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少子高齢化が進むなか、日本の中小企業では深刻な後継者問題の解決が課題です。
特に、70代以上の経営者の多くが後継者未定のまま事業を続けており、地域経済や雇用に与える影響も無視できません。
こうした後継者問題において注目されているのは、第三者に会社を引き継ぐ「M&A(企業の合併・買収)」という選択肢です。
本記事では、後継者問題の現状とその原因、M&Aによる事業承継の仕組みとメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
目次
日本の中小企業では、経営者の高齢化が深刻なレベルに達しており、事業承継の遅れが経営継続のリスクを高めています。
2024年に実施された調査では、全国の約27万社を対象とした結果、後継者が「いない」または「未定」と回答した企業は14.2万社にのぼり、全体の52.1%を占めました。
この数字は過去の調査と比較して改善傾向にあるものの、その進行は緩やかで、抜本的な解決には至っていません。
加えて、2025年には70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人に達すると見込まれており、後継者が決まらないまま時間切れを迎える企業が大量に発生する可能性があります。
仮にこのまま有効な承継策が講じられなければ、約127万社が廃業に追い込まれるとされており、それに伴う雇用や地域経済への影響も無視できません。
事業の継続と地域社会の維持の観点からも、後継者問題は喫緊の社会的な課題です。
後継者問題の背景と原因は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
日本における少子高齢化の進行は、後継者問題を引き起こす構造的な要因のひとつです。
経営者の年齢が上昇する一方で、子どもの数自体が減少しており、承継可能な人材がいない企業が増えています。
また、子どもがいても、すでに別の職業に就いていたり、都市部で生活の基盤を築いていたりする場合、地方の家業を継ぐことは現実的な選択肢とはいえません。
特に地方では、若年人口の都市部流出により、親族内に限らず地域内でも後継者が見つかりにくくなっており、地域密着型の企業ほど承継のハードルが高まっています。
後継者問題の背景には、企業自体に対する将来への期待が持てないという課題もあります。
長期的に業績が振るわない、あるいは市場や顧客ニーズの変化に対応できていない企業では、経営を引き継ぐことに魅力を感じにくい実情があります。
特に、デジタル化や業務効率化が進んでおらず、競争力の向上に取り組んでいない企業では、将来的な発展性が見えづらく、若い世代にとってはリスクの大きい選択肢に思えます。
また、経営者の個人的な手腕や人脈に依存する運営が続いていた場合、事業の価値が属人的であると判断され、引き継いでも再現が難しいと見なされることも多いです。
事業承継には、経営スキルだけでなく一定の経済的負担も伴います。
特に親族外承継では、後継者が株式を取得するための資金を自ら用意する必要があり、その調達が難航することで承継が進まないケースも多く見られます。
加えて、親族内承継であっても相続税や贈与税の負担が大きければ、承継そのものを断念せざるを得ないケースも多いです。
さらに、事前に資産や財務の整理、税務対策が行われていない企業では、後継者にかかる手続きやコストが複雑化し、承継後の経営に悪影響を及ぼす恐れもあります。
こうした資金面・制度面の障壁が、後継者問題に拍車をかける要因です。
後継者問題が顕在化する背景には、承継に向けた準備の遅れという経営上の課題があります。
日々の業務に追われる中で、事業承継を「いずれ考えればよい」と後回しにするケースは少なくありません。
しかし、実際の承継には後継者の選定と育成、経営ノウハウの引き継ぎ、財務や契約関係の整理、関係者との調整など、段階的かつ継続的な取り組みが求められます。
計画を立てずに高齢を迎えてしまうと、引継ぎのタイミングを逃し、結果的に買い手も見つからず廃業せざるを得ない事態に陥る可能性が高いです。
後継者問題が特に深刻な業種は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
建設業は後継者問題が深刻化している代表的な業種のひとつです。
中小の建設事業者には、職人技術に依存する個人経営が多く見られ、経営者の高齢化とともに承継の難易度が増しています。
若年層の業界離れも顕著で、技術や現場経験を引き継ぐ人材が確保できないまま、人手不足が慢性化しているという現状です。
特に、この業界では顧客との信頼関係や仕事の進め方が経営者個人に強く結びついていることが多く、事業価値を第三者に伝えることが難しいという課題もあります。
さらに、公共工事の減少や地域の人口減少など、将来的な需要の不透明さも加わり、事業承継の意欲が持たれにくいため、廃業に追い込まれるケースが少なくありません。
中小規模の町工場では、後継者問題が深刻です。
長年にわたり蓄積されてきた独自技術や職人の技能は、十分に文書化されていないことが多く、その継承が特定の個人に依存してしまいがちです。
こうした属人的な技術体系は、後継者にとってハードルが高く、承継の意欲を削いでしまいます。
さらに、グローバル競争の激化や国内市場の縮小など、外部環境の変化により、将来的な展望が描きにくいと感じられることも要因のひとつです。
第三者へのM&Aを試みても、特殊な技術や設備の価値を客観的に評価することが難しく、買い手とのマッチングが成立しづらいという課題も抱えています。
小売業では、個人商店や家族経営の店舗が多いため、後継者問題が顕著に表れています。
こうした業態は地域に密着した営業形態である一方、収益の安定性に欠ける場合も多く、後継者にとっては将来性への不安が拭えません。
特に、全国規模のチェーン店やEC市場の台頭により競争環境が厳しくなっており、独立型店舗が持続的に利益を上げることが難しくなっています。
また、店主の接客スタイルや顧客との関係性が店舗の価値そのものである場合、経営者交代によって店の魅力が失われると懸念され、承継をためらわれることも多いです。
親族に後継者がいない場合、第三者承継も容易ではなく、閉店を選ばざるを得ないケースが年々増加しています。
飲食業は、後継者問題が特に顕著な業種のひとつです。
長時間労働が常態化している上、人手不足や原材料費の高騰など、経営環境の厳しさが続いており、家業としての継承に対する心理的ハードルが高くなっています。
また、飲食店の魅力は、料理の味や接客、店の雰囲気といった要素が経営者個人の感性や経験に大きく依存していることが多く、経営者交代によって店の魅力が損なわれるリスクへの懸念も敬遠される要因です。
親族内に継ぎ手がいない場合でも、第三者への承継は容易ではなく、レシピの再現性や既存顧客の維持といった点で買い手の不安が残ってしまう現状であるため、閉店を選ぶ店舗が後を絶たちません。
農業や林業、水産業といった一次産業では、後継者問題が長年にわたり深刻な課題とされています。
特に農業では、経営者の高齢化とともに耕作放棄地の増加が進み、地域の景観や食料供給体制にまで影響を及ぼしています。
これらの産業は家業として代々受け継がれることが多いものの、都市部への人口流出や、将来の収益性・労働負担への不安から、若年層の承継意欲は低下傾向です。
林業や水産業でも同様に、体力を要する作業や天候・自然環境に左右されやすい事業特性、さらには採算の取りにくさが障壁となり、新たな担い手の確保が困難な状況が続いています。
こうした産業の衰退は、地域経済や自然資源の持続可能性にも直結する重要な問題です。
後継者問題がもたらす企業・社会へのデメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
後継者が見つからない企業が廃業に追い込まれると、地域経済に大きな影響を及ぼします。
特に地方では、地元に密着した事業者の役割が大きく、店舗や工場の閉鎖が生活インフラの衰退や人口減少を加速させる要因となりえます。
また、地域内でのお金の流れが停滞し、消費や投資の活力が失われることで、地域全体の経済活動が弱体化していきます。
ひとつの企業の廃業が周囲の企業・住民・自治体に連鎖的な影響を与えることは少なくありません。
企業が存続できなければ、従業員の雇用も維持できません。
長年勤務してきた社員の仕事が突然なくなることは、再就職の難しい中高年層にとっては大きな打撃です。
加えて、熟練の職人が持つ技能や地域に根ざしたサービスノウハウなど、企業が蓄積してきた無形資産も、承継されないまま消失する恐れがあります。
こうした技術の断絶は、産業の競争力低下にもつながり、長期的には国全体の経済成長に悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。
後継者問題によって廃業が相次ぐと、特定業種や地域における供給体制に偏りが生じます。
例えば、地元の製造業や建設業、小売・サービス業の縮小で地域に必要な物資やサービスが外部依存となり、コスト増や供給遅延などの問題につながる恐れがあります。
農業・林業・水産業などの一次産業でも同様で、生産力の低下は食料自給率や資源管理にも影響を及ぼします。
このように、後継者不在は経済の土台となる供給バランスを崩し、産業の健全な循環を阻害する要因となるかもしれません。
後継者問題は、若年層の地元離れをさらに促進する要因でもあります。
地域に根ざした中小企業が廃業すれば、地元で働ける選択肢が減少し、若者は自然と都市部や他の地域への就職・移住を選ぶことになります。
特に、家業の継承が視野に入らない場合、地元に残る理由が見い出しにくくなり、地域社会の持続性にも影響を及ぼします。
若い世代が地元を離れれば、新たな後継者候補が生まれにくくなり、さらなる企業の減少と人口流出を招くという悪循環に陥ります。
事業承継の課題は、単に一企業の存続問題にとどまらず、地域における人材循環や定住の基盤を脅かす構造的なリスクも伴います。
後継者問題の主な解決策は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
親族内承継は、子どもや兄弟姉妹などの親族に経営を引き継ぐ、最も伝統的な事業承継の形です。
創業者の理念や経営方針を維持しやすく、関係者からの理解も得やすいため、社内外の混乱を最小限に抑えながらスムーズに移行できる点が大きな利点です。
しかし近年では、上述しているように少子化の進行や職業選択の多様化により、親族内に継承の意思を持つ人がそもそも存在しないケースが増えています。
たとえ親族がいても、他業種に進んでいたり、事業の将来性に不安を感じていたりする場合、承継に踏み切れない状況が少なくありません。
このように、かつては一般的だった親族内承継も、現在では実現が難しい選択肢になりつつあります。
従業員承継は、社内で働く幹部や中核人材に経営を引き継ぐ方法です。
会社の業務や文化をよく理解している人材が後継者となるため、経営の移行が比較的スムーズで、取引先や従業員からの信頼も得やすいというメリットがあります。
また、親族に比べて実務経験が豊富であることも多く、即戦力としての期待も高いです。
一方で、株式の取得や借入れによる資金負担が大きいことや、経営に対する責任の重さから、承継をためらう従業員も少なくありません。
さらに、株主構成や経営権の整理なども必要となるため、準備不足のまま進めると承継が頓挫するリスクもあります。
親族や従業員に適任者がいない場合、外部から経営者候補を迎えるという選択肢もあります。
業界や経営の経験を持つ人材を登用することで、新たな視点や戦略を取り入れる点が大きなメリットです。
近年では、地域や業種に特化したマッチング支援や「プロ経営者」の紹介サービスも増えており、社外からの承継が以前よりも現実的な手段となっています。
ただし、企業文化や従業員との信頼関係を築くには時間がかかるため、候補者との相性や段階的な引継ぎプロセスが重要です。
M&Aによる第三者承継は、親族や社内に後継者がいない場合に有効な手段です。
会社の経営権や事業を他社や個人に譲渡することで、事業を継続させながら自らは経営から退くことが可能です。
近年は中小企業向けのM&A市場も拡大しており、マッチング支援や公的サービスの活用によって、選択肢が広がりつつあります。雇用や取引先との関係を維持できる点も大きなメリットといえるでしょう。
一方で、買い手との交渉やデューデリジェンス、統合後の運営などには一定の専門性が求められるため、早期から専門家の関与が必要である点に注意が必要です。
後継者が見つからず、承継手段も講じられなかった場合、最終的に廃業を選択する企業もあります。
設備や資産を売却し、負債を整理した上で事業を終了させるという決断は、経営者にとって苦渋の選択です。
ただし、準備を怠ったまま時間切れになると、資産価値が下がり、従業員や取引先へも大きな影響を与えます。
そのため、廃業を前提とする場合でも、早期から専門家と相談し、計画的に進めることが望ましいでしょう。
後継者の不在に悩まされ、廃業の選択を迫られるケースが後を絶たない中で、近年注目されている方法が、第三者へ事業を引き継ぐM&Aという手法です。
M&Aは、事業を未来につなぐ選択肢であると同時に、経営資源を失わずに次の世代に引き継ぐ持続可能な承継の形でもあります。
また、M&Aは単なる終わりの手段ではなく、企業にとって新たな展開や成長戦略の一環にもなり得るため、後継者問題の解決を超えて、企業の可能性を広げるひとつの手段です。
M&Aによる事業承継の手法は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
株式譲渡は、現経営者が保有する自社の株式を買い手に譲渡することで経営権を移転する、M&Aにおける代表的な手法です。
この方法の大きな特徴は、会社そのものの法人格が維持される点にあります。
つまり、会社名や所在地、事業内容、既存の契約関係が変更されることなく、オーナーだけが入れ替わる形で承継が行われます(ただし、間接的に変更になる場合もあります)。
そのため、取引先や従業員にとっては「これまでどおりの会社」として受け入れやすく、社内外の信頼関係を保ちやすい点がメリットです。
雇用契約や取引契約の再締結が不要なケースが多いため、手続きの煩雑さも比較的少なく、移行期間中の混乱を最小限に抑えられます。
ただし、会社が抱える債務や法的リスクも株式とともに引き継がれるため、買い手は事前に財務・法務の調査(デューデリジェンス)を行い、経営リスクの有無を慎重に見極めることが大切です。
売り手側は、必要な情報を正確かつ透明に開示することが求められます。
事業譲渡とは、会社全体ではなく、特定の事業単位を対象として、営業に必要な資産・契約・従業員・ノウハウなどを買い手に移転するM&Aの手法です。
譲渡されるのは法人ではなく、あくまでその一部の機能や権利義務に限定されるため、買い手は必要な事業だけを選んで取得できる柔軟性があります。
一方で、譲渡元の法人は存続するため、売却した事業以外の負債やリスクは引き続き譲渡側が負担しなければなりません。
特徴的なのは、契約や許認可の名義が法人単位で管理されているケースが多いため、譲渡対象の顧客や取引先、従業員との関係については、それぞれ個別に再契約が必要となる点です。
そのため、株式譲渡に比べて事務手続きが煩雑になる傾向がありますが、譲渡対象の選択が可能な点や、会社全体に負債や経営上の課題を抱えている場合でも健全な事業部分だけを引き継げるメリットがあります。
特に、財務や法的リスクを避けたい買い手にとっては実務上有効な手法といえます。
M&Aを活用し後継者問題に取り込むメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
M&Aによる事業承継が中小企業でも現実的な選択肢として浸透しつつある背景には、公的・民間を問わず、マッチング支援の体制が整ってきたことが大きく関係しています。
例えば、中小企業庁が全国に設置している「事業引継ぎ支援センター」では、地域の専門家が相談対応から買い手の紹介までを一貫して支援しており、一定の基準を満たせば無料で活用可能です。
加えて、M&A仲介会社やマッチングプラットフォームなど民間サービスも多様化しており、業種や地域、規模に応じた細かなマッチングが行えます。
かつては限られたネットワークや知人の紹介に頼らざるを得なかった中小企業でも、今では情報を積極的に公開し、条件に合う買い手と出会える機会が多いです。
こうした環境整備により、M&Aを進める際の心理的・実務的なハードルは着実に下がってるといえます。
M&Aによる事業承継は、経営者だけでなく従業員にとっても大きなメリットがあります。
その最大の利点のひとつが、雇用の継続が可能になるという点です。廃業を選んだ場合、事業が終了するだけでなく、従業員は職を失い、生活基盤が脅かされてしまいます。
一方で、M&Aによって事業が他者に引き継がれれば、一般的に雇用契約も引き継がれ、従業員はこれまでどおり働き続けられる可能性が高いでしょう。
特に、株式譲渡を用いた承継では法人自体が存続するため、契約上の手続きや制度変更も最小限に抑えられ、現場の混乱を避けやすい点が特徴です。
長年の経験を持つ人材の流出を防げるだけでなく、従業員の不安を軽減することで、事業承継後の組織の安定にもつながる点もメリットといえます。
M&Aによる事業承継では、経営者が交代しても、既存の顧客や取引先との関係を維持しやすい点が大きな利点です。
特に、株式譲渡の場合、法人格がそのまま引き継がれるため、会社名や契約主体は通常変わらず、取引条件や契約書の再締結が不要となるケースが多いです。ただし、契約内容や条件によっては例外もあります。
これにより、外部から見た事業の継続性が保たれ、企業の信用やブランドイメージに与える影響を最小限にとどめられます。
また、取引先にとっても「会社の中身は変わらない」という安心感があり、これまで築いてきた信頼関係を損なわずに済む点がメリットです。
経営者が変わることで生じがちな不安や誤解を回避できることは、M&Aを選択する上での大きな利点であり、円滑な事業承継を後押しする要素といえます。
M&Aは、経営者にとってリタイア後の生活設計を見据えた現実的な資金確保の手段でもあります。
廃業を選んだ場合、保有する資産の売却や在庫の処分で得られる金額は限定的で、長年築いてきた事業の価値が十分に反映されないこともあります。
一方でM&Aでは、単に目に見える資産だけでなく、顧客基盤や従業員、事業の将来性など無形の価値も含めて評価されるため、適正な価格での譲渡が可能です。
これにより、経営者は事業から円滑に退くと同時に、老後の資金を確保できます。
さらに、信頼できる相手に会社を託せたという精神的な安心感を得られる点も見逃せません。M&Aは、事業の終わりではなく、経営者自身の次の人生へのステップとしても有効な選択肢です。
M&Aによる後継者問題のデメリットは、次のとおりです。
それぞれを分かりやすく解説します。
M&Aによる事業承継は有効な選択肢ではあるものの、必ずしも全ての企業に買い手が現れるわけではありません。
特に、業績不振や将来性の乏しい事業、地域密着型で外部からは理解されにくい企業などでは、そもそも買収のニーズが生まれにくいという課題があります。
また、買い手が見つかっても条件面で折り合いがつかずに交渉が成立しないケースも多く、情報発信力やマッチング支援の活用が不可欠です。
M&Aでは売り手と買い手の間で価格や条件のすり合わせが必要ですが、経営者が期待する評価額と、買い手側の評価にギャップが生じることは少なくありません。
特に中小企業では、売上や利益だけでなく、将来のリスクや負債の有無、経営の属人性なども評価の対象となるため、「もっと高く売れると思っていたのに」という結果になることもあります。
また、譲渡後の経営体制や従業員の処遇など、非金銭的な条件についても希望が通らないことがあり、交渉には柔軟な姿勢と冷静な判断が求められます。
M&Aによって新たな経営者が就任すると、従来の経営方針や企業文化が大きく変化する可能性があります。
これは企業の成長や改善にとってプラスになる面もありますが、既存の従業員や取引先にとっては戸惑いや不安の原因です。
例えば、組織体制の再編や人事制度の見直し、業務プロセスの変更などが進むと、「従来の会社らしさ」が薄れ、離職者が出るリスクもあります。事業承継を成功させるには、M&A後の統合プロセス(PMI)も含めて丁寧に設計することが重要です。
M&Aを進める際には、買い手との交渉過程で財務情報や取引先のリスト、業務プロセスなど、機密性の高い情報を開示する必要があります。
通常は秘密保持契約(NDA)を交わしてから情報を提供しますが、それでも意図しない情報の拡散や漏えいのリスクを完全に排除できません。
また、交渉段階の情報が外部に漏れた場合、「会社が売却されるらしい」といったうわさが独り歩きし、従業員の不安や取引先からの警戒を招く恐れもあります。
経営者自身が信頼できる専門家と連携し、情報統制と説明責任のバランスを取ることが、M&A成功の前提条件です。
最後にM&Aと後継者問題に関するよくある質問とその回答を紹介します。
全ての企業がM&Aの対象になるわけではありませんが、赤字企業や小規模な事業でも引き継ぎを希望する買い手が見つかることはあります。
業績だけでなく、地域密着の顧客基盤や技術力、独自のビジネスモデルなども評価されるため、新たな成長機会が生まれる可能性があります。専門家の支援を受けながら、強みを整理することが第一歩です。
M&Aは、余裕を持って取り組むことが成功の鍵です。経営が安定しているうちに準備を始めることで、選択肢を広く持ち、希望に近い条件での譲渡が可能です。
逆に、急な体調悪化や引退によって時間的猶予がないと、交渉が不十分になったり、買い手との条件調整が難しくなったりするリスクがあります。
一般的には、売却や引退を意識し始めた段階から3年〜5年ほど前には計画を立て、専門家への相談が理想的です。
早めの準備が、経営者自身の納得いく承継と、事業の円滑な継続につながります。
一般的には、買い手の選定から契約締結まで6カ月〜1年程度かかります。
企業規模や条件によって短期間でまとまることもありますが、買い手探しやデューデリジェンス(企業調査)、契約交渉など複数のステップがあるため、早めの準備が重要です。
多くのM&Aは秘密保持契約(NDA)を交わした上で進行し、一定の段階までは社外や社内に情報が漏れないよう配慮されます。
ただし、最終的には従業員や取引先への説明が必要になるため、信頼関係を損なわないようタイミングや説明の仕方を慎重に設計することが大切です。
売却を進めるかどうかの最終判断は売り手にあります。
たとえ条件面で魅力的なオファーがあっても、買い手の理念や経営スタンスに納得できない場合は、契約を締結せずに見送れます。
従業員の雇用方針や、地域との関係性をどう維持するかといった点も含め、単に価格だけでなく、「誰に託すか」という視点が後悔しない承継には不可欠です。
M&Aによる事業承継では、旧経営者が一定期間アドバイザーや顧問として関わる形を取ることが一般的です。
新しい経営体制にスムーズに移行するには、従業員や取引先への引き継ぎを丁寧に行うことが重要であり、そのためにも段階的に退くスタイルが好まれます。
買い手側にとっても、旧経営者の経験やネットワークは大きな資産となるため、一定期間の関与が前提となる合意を結ぶケースが多いです。
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