退職金の手取り額をシミュレーション!税金の計算方法や勤続年別相場

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退職金は手取りでいくら手元に残るのか、定年や転職を控えて不安を感じる方は少なくありません。事前にシミュレーションして把握しておかないと、老後資金の計画に狂いが生じることもあるでしょう。退職金の額面の金額と手取り額には差があり、勤続年数や受け取り方によって税額が大きく変わります。

本記事では、退職金の手取り額をシミュレーションするための計算手順を、企業規模や業種別の相場データとあわせて解説します。退職金にかかる税金のルールや、ケース別の具体例、受け取り方法ごとの違いも紹介するため、自身に最適な選択を検討する材料としてご活用ください。

条件別の退職金の相場

退職金の金額は、勤める会社の規模や業種、勤続年数、退職理由などさまざまな条件で変動します。まずは客観的なデータをもとに、自分の想定額を把握しましょう。

企業規模別の相場

退職金の相場を語るうえで、企業規模による差は避けて通れません。厚生労働省「令和5年賃金事情等総合調査」によれば、資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上の大企業では、定年退職まで勤め上げた男性の平均退職金は大学卒で2,139万6,000円、高校卒で2,019万9,000円となっています。

一方、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」による中小企業のモデル退職金は、大学卒で1,149万5,000円、高校卒で974万1,000円です。大企業と中小企業では大学卒で約990万円、高校卒で約1,046万円もの差が生じており、生涯設計に与える影響も小さくありません。

【企業規模別・学歴別の平均退職金額】

区分大学卒高校卒
大企業2,139万6,000円2,019万9,000円
中小企業1,149万5,000円974万1,000円
差額990万1,000円1,045万8,000円

[出所:厚生労働省「令和5年 賃金事情等総合調査」/東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」

同じ企業規模でも学歴により差があり、大企業内では大学卒と高校卒の差は約120万円、中小企業では約175万円となっています。自分の勤務先の規模を踏まえて相場感を持つことが、将来設計の第一歩です。

業種別の相場

業種によっても退職金額には明確な差が現れます。中小企業を対象とした東京都産業労働局の調査(令和6年版)では、大学卒の平均退職金は金融業・保険業が1,940万4,000円と突出して高く、次いで卸売業・小売業が1,239万円、製造業が1,107万6,000円と続きます。

一方、運輸業・郵便業は938万3,000円、建設業は929万6,000円と、業種間で1,000万円近い開きがみられます。金融業・保険業は高校卒でも1,497万円と高水準で、業界全体の給与体系や退職金積立体制が手厚いことが背景にあるといえるでしょう。

興味深いのは、建設業では大学卒929万6,000円に対し高校卒が991万4,000円と、学歴による逆転現象が生じている点です。現場経験の長さや職人としての技能評価が反映される業種特性を示しており、単純に学歴だけでは退職金の多寡は測れないことがわかります。

勤続年数別の相場

退職金は勤続年数に応じて増えるのが一般的ですが、伸び方には特徴があります。中央労働委員会(大企業・2021年調査)の大学卒データによると、勤続10年(32歳)の会社都合退職では305万7,000円、勤続20年(42歳)で1,021万6,000円、勤続30年(52歳)で2,054万5,000円となっています。

  • 勤続10年(大企業・会社都合)305万7,000円 / (中小企業・会社都合)144万8,000円
  • 勤続20年(大企業・会社都合)1,021万6,000円 / (中小企業・会社都合)408万1,000円
  • 勤続30年(大企業・会社都合)2,054万5,000円 / (中小企業・会社都合)776万2,000円

勤続30年を超えると金額の伸び幅が鈍化する傾向がみられます。また勤続3年未満では退職金が支給されないケースもあるため、短期離職を検討する際は就業規則の確認が欠かせません。

退職理由による違い

同じ勤続年数でも、退職理由によって支給額は大きく変わります。会社都合退職と自己都合退職では、多くの企業で支給率に差が設けられているためです。中央労働委員会の調査でも、勤続10年で会社都合305万7,000円に対し自己都合は182万8,000円と、約40%の差が生じています。

自己都合退職とは、転職や結婚、病気などを理由に本人の意思で退職を申し出るケースを指します。一方、会社都合退職とは、定年や経営破綻、業績不振に伴う整理解雇などが該当し、企業側の事情によるものです。会社都合の方が失業給付でも優遇されるため、退職の際は理由の扱いを慎重に確認しましょう。

[出所]
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
厚生労働省「令和5年 賃金事情等総合調査」

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    退職金の種類

    退職金には複数の制度があり、それぞれ資金の準備方法や受け取り方が異なります。自社の制度を正しく理解することが、手取り額の最大化につながります。

    退職一時金制度

    退職一時金制度は、退職時にまとまった金額を一括で支給する最もオーソドックスな仕組みです。企業が社内で独自に資金を積み立て、退職金規定に基づいて支給額や支給時期を定めます。長年勤めた功労への報奨という位置づけが明確で、従業員側にとってもわかりやすい制度といえるでしょう。

    ただし、この制度は法律で導入が義務付けられているわけではなく、そもそも退職金制度を持たない企業も存在します。厚生労働省の調査では、企業規模が小さくなるほど制度の導入率が低下する傾向にあり、就業規則や退職金規程で自社の状況を確認することが重要です。

    また、企業の業績が悪化した場合、社内積立のみでは十分な原資が確保できないリスクも指摘されています。従業員としては、勤務先の財務状況にも一定の注意を払う必要があるでしょう。

    確定給付企業年金

    確定給付企業年金(DB)は、企業が従業員にあらかじめ約束した金額を退職時に支給する制度です。資産の運用責任は企業側が負うため、運用がうまくいかなかった場合でも従業員が受け取る金額は変わりません。将来の受給額が事前に確定している安心感が最大の特徴です。

    受取方法は「一時金としてまとめて受け取る」ケースと「年金として分割で受け取る」ケースから選択できます。ライフプランに応じて選べる柔軟性があり、住宅ローン返済や老後の生活費補填など、目的に応じた活用が可能です。

    将来の資金計画を立てやすいことがDBの大きなメリットですが、企業側の運用負担が大きいため、近年は次に紹介する企業型確定拠出年金へ移行する企業が増えています。

    企業型確定拠出年金

    企業型確定拠出年金(DC)は、企業(または個人)が掛金を拠出し、従業員自身が運用を行う年金制度です。株式投資信託や定期預金など、提示された商品ラインアップから自ら選択するため、運用成果によって将来受け取る金額が変動します。

    最大のメリットは、運用益が非課税である点です。通常の投資では利益に対して約20%の税金がかかりますが、DC内の運用益は課税されず、複利効果を最大限に享受できます。受取方法も「一時金」「年金」「両者の併用」から選べる柔軟性があります。

    一方で、運用リスクを従業員が負う点には注意が必要です。相場変動によっては元本を下回る可能性もあるため、リスク許容度に応じた商品選択と、定期的な運用状況の確認が求められます。

    退職金共済

    退職金共済は、長期にわたる独自の退職金積立が難しい中小企業を支える制度です。代表例が「中小企業退職金共済制度(中退共)」で、企業が毎月掛金を拠出し、勤労者退職金共済機構が資産管理と運用を担います。

    この制度の特徴は、従業員の退職時に共済機構から直接退職金が支払われる点にあります。仮に勤務先が倒産した場合でも、積み立てられた退職金は保全されるため、従業員にとっては安心感の高い仕組みといえるでしょう。

    中小企業に勤める方は、自社が退職金共済に加入しているかを確認しておくことをおすすめします。加入状況によって将来の受給見込みが変わるため、退職金の手取りシミュレーションを行う前提として押さえておきたい情報です。

    退職金にかかる税金のルール

    退職金には所得税と住民税がかかりますが、長年の功労に報いる観点から手厚い税制優遇が用意されています。基本ルールを理解しましょう。

    退職金にかかる税金

    退職金は所得税の中の「退職所得」に分類され、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税が課されます。ただし、給与所得や事業所得などの他の所得とは合算せずに計算する「分離課税」が採用されている点が大きな特徴です。

    課税額の計算は、まず勤続年数に応じた退職所得控除額を求め、退職金から控除した後の金額の2分の1を課税対象とする流れです。この課税対象額に所得税の税率表を当てはめて所得税を算出し、住民税は一律10%を乗じて算出します。

    1. 退職所得控除額を計算する
    2. 控除後の金額から課税対象額を算出する(原則2分の1)
    3. 所得税は税率表、住民税は10%を適用して税額を計算する

    分離課税により、退職金が高額でも他の所得と合算されないため、税率が過度に高くならない仕組みが確保されています。これが退職金の税負担を抑える基本的な考え方です。

    退職金の税制優遇

    退職金には「退職所得控除」と「2分の1課税」という2つの大きな税制優遇があります。退職所得控除は勤続年数が20年以下の場合「40万円×勤続年数(最低80万円)」、20年超の場合「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算されます。

    2分の1課税は、退職金から控除額を差し引いた後の金額をさらに半分にしてから課税する仕組みです。たとえば退職金2,000万円、退職所得控除1,500万円のケースでは、「(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円」が課税対象となります。

    ただし、2022年1月1日以降、勤続年数5年以下の役員以外の従業員が受け取る退職金については、300万円を超える部分に2分の1課税が適用されない点に注意が必要です。短期離職者を対象とした課税強化策として導入された制度改正であり、該当する方は事前に確認しておきましょう。

    [参考]国税庁「退職金と税」

    退職金の手取り額の計算方法

    退職金の手取り額は、おおまかに3つのステップを踏めば計算できます。順を追って具体的な計算方法を解説します。

    [ステップ1]勤続年数から「退職所得控除額」を計算

    最初のステップは、退職所得控除額の算出です。勤続年数が20年以下か20年超かで計算式が変わります。20年以下の場合は「40万円×勤続年数」で、80万円に満たない場合は80万円が最低保証されます。20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。

    勤続年数に1年未満の端数がある場合は、切り上げて計算する点に注意しましょう。たとえば勤続20年1日の方は21年として扱われます。この端数処理のルールにより、控除額が数十万円変わるケースもあるため、退職日の設定は慎重に検討する価値があります。

    また、障がい者となったことが直接の原因で退職した場合には、通常の控除額に100万円が加算されます。勤続年数が長いほど控除額が大きくなる設計となっており、長年勤め上げた方ほど税制優遇の恩恵を受けやすい仕組みです。

    [ステップ2]課税対象となる「退職所得」を計算

    次に、実際に課税される「退職所得」を算出します。計算式は「退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2」です。ここでの収入金額は源泉徴収前の額面金額を指します。

    たとえば退職金1,700万円、勤続30年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×(30-20)=1,500万円」となり、退職所得は「(1,700万円-1,500万円)×1/2=100万円」と計算されます。額面1,700万円のうち、実際に課税対象となるのはわずか100万円という結果です。

    もし退職金が退職所得控除額を下回った場合、退職所得はゼロとなり、所得税・住民税ともに課税されません。勤続年数が長く退職金が控除枠内に収まるケースでは、手取りが額面とほぼ同額になることもあります。

    [ステップ3]所得税・住民税を算出

    最後に、退職所得に対する税額を計算します。所得税は課税所得金額に応じた累進税率(5%~45%)が適用され、住民税は一律10%です。加えて所得税額の2.1%が復興特別所得税として上乗せされます。

    先ほどの退職所得100万円のケースで計算すると、所得税は「100万円×5%=5万円」、復興特別所得税は「5万円×2.1%=1,050円」、住民税は「100万円×10%=10万円」となり、税金合計は15万1,050円です。手取り額は1,700万円-15万1,050円=約1,684万9,000円となります。

    なお、退職時に会社を通じて「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、これらの税金が源泉徴収され、原則として確定申告は不要です。申告書を出さないと一律20.42%で源泉徴収されるため、必ず提出しましょう。

    [参考]国税庁「退職金と税」/「退職金を受け取ったとき(退職所得)」

    退職金の手取り額シミュレーション

    ここまで解説した計算方法をもとに、具体的なケースで退職金の手取りシミュレーションを実施してみましょう。定年退職と中途退職の2パターンの方法を紹介します。

    [ケース1] 定年退職(勤続37年・退職金2,000万円)

    新卒から定年まで勤め上げ、退職金2,000万円を受け取るケースを想定します。勤続37年の場合、退職所得控除額は「800万円+70万円×(37-20)=1,990万円」となります。

    退職所得は「(2,000万円-1,990万円)×1/2=5万円」です。この5万円に対して所得税5%(2,500円)、復興特別所得税(約52円)、住民税10%(5,000円)が課され、税金合計はわずか7,552円にとどまります。

    【ケース1の計算結果】

    項目金額
    退職金額面2,000万円
    退職所得控除額1,990万円
    退職所得5万円
    税金合計約7,552円
    手取り額約1,999万2,000円

    2,000万円という大きな金額であっても、勤続年数が長いため税負担はほぼ発生せず、額面とほぼ同額が手取りとして残ります。長期勤続の税制メリットの大きさが明確にわかる結果です。

    [ケース2]中途退職(勤続15年・退職金600万円)

    次に、勤続15年で退職金600万円を受け取る中途退職のケースの方法を見てみましょう。勤続年数が20年以下のため、退職所得控除額は「40万円×15年=600万円」となります。

    退職金600万円と退職所得控除額600万円が同額のため、退職所得はゼロとなり、所得税・住民税ともに課税されません。つまり、額面600万円がそのまま手取りとして手元に残る結果となります。

    このように、勤続年数と退職金額のバランスによっては税金がまったくかからないケースも珍しくありません。転職のタイミングを検討する際は、退職金額と控除枠の関係を確認しておくと、想定外の税負担を避けられるでしょう。事前のシミュレーションが老後資金設計の精度を高めます。

    受け取り方法で変わる退職金の手取り額

    退職金の受け取り方は「一括」「年金」「併用」の3種類があり、それぞれ税制上の扱いが異なります。選択次第で手取り総額が数百万円変わることもあります。

    一括受け取り

    一括受け取り(一時金)は、退職金をまとめて一度に受け取る方式です。税法上は「退職所得」として分離課税で扱われ、退職所得控除と2分の1課税の恩恵をフルに受けられるため、税負担を最小限に抑えられます。

    また、翌年の社会保険料に反映されない点も大きなメリットです。住宅ローンの繰り上げ返済や子どもの教育資金、リフォーム費用など、退職直後にまとまった資金が必要な方に適した受け取り方といえるでしょう。

    ただし、一括で受け取ると使い方次第で早期に資金が枯渇するリスクがあります。特に住宅ローン繰り上げ返済に大半を充てた結果、老後の生活資金が不足する事例も報告されているため、事前の資金計画が欠かせません。

    年金受け取り

    年金受け取りは、退職金を5年から20年など決められた期間・回数に分けて受け取る方法です。税法上は「雑所得」として総合課税の対象となり、公的年金等控除が適用されますが、公的年金や給与など他の所得と合算して所得税・住民税が計算されます。

    メリットは、受け取り期間中も残額が運用されるため、一括受け取りよりも受取総額が多くなる傾向がある点です。また定期的な収入が確保されるため、計画的に生活費を管理したい方に向いています。

    一方、翌年以降の社会保険料に年金収入が反映されるため、国民健康保険料や介護保険料の負担が重くなる可能性があります。公的年金等控除は退職所得控除に比べて控除額が小さく、税負担が増えるケースもあるため、慎重な検討が必要です。

    一時金と年金を併用して受け取り

    一部を一時金、残りを年金として受け取る併用方式は、両方のメリットを享受できる柔軟な選択肢です。一時金部分には退職所得控除、年金部分には公的年金等控除がそれぞれ適用されるため、控除枠を最大限に活用できます。

    たとえば、住宅ローン残債の一括返済や自宅リフォーム費用として一時金部分を活用し、残額を年金で受け取って毎月の生活費に充てるといった使い方が可能です。目的別に受け取り方を使い分けることで、税負担と生活の安定を両立できる点が大きな魅力といえるでしょう。

    ただし、年金部分は税金や社会保険料に影響を与えるため、事前のシミュレーションが不可欠です。また、企業によっては併用に対応していないケースもあるため、勤務先の退職金規程を確認してから検討することをおすすめします。

    まとめ

    退職金の手取り額は、「勤続年数」「退職金額」「受け取り方法」の3要素で大きく変動します。退職所得控除と2分の1課税を活用すれば、長期勤続者ほど税負担を抑えて額面に近い金額を受け取れます。

    退職後の資金計画を立てるためにも、事前にご自身の条件で退職金の手取りシミュレーションを行い、最適な受け取り方を選択しましょう。各種の計算ツールを利用する方法もありますが、会社の退職金規程と税制ルールの両面から確認することが重要です。

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