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建設業界ではM&Aの需要が高まり、積極的に実施されていますが、その背景には経営者や従業員の高齢化や若年層の人材不足が挙げられます。
M&Aは後継者不足に悩む建設業界の経営者にとって、事業の承継だけでなく、従業員の雇用を守ることもできるため、一つの選択肢として注目されています。また、事業承継問題の解決だけでなく、業界内での競争に備えるため、更なる成長・発展という前向きな目的で行う事業者も増えてきました。
本記事では、建設業界のM&Aの動向やメリット、注意点や成功ポイントなどについて、実際に行われた事例紹介ととも解説します。
建設業界のM&Aについて、過去の事例と共に紹介します。
メイホーホールディングスは、関連会社のメイホーエクステック(岐阜県岐阜市)を通じて、新潟県阿賀町にある開発事業所「三河土建」を阿部豊代表取締役ら3名から404百万円を2023年1月4日に取得しました。明豊HDは、規模の拡大によるコストダウンだけでなく、人材の入れ替えや現場施工のノウハウの伝達、経営資源の有効活用などの面で優位に立つことになります。
建設業、金属製品製造業、レンタル業などの明和工業(新潟市)は、建設業の笠井組(同)を買収、全株式を取得しました。明和工業は土木工事部門の技術習得や人材育成で連携を取りながら、高度な品質とより良いサービスの提供を目指します。
OCHIホールディングスは10月28日、建築・土木業を営む幡谷建設(宇都宮市、売上高16億7900万円)を買収、関明彦社長ら2人から全株式を取得しました。OCHIHDは関東地方でのエンジニアリング事業の拡大を図ります。
ヤマダホールディングスは、孫会社で住宅など建築のヤマダホームズ(群馬県高崎市)を通じて 、注文住宅業のホクシンハウス(長野市)を買収しました。ヤマダHDは家電販売の伸長につなげるため、住宅分野の事業拡大を図ります。
ミライト・ホールディングスは、西武ホールディングスの孫会社の西武建設(東京)を3月31日付で 買収、同じく子会社の西武鉄道(同)から95%の株式を取得しました。西武鉄道と西武建設は1941年に設立され、両社の売上高は686億4500万円です。相談・設計から施工・管理まで一貫して行う「みらい・ドメイン」の成長を加速させることを目的としています。
事例に挙げたものは建設業界のM&Aの一部ですが、こうした建設業でのM&A取引が活発化している背景には建設業界の実情や課題が関係しています。
そのため、M&Aを成功させるには建設業界の現状や動向も把握することも大切です。まずは建設業界がどういったものか、現在どのような課題を抱えているのかを見ていきましょう。
日本のGDP(国内総生産)の約5%を占めているのが建設業界です。建設業界とは建築物やインフラの造設に関する業務を行い、建設業法では「建設工事の完成を請け負う営業」と定義されています。
建設業は「土木分野」と「建築分野」の2種に大別され、土木分野はダムや道路、鉄道などのインフラ事業、建築分野はマンションやビル、商業施設、学校などの建築物を造る事業となります。
建設業界と混合されやすいものに「建築業界」がありますが、建築業界は建築物の新築・増設・改設を指すのに対し、建設業界は建物のみでなく、インフラも含みます。
業界 | 業務内容 |
---|---|
建築業 | 住宅・マンション・ビル・商業施設・ホテル・学校など建物 |
土木業 | 道路・河川・トンネル・橋などの社会インフラ |
建設業界は専門性の高い業界となるため、国土交通大臣または都道府県知事による許可が必要です。建設業許可が定められている業種は29種類あり、一式工事と専門工事に大別されます。
一式工事 | 土木一式工事 建築一式工事 |
専門工事 | 大工工事 左官工事 とび・土工・コンクリート工事 石工事 屋根工事 電気工事 管工事 タイル・れんが・ブロック工事 鋼構造物工事 鉄筋工事 舗装工事 しゅんせつ工事 板金工事 ガラス工事 塗装工事 防水工事 内装仕上工事 機械器具設置工事 熱絶縁工事 電気通信工事 造園工事 さく井工事 建具工事 水道施設工事 消防施設工事 清掃施設工事 解体工事 |
さらに、建設業者は「総合建設業」と「職別工事業」に分類され、総合建設業は「ゼネコン」と呼ばれ、発注者から直接工事を請け負い、設計から施行までを一貫して行います。
一方、職別工事業は「サブコン」と呼ばれ、土木や大工工事など建設の一部分を請け負います。
建設業界の特徴として、ピラミッド構造が形成されていることが挙げられます。
総合建設業者が元請となり、国や民間などの発注者と契約を締結し、職別工事業者に委託。さらに職別工事業者が別の下請業者に一部の工事を依頼するという仕組みが一般的です。
総合建設業(ゼネコン) | 建設における設計から施行までを一貫して行う(元請) |
職別工事業(サブコン) | 建設の一部分の工事を行う(下請) |
建設業界の主な特徴は4つあります。
今後も建設業の需要がなくなることはなく、徐々に伸びていくと予想されます。
業界独特のビジネスモデルもふまえて解説します。
建設業界では、民間企業からの投資に加え政府投資と呼ばれる公共事業への投資があることが特徴です。ため、安定した業界であるといえます。国や自治体が発注する公共事業は、建設業界が受注しているからです。
国から安定した投資がある建設業界は、たとえ企業からの依頼が少なくなったとしても、今後も国や自治体から公共事業に関する依頼が見込め、市場が急激には縮小しません。
建設業界では、元請企業が発注者から工事を受注し、下請企業(1次下請)に業務を流していきます。下請企業はさらにその下請(2次下請など)にも業務を流していくことで、多層的に業務委託が行われていきます。
元請企業は一般的にゼネコンと呼ばれる企業がほとんどです。ゼネコンとは、General Contractor(総合建設業)の略称で、工事の全体指揮をとりつつ大規模工事の受注ができる経営基盤をもっています。代表例をあげると、鹿島建設や清水建設、竹中工務店などが有名です。
ゼネコンは、サブコンと呼ばれる企業に工事を委託していき、サブコンは各専門の工事事業者にさらに仕事を委託していきます。サブコンは、Sub Contractor(下請業者)の略で一般的には1次下請になることが多いです。
500万円以上の工事を受注するためには、建設業許可が必要です。建設業許可は、営業所を置く都道府県に申請を行い、都道府県知事から許可を取得します。しかし、ゼネコンのように複数の都道府県に営業所を置く大企業は、国土交通大臣から許可を得ます。
建設業許可を得るには、許可要件をいくつか満たさなければいけません。たとえば、建設業での経営経験が5年以上ある経営管理者と、1級・2級資格保有者である専任技術者を置く必要があるといった要件があります。
そのため、事業を立ち上げて建設業許可を得るまでにはある程度の期間が必要です。
前述したように、工事は基本的に発注者から依頼を受けてから動き出します。当然のように思えますが、他の業界では先に商品・製品をつくり、在庫を売る方式も多いです。一方で、建設業界は施工に大きなコストがかかるため、先に契約を結んでから着手しはじめる特徴があります。
発注者によって、仕事量や内容に波があるため、日雇いなど不安定な形で雇用契約を結んでいる労働者も多いです。前述した多重下請構造になっている背景にはこういった、仕事量の波に対応するためといった理由もあります。
建設業界のM&A活発化の背景には、建設業の市場規模が大きいことも関係しています。
日本建設業連合会のデータによると、2022年はGDP(国内総生産額)559.7兆円のうち建設業は29.2兆円を占めており、これは産業全体の約5%にあたります。
「国土交通省ー建設業の働き方改革の現状と課題」によると、建設投資額では、1992年の約84兆円にピークを迎えましたが、その後徐々に縮小傾向が続き、2011年はピーク時の半分となる42兆円まで落ち込みました。しかし、その後は東日本大震災の復興や東京オリンピックの背景もあり、全体的に増加傾向にあります。
また、「国土交通省‐令和6年度建設投資見通し」では、2020年には新型コロナウイルス感染症の影響などで工事の延期など業界に影響を及ぼしたものの、2024年の建設投資額は建築が約47.2兆円、土木が約25.8兆円の約73兆円と見通されています。
建設投資の内訳は全体の約64%を民間、約36%を政府が占めており、民間投資は建築工事が、政府投資は土木工事が半分以上を占めています。(参考:一般社団法人建設業連合会「建設投資の動向」)
建設業界ではさまざまな課題を抱えています。
中でも深刻な問題となっているのが若年層の人材不足と経営者と従業員の高齢化です。M&Aはこのような問題を解消する手法として注目されています。
建設業界では今、深刻な人材不足の状態が続いています。建設を依頼しても、人材が足りずに工事ができない現場もあります。
2021年時点の建設業界の業者数は約48万業者、就業者数は485万人ですが、これは日本の就業者数の7.8%にあたります。
事業者数・就業者数ともに年々減少しており、就職者においては1997年の685万人と比較すると約29%減少しています。
また、建設業界で働いている就業者のうち35.5%が55歳以上であり、特に60歳以上の技能者は全体の1/4を占めています。その一方で29歳以下の就業者は12%と若者の人材確保と次世代への技術承継が懸念されています。(参考:最近の建設業を巡る状況について)
人材不足の背景には業界の働き方の実態も関係していると考えられます。
建設業界の年間の労働時間は他の産業と比較して340時間以上長く、技術者の約40%が月の休日が4日以下というデータが出ています。(参考:建設業の働き方改革の現状と課題)
建設業界は景気が上がるとニーズが高くなり、景気が悪くなるとニーズが下がっていきます。ニーズが景気の波に大きく影響を受けてしまい、人員確保が非常に難しいのが課題です。たとえば、景気が下がり業界のニーズも下がると、平均550万人必要だったのに400万人でよくなります。つまり、150万人分の人件費が赤字になってしまいます。
業界としては、景気が下がっても人件費で赤字が出ないように正社員の人数をなるべく減らしておきたいと考えるので、結果としてひとりの負担が大きくなります。建設業界で残業や休日出勤など時間外労働が多いのは、こういった理由もあるのです。
この人材不足に対して、国も働き方改革の推進をしています。
こうした背景の中で建設業界のM&Aを検討する経営者も増えています。
その理由が経営者と従業員の高齢化と若手の人材不足、後継者不在です。この問題により、廃業する事業者も増加しています。
M&Aを行うことで売り手企業は資金の確保と事業の承継ができ、買い手企業は人員を確保することができます。
また、建設業界は他業種とのシナジー効果も高く、不動産業界やハウスメーカーなど同業者以外のM&Aも珍しくありません。
建設業界はこれまで「入札」制度などが理由でなかなか事業再編は行われてきませんでした。公共事業を受注するには、業者間で入札が行われ、最も低い価格を提示する必要があります。このため、企業同士が合併をすると入札機会が減ってしまうといったリスクがあります。
しかし、近年では事業拡大や人材不足のために積極的にM&Aが行われています。これにより後継者不足の問題を解消し、事業を引き継ぐことができるからです。
とくに、ハウスメーカーや不動産会社などの異業種との合併も増えてきています。
建設業界においてM&Aを行うことでどのようなメリットがあるのか、売り手側企業と買い手側企業のメリットをそれぞれみていきましょう。
売却企業側にとってのメリットは下記4つです。
売却側の大きなメリットは、株式の譲渡と引き換えに相当額の現金を手に入れられる点です。得た資金を活用して新規事業を立ち上げたり、創業者利益として保有したりできます。
建設業界では売却額の相場は高く、数百億円になるようなケースもあります。大きな資金を一気に獲得するためにM&Aを選択する企業も少なくありません。
M&Aで買収先企業の傘下に入ることで、買収先企業のあらゆる資源を活用して事業を成長させられます。設備や機材はもちろん、人材やノウハウを得ることでより安定した経営基盤を整えられます。
また、買収先企業のブランド力も得られるため、建設業者としての信頼性も高まるケースが多いです。
建設業界では6〜7割以上の企業で後継者問題を抱えています。
後継者が見つからない場合、倒産や廃業といった状況もあります。また、オーナーは退職したくても従業員のためになかなか退職できないこともあるでしょう。
M&Aで事業承継を行えば、この後継者問題を解決できるため、廃業せずに従業員の雇用を守れます。オーナーも事業は社会に残り続けるので、安心して退職ができます。
M&Aでの売却後、売却企業に雇われていた従業員の雇用は継続されるのが一般的です。M&Aは事前に従業員の雇用について両者で取り決めを行ったうえで契約します。
廃業になれば、必然的に従業員は解雇になり、従業員の家族に大きな影響を与えてしまいます。しかし、M&Aで従業員の雇用についてしっかりと取り決めを行ったうえで事業承継を行えば、今の従業員の雇用を守れるのです。
売り手側が注意しておくべきことは、現在抱えている案件と許認可の引き継ぎについてです。
案件を抱えたまま売却するには、買い手企業か他の業者に現在の案件を引き継いでおく必要があります。
許認可については、株式をそのまま譲渡する場合は引き継ぎますが、事業のみを譲渡するようなM&Aの場合は取得した許認可を買い手側は引き継ぎできません。この場合は、買い手側が新しく許可を得る必要があります。
M&Aの事前交渉段階では現在抱えている案件や、建設業許可についてしっかり話し合っておく必要があります。
買い手企業にとって、M&Aを行うメリットは以下の3つです。
新規で事業を立ち上げる場合、M&Aを行うことで時間を短縮できます。とくに建設業は許可申請や設備機器の準備にかなりの時間がかかります。また、新規エリアについては、どのようなニーズがあるかなど事前調査も必要です。対象エリアの企業を買収できれば調査にかける時間も一気に短縮できるでしょう。
M&Aは、こういった時間がかかる準備段階を大幅に減らし、スムーズに事業をすすめることが可能です。
M&Aを行うことで事業エリアと規模の拡大ができます。営業や工事のエリアが広がり、隣接県への展開や地方への進出などが可能になります。さらに、買収先の既存顧客を取り込める可能性も高いです。同業種間では、新規エリア獲得のためのM&Aは近年非常に多くなってきています。
また、ハウスメーカーや不動産業など隣接する異業種間でのM&Aでは、提供可能なサービスが広がり、シナジー効果も期待できます。
深刻な人手不足を抱えている企業にとって、M&Aは一気に人材の確保ができるチャンスになります。とくに、資格保有者や専任技術者などの優秀人材を手に入れるためには効率的な方法です。
建設業界は有資格者の数によって受注できる工事の規模が変わります。売上を伸ばすためには、有資格者をいかに確保するかは重要ポイントなのです。優秀人材を社内で育成するには、時間や労力、資金が必要です。加えて、せっかく育成した人材も業界を離れてしまうこともあります。
優秀人材確保については、社内育成よりもM&Aの方が効率的と判断し、買収して一気に確保するケースも少なくありません。
買い手側がまず注目しておくべきポイントは、M&A後に得られる権利や資格です。建築施工管理技士、土木施工管理技士などの国家資格を保有している人材が、買収先の企業にどれくらい在籍しているかは重要です。前述した通り、受注できる案件の規模はどれだけ有資格者が在籍しているかで決まります。
また、従業員の年齢構成も見るべきポイントです。業界全体としてベテランが多く若手は少ない傾向ですが、ベストはバランスのとれた年齢構成です。技術力の高いベテランも、若手社員もバランスよく取り入れられるとよいでしょう。
注意点としては、買収先の企業に粉飾決算がないことは確認しておきましょう。建設業界の粉飾率は決して低くありません。不正が発覚すると、受注資格が変更になり今後の売上に大きな影響が出てしまいます。
また、経営管理責任者となる人材を確保できるかも確認がいります。売却を機に退職をする社長兼経営管理責任者も多いので、M&Aをしたからといって買収先の経営管理責任者を確保できるとは限りません。
最後に建築業のM&Aを成功させるポイントを紹介します。
M&Aを行う目的は事業拡大のため、次世代に技術を残すため、新事業への資金の確保などさまざまです。第三者に事業を承継する場合は、目的によって売却先や選択するスキームも異なってくるため、なぜM&Aを行うのかを明確にしておくことが売却先選定においても大切になってきます。
M&Aを成功させるためには、財務状況などを適切に相手企業に伝えることが大切です。そのためには自社の強みを把握し、適性に企業価値を評価することが必要となります。
M&Aにおいては評価指標も複数あります。専門家のサポートを受けることで客観的に企業価値を算定することができます。
目的を明確にした後は、自社の強みの明確化と売却条件を決める必要があります。双方が納得した取引を行うは売却先の企業を検討する際の優先順位や価値観を決めておくといいでしょう。
M&A仲介業者にサポートを依頼する場合もスムーズです。
M&Aの工程は複雑で多岐に渡ります。事業を経営しながら自社のみで進めていくのは現実的には難しいため、多くの企業がM&Aアドバイザリーを活用しています。
専門家に依頼することで複雑な手続きを最小限にしながらM&Aを成功へと導くとができるでしょう。
M&Aロイヤルアドバイザリーでは、M&Aや事業承継の初期的な関心でもご相談いただけます。事業承継には時間がかかるものなので、早い段階で情報収集を行い、M&Aを含めた最適な解決策を検討することが重要です。
今後のプランを考えるためにも、ぜひM&Aロイヤルアドバイザリーにご相談ください。
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