会社の身売りとは?従業員や経営者はどうなる?前兆ってある?

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会社の身売り 従業員・経営者の行末

会社の身売りとは、どういう意味でしょうか?「身売り」という言葉にはどこかネガティブな響きがあります。しかし実際に身売りとは、後継者不足や資金繰りの悪化といった経営課題を解決し、従業員や取引先を守る有効な手段として選ばれるケースもあるのです。 

株式譲渡や事業譲渡といった具体的なスキームを通じて、経営者は現金を得たり、個人保証から解放されたりと大きなメリットを享受できます。その一方で、売却後の拘束や従業員の離職リスクなど、注意すべきデメリットも存在します。

本記事では、会社の身売りとはどういう意味か、その仕組みやメリット・デメリット、実際の手順、成功させるためのポイントを分かりやすく解説します。さらに、会社が身売りに向かう前兆や、従業員や経営者に及ぼす影響、よくある疑問にも答えています。身売りとはどういうことかを、本記事でぜひご理解ください。

会社の身売りとは

まず、会社の身売りとはどういったものなのか説明します。

第三者承継のこと

「会社の身売り」という表現は、一般的には第三者承継を指します。

これは、経営者の親族に事業を引き継ぐ「親族内承継」や、役員・従業員に承継させる「従業員承継」とは異なり、外部の企業や投資家に経営を引き継ぐ方法のことです。

近年では「M&A」という呼び方が定着しており、企業の存続や成長のために外部の第三者に経営権を譲る方法が広く利用されるようになっています。

ネガティブな意味合いがある

「身売り」という言葉にはネガティブなニュアンスが伴います。

日本においては長らく、中小企業では親族内承継が自然な形と考えられてきました。そのため、第三者への承継は「業績が悪化したから売却した」「後継者がいなかったから仕方なく選んだ」という印象を持たれることが少なくありません。

また、大企業の場合は上場が理想的なエグジットとみなされる傾向が強く、第三者への売却はネガティブに捉えられることがあります。

しかし実際には、M&Aは事業の存続や発展を実現する有効な選択肢であり、必ずしも後ろ向きなものではありません。

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    会社の身売りのスキーム

    会社の身売りで一般的なスキームである株式譲渡と事業譲渡を解説します。

    株式譲渡

    会社を身売りする場合、スキームにはさまざまな種類があります。広義には業務提携や資本提携もM&Aに含まれます。その中でもよくM&Aに用いられるものが株式譲渡です。

    株式譲渡とは、既存の株主が保有する株式を第三者に売却することで、会社の経営権を移転する方法をいいます。会社そのものの権利義務や契約関係はそのまま維持されるため、取引先や従業員への影響が比較的小さく、手続きもシンプルである点が特徴です。

    このため、中小企業から大企業まで幅広く利用される代表的なM&Aスキームです。

    事業譲渡

    事業譲渡とは、会社が営む事業の全部または一部を、資産や負債、契約関係ごとに個別に第三者へ譲り渡す方法です。株式譲渡が会社の所有権そのものを移転させるのに対し、事業譲渡は対象とする事業領域を選択的に移せるため、譲渡側・譲受側の双方にとって柔軟性の高い取引形態といえます。

    ただし、事業譲渡では契約や許認可、取引先との契約関係などを個別に移転する必要があり、実務的な手続きが煩雑になる点がデメリットです。その反面、不要な部門や資産を切り離して譲渡できるため、経営のスリム化や選択と集中を目的としたM&Aでは有効に活用されるケースが多く見られます。

    会社を身売りするメリット

    会社を身売りして得られる主なメリットは次のとおりです。

    • 現金を得られる
    • 自由な時間を持てる
    • 個人保証から解放される
    • 廃業費用を回避できる
    • 経営者として評価される
    • 承継問題を解決できる
    • 会社と従業員を守れる
    • シナジーで成長できる

    それぞれを詳しく解説します。

    現金を得られる 

    会社を身売りする最も大きなメリットは、まとまった現金を手に入れられることです。

    売却益は老後の生活資金として安心を確保するだけでなく、趣味や学び直しなど第二の人生のための投資にも活用できます。また、新たに別の事業を始める際の原資にしたり、家族や子孫のための資産形成にあてたりすることも可能です。

    特に株式譲渡の場合は、売却益に対して分離課税が適用され、一般的な所得よりも有利な税率で処理される点が見逃せません。これにより、手元に残る金額が相対的に大きくなり、資産運用や相続計画の選択肢が広がります。

    自由な時間を持てる

    会社の経営から離れることで、経営者はこれまで日常的に背負ってきた業務や責任から解放され、自由に使える時間を取り戻せます。

    経営者の役割は資金繰りや従業員管理、顧客対応など多岐にわたり、精神的・肉体的な負担も大きなものです。会社を売却すれば、こうした重圧を買い手に委ねられ、自分自身は新たな生活に時間を使えます。

    また、希望すればセカンドキャリアとして別の会社に関与したり、自ら新しいビジネスを小規模に始めたりする選択肢も広がります。

    個人保証から解放される

    多くの中小企業経営者が頭を悩ませることが、借入時に課される個人保証や担保の存在です。

    銀行や金融機関は、会社の信用力だけで融資を行うのではなく、経営者個人の保証を条件とすることが一般的です。そのため、経営が思わしくない状況に陥れば、自宅や個人資産を失うリスクが常に伴います。こうした状況は経営者に大きな心理的負担を与え、経営判断を萎縮させる要因になります。

    会社を売却すると、この個人保証や担保が買い手企業に引き継がれ、経営者個人はその責務から解放されます。

    廃業費用を回避できる

    会社を清算して廃業する場合には、実は多額の費用と時間が必要です。

    具体的には、取引先への債務整理や従業員の退職金支払い、税務処理、法的な清算手続きなどが発生し、その総額は数十万円から数百万円に及びます。特に資産や負債が複雑に絡み合っている場合は、専門家への依頼も必要となり、手間や費用はさらに増加します。

    一方で会社を売却すれば、こうした清算コストを負担せずに済みます。買い手企業が事業を引き継ぐため、契約や雇用も継続され、取引先や従業員への影響も最小限に抑えられます。

    廃業と比較した際、M&Aがいかに効率的で現実的な解決策であるかが理解できます。

    経営者として評価される

    会社を売却するということは、築き上げた事業に明確な価値があると第三者に認められたことを意味します。これは経営者にとって、自らの努力が市場で評価された証であり、業界内での名声につながります。

    廃業した場合「敗者」という印象が強くなりますが、売却によって会社が存続する場合には「M&Aを実現した成功者」としてポジティブな評価が残ります。加えて、売却先との関係性次第では顧問やアドバイザーとして関わり続けることも可能で、経営者としての知見や経験を次の世代に伝える役割を果たせます。

    このように会社売却は、単なる資産取引ではなく、経営者の社会的評価や存在感を残す手段でもあります。

    承継問題を解決できる

    日本の中小企業における深刻な課題のひとつが後継者不足です。

    親族に引き継ぐ人材がいない、従業員にも後継を任せられる人がいないといったケースは珍しくありません。こうした状況で会社を放置すれば、事業の存続そのものが危うくなります。会社を売却することは、この承継問題を根本から解決する手段です。

    買い手企業は経営基盤や資本力を備えており、既存事業を継続・拡大する可能性を持っています。経営者は、自分が築き上げた会社を未来へつなげ、単なるリタイアではなく「承継」という社会的役割を果たせます。これは個人の利益だけでなく、取引先や地域経済にとってもプラスとなり、社会的意義の高い選択といえるでしょう。

    会社と従業員を守れる

    廃業を選んだ場合、会社は消滅し、従業員は職を失い、取引先との契約も打ち切られます。しかし、売却によって事業を継続できれば、従業員の雇用を守り、取引先との関係も維持されます。

    経営者にとって、共に会社を支えてきた従業員の生活を守れることは大きな安心です。従業員自身にとっても、新しい親会社の下でキャリアを続けられることは安定につながり、生活基盤を維持できます。

    また、地域社会にとっても雇用や経済活動が続くことは重要であり、事業売却は単なる経営判断ではなく、社会的責任を果たす行為でもあります。

    シナジーで成長できる

    会社を身売りすることは終わりではなく、新たな成長の始まりでもあります。

    買い手企業の経営資源を活用することで、自社単独では実現できなかった成長が可能になるからです。例えば、全国規模の販売網に乗せることで販路が一気に拡大したり、研究開発のリソースを共有することで新製品開発が加速したりします。資金力の強化により、大規模な投資や広告展開も実現できるでしょう。

    こうしたシナジー効果は、単なる存続にとどまらず、会社を次の成長段階へ押し上げます。

    会社を身売りするデメリット

    会社の身売りに伴う主なデメリットは次のとおりです。

    • 売却後に一定期間拘束される場合がある
    • 競業避止義務で活動が制限されることがある
    • シナジーが生まれず失敗に終わる可能性がある
    • 取引先との契約が途切れる恐れがある
    • 従業員が離職するリスクがある

    それぞれを詳しく解説します。

    売却後に一定期間拘束される場合がある

    会社を身売りしても、経営者がすぐに完全に自由になれるとは限りません。多くのM&A契約では「ロックアップ」や「キーマン条項」と呼ばれる条件が盛り込まれることがあります。

    ロックアップとは、売却した株式の代金を一定期間分割で受け取る代わりに、その間は経営者が引き続き会社に関与し、事業の安定を支える義務を負う仕組みです。一方、キーマン条項は、買い手企業が「この人が一定期間残ってくれること」を条件に取引を成立させるもので、経営の円滑な引き継ぎを目的としています。

    これらは会社や従業員にとってはプラスの効果がありますが、売却側経営者が早期リタイアを望んでいた場合には拘束となります。

    競業避止義務で活動が制限されることがある

    M&A契約ではしばしば「競業避止義務」が設けられます。これは、売却した経営者が同業界で新たに事業を立ち上げたり、競合企業に参加したりすることを一定期間禁止する取り決めです。

    買い手企業にとっては、せっかく多額の資金を投じて取得した事業を守るための重要な条項ですが、売却側にとっては今後のキャリア形成や起業の自由が制限される大きなリスクになります。特に経営者が長年その業界に携わってきた場合、培った専門性を生かせないことは大きな負担です。

    結果として、売却後に再びビジネスに挑戦したいと考えても、一定期間は望む活動ができない可能性があります。

    シナジーが生まれず失敗に終わる可能性がある

    会社の身売りは、しばしば「買い手企業とのシナジーによる成長」が期待されます。例えば、販路拡大や技術共有、資本力強化などが典型的なシナジー効果です。

    しかし実際には、経営方針の相違や企業文化の不一致により、思ったほどの相乗効果が得られないこともあります。場合によっては、組織の統合プロセスがうまくいかず、逆に業績の悪化を招くリスクもあります。

    M&Aが必ずしも成功に結びつくわけではなく、むしろ失敗例も少なくありません。売却後に会社の成長が止まり、むしろ価値が下がってしまうケースもあるので注意が必要です。

    取引先との契約が途切れる恐れがある

    中小企業においては、取引先との関係が「経営者個人の信用や人間関係」に基づいていることが多々あります。そのため、オーナーが交代した途端に契約条件が見直されたり、場合によっては取引そのものが終了してしまったりする可能性があります。

    特に、取引先が大手企業である場合、経営体制の変更をリスクと見なし、契約を継続しない判断を下すケースも見られます。

    また、長年の信頼関係に基づく取引が途絶えることで、売却後の業績に悪影響が及ぶ可能性も否めません。このように、売却後に取引先との関係性が変わるリスクは常に存在しており、事前の説明や関係調整が不十分だと、大きな経営課題に発展する恐れがあります。

    従業員が離職するリスクがある

    会社の売却は従業員に不安を与えやすい出来事といえます。新しい経営方針に適応できるか、待遇が変わらないかといった懸念から、優秀な人材ほど転職を検討するケースもあります。従業員の大量離職は事業継続に直結する大きなリスクであり、買い手企業にとっても想定外のダメージです。

    経営者が売却の意図を十分に説明し、従業員の将来に配慮することは不可欠ですが、それでも心理的な動揺を完全に防ぐことは難しいことが現実です。従業員が離れてしまえば、取引先との関係や会社の強みそのものが失われる危険もあり、身売りに伴う最大の課題の一つです。

    会社を身売りする手順

    会社を身売りする手順は次のとおりです。

    1. 売却準備
    2. M&A仲介会社の選択
    3. 買い手候補の探索
    4. 企業価値評価
    5. 交渉・基本合意
    6. デューデリジェンス(DD)
    7. 最終契約の締結
    8. 売却後の対応

    それぞれのステップで重要なことを解説します。

    売却準備

    最初のステップは、自社の現状を整理することです。

    財務諸表を最新の正確な状態に整え、簿外債務や不要な資産を可能な限り整理します。赤字部門を切り離したり、在庫を適正化したりすることで、買い手からの評価を高められます。

    また、売却の目的を明確にしておくことが大切です。「後継者不在で事業承継のために売却するのか」「リタイア資金を得たいのか」「会社を成長させるために資本力のある企業へ託したいのか」など、目的によって進め方や条件は大きく変わります。

    M&A仲介会社の選択

    M&Aを成功させるには、仲介会社やアドバイザーの存在が欠かせません。

    仲介会社は買い手候補の探索や企業価値評価、条件交渉、契約書の作成や調整まで幅広くサポートしてくれます。ただし仲介会社ごとに手数料体系や得意分野、ネットワークの強さが異なります。着手金や中間金が発生するタイプもあれば、成功報酬型のみの会社もあります。

    業界知識に長けた担当者がつくかどうかも成果に直結するため、複数社を比較し、自社にとって最適なパートナーを選ぶことが重要です。仲介会社は経営者に代わって多くの実務を担う存在ですので、「誰に任せるか」がM&A全体の成功可否を大きく左右します。

    買い手候補の探索

    仲介会社のネットワークや独自のデータベースを活用して、条件に合う買い手候補を探します。候補には、同業でシナジーが期待できる企業、異業種で新規参入を狙う企業、地域内で事業承継を望む企業などさまざまなパターンがあります。

    買い手候補が現れたら、秘密保持契約(NDA)を結んだ上で匿名情報を提示し、興味を持つかどうかを確認します。この段階ではまだ会社名を開示せず、段階的に情報を渡していくことが一般的です。

    企業価値評価

    売却価格を決めるために、自社の企業価値を客観的に評価します。DCF法(将来キャッシュフローを割引して算定)や、類似会社比較法(同業他社の株価を基準に算定)、純資産法(資産と負債の差額を算定)などの手法が用いられます。

    どの手法を用いるかで金額は変動するため、複数の手法を組み合わせることが望ましいです。この評価は単なる数字の算定ではなく、交渉材料としての意味を持つため、説得力のある評価を行うことが成功への鍵です。

    交渉・基本合意

    買い手候補と具体的な条件交渉を行い、価格帯やスキーム(株式譲渡か事業譲渡か、など)、スケジュールなどの大枠が決まれば、基本合意契約(LOI:Letter of Intent)を締結します。

    基本合意は法的拘束力が限定的ではあるものの、「この条件で進める」という意思を明確にする重要なステップです。ここで条件を詰めすぎると後の柔軟性が失われるため、合意内容のバランスが重要です。

    デューデリジェンス(DD)

    基本合意後、買い手は売却企業の詳細な調査を行います。財務・法務・税務・労務・知的財産・ITなど幅広い分野を対象とし、潜在的なリスクを明らかにするプロセスです。

    例えば、未払い残業代や潜在的な訴訟リスク、環境問題などが見つかれば、価格交渉に影響することがあります。経営者にとっては緊張感の高い工程ですが、透明性をもって対応することが信頼につながります。

    最終契約の締結

    デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終条件を調整し、最終契約書(DA:Definitive Agreement)を締結します。この契約書には売却価格や支払い条件、株式や事業の引渡し方法に加え、競業避止義務、ロックアップ、キーマン条項など売却後の拘束条件も盛り込まれます。契約の内容は売り手にとって長期的な影響を及ぼすため、専門家のチェックを必ず受けることが推奨されます。

    契約締結後、実際に株式や事業の移転、売却代金の支払い、登記変更などを行います。これにより正式に会社の経営権が買い手に移転します。クロージングは手続き的にはゴールですが、ここから新しい経営体制がスタートするという意味では新たな出発点でもあります。

    売却後の対応

    売却後、一定期間は経営者が顧問やアドバイザーとして残り、買い手企業への引き継ぎや従業員・取引先への説明を行うことがあります。

    事業統合(PMI:Post Merger Integration)が円滑に進むかどうかは、この段階での対応に大きく左右されます。売却は終点ではなく、会社と従業員が新しい環境で安定して成長できるよう支えることが重要です。

    会社の身売りを成功させるポイント

    会社の身売りを成功させるポイントは主に次のとおりです。

    • 信頼できるM&A仲介会社を早めに見つける
    • 自社の強みを分析し明確に伝える
    • 従業員・取引先への説明をしっかり行う
    • 経営者同士でしっかり話し合う
    • 売却後の役割を想定しておく

    それぞれを詳しく解説します。

    信頼できるM&A仲介会社を早めに見つける

    会社の売却は、経営者にとって初めての経験であることが多く、専門的な知識や交渉力を一人で補うことは困難です。そのため、信頼できるM&A仲介会社を見つけ、早めに相談を始めることが成功の鍵です。

    仲介会社は買い手候補の探索から、企業価値評価や条件交渉、契約書の作成・調整まで幅広く支援します。ただし仲介会社ごとに得意分野や手数料体系、担当者の力量に大きな差があるため、複数社を比較検討することが不可欠です。

    特に「着手金が必要か」「成功報酬のみか」といった報酬体系は資金計画に直結します。また、担当者がどれだけ親身に寄り添ってくれるかも重要です。早期に信頼できる仲介会社とつながれば、準備段階から的確なアドバイスを受けられ、売却の成功率を大きく高められます。

    自社の強みを分析し明確に伝える

    会社を売却する際に、買い手が最も重視するのは「その会社を買うことでどんな価値が得られるか」という点です。したがって、自社の強みを的確に把握し、相手に分かりやすく伝えることが成功の第一歩です。

    強みとは必ずしも売り上げや利益といった数字だけを意味しません。例えば、地域で長年築いてきた顧客基盤や、特許・ノウハウといった技術資産、経験豊富な従業員のスキル、あるいは業界内でのブランド力や信頼関係なども含まれます。

    こうした無形の価値は、適切に説明しなければ買い手に正しく伝わらないため、事前に棚卸しを行い、資料としてまとめておくことが不可欠です。自社の強みを論理的かつ客観的に示せれば、交渉で優位に立ち、希望に近い条件での売却につながります。

    従業員・取引先への説明をしっかり行う

    会社を売却する決断は、経営者個人の意思であっても、その影響は従業員や取引先に広く及びます。

    従業員にとっては「雇用は守られるのか」「待遇が悪化しないか」という不安がつきまとい、取引先にとっても「今後も取引を続けられるのか」という疑念が生まれます。こうした不安を放置すれば、従業員の離職や取引の打ち切りにつながり、結果的に会社の価値を損なう可能性もあります。

    そのため、売却を決めた際には、できるだけ早い段階で誠意を持って説明し、今後の方針や買い手企業との協力体制を丁寧に伝えることが重要です。特に、従業員の雇用や待遇の維持を契約条件として盛り込み、それを明確に共有できれば安心感を与えられます。誠実な説明とコミュニケーションが、売却後のスムーズな移行を実現する鍵です。

    経営者同士でしっかり話し合う

    M&Aにおいて、表面上の条件が整っていても、経営者同士の信頼関係が築けなければ統合はうまく進みません。買い手がどんな理念を持ち、どのような経営方針で事業を展開しているのかを理解し、自社の文化や価値観と合うかどうかを見極めることが必要です。

    例えば、従業員を大切にする文化を持つ企業であれば、売却後の雇用が守られやすいです。逆に短期的な利益を優先する企業に売却すると、従業員や取引先に悪影響を及ぼす可能性があります。

    経営者同士で率直に話し合い、理念やビジョンが共有できるかどうかを確認することで、売却後に起こりがちなトラブルを未然に防げます。数字の条件だけでなく、人としての相性や信頼を重視することが、成功につながる大切なポイントです。

    売却後の役割を想定しておく

    経営者が会社を手放しても、すぐに完全に自由になれるとは限りません。多くのM&A契約では「ロックアップ」や「キーマン条項」といった条件が設定され、売却後も一定期間は会社に関与し、経営や顧客関係の維持をサポートすることを求められるケースがあります。

    そのため、売却後にどの程度関与したいのか、顧問として残るのか、それともできるだけ早く経営から手を引きたいのかを事前に明確にしておく必要があります。

    交渉の際に希望をしっかり伝えておけば、契約条件に反映され、売却後の生活設計にも無理が生じません。未来の自分の役割を想定しておくことは、安心して身売りに踏み切るための大切な準備です。

    会社が身売りする前兆

    会社が身売りをする主な前兆は次のとおりです。

    • 経営幹部が相次いで退職している
    • 大規模な人員削減が進められている
    • あらゆる経費削減策が打ち出されている
    • 新規の設備投資が見送られるようになった
    • 子会社や不採算事業の切り離しが進む
    • 本業で赤字が連続している
    • 給与の支払いが遅れたり減額されたりしている
    • 賞与が削減・支給停止されている
    • 各種手当が縮小・廃止されている
    • 達成が困難な高いノルマが課されている
    • 専門家の出入りが目立つようになった
    • 経営者が主要取引先を頻繁に訪問している

    それぞれを解説します。

    経営幹部が相次いで退職している

    会社の将来を最も早く察知するのは、経営幹部や役員層です。

    彼らが相次いで辞めている場合、経営戦略に対する不一致や、会社の将来に対する不安が背景にあることが多いといえます。特に長年勤めていた幹部や会社の中核を担っていた人材が短期間に退職するのは、内部で重大な方向転換が行われている兆候です。

    売却や経営再編の準備が水面下で進んでいる場合、経営陣にのみ情報が共有されることが多く、その動きを敏感に感じ取った幹部が先に身を引くことがあります。

    大規模な人員削減が進められている

    売却前に経営をスリム化し、買い手にとって魅力的な会社に見せるために、大規模なリストラが実施されることがあります。

    人件費は企業の固定費の中でも大きな割合を占めるため、短期間でコスト削減効果を出すにはリストラが手っ取り早い手段とされます。

    しかし、従業員にとっては将来の不安を強め、士気の低下や優秀な人材の流出を招きかねません。

    あらゆる経費削減策が打ち出されている

    リストラだけでなく、旅費・交際費・広告宣伝費など、あらゆる経費が急激に削減されるのも前兆の一つです。健全な経営でもコスト削減は重要な取り組みですが、過度に強化される場合は資金繰りの悪化や売却準備の可能性が高まります。

    特に広告や新規採用など未来への投資を伴う経費まで削減されている場合は、事業拡大の意欲を失い、会社を「できるだけ小さな負担で譲渡する」方針に切り替えている可能性が濃厚です。従業員から見ても「突然の経費制限」は大きな違和感を覚えるサインです。

    新規の設備投資が見送られるようになった

    通常であれば、企業は成長や効率化のために新規の設備投資を続けます。しかし、それが急に止まるのは「将来的に自社で事業を発展させる意欲を失った」ことを意味します。

    買い手が決まる前に大規模な投資を行うと負債や固定費が増え、売却価格に悪影響を与えるため、投資を控えるケースが多いです。

    従業員にとっては「新しい機械が導入されない」「オフィス改修が止まった」といった形で違和感を覚えることが多く、売却の前触れと推測されやすい行動の一つです。

    子会社や不採算事業の切り離しが進む

    会社が売却を検討する段階では、赤字部門や採算の取れない子会社を切り離す動きが加速します。これは、買い手に対して財務の健全性を示し、魅力的な投資対象であると印象づけるための準備です。

    いわゆる「事業の選択と集中」と呼ばれる施策であり、その背景には「不要な負担を減らし、譲渡しやすい体制を整える」という明確な狙いがあります。売却直前にこうした再編が進む場合、身売りに向けた具体的な準備が始まっている可能性が高いといえるでしょう。

    本業で赤字が連続している

    本業での赤字が続くと、会社の存続が難しくなり、外部資本に頼らざるを得なくなります。

    数年にわたって赤字が続いている会社は、資金繰りを維持するために金融機関や投資家からの支援を仰ぐ必要がありますが、それでも限界に近づけば「売却による存続」が現実的な選択肢となります。

    売却は経営者にとって苦渋の決断ですが、連続赤字はその判断を加速させる要因です。従業員にとっても「赤字が当たり前になってきた」という状況は不安を呼び、身売りへのうわさが立ちやすくなります。

    給与の支払いが遅れたり減額されたりしている

    給与の支払いは企業の信用そのものです。遅延や減額が起これば、それは会社の資金繰りが逼迫(ひっぱく)している証拠といえます。

    従業員にとって生活に直結する問題であるため、不信感は一気に高まります。このような事態は売却を急がざるを得ないほど経営が悪化しているサインです。

    賞与が削減・支給停止されている

    賞与は企業がどれだけ余力を持っているかを示すものです。

    それが削減されたり支給停止となったりするのは、業績悪化や資金不足の明確な表れです。特に業績が悪化していないように見える状況で突然ボーナスがカットされる場合、会社が内部で再編や売却に向けて資金を温存しているケースもあります。

    従業員にとっては不安を強める出来事であり、離職やモチベーション低下につながります。

    各種手当が縮小・廃止されている

    住宅手当や家族手当、福利厚生などが縮小されるのも、経営が苦しくなっているサインです。

    これはコスト削減の一環ですが、従業員にとっては生活の質に直撃し、不安や不満を高めます。買い手企業にとっては「無駄なコストを削った状態で譲り受けられる」というメリットがありますが、その分社内の士気は下がりやすく、売却準備と受け止められやすい行動の一つです。

    達成が困難な高いノルマが課されている

    会社が短期的に業績を良く見せるため、過度なノルマを設定することがあります。これは一時的に売り上げを押し上げ、買い手に経営状態が健全であるかのような印象を与える狙いです。

    しかしその裏側では、現場の疲弊や人材流出を招くリスクが高まります。さらに、こうした施策はデューデリジェンスの過程で容易に見抜かれるため、実際の企業価値を高める効果はほとんどありません。

    短期的な数字作りはむしろ信頼を損なう要因となり、売却条件の悪化につながる可能性があるため注意が必要です。

    専門家の出入りが目立つようになった

    売却準備が進むと、契約書の作成や財務整理、税務調整などのために弁護士や会計士といった専門家の出入りが増えます。

    普段の業務ではあまり見かけない士業の訪問が頻繁になるのは、M&Aや事業再編が水面下で動いている可能性が高いサインです。

    経営者が主要取引先を頻繁に訪問している

    社長や経営者が主要な取引先を積極的に回るのは、売却に備えて取引先の理解を得たり、契約関係を維持したりするための動きであることが多いです。

    取引先に対する信頼関係の維持はM&A成功の鍵であり、そのために経営者自らが頻繁に足を運ぶケースが目立つようになるのです。

    会社の身売りに関するQ&A

    最後に、会社の身売りに関してよくある質問とその回答を紹介します。

    会社を身売りすると従業員の待遇はどうなるか

    会社が売却されても、従業員の雇用契約は通常そのまま新しい経営者に引き継がれます。そのため、基本的には雇用自体が突然失われることは少ないです。

    ただし待遇については、買い手企業の方針に従って変更される可能性があります。給与や賞与、福利厚生が維持されるケースもあれば、統合の過程で制度が見直されることもあります。

    交渉の段階で「従業員の雇用・待遇を守る」ことを条件に盛り込めば、安心材料になります。

    会社を身売りすると社名やブランドは残るのか

    社名やブランドが残るかどうかは、買い手企業の戦略次第です。

    既存ブランドに高い価値がある場合はそのまま維持され、従業員や顧客の安心感を守るために社名を変更しないケースも多くあります。

    一方で、グループ全体でブランドを統一する方針をとる企業に買収されれば、社名やロゴが変わることも珍しくありません。特に老舗企業や地域密着型の会社では、ブランドを残す方向で交渉することが望まれます。

    銀行や金融機関は会社の身売りにどのように関わるか

    銀行や金融機関は、会社の資金繰りや債務の状況に深く関わっているため、身売りのプロセスでも重要な役割を果たします。売却前には融資の残高や個人保証の処理について調整が必要で、場合によっては金融機関の同意が不可欠です。

    また、買い手候補を紹介したり、M&Aファイナンスを提供したりするなど、取引全体を後押しすることもあります。経営者にとっては、銀行が協力的かどうかが売却のスムーズさに大きく影響します。

    会社の身売り後、創業者が再び経営に関与できるか

    売却後に創業者が再び経営に戻るかどうかは、契約内容と買い手の方針によります。多くの場合、ロックアップや競業避止義務によって同業での再経営が制限されますが、買い手から求められて顧問やアドバイザーとして一定期間残ることは一般的です。

    また、別業種で新たに事業を立ち上げることは可能な場合が多く、経験や人脈を生かして再挑戦する経営者も少なくありません。ただし「再び同じ会社を経営する」ことは基本的に想定されにくい点に注意が必要です。

    まとめ

    会社の身売りは、経営者にとって大きな決断となることが多いですが、適切に行えば会社や従業員を守るための有効な手段となります。身売りを考える際には、メリットとデメリットをよく理解し、信頼できるM&A仲介会社と連携しながら進めることが重要です。また、従業員や取引先に対しても誠実に説明し、信頼を得ることが成功の鍵となります。身売りの前兆を見逃さず、早めに対策を講じることで、より良い選択ができるでしょう。

    もし、身売りについてさらに詳しく知りたい場合や具体的な相談が必要な場合は、専門のアドバイザーや仲介会社に相談することをお勧めします。自分の会社に最適な選択肢を見つけ、将来に向けた最良の決断を下すための一歩を踏み出しましょう。

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