申告分離課税のメリットを完全解説!税金削減につながる節税効果5つ

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M&A事業承継を検討する経営者にとって、税負担は重要な課題の一つです。株式売却で数千万円の利益が出た場合、総合課税では最高45%もの税率が適用される可能性があります。しかし、申告分離課税を活用すれば、一律20.315%の税率で大幅な節税効果を実現できるというメリットがあります。

申告分離課税の制度は、特定の所得について他の所得と分離して税額を計算する仕組みで、高額所得者ほどそのメリットを実感できます。損失の3年間繰越控除や特定口座の活用など、申告分離課税の制度を知っているかどうかで、税負担が大きく変わるメリットある重要な制度です。

本記事では、申告分離課税の5つのメリットから具体的な活用シーン、注意点まで、M&A・事業承継を成功に導く税務戦略として詳しく解説します。

申告分離課税とは?

税制は複雑に感じられるかもしれませんが、申告分離課税を理解することで、M&A事業承継における大幅な節税効果を実現できる可能性があります。ここでは、申告分離課税の基本的な仕組みを詳しく解説します。

他の所得と分けて計算する申告分離課税の基本

申告分離課税とは、特定の所得について他の所得とは合算せずに、独自の税率で税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式です。この制度は、特に高額な所得が発生した場合の税負担を軽減することを目的として設けられています。

例えば、中小企業のオーナーがM&Aで株式を売却し、大きな譲渡所得が発生したとします。もしこの所得を給与所得などと合算してしまうと、累進課税により税率が最高45%まで上がり、莫大な税負担となってしまいます。しかし申告分離課税では、株式の譲渡所得に対して一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計)の税率が適用されるため、大幅な節税効果を得ることができます。

この制度により、事業オーナーは安心してM&Aや事業承継を検討することができ、日本経済の活性化にも繋がる重要な税制といえるでしょう。

総合課税と申告分離課税の決定的な違い

総合課税は、給与所得、事業所得、不動産所得など複数の所得を合算し、その合計額に対して累進課税制度で税額を計算する方式です。所得が195万円以下であれば5%、4,000万円超では45%という具合に、所得が多いほど税率が高くなります。

一方、申告分離課税では所得の種類ごとに独立して税額を計算します。株式の譲渡所得(20.315%)や不動産の長期譲渡所得(20.315%)のように、多くの場合は所得額に関係なく一定の税率が適用されます。ただし、例えば退職所得のように、申告分離課税の対象でありながら、計算後の課税所得金額に対しては累進税率が適用される所得もあります。

この違いは、特に高所得者にとって大きなメリットとなります。年収3,000万円の経営者が株式売却で2,000万円の利益を得た場合、総合課税なら最高税率45%が適用される可能性がありますが、申告分離課税なら一律20.315%で済むのです。

源泉分離課税との違いと使い分け

分離課税には「申告分離課税」と「源泉分離課税」の2種類があります。申告分離課税は納税者が確定申告で税額を計算し納税する方式ですが、源泉分離課税は支払者が所得税を源泉徴収し、受取者は確定申告する必要がない方式です。

源泉分離課税の代表例は、預貯金の利子や特定の保険契約の満期金などです。これらは一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計)の税率で源泉徴収されます。

申告分離課税が適用される主要な所得は株式の譲渡所得、不動産の譲渡所得、退職所得、山林所得などです。これらの所得については、特定口座の「源泉徴収あり」を選択することで、申告不要となる場合もありますが、損失の繰越控除などの特典を受けるためには確定申告が必要となります。

M&Aを検討する中小企業オーナーにとって、これらの違いを理解することで最適な税務戦略を立てることができ、より有利な条件での事業承継や株式売却を実現できるでしょう。

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    申告分離課税のメリット|5つの節税効果

    申告分離課税は中小企業オーナーや投資家にとって、大幅な節税効果をもたらす重要な制度です。特にM&A事業承継を検討している方にとって、この制度の活用は税負担を大きく軽減する可能性があります。ここでは、申告分離課税がもたらす5つの具体的なメリットについて詳しく解説します。

    累進課税を回避して税負担を大幅に軽減

    申告分離課税の最大のメリットは、累進課税制度を回避できることです。総合課税では所得が増えるほど税率が上がり、最高で45%の所得税が課されますが、申告分離課税では所得額に関係なく一定の税率が適用されます。

    例えば、年収2,000万円の中小企業オーナーがM&Aで株式を売却し3,000万円の譲渡所得を得た場合を考えてみましょう。総合課税なら最高税率45%が適用される可能性がありますが、申告分離課税なら一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)となります。この差は約1,200万円以上の節税効果を生む可能性があり、事業承継における大きなメリットとなります。

    この制度により、事業オーナーは安心して次世代への事業承継やM&Aによる事業拡大を検討できるようになり、日本経済の活性化にも寄与しています。

    損失の繰越控除で3年間の節税効果を実現

    申告分離課税では、特に上場株式等の譲渡などで損失が発生した場合に「損失の繰越控除」という強力な節税制度を活用できます。これは、上場株式等の譲渡で損失が出た年に確定申告を行うことで、その損失を翌年以降3年間にわたって利益と相殺できる制度です。一般株式(非上場株式)の譲渡損失については、原則としてこの繰越控除は適用されません。

    具体的な節税効果を見てみましょう。1年目に上場株式等の投資で500万円の損失、2年目に200万円の利益、3年目に400万円の利益が出た場合、損失繰越を適用すると2年目と3年目の利益600万円から1年目の損失500万円を差し引いて、課税対象は100万円のみとなります。

    この制度を活用するためには、損失が発生した年から連続して確定申告を行う必要がありますが、取引がない年でも申告を継続することで、将来の利益に対する税負担を大幅に軽減できます。

    他の所得に影響されない一律税率の安心感

    申告分離課税では、他の所得がどれだけ多くても、対象となる所得には一律の税率が適用されます。これにより、税負担の予測が立てやすく、事業計画や投資戦略を策定する際の安心材料となります。

    給与所得や事業所得が多い高額所得者であっても、株式の譲渡所得については20.315%の税率しか適用されません。これは、事業が好調で給与所得が多い経営者にとって特に大きなメリットとなり、投資活動や事業拡大への意欲を高める効果があります。

    また、税率が固定されているため、売却タイミングを検討する際の判断材料も明確になり、より戦略的な資産運用が可能となります。

    特定口座の活用で確定申告の手間を削減

    申告分離課税の対象となる上場株式等については、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択することで、確定申告の手間を大幅に軽減できます。この口座を利用すると、証券会社が自動的に税金を計算・徴収してくれるため、原則として確定申告は不要となります。

    さらに、特定口座内では配当金と譲渡損失の損益通算も自動的に行われるため、複雑な計算をする必要がありません。これは、本業で忙しい中小企業オーナーにとって非常に有効な制度です。

    ただし、損失の繰越控除を受けたい場合や、複数の証券会社で取引している場合の損益通算を行いたい場合は、確定申告が必要となる点にご注意ください。

    M&A・事業承継時の税務戦略として活用可能

    申告分離課税は、M&Aや事業承継において極めて有効な税務戦略として活用できます。特に、株式譲渡による事業承継では、莫大な譲渡所得が発生する可能性がありますが、申告分離課税により税負担を大幅に軽減できます。

    例えば、企業価値5億円の会社を売却する場合、取得費を除いた譲渡所得が4億円となったとします。総合課税なら最大1億8,000万円の税金が課される可能性がありますが、申告分離課税なら約8,100万円で済み、約1億円の節税効果を得ることができます。

    この節税効果により、事業承継後の生活資金の確保や新たな事業への投資資金として活用でき、より柔軟な事業承継計画を立てることが可能となります。また、買い手企業にとっても、売り手の税負担が軽減されることで、より良い条件での交渉が期待できるでしょう。

    申告分離課税の対象となる所得

    申告分離課税が適用される所得は、政策的な理由から特別な取り扱いを受ける重要な所得です。これらの所得を正しく理解することで、適切な税務戦略を立てることができます。M&A事業承継を検討する中小企業オーナーにとって特に重要な対象所得について解説します。

    株式等の譲渡所得(M&Aでの株式売却含む)

    株式等の譲渡所得は、申告分離課税の代表的な対象所得です。この制度は、上場株式と一般株式(非上場株式)で区分して計算される点が特徴的です。

    M&Aにおける株式売却では、多くの場合、非上場株式の譲渡に該当します。譲渡所得の計算は「収入金額(譲渡価額)−必要経費(取得費+委託手数料等)」で算出され、税率は一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)となります。

    重要なポイントは、上場株式と一般株式は別々に計算され、損益通算ができないことです。例えば、上場株式で損失が出て非上場株式で利益が出た場合、これらを相殺することはできません。しかし、同じ区分内(例えば上場株式等同士、一般株式等同士)であれば損益通算が可能です。さらに、上場株式等の譲渡損失については、3年間の繰越控除も活用できます。一般株式等の譲渡損失は原則として繰越控除の対象となりません。

    中小企業のM&Aでは数千万円から数億円の譲渡所得が発生することも珍しくないため、この制度による節税効果は極めて大きいといえるでしょう。

    不動産の譲渡所得と税率の仕組み

    不動産の譲渡所得も申告分離課税の重要な対象です。この所得の特徴は、所有期間によって税率が大きく異なることです。

    所有期間が5年以下の短期譲渡所得では、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%(所得税30%×2.1%)の合計39.63%という高い税率が適用されます。一方、所有期間が5年を超える長期譲渡所得では、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%(所得税15%×2.1%)の合計20.315%となり、短期譲渡の約半分の税率となります。

    さらに、居住用財産の譲渡では3,000万円の特別控除や、所有期間10年超の居住用財産では軽減税率(課税譲渡所得6,000万円以下の部分は所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%の合計14.21%)などの優遇措置もあります。

    ・短期譲渡所得:所有期間5年以下で税率39.63%
    ・長期譲渡所得:所有期間5年超で税率20.315%
    ・居住用特例:3,000万円特別控除等の優遇措置

    事業用不動産を含む企業の資産売却では、これらの税率の違いを理解して売却タイミングを検討することが重要な税務戦略となります。

    退職所得・山林所得・その他の対象所得

    退職所得は申告分離課税の中でも特に優遇された所得です。計算式は原則として「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」となり、退職所得控除額を差し引いた後、さらに2分の1を乗じる仕組みになっています。ただし、勤続年数5年以下の役員等以外の従業員が受け取る退職金については、退職所得控除額を控除した残額のうち300万円を超える部分について、この2分の1課税が適用されません。

    退職所得控除額は勤続年数に応じて決まり、勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」で計算されます。例えば、勤続30年で退職金2,000万円を受け取る場合、控除額は1,500万円となり、課税対象は(2,000万円−1,500万円)×1/2=250万円のみとなります。

    山林所得は、所有期間5年超の山林を伐採・譲渡した場合に適用される特殊な所得です。「総収入金額−必要経費−特別控除額(最大50万円)」で計算され、5分5乗方式という独特な税額計算方法が採用されています。

    その他の申告分離課税対象所得には、先物取引に係る雑所得(税率20.315%)や、特定公社債等の利子所得なども含まれます。これらの所得はそれぞれ独立して税額計算が行われ、他の所得との損益通算は基本的にできません。申告分離課税の所得間であっても、損益通算は原則として「同一の特定の所得カテゴリー内」(例:上場株式等の譲渡損益と申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得、先物取引に係る雑所得内など)に限定されます。

    M&Aや事業承継では、これらの複数の所得が同時に発生することもあるため、それぞれの制度を正しく理解し、最適な税務戦略を検討することが重要になります。

    申告分離課税のメリットを最大化する3つの活用シーン

    申告分離課税の真価は、適切な場面で戦略的に活用することで発揮されます。特に中小企業の経営者や投資家にとって、この制度を最大限に活用できる具体的なシーンを理解することで、大幅な節税効果を実現できます。ここでは、実際のビジネス現場で申告分離課税が威力を発揮する3つの代表的な活用シーンについて詳しく解説します。

    M&Aで株式を売却する中小企業オーナー

    中小企業オーナーがM&Aで自社株式を売却する際、申告分離課税は最も効果的な節税手段となります。特に、企業価値が高い会社を売却する場合の節税効果は絶大です。

    具体例として、企業価値3億円の製造業を経営するオーナーが、後継者不在のため会社を売却するケースを考えてみましょう。株式の取得費が1,000万円だった場合、譲渡所得は2億9,000万円となります。総合課税なら最高税率45%が適用され約1億3,000万円の税負担となる可能性がありますが、申告分離課税なら約5,900万円で済み、約7,100万円の節税効果を得ることができます。

    この大幅な節税により、売却後の生活資金確保や新事業への投資、家族への資産継承などがより柔軟に行えるようになります。また、税負担が軽減されることで、買い手企業との価格交渉においても、より有利な条件を検討する余地が生まれます。

    さらに、株式売却と同時に退職金を受け取る場合は、退職所得も申告分離課税となるため、二重の節税効果を享受できる点も大きなメリットです。

    複数の高額所得がある経営者・投資家

    年収が高い経営者や投資家にとって、申告分離課税は累進課税による高い税率を回避する重要な手段となります。特に、事業所得や給与所得が既に高い方が、投資による譲渡所得を得る場合の節税効果は顕著に現れます。

    例えば、年収5,000万円の経営者が株式投資で1,000万円の利益を得た場合を考えてみましょう。総合課税なら給与所得と合算されて最高税率45%が適用される可能性がありますが、申告分離課税を選択することで株式投資の利益には一律20.315%の税率が適用されます。この差により、約250万円の節税効果を得ることができます。

    また、複数の投資商品を保有している場合、損益通算の効果も最大化できます。上場株式で損失が出ても、同じ年の配当所得(申告分離課税選択時)と相殺でき、さらに損失は3年間繰り越すことが可能です。

    ・上場株式の譲渡所得:一律20.315%の税率
    ・配当所得との損益通算:年内の利益と損失を相殺
    ・損失繰越:最大3年間の繰越控除が可能

    これらの制度を組み合わせることで、投資活動全体の税負担を大幅に軽減できるため、より積極的な資産運用戦略を検討できるようになります。

    将来の事業承継を見据えた税務対策

    事業承継を将来的に検討している経営者にとって、申告分離課税は長期的な税務戦略の重要な要素となります。特に、段階的な株式譲渡や事前の資産整理において、この制度を活用することで税負担を最小化できます。

    事業承継において、株式を「売却」により譲渡する場合、一度に全株式を譲渡するのではなく、数年にわたって段階的に譲渡することで、各年の譲渡所得に対する申告分離課税の税負担を平準化できる可能性があります。例えば、総額2億円の株式を4年間で年間5,000万円ずつ譲渡する場合、各年の税負担は約1,000万円(5,000万円×20.315%)となります。ただし、これが親族内での事業承継など、実質的に贈与とみなされる場合には贈与税の問題が生じる可能性があり、また相続税や事業承継税制など他の税制度との関連も考慮する必要があるため、単純な分割譲渡が常に全体の税負担を軽減するとは限りません。専門家への相談が推奨されます。

    また、事業承継前に不要な投資用不動産や有価証券を整理する際も、申告分離課税の活用により税負担を抑えることができます。特に、損失が出ている資産については、利益が出ている資産と同じ年に売却することで損益通算を図り、全体の税負担を軽減する戦略が有効です。

    さらに、後継者への株式譲渡と並行して、経営者自身が上場株式等への投資活動を行う場合、その譲渡損失を3年間繰り越すことで将来の上場株式等の譲渡益と相殺できるため、事業承継全体の税務コストを間接的に削減できる可能性があります。

    このように、申告分離課税は単発的な節税手段ではなく、長期的な事業承継戦略の中で継続的に活用することで、その真価を発揮する制度といえるでしょう。

    申告分離課税の注意点とデメリット

    申告分離課税は多くのメリットがある一方で、いくつかの制限やデメリットも存在します。これらを事前に理解しておくことで、より適切な税務戦略を立てることができます。特に、M&Aや投資活動を行う際には、これらの注意点を十分に把握しておくことが重要です。

    損益通算の制限に注意

    申告分離課税を利用する際には、損益通算のルールが複雑で、多くの制限がある点に注意が必要です。

    総合課税の所得とは基本的に通算不可:
    申告分離課税の対象となる所得(例:株式の譲渡所得、不動産の譲渡所得)で生じた損失は、原則として給与所得や事業所得といった総合課税の所得の利益と相殺(損益通算)することはできません。

    ・申告分離課税の所得間でも通算は限定的:
    申告分離課税の所得同士であっても、自由に損益通算ができるわけではありません。原則として、損益通算は「特定の所得カテゴリー内」に限られます。

    例えば、上場株式等の譲渡損失は、同じ年の申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等とは損益通算できます。しかし、この損失を不動産の譲渡益と通算することは原則できません。

    同様に、不動産の譲渡損失も、原則として株式の譲渡益など他の申告分離課税の所得とは通算できません(特定の居住用財産の譲渡損失には特例があります)。

    一般株式(非上場株式)の譲渡損失は、他の所得(上場株式等の譲渡益や配当所得を含む)との損益通算や繰越控除は原則として認められていません。

    このように、申告分離課税の所得は種類ごとに分けて扱われるため、ある投資で損失が出ても、別の種類の投資で利益が出ていれば、それぞれ独立して課税されるケースが多くなります。このため、複数の投資を行っている場合でも、全体の税負担が必ずしも軽減されるわけではない点に留意が必要です。

    特定口座「源泉徴収あり」の落とし穴

    特定口座の「源泉徴収あり」は確定申告が不要になる便利な制度ですが、いくつかの注意すべき点があります。最も重要なのは、他の所得が少ない場合や扶養に入っている場合に、かえって税負担が重くなる可能性があることです。

    例えば、専業主婦の方が夫の扶養に入りながら株式投資を行い、年間100万円の利益を得たとします。特定口座「源泉徴収あり」では自動的に約20万円の税金が源泉徴収されますが、本来なら配偶者の扶養範囲内であれば税負担はゼロまたは非常に少額で済む可能性があります。

    さらに、複数の証券会社で取引している場合、A社で損失、B社で利益が出ても、特定口座内では損益通算されません。確定申告を行うことで、これらの損益を通算して税負担を軽減できる場合があります。

    ・扶養範囲内でも自動的に源泉徴収される
    ・複数の証券会社間での損益通算ができない
    ・配当控除など他の優遇制度が適用されない

    これらの点を考慮して、特定口座「源泉徴収あり」と確定申告のどちらが有利かを個別に検討することが重要です。

    確定申告の計算が複雑になるケース

    申告分離課税では、所得の種類ごとに異なる計算方法や税率が適用されるため、確定申告が複雑になる場合があります。特に、複数の申告分離課税所得がある場合や、損失の繰越控除を行う場合は、計算ミスのリスクが高まります。

    M&Aで株式を売却し、同時に不動産も売却するような場合、株式譲渡所得と不動産譲渡所得はそれぞれ異なる計算方法と税率で処理する必要があります。株式は一律20.315%ですが、不動産は所有期間により税率が変わり、さらに特別控除の適用可能性も検討する必要があります。

    また、前年以前から繰り越している損失がある場合、その適用順序や計算方法も複雑になります。損失の繰越控除を適用するためには、損失が発生した年から連続して確定申告を行う必要があり、1年でも申告を忘れると繰越控除の権利を失ってしまいます。

    さらに、申告書第三表(分離課税用)の記入も、総合課税の申告書と比較して複雑であり、各所得区分に応じた正確な記入が求められます。計算ミスや記入漏れがあると、本来受けられるはずの節税効果を得られない可能性があるため、複雑なケースでは税理士などの専門家への相談を検討することが賢明です。

    このように、申告分離課税は大きな節税効果をもたらす一方で、制限や複雑さもあるため、個々の状況に応じて慎重に検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることが重要です。

    申告分離課税の計算方法と確定申告の実務ポイント

    申告分離課税の手続きは、正確な計算と適切な申告書作成が重要です。特に、M&Aや投資活動で大きな所得が発生した場合、計算ミスは多額の税負担に直結する可能性があります。ここでは、実務上重要なポイントを踏まえて、具体的な計算方法と確定申告の進め方を解説します。

    株式譲渡所得の税額を正確に計算する

    株式譲渡所得の計算は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)」の基本式に従いますが、実務では取得費の算定が最も重要なポイントとなります。

    取得費には、株式の購入代金だけでなく、購入時の手数料、名義書換料、印紙税なども含まれます。M&Aの場合、株式の取得が長期間前であることが多く、取得時の証憑書類を紛失している場合があります。この際は、譲渡価額の5%を概算取得費として計算することも可能ですが、実際の取得費が5%を上回る場合は、可能な限り実額での計算を行うべきです。

    譲渡費用には、仲介手数料、印紙税、登記費用、測量費などが含まれます。M&Aアドバイザリー費用なども譲渡費用として計上できる場合があるため、関連する領収書や契約書は必ず保管しておきましょう。

    税額計算の具体例を見てみます。譲渡価額1億円、取得費2,000万円、譲渡費用500万円の場合、譲渡所得は7,500万円となり、税額は約1,524万円(7,500万円×20.315%)となります。この計算には復興特別所得税も含まれているため、別途計算する必要はありません。

    確定申告書第三表に必要事項を記載する

    申告分離課税の申告には、通常の確定申告書(第一表・第二表)に加えて「申告書第三表(分離課税用)」の提出が必要です。この第三表の記入が、申告分離課税の手続きで最も重要な作業となります。

    第三表では、まず総合課税の所得金額と所得控除額を第一表から転記します。次に、申告分離課税の各所得区分(株式等譲渡所得、不動産譲渡所得など)ごとに、所得金額と税額を計算・記入します。

    記入時の注意点として、上場株式等と一般株式等は区分して記載する必要があります。また、前年以前からの損失繰越がある場合は、該当する付表を合わせて提出し、繰越損失の金額を正確に反映させなければなりません。

    損益通算がある場合の計算順序も重要です。同一年分の申告分離課税所得間での損益通算を行った後、繰越損失がある場合はその控除を行い、最終的な課税所得金額を算出します。

    ・第一表から総合課税の金額を転記
    ・所得区分ごとに分けて所得金額を計算
    ・損益通算と繰越損失控除を適用
    ・各区分の税額を計算して合計

    これらの手順を正確に行うことで、適正な税額計算が可能となります。

    複雑なケースは税理士に相談する

    申告分離課税は制度が複雑で、特に以下のようなケースでは税理士などの専門家に相談することを強く推奨します。

    M&Aで複数の資産を同時に売却する場合、株式譲渡所得と不動産譲渡所得が同時に発生し、それぞれ異なる計算方法と税率が適用されます。さらに、特別控除の適用可能性や、取得費の按分計算など、専門的な判断が必要な場面が多数あります。

    損失の繰越控除を複数年にわたって適用する場合も、計算が複雑になります。特に、過去に申告漏れがあった場合の更正手続きや、繰越期間中に制度改正があった場合の取り扱いなど、一般の方では判断が困難な状況が生じることがあります。

    また、事業承継に伴う株式譲渡では、相続税の取得費加算の特例や、事業承継税制との関係など、複数の税制が関連する場合があります。これらの制度を適切に組み合わせることで、大幅な節税効果を得られる可能性がありますが、専門知識が不可欠です。

    税理士に相談する際は、M&Aや事業承継に精通した税理士を選ぶことが重要です。一般的な税務申告と比較して、申告分離課税は特殊な計算や判断が多いため、経験豊富な専門家のアドバイスを受けることで、制度のメリットを最大限に活用できるでしょう。

    早期の相談により、売却前の事前対策や、最適な売却タイミングの検討なども可能となるため、大きな取引を予定している場合は、実行前に専門家との相談を行うことをお勧めします。

    まとめ|申告分離課税のメリットを活用してM&A・事業承継を成功させよう

    申告分離課税は、中小企業オーナーにとって極めて有効な節税制度です。累進課税を回避し一律20.315%の税率が適用されることで、M&Aでは数千万円から億単位の節税効果を実現できます。損失の3年間繰越控除や特定口座の活用により、長期的な税負担最適化も可能です。ただし、他の所得との損益通算制限や確定申告の複雑さにも注意が必要です。M&Aや事業承継を成功させるには、この制度を正しく理解し戦略的に活用することが不可欠であり、複雑なケースでは専門家との連携をお勧めします。

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