ガバナンスとは?意味・必要性・コンプライアンスとの違いをわかりやすく解説 

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近年、企業経営の場面で「ガバナンス」という言葉が頻繁に使われるようになりました。 

上場企業だけでなく、中小企業やスタートアップにおいても、組織としての信頼性・透明性を担保する仕組みとして、ガバナンスの強化が求められています。 

「ガバナンスとは何か?」「コンプライアンスと何が違うのか?」「中小企業やM&Aの場面では、どのように関係するのか?」 

この記事では、こうした疑問を解消しながら、経営に必要な視点としての“ガバナンス”の本質と実務への落とし込み方を、専門家の視点でわかりやすく解説していきます。 

ガバナンスとは何か? 

ガバナンスとは、一般に「統治」「管理」「支配」などと訳される言葉で、ビジネスの世界では「企業を健全に運営するためのルールと仕組み」を指します。 

企業活動は、経営者の判断に大きく依存する側面がある一方で、その判断が社会的責任を果たし、長期的に企業価値を高めるものであるためには、外部の視点や客観的な管理体制が不可欠です。 そこで必要となるのが、以下のような機能を備えた「ガバナンス」です。 

  • 経営判断に対する監視・牽制(牽制機能)
  •  リスク管理や不正防止(内部統制)
  • ステークホルダーへの説明責任(アカウンタビリティ)
  • 組織の持続性と社会的信頼の確保 

ガバナンスは単なる監視機能ではなく、企業が社会的信頼を維持し、継続的に成長していくための“骨格”となる枠組みといえるのです。 

ガバナンスが求められる背景 

かつては経営者の判断が絶対視されていた時代もありましたが、近年では「ガバナンス=企業における健全な統治」の重要性が急速に高まっています。 

 これは一時的な流行ではなく、社会全体が企業に求める“あり方”の変化に対応するものです。ここでは、ガバナンスが求められるようになった主な背景を3つに分けて解説します。 

企業不祥事や内部統制の強化要請 

過去の粉飾決算、データ改ざん、ハラスメント、情報漏洩など、企業の不祥事が相次いで社会問題化する中で、ガバナンスの重要性が再認識されるようになりました。 

「経営者の独断」や「内部牽制の欠如」によって起こるリスクは、企業の信頼を一瞬で失わせ、顧客・従業員・取引先にまで大きな影響を及ぼします。 

そのため、金融庁や取引所の要請を受けて、ガバナンス・コードに基づいた内部統制や監査体制の強化が求められています。

ステークホルダー重視の経営トレンド 

従来の経営は「株主第一主義」に偏る傾向がありましたが、近年では、従業員・顧客・取引先・地域社会などあらゆる利害関係者=ステークホルダーに対する責任が重視されるようになっています。 

この流れを受けて、経営判断の透明性や説明責任がより強く求められ、ステークホルダーの信頼を得る手段としてガバナンス体制の整備が不可欠となっています。 

中小企業・非上場企業にも求められる理由 

「ガバナンスは上場企業だけの話」と思われがちですが、実際には中小企業や非上場企業にも適切な統治体制が求められています。 

特に以下のような場面では、ガバナンスが実質的な経営課題となります。 

  • 社内不正の未然防止 
  • 経営者交代や事業承継時のリスク管理 
  • M&Aにおける売却先からの信頼確保 
  • 金融機関や投資家からの資金調達 

規模の大小に関係なく、「持続可能な経営」を目指すなら、ガバナンスは避けて通れないテーマなのです。 

ガバナンスとコンプライアンスの違い 

「ガバナンス」と「コンプライアンス」は、どちらも企業の健全経営に不可欠な概念です。 しかしこの2つは、意味も役割も異なりながら、相互に補完し合う関係にあります。混同されがちな言葉だからこそ、その違いを正しく理解しておくことが重要です。 

目的と仕組みの違い 

項目 ガバナンス コンプライアンス 
目的統治・経営監督 法令遵守・企業倫理 
対象 組織・経営全体の管理体制法令や企業規則、企業倫理など
機能 監視・牽制・説明責任 行動基準・ルールの明文化 
実務 取締役会・監査制度 社内規定・教育・通報制度 

簡単に言えば、ガバナンスは「組織をどう管理するか」、コンプライアンスは「組織がルールを守ること」に焦点を当てています。 

「守る力」と「整える力」の違い 

  • コンプライアンス(守る力):法律や規則を守ることで、企業としての信頼を損なわないようにする「防御」の視点。 
  • ガバナンス(整える力):経営判断が健全に行われるような体制を整備し、企業価値を高めるための「設計・監督」の視点。 

コンプライアンスが「ミスを起こさないための足場固め」なら、ガバナンスは「企業を正しい方向に導くための舵取り役」ともいえるでしょう。 

相互補完的な関係性と整理図 

両者は対立する概念ではなく、互いを補い合う関係にあります。 たとえば、社内規定を整備しても、経営陣がそれを守らなければ意味がありません。逆に、いくら監督体制を整えても、社員の意識が低ければ不祥事は防げません。 

■ガバナンス = 企業の方向性と監視体制を設計する   

■コンプライアンス = そのルールを現場で実行・遵守する 

どちらか一方では不十分であり、両方を整えることで初めて「真に機能する企業統治」が実現するのです。 

ガバナンスの構成要素と仕組み 

ガバナンスとは単に「ルールがあること」ではありません。 

 実際に企業内で機能するためには、制度・体制・プロセスの3点を有機的に連動させる必要があります。ここでは、企業ガバナンスを構成する代表的な要素とその仕組みについて解説します。 

ガバナンス体制(取締役会・監査役・第三者委員会など) 

ガバナンスの中核となるのは、経営を監視・監督する体制の整備です。とくに以下のような機関の設置・運用が基本となります。 

  • 取締役会:経営方針を決定し、執行役の監督を行う 
  • 監査役(会):取締役の業務執行を監査・牽制する役割 
  • 社外取締役・第三者委員会:外部の視点からの透明性・中立性を担保 

経営陣の暴走や不正を未然に防ぐためにも、意思決定と監視の分離がガバナンスにおいて重要な基本です。 

内部統制・リスク管理・情報開示の役割 

ガバナンスを機能させるためには、経営判断の土台となる内部統制の仕組みや、リスクを可視化する体制の整備も不可欠です。 

  • 内部統制:業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守を確保する仕組み 
  • リスク管理:事業運営上のリスク(財務・法務・人的など)を特定・評価・対応
  • 情報開示:利害関係者に対して適切なタイミングで正確な情報を伝える責任

これらが揃うことで、組織内での適切な判断・迅速な対応・社外との信頼関係構築が可能になります。 

経営判断の透明性と説明責任(アカウンタビリティ) 

企業ガバナンスの核心は、企業が健全な経営を行うために、株主やステークホルダーの利益を最大化することを目的とした仕組みにあります。 

  • 重大な意思決定のプロセスが記録・検証可能である 
  • 社内外への報告義務・説明責任(アカウンタビリティ)が明確になっている
  • 関係者が意思決定に納得できる透明性がある 

ガバナンス・コードでは、「透明性の高い経営を行うための見張る仕組み」だけではなく、株主やステークホルダーに対する説明を行うことも明記されています。

ガバナンス強化の方法と具体例 

ガバナンスと聞くと、「大企業だけがやること」と思われがちですが、中小企業でも実践可能な方法は数多くあります。 重要なのは、会社の規模や業種に合った体制・仕組みを整え、“健全で説明できる経営”を実現することです。 

ここでは、ガバナンス強化の具体的な取り組みを、実務視点で紹介します。 

中小企業でも実践できる取り組み 

中小企業の場合、すべてを制度化・形式化するのは現実的ではないケースもあります。その場合は、以下のような「できるところから」のステップが効果的です。 

  • 経営会議の定例化と議事録の保存 
  • 経営判断プロセスの文書化(稟議書・決裁フロー) 
  • 簡易的な内部監査の実施(四半期ごとなど) 
  • 社内ルール(行動規範・ハラスメント防止規定)の整備

「組織として意思決定を共有し、記録を残す」という文化づくりが、実質的なガバナンスの第一歩となります。 

外部取締役・顧問の活用 

企業内部だけではバイアスや惰性が生じやすいため、第三者的な視点を持つ外部人材の活用は非常に有効です。 

  • 社外取締役の登用:経営判断に対する監視と助言の機能 
  • 監査役の外部化:専門的・中立的なチェック機能の強化 
  • 弁護士・会計士などの専門家の顧問活用

第三者を経営の一部に巻き込むことで、ガバナンス体制に“透明性”と“納得性”を与える効果が期待できます。 

社内ルール・教育制度の整備 

ガバナンスが機能するためには、「現場の行動」がルールに基づいて動いている必要があります。そのためには、ルールの整備と、社員への周知・教育がセットであることが大切です。 

  • 就業規則、コンプライアンス規定、情報管理ルールの明文化
  • 新人研修・管理職研修での倫理教育の導入
  • 通報窓口や内部通報制度(ホットライン)の設置 

「ルールはあるけど誰も知らない」「通報しても対応されない」といった状態では、ガバナンスが形骸化してしまいます。仕組みと運用の両輪が求められます。 

M&Aや事業承継におけるガバナンスの重要性 

M&A事業承継の場面において、企業の価値を決定づける大きな要素のひとつが「ガバナンス」です。 これは単なる経営管理の話ではなく、ガバナンスを強化することで企業価値の向上にもつながります。 

ここでは、なぜM&Aや承継においてガバナンスが重要視されるのかを3つの視点から解説します。 

譲渡企業におけるガバナンス評価の視点 

M&Aにおいて買収候補となる企業のガバナンス体制は、デューデリジェンス(DD)で重点的に確認されるポイントです。 

  • 意思決定が属人的になっていないか 
  • 不正やリスクに対する仕組みが機能しているか
  • 契約・財務・労務に関する内部管理が整っているか 

特に中小企業では、経営者の個人判断に頼るケースが多いため、「経営者がいなくなったあとも運営できる体制か?」という視点が問われます。 

買収後のPMI(統合)における組織統治の必要性 

M&A成立後の統合プロセス(PMI=Post Merger Integration)においても、異なるガバナンス文化をどう融合するかが成功のカギを握ります。 

ガバナンス不全がM&Aのリスクになる理由 

ガバナンスが機能していない企業を買収した場合、以下のようなリスクが発生する可能性があります。 

  • 過去の不正・未払金・訴訟などの「簿外リスク」 
  • 不適切な契約やコンプライアンス違反による信用低下
  • 経営体制の崩壊やキーパーソン退職による人材流出 

一見すると業績が良好でも、「ガバナンス不全」は買収後の大きな落とし穴になるため、経営体制の健全性そのものが価値判断基準となっているのです。 

ガバナンスとは“信頼される企業”をつくる仕組み 

「ガバナンス」とは、単なるルールや制度ではなく、企業が社会的信頼を維持し、持続的に成長していくための管理体制です。 上場企業だけでなく、中小企業・非上場企業にとっても、意思決定の透明性・内部統制・説明責任といった要素を備えることが、経営の安定と信頼の獲得につながります。 

要点まとめ 

  • ガバナンスとは:企業を健全に運営するための統治体制や監視・管理の仕組みのこと。
  • コンプライアンスとの違い:ガバナンスは「組織全体の管理・運営」、コンプライアンスは「法令や規範の遵守」
  •  求められる背景:不祥事防止、ステークホルダー重視、M&A・承継の信頼性確保
  • 構成要素:取締役会・監査役・内部統制・情報開示などの制度的枠組み
  • 強化方法:外部人材の活用、社内規定の整備、教育体制の導入
  • M&Aにおける役割:社会的信用と企業価値の向上

経営の“見えない信用”をつくるのが、ガバナンスです。未来の選択肢を広げるために、いま取り組むべき仕組みを、一緒に考えていきましょう。 

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