2021年~2022年度の設備工事業界の実際のM&A事例を紹介いたします。
【同業種間のM&A事例】
■2023年1月に北恵が古賀文化瓦工業所を買収
譲渡企業 |
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古賀文化瓦工業所 |
福岡県 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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北恵 |
大阪府 |
東証スタンダード |
その他販売・卸業界 |
北恵は2012年4月3日、屋根・壁・建築の専門企業である古賀文化瓦工業所(福岡市)を買収しました。代表取締役の古賀義信氏ら2人が保有する全株式を譲渡します。同社は、1954年創業で、年間売上高3億2百万円、北部九州の瓦・屋根のニッチ分野で豊富な経験を有しています。その施工力を生かし、地元での販売・宣伝活動を強化することを目的としています。
■2022年11月に北陸電気工事が蒲原設備工事を買収
譲渡企業 |
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蒲原設備工事 |
東京都 |
未上場 |
その他小売業界 |
譲受企業 |
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北陸電気工事 |
富山県 |
東証プライム |
建設業界 |
北陸電気工業は、蒲原設備工業(本社:新潟県燕市)を12月1日付で買収しました。蒲原設備工業は1969年に設立され、売上高は4億2,100万円。配管工事を中心に、土木工事や消防設備工事なども手掛け、北陸や関東地方で商圏拡大を見込んでいます。
■2022年9月にJESCOホールディングスが阿久澤電機を買収
譲渡企業 |
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阿久澤電機 |
群馬県 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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JESCOホールディングス |
東京都 |
東証スタンダード |
建設業界 |
JESCOホールディングスは、1948年創業の電気・通信工事会社、阿久澤電機(群馬県高崎市)の阿久澤茂会長ら5人から9月28日付で全株式を取得しました。阿久澤電機は、売上高4億7700万円で、自治体や上場企業からさまざまな仕事を請け負っている。高崎市から直接受託している不法投棄防止の監視カメラの賃貸借業に強みとしています。JESCOHDは、同社を買収することで、群馬県およびその近隣地域において、製品・サービスのプロモーションを構築していく予定です。
■2022年7月に能美防災が坂本電設を買収
譲渡企業 |
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坂本電設 |
北海道 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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能美防災 |
東京都 |
東証プライム |
建設業界 |
2012年7月4日、能美防災は、1972年創業の電気機器メーカーである坂本電設(札幌市)の全株式を取得しました。同社は札幌市を中心に長く営業しており、年商は2億9,000万円でした。能美防災は強電・防災の連携を強化します。
■2022年4月にオリックスがHEXEL Worksを買収
譲渡企業 |
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HEXEL Works |
東京都 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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オリックス |
東京都 |
東証プライム |
その他金融業界 |
オリックスは、マンション総合電機メーカーであるヘクセルワークス(東京)の全株式を、創業家、同業者などの出資により、6月末までに約400億円で取得しました。長江洋一社長は再出資し、オリックスは出資比率を高めていきます。ヘクセルワークスは1950年に設立され、売上高約390億円、従業員数865名、集合住宅や米軍基地の建設に実績があります。オリックスとは、協業して事業を拡大するなど、密接な関係にあります。
■2022年1月にミライト・ホールディングスが西武建設を買収
譲渡企業 |
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西武建設 |
東京都 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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ミライト・ホールディングス |
東京都 |
東証1部 |
建設業界 |
ミライト・ホールディングスは、西武ホールディングスの孫会社の西武建設(東京)を3月31日付で 買収、同じく子会社の西武鉄道(同)から95%の株式を取得しました。西武鉄道と西武建設は1941年に設立され、両社の売上高は686億4500万円です。相談・設計から施工・管理まで一貫して行う「みらい・ドメイン」の成長を加速させることを目的としています。
■2021年12月に四電工がベルテックを買収
譲渡企業 |
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ベルテック |
岡山県 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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四電工 |
香川県 |
東証1部 |
建設業界 |
四電工は、12月16日に電気設備設計・施工のベルテック(岡山市)を買収しました。ベルテックは1994年の設立以来、岡山県を中心にサービス付き高齢者向け住宅や教育施設、マンションなどの電気設備工事を手掛け、過去3期平均で11億円の売上高を計上しています。このたび、岡山・香川地区で営業・施工の連携を図り、効率化と施工力の向上を目指します。
■2021年8月に九電工が中央理化工業を買収
譲渡企業 |
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中央理化工業 |
東京都 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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九電工 |
福岡県 |
東証1部 |
建設業界 |
九電工は、9月22日、消防用設備工事業を営む中央理化工業(東京都)を買収しました。中央理化工業は1948年に設立され、関東地方を中心に全国に展開しています。九電工グループの持つ販路、ノウハウ、技術力と、中央理化工業グループの持つ顧客との関係、販売力、技術力を組み合わせることで、事業の拡大が期待されます。
■2021年2月にアウトソーシングテクノロジーがアイテックを買収
譲渡企業 |
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アイテック |
千葉県 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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アウトソーシングテクノロジー |
東京都 |
未上場 |
サービス業界 |
アウトソーシングの子会社であるアウトソーシングテクノロジーは、2011年2月1日、千葉県野田市にある移動体通信事業と電気工事事業を主な事業とするアイテックを買収、全株式を取得しました。2011年に設立されたアイテックは、携帯電話通信の基地局建設や、ホローポールトラックを用いたマスト設置に多くの実績を持っています。アウトソーシングテクノロジーグループの技術力・指導力を結集し、企業としての成功を目指すとともに、サービスの幅を広げていきます。
■2021年1月にエクシオテックが大国屋電機工業を買収
譲渡企業 |
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大国屋電機工業 |
東京都 |
未上場 |
建設業界 |
譲受企業 |
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エクシオテック |
東京都 |
未上場 |
建設業界 |
協和エクシオは、完全子会社で東京を中心に通信機器の設置・保守を手がけるエクステックを通じ、首都高速道路の電気設備工事会社である大黒屋電気工業を買収、全株式を取得しました。同社は、官公庁、一般の電気設備工事を中心に元請けとしての施工実績を有しており、エクシオテックの通信インフラ事業での電気通信工事と大国屋電機工業の電気設備工事の施工技術力を融合させ、人材やノウハウの共有、リソースの最適化し高速道路事業を拡大します。
目次
設備工事業界とは?
設備工事業界は、電気・ガス・上下水道・空調・通信・消火などの建物に付随する設備をつくる業界です。建物で人が安全かつ快適に過ごすためには、上記にあげたようなさまざまなインフラの整備が必要です。
建設業界のゼネコンの下請にあたるサブコンと呼ばれることもあり、電気設備工事会社、空調設備工事会社、通信設備工事会社などがあります。設備工にはそれぞれの専門分野があり、上記の他にも衛生設備工事、防災設備工事など専門性が細かく別れています。
ほとんどが中小企業であり、価格競争が激しく行われている業界です。東京五輪が終わったこともあり、どの企業も新規受注をしようと競争は激化しています。
設備工事業界の市場規模
東日本大震災からの復旧工事や、東京オリンピックに関わる施設の新設などによって近年のニーズは非常に高かったです。
業界全体の総売上高は、約39兆円と大規模です(リンクモンスター株式会社 業界レポート設備工事業2022.01)。また、業界内での割合が2位の電気工事では、令和元年度まで受注高を伸ばして、一時的ですが3兆円を超えました(日本電設工業協会-電気工事受注調査(5年統計))。
老朽化したビルや施設のインフラ整備、賃貸物件のリノベーションも近年では増加してきており、ニーズは今後も増していく業界と予想できます。高度経済成長期にあたる1960年代以降から、公共住宅や学校など多くの施設インフラが一気に整備されました。そして現在、その年代の建物の老朽化がみえはじめています。
設備工事業界の特徴
ここからは設備工事業界の主な特徴である下記4つを紹介します。
- 政府や地方自治体の影響を受けやすい
- 仕事の受注は3パターン
- 多重下請構造
- ゼネコンに売上が影響されやすい
業界独特のビジネスモデルもふまえて解説していきます。
政府や地方自治体の影響を受けやすい
民間企業の設備投資はもちろんありますが、政府や地方自治体も公共工事の発注者となるため、国や自治体が行う政策に売上が影響を受けやすいです。
一方で、民間企業以外の国や自治体からも投資を受けられる点は、業界としてみれば安定しているともいえるでしょう。
仕事の受注は3パターン
設備工事業者が仕事を受注するパターンは3通りあります。それぞれのパターンを下記の表にまとめます。
パターン | 解説 |
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一式請負(一括発注 | ゼネコンが工事一式を受注し、設備工事の一部をゼネコンが設備工事会社へ発注する ※「ゼネコン」の詳細は下記で解説します。 |
別途工事(分離発注) | ゼネコンを介さず、設備工事会社が工事を受注する |
コストオン | 発注者が設備工事会社へ直接交渉し費用を決定したうえで、その価格を上乗せしてゼネコンに発注を行う |
これまではゼネコンが元請となる一式請負の形が非常に多かったです。しかし最近では、リニューアル工事や設備の高機能化工事では別途工事も増えてきました。発注者が直接設備工事会社と交渉することで、よりスピーディーに施工にとりかかれます。
別途工事では設備工事会社が元請になるので、元請としての管理能力をもっておくことが重要です。
多重下請構造
最近では別途工事も増えてきたとはいえ、まだまだ受注ルートのメインは一式請負したゼネコンからの発注です。業界全体でみると半数以上は一式請負で流れてくる下請です。下位の下請になればなるほど、対価の減少や労務費のしわ寄せを受けてしまいやすくなります。
政府も下請構造の合理性は認めながらも、多重下請構造の改善に向けた取組をすすめているところです。(国土交通省-多重下請構造の改善に向けた取組についてより)
ゼネコンに売上が影響されやすい
設備工事業界の仕事の多くは、ゼネコンから仕事の発注を受けます。ゼネコンとは、General Contractor(総合建設業)の略称で、大規模工事を請け負い工事の全体指揮をとる企業です。代表例としては、鹿島建設、清水建設、竹中工務店などがあげられます。
発注者であるゼネコンの状況は常に設備工事業界に大きな影響を与えます。そのため、ひとつのゼネコンだけでなく、いくつかのゼネコンと関係づくりをして経営基盤の安定を図る企業が多いです。
設備工事業界の課題
工事の専門分野によって多少の違いはありますが、設備工事業界全体を通して共通する深刻な課題を4つ紹介します。
- 慢性的な人手不足
- 後継者問題
- 工事コストの高騰
- 長時間労働の常態化
慢性的な人手不足
設備工事業界は現在慢性的な人手不足状態です。とくに若い世代の人手不足が深刻であり、従業員の高齢化もすすんでいるため数年後には業界から多くの人材が退職することになります。そうすると、人材不足はよりいっそう深刻になるでしょう。
今後テクノロジーの進化がすすめば、その基盤を支える電気工事士などの需要は高くなると予想されますが、それとは反比例するように電気工事士として働く人材が不足していくと予想されます。現在は外国人労働者や短期契約など不安定な雇用で何とかつないでいる工事現場も少なくありません。
人材不足解消のために注目されているのが、M&AやIT化です。別企業の従業員を取り込んで人材確保をしたり、新しい技術を使って作業効率を高めて少ない人員でも工事が行えるようにすすめられたりしています。
後継者問題
「後継者問題」を経営課題にあげる中小企業は年々右肩上がりになっています。とくに、建設業界や設備工事業界が深刻な状況です。働き方の多様化や業界イメージなどが理由で若者が業界から離れており、親族内事業承継がこれまでのようにできない企業も多いです。近年では後継者不足が理由で倒産や廃業を決断する設備工事業者も増えてきています。
また、業界には個人で開業している自営業者も多くいます。このひとり親方の技術承継も課題です。設備工事業界が請け負う工事は専門技術を要するため、誰でもできるというわけではありません。職人の数が減ってくると後継者不在のため事業を継続できず、最悪の場合は廃業となるのです。
こういった後継者問題の解決を図るために近年ではM&Aで事業承継をする企業も増えてきました。
工事コストの高騰
前述したように、人手不足のため人件費は高騰しています。さらに追い打ちをかけるのが建築資材の高騰です。
現在、中国をはじめ東南アジアや中東で建築ラッシュが続いているため、建築資材の需要が世界規模で高くなってきています。そのため、これまで以上に建築資材の価格が上がり、工事そのもののコストが高騰しているのです。
長時間労働の常態化
業界全体として労働環境の整備が他業界よりも遅れており、残業や休日出勤が常態化している企業も多いです。理由としては下記のような業界独特のものがあげられます。
- 納期に間に合わせるために労働時間が伸びやすい
- 工期が長くなると人件費などの経費がかかってしまう
- 慢性的な人手不足のため、ひとりの負担が大きい
- ベテランが多い業界なので、古い文化が残っている
- 下請構造のなかだと、他の現場の応援にいくことがある
国も働き方改革を皮切りに長時間労働の是正を行っていますが、設備工事業界は他業界よりも労働環境の整備は遅れています。
設備工事業界におけるM&Aの動向
設備工事業界はM&Aが非常に活発に行われており、同業種間の合併で事業の強化・拡大をねらったものや、異業種間との合併で事業の内製化を図ったり新規参入をねらったりするものがあります。海外企業を買収して、海外進出を試みるケースも最近では少なくありません。
また、電気設備や空調設備、給排水設備などはさまざまな業種から需要があるため、売却には比較的向いている業界といえるでしょう。
業界でM&Aが増えてきた理由について、売り手側と買い手側のメリットや注意点を詳しくみていきます。
売り手のメリット
売却企業側にとってのメリットは下記3つです。
- 事業の安定と拡大
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用を守れる
事業の安定と拡大
大手企業の傘下に入れば、買収先企業の設備などの資源を活用できるようになります。買収企業から資金調達できる場合もあり、経営に難を抱えていても経営基盤を再び安定させて事業を行うことが可能です。資源だけでなく、新しいノウハウを手に入れることで事業の成長も期待できます。
また、赤字を抱えている事業だけをM&Aで売却できれば、まとまった資金が手に入るので債務の補填にあてたり、コア事業に集中投資したりといった経営戦略の選択肢を広げられます。
後継者問題の解決
M&Aで事業承継を行えば、後継者が不在の場合でも廃業を免れ、従業員の雇用も守れます。事業は継続されるので、既存顧客にも継続的にサービスの提供が可能です。
また、事業を引き継いで退職を希望するオーナーの場合、M&Aによる株式の売却益をもってそのまま退職できます
従業員の雇用を守れる
M&Aで売却を行うと、一般的には従業員の雇用も承継します。
経営悪化や後継者不在などが理由で廃業となれば、従業員は解雇になり行き場を失ってしまいます。ただでさえ従業員の高齢化がすすみ若手は少ない状況なので、転職もなかなか難しいでしょう。
ただし、事前交渉で買収先企業と従業員の雇用についての取り決めについてしっかりと話しておく必要があります。
売り手のポイント
M&Aで売却を行うにあたって、より売却益をだすためにはいくつかポイントをおさえておく必要があります。たとえば、人材が少ないといわれる若手を保有していたり、貴重な有資格者が在籍していると買い手にはより魅力的です。
また、顧客基盤を整えるために買収を行いたいケースも多いため、学校や病院、公共施設など魅力的な工事実績があるとアピールになります。
買い手のメリット
買い手企業にとって、M&Aを行うメリットは以下の3つです。
- 人材不足の解決
- 新規事業への参入がスムーズ
- 事業エリア・シェア拡大
人材不足の解決
M&Aで売却企業から人材を取り入れることは有効な手のひとつでしょう。前述したように、設備工事業界では慢性的な人手不足が続いており、「設備工に就きたい!」という若者は少ないです。肉体労働が多く労働環境も他業界と比較すると決してよいわけではなく、離職率も高いのが現状です。採用や育成などでゼロから人材を確保しようとすると時間と費用がかかってしまいます。
その点。M&Aで買収をすれば短時間で優秀人材を確保できます。とくに設備工事は専門の技術職であるため、国家資格をもつ優秀人材の確保ができれば受注の幅を広げて売上アップにもなるでしょう。
新規事業への参入がスムーズ
設備工事業を新規事業として行いたい場合、M&Aによる買収で参入障壁を一気に下げられます。買収側は売却企業の人材や顧客基盤、ノウハウなどの経営資源を引き継ぐので、準備段階を短縮でき、短時間で参入が可能です。新たに工事を行うには、該当エリアの調査や許可申請など実際の事業を動かすまでに時間がかかります。しかし、M&Aで企業が買収できれば、準備のための労力や時間をおさえられるでしょう。
人材派遣会社やビル・管理会社がサービスの拡充や工事の内製化を目的に、電気工事会社などの企業を買収するケースも増えています。
事業エリア・シェア拡大
設備工事業界の中小企業数は非常に多く、すでに飽和状態で新規参入は難しいといわれています。この飽和状態のなかでシェアを拡大していくためには、実績のある老舗企業を取り込んでしまうのも近道のひとつです。
新規エリアを開拓していきたい場合も、M&Aを実施して該当エリアの企業を買収できれば短時間で参入が可能になり、既存顧客も取り込めます。とくに設備工事業界では海外進出も増えてきており、海外企業を買収すれば新規需要を得られます。
買い手のポイント
買い手が注意しておくべきポイントはまず、買収先企業に粉飾決算がないかです。
建設業界もそうですが、設備工事業界はこれまでの会計が正確でないケースも珍しくありません。買収先企業の粉飾決算が発覚すると、今後に大きな影響が出てしまいます。たとえば、銀行から融資が受けられなかったり、大規模な案件を受けられなくなったりする可能性があります。
- 未成工事支出金の過大計上がないか
- 売上債権の回収可能性に問題がないか
などをデューデリジェンスでしっかりと確認しましょう。
また、どんな人材を確保できるかも重要なポイントです。事業承継を機に資格をもつ優秀人材が他に流れてしまうこともあります。人材を承継するためにも処遇を手厚くするなどの対策を行いましょう。