情報などは「除外事項」として、秘密情報から外すことが通例です。 
また、表示と伝達方法に関する取り決めを設けることも推奨されます。通常は書面による開示を原則としますが、口頭・映像・データファイルなどの形態で開示される情報も実務上は多いです。「開示後〇〇日以内に書面で秘密である旨を通知した場合に限り秘密情報とする」といった規定を設けることで、口頭説明などの曖昧さを補えます。

秘密情報の開示可能な範囲の設定

秘密情報は原則としてM&A検討のために必要な範囲内の関係者のみに開示されます。その範囲はCAで明確に規定する必要があり、典型的には経営陣・財務担当者・FA(フィナンシャルアドバイザー)・弁護士・会計士などが対象です。 
開示先が広すぎると情報漏えいリスクが高まるため、Need-to-Know(知る必要のある者のみ)という原則に従い、必要最小限の関係者に限定されます。また、開示を受けた関係者が退職や職務変更などにより対象外となった場合の管理体制についても取り決めておくことが望まれます。

秘密情報の利用目的の制限(目的外使用の禁止)

CAでは、開示された情報をどの目的で使用できるかを明確に定め、目的外の使用を禁止します。目的を明確に記載しないと、情報の誤用やトラブルの原因になります。 
M&Aの場合、目的は「買収の検討」「デューデリジェンスの実施」などに限定され、それ以外の事業活動や第三者への提供、競業目的での利用は禁止されます。 
また、これに合わせて秘密情報の複製・記録の制限をかけておくことが多いです。特に近年は、情報の電子化・クラウド化が進んでおり、データの無断コピーや持ち出しが容易になっているため、複製行為の制限は実務上とても重要です。

利用終了時の秘密情報の取り扱いの設定

M&Aが中断・破談となった場合や、取引が完了した後の情報の取り扱いもCAで定めておく必要があります。通常は「秘密情報は返還または破棄する」ことを明記し、返還期限や破棄方法も記述します。 
また、破棄したことを証明する書面の提出を求める場合もあります。デジタルデータであれば「完全削除」や「上書き消去」が求められることもあります。これらの規定がなければ、取引終了後も情報が手元に残り続け、漏えいや不正使用のリスクが継続してしまいます。

秘密保持義務違反の場合の制裁措置の設定

秘密保持義務違反が発生した場合の対応についても明確に定めておく必要があります。主に「損害賠償請求」および「行為差止請求(開示や使用の差止)」が基本的な措置です。 
損害賠償については、直接損害だけでなく間接損害や逸失利益も含むかどうかが重要なポイントです。また、損害額の算定が困難なケースに備えて、違約金条項を盛り込むこともあります。 
なお、秘密情報が漏えいした際の初期対応(通報・調査・復旧)に関する義務も併せて定められる場合があります。

有効期間・存続条件の設定

CAには秘密保持義務の有効期間を定めます。期間は「契約締結日から〇〇年間」「取引終了後〇〇年間」などとされ、通常は1年〜5年の範囲で設定されます。 
ただし、情報の性質によっては「契約終了後も一部条項は存続する」といった存続条項が盛り込まれることもあります。 
期間設定が曖昧な場合、情報の管理義務が過剰に継続したり、逆に早期に無効となることで漏えいリスクが高まったりするため、慎重な設計が求められます。

準拠法および管轄裁判所の設定

CAに関する紛争が生じた場合に適用される法律や、裁判を行う裁判所(管轄裁判所)も契約書で明記されます。通常、「本契約は日本法に準拠する」「東京地方裁判所を専属的合意管轄とする」などと記載します。 
準拠法が異なると、契約解釈や裁判での主張が複雑化するため、国際案件を除き日本法での統一が実務上の原則です。また、相手が遠方の場合、自社から遠い裁判所を指定されると訴訟コストが高くなる可能性があります。

CAのひな型

CA(秘密保持契約)のひな型を紹介します。ただし、あくまでも参考例であり、実際の契約内容は状況や取引によって異なる場合があります。実務で使用する際は、必ず弁護士など専門家の助言を得ながら作成・確認することを強く推奨します。 


〇〇株式会社(以下「甲」という。)と〇〇株式会社(以下「乙」という。)とは、〇〇(契約目的)について検討するにあたり(以下「本取引」という。)、甲又は乙が相手方に開示する秘密情報の取り扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。 
第1条(秘密情報)
1.本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。ただし、開示を受けた当事者が書面によってその根拠を立証できる場合に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。
1.1.開示を受けたときに既に保有していた情報
1.2.開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
1.3.開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
1.4.開示を受けたときに既に公知であった情報
1.5.開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報

2.前項本文の情報のうち、甲が乙に秘密である旨を指定して開示する情報は別紙1を、また乙が甲に秘密である旨を指定して開示する情報は別紙2を含むものとする。なお、別紙1及び別紙2は甲と乙とが協力し、常に最新の状態を保つべく適切に更新するものとする。
3.甲又は乙が口頭により相手方から開示を受けた情報については、改めて相手方から当該事項について記載した書面の交付を受けた場合に限り、相手方に対し本規程に定める義務を負うものとする。
4.口頭、映像その他その性質上秘密である旨の表示が困難な形態又は媒体により開示、提供された情報については、開示者が相手方に対し、秘密である旨を開示時に伝達し、かつ、当該開示後〇〇日以内に当該秘密情報を記載した書面を秘密である旨の表示をして交付することにより、秘密情報とみなされるものとする。 

第2条(秘密情報等の取扱い)
1.甲又は乙は、相手方から開示を受けた秘密情報及び秘密情報を含む記録媒体若しくは物件(複写物及び複製物を含む。以下「秘密情報等」という。)の取扱いについて、次の各号に定める事項を遵守するものとする。
1.1.情報取扱管理者を定め、相手方から開示された秘密情報等を、善良なる管理者としての注意義務をもって厳重に保管、管理する。
1.2.秘密情報等は、本取引の目的以外には使用しないものとする。
1.3.秘密情報等を複製する場合には、本取引の目的の範囲内に限って行うものとし、その複製物は、原本と同等の保管、管理をする。また、複製物を作成した場合には、複製の時期、複製された記録媒体又は物件の名称を別紙のとおり記録し、相手方の求めに応じて、当該記録を開示する。
1.4.漏えい、紛失、盗難、盗用等の事態が発生し、又はその恐れがあることを知った場合は、直ちにその旨を相手方に書面をもって通知する。
1.5.秘密情報の管理について、取扱責任者を定め、書面をもって取扱責任者の氏名及び連絡先を相手方に通知する。
 2.甲又は乙は、次項に定める場合を除き、秘密情報等を第三者に開示する場合には、書面により相手方の事前承諾を得なければならない。この場合、甲又は乙は、当該第三者との間で本契約書と同等の義務を負わせ、これを遵守させる義務を負うものとする。
3.甲又は乙は、法令に基づき秘密情報等の開示が義務付けられた場合には、事前に相手方に通知し、開示につき可能な限り相手方の指示に従うものとする。 

第3条(返還義務等)
1.本契約に基づき相手方から開示を受けた秘密情報を含む記録媒体、物件及びその複製物(以下「記録媒体等」という。)は、不要となった場合又は相手方の請求がある場合には、直ちに相手方に返還するものとする。
2.前項に定める場合において、秘密情報が自己の記録媒体等に含まれているときは、当該秘密情報を消去するとともに、消去した旨(自己の記録媒体等に秘密情報が含まれていないときは、その旨)を相手方に書面にて報告するものとする。 

第4条(損害賠償等)
甲若しくは乙、甲若しくは乙の従業員若しくは元従業員又は第二条第二項の第三者が相手
方の秘密情報等を開示するなど本契約の条項に違反した場合には、甲又は乙は、相手方が必
要と認める措置を直ちに講ずるとともに、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。 

第5条(有効期限)
本契約の有効期限は、本契約の締結日から起算し、満〇〇年間とする。期間満了後の〇〇カ月前までに甲又は乙のいずれからも相手方に対する書面の通知がなければ、本契約は同一条件でさらに〇〇年間継続するものとし、以後も同様とする。 

第6条(協議事項)
本契約に定めのない事項について又は本契約に疑義が生じた場合は、協議の上解決する。 

第7条(管轄)
本契約に関する紛争については〇〇地方(簡易)裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。
本契約締結の証として、本書を二通作成し、両者署名又は記名押印の上、各自一通を保有す
る。 
出典:秘密保護情報のハンドブック~企業価値向上に向けて~(経済産業省)

CAに関連する法律

M&AにおけるCAに関連する法律には、次の法律があります。 

  • 個人情報保護法
  • 不正競争防止法
  • 特許法 

それぞれについて解説します。

個人情報保護法

個人情報保護法は、企業や組織が個人情報を適切に取り扱い、個人の権利利益を保護するために制定された法律です。 
M&AにおけるCAでは、買い手企業が売り手企業から従業員名簿、顧客リスト、給与情報などの個人情報を受け取るケースがあります。これらは個人情報保護法の対象に当たり、本人の同意なしに第三者へ提供するには厳格な条件が必要です。 
秘密保持契約では、これらの情報を適切に管理し、目的外で利用しないことを定められます。

不正競争防止法

不正競争防止法は、公正な競争を確保し、事業者間の営業秘密を保護することを目的とする法律です。 
この法律における「営業秘密」とは、①秘密として管理されていること、②事業活動に有用な情報であること、③公然と知られていないこと、の三つの要件を満たす情報を指します。 
秘密保持契約を結ぶことで秘密情報の管理体制が契約上明確になり、法的保護を受けやすくなります。営業秘密の不正取得や漏えいがあった場合、不正競争防止法に基づき、損害賠償や差止請求などの民事救済、さらには刑事罰が科される可能性もあります。

特許法

特許法は、売り手側が未出願の特許発明や技術資料を保有している場合に重要です。 
同法では、発明が出願前に第三者に知られた場合、原則として「新規性」を失い、特許として認められなくなります。つまり、発明内容を買い手に開示した時点で、それが「公知」と見なされれば、特許権の取得が不可能になる恐れがあります。 
ただし、秘密保持契約(CA)を締結していた場合は、開示された情報が秘密として扱われていたと認められ、特許法第30条に基づく「新規性喪失の例外」が適用される可能性があります。 
そのため、技術情報を含むM&Aでは、出願前の開示リスクに備え、CAにより守秘義務を明確にしておく必要があります。

CAの相談先

M&Aの手続きを進める際、CAなどの契約締結が求められます。その際は次の専門家に相談することが望まれます。 

  • 法律顧問(弁護士)
  • M&A仲介会社
  • ファイナンシャルアドバイザー(FA)
  • 司法書士・行政書士

法律顧問(弁護士)

CAの文言や構成、条項のリスクを法的な観点から検証・修正するには、法律顧問や弁護士への相談が不可欠です。特に、「秘密情報の範囲が曖昧ではないか」「目的外使用の定義が広すぎないか」「損害賠償条項が過剰でないか」など、トラブル予防のための条項チェックは重要です。 
また、交渉力の差によって相手方が作成したCAに不利な条件が盛り込まれているケースもあるため、弁護士によるリーガルチェックが有効です。万一、CA違反が発生した際にも、弁護士の助言や対応が求められます。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、売り手と買い手の間に立って交渉を仲介する役割を担うプロフェッショナルであり、CAの作成・締結に関するサポートも行います。 
多くの仲介会社では、あらかじめCAのひな型を用意しており、各案件の状況に応じて調整した上で両当事者に提示可能です。特に中小企業M&Aでは、法務リソースが限られていることも多いため、仲介会社による契約のたたき台提供と調整支援は実務的に大きな助けとなります。

ファイナンシャルアドバイザー(FA)

ファイナンシャルアドバイザー(FA)は、M&A全体の戦略立案や交渉支援を行う専門家であり、CA締結時には、取引の進行状況に応じた適切な締結タイミングや、情報開示の範囲・段階について実務的な助言を提供します。また、情報管理体制の整備や開示対象者の範囲を明確にするためのサポートも行います。
ただし、FAは法的な専門家ではないため、CAの文言や条項の法的妥当性については弁護士の助言が不可欠です。FAと弁護士が連携することで、実務面と法的観点の両面からリスクを効果的に最小限に抑えることが可能です。

司法書士・行政書士

中小企業のM&Aでは、契約書の文案作成や文書整備を行政書士に依頼するケースがあります。行政書士は、CAのひな型調整や文案作成をサポートできますが、法的リスクの検証や条項の解釈は業務範囲外のため、弁護士の助言が必要です。
一方、司法書士は主に株式譲渡や会社変更登記など、取引後の登記関連業務を担当します。契約内容に関する助言は行えないため、重要な法的判断が求められる場面では弁護士との連携が不可欠です。

CAに関するQ&A

最後に、CAに関するよくある質問とその回答を紹介します。

Q.機密保持契約との違いは

A.「秘密保持契約(CA)」と「機密保持契約」は基本的に同義であり、法的な違いはありません。どちらも情報の漏えいや無断使用を防ぐための契約です。
ただし、実務上は「機密保持契約」という表現が、研究開発や技術提供など厳格な秘密管理が求められる場面で使われることが多い一方、「秘密保持契約」はM&Aや取引交渉など幅広い業務分野で使用される傾向があります。契約内容の明確化が重要であり、名称よりも具体的な条項が重視されます。

Q.CAは電子契約で締結できるか

A.CAは電子契約で締結可能です。スピーディかつ効率的な契約管理手段として、近年多くのM&A現場で導入が進んでいます。クラウド型の電子契約サービス(例:クラウドサイン、DocuSignなど)を利用することで、紙での契約に代わり、オンライン上で署名・締結を完結させられます。 
電子契約も法的に有効であり、押印・署名と同等の効力を持ちます。ただし、相手方が電子契約に対応していない場合や、実印での押印を求める企業もあるため、事前の確認が必要です。

Q.CA違反をするとどうなるか

A.CAに違反した場合、M&Aの交渉が決裂することはもちろん、損害賠償請求や差止請求などの法的措置を受ける可能性があります。また、不正競争防止法や個人情報保護法に違反している場合、刑事罰や行政指導の対象となることもあり得ます。 
例えば、秘密情報を第三者に漏えいしたり、目的外に使用したりすると、契約違反として民事責任を問われます。特にM&Aにおいては、情報漏えいが株価の変動や信用失墜につながる恐れがあるため、損害額が高額化するリスクもあります。

Q.M&AではCA以外にどんな契約を締結するか

A.M&Aにおいては、CA以外にも複数の契約書を段階的に締結します。代表的なものに「基本合意書(LOI:Letter of Intent)」があります。これは、譲渡価格の目安やスケジュール、独占交渉権の有無など、今後の交渉の枠組みを定めた文書です。 
その後の流れは、買い手によるデューデリジェンスを経て、「最終契約書(株式譲渡契約書・事業譲渡契約書など)」を締結します。M&Aでは、交渉が進むにつれて内容の精緻な契約が追加されていきます。 
なお、必要に応じて「表明保証契約」「雇用契約の承継書類」なども交わされる場合があります。

Q.海外企業とのM&AにおけるCAの注意点

A.海外企業とのM&Aでは、言語や法制度の違いから、CAの締結時に「準拠法」と「裁判管轄」を明記することが重要です。日本企業の場合、トラブル時の対応を考慮し、日本法準拠や東京地方裁判所管轄を設定することが一般的ですが、相手企業との合意が必要です。
また、契約書は英語と日本語の両方で作成し、どちらを正文とするかを明示する必要があります。翻訳の正確性にも注意が必要です。
さらに、海外では法制度や慣習が異なるため、現地の弁護士や専門家によるレビューを受けることで、リスクを最小限に抑えることが推奨されます。

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CAはM&Aをはじめ、業務提携や共同開発、技術提供、資本提携など、企業間で機密情報をやり取りするあらゆる場面で締結される大事な契約です。自社の機密情報をしっかり守り、安心してビジネスを展開するために、ぜひCAの締結をご検討ください。

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