事業継承での銀行の役割は?メリットとデメリットを徹底解説 

着手金・中間金無料 完全成功報酬型

事業承継の成否は、「誰に、いつ、何を相談するか」にかかっているといっても過言ではありません。 中でも銀行は、資金の提供だけでなく、実務に即したさまざまなアドバイスを行う支援機関として注目されています。自社株の承継や経営改善、税金対策など、銀行ならではの立場と情報網を活用した支援を受けられます。 

この記事では、銀行に相談できる内容や支援の特徴をはじめ、利用するメリット・デメリット、他の相談先との違いまで分かりやすく整理して解説します。 

事業承継における銀行の役割

銀行は融資などの支援を通じて企業と日常的に関わっていますが、事業承継の相談窓口としても重要な存在です。 

銀行はなぜ事業承継の相談先となるのか 

日本では経営者の高齢化が進み、事業承継は中小企業にとって喫緊の課題です。 

中小企業庁のデータによると、2025年には70歳以上の経営者が約245万人に達し、そのうち半数以上が後継者未定とされています。こうした中、銀行は単なる融資機関にとどまらず、日頃から企業と接する立場を生かし、事業承継の相談先としての役割を強めています。 

金融庁が提示する「金融仲介機能のベンチマーク」にも、銀行の事業承継支援が明示されており、自社株の譲渡や資金調達、税務対策まで幅広く支援しています。実際に、地方銀行を中心に事業承継に関する相談件数は年々増加しており、多くの経営者にとって銀行は身近で頼れるパートナーとなりつつあります。 

手数料はどれくらいかかるか 

銀行に事業承継の相談をした際の手数料は、銀行の規模や案件の内容によって異なります。 

メガバンクや外資系金融機関では、大規模なM&A案件を中心に取り扱っており、着手金・中間金・成功報酬の3段階で費用が発生することが一般的です。特に成功報酬は、譲渡価格などに一定の料率をかけて算出する「レーマン方式」が広く用いられています。 

一方、地方銀行では、銀行自身が直接報酬を請求することは少なく、提携するM&A仲介会社や士業の専門家に手数料が発生することが一般的です。その結果、相談者が思わぬ高額な費用を負担する可能性があります。 

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    事業承継について銀行に相談できる内容

    事業承継について銀行に相談できる内容は、次のとおりです。 

    • 自社株の相談 
    • 譲渡先紹介の相談 
    • 経営相談 
    • 税金対策の相談 

    それぞれを詳しく解説します。 

    自社株の相談 

    非上場企業では、事業承継の際に自社株の評価が課題です。相続や贈与による株式の移転には税金が発生するため、正確な株価の把握が必要です。 

    銀行ではこれまでの企業支援実績を基に、企業価値評価を行い、自社株の適正な価値を算定する支援が受けられます。 

    譲渡先紹介の相談 

    後継者不在の場合、M&Aを通じた第三者承継が有力な選択肢です。銀行では買収先を探している企業とのネットワークを活用し、譲渡企業と買収希望企業をマッチングさせる支援を行っています。 

    特に地方銀行や信用金庫は地域に根差した情報を持っており、M&A仲介会社とは異なる独自の候補先を紹介できる可能性があります。最近では銀行自身がM&A仲介部門を設ける事例も増えており、紹介だけでなく実務支援まで対応する動きも見られます。 

    さらに、銀行経由で承継が実現した場合には、信頼関係を背景にスムーズな資金調達や融資支援が受けられることもあります。 

    経営相談 

    銀行は企業の資金繰りや経営状況を把握しているため、経営相談においても信頼できる存在です。事業承継に関する相談では、後継者が決まっているものの承継方法が不明な場合、承継前の経営改善や、後継者不在時の方針決定、廃業手続きの相談まで幅広く対応します。 

    また近年では、経営相談に加えて事業承継支援に特化した部門を設けている銀行もあり、専門的な助言が可能になっています。後継者の育成や組織体制の見直しといった中長期的な経営課題についても、経営者の意向に沿った支援が期待できます。 

    税金対策 

    事業承継においては、相続税や贈与税などの税負担への備えが欠かせません。特に非上場企業では株式の評価額が高くなりがちで、後継者が納税に苦慮するケースもあります。 

    銀行はこうした課題に対し、一次的な相談窓口として機能し、事業承継税制の活用や納税猶予制度の適用に向けた助言を行えます。 

    例えば、一定の条件を満たすことで非上場株式の相続税や贈与税が猶予される制度についても、事前の確認や対策が求められます。銀行は制度の適用可否の検討や、制度活用後の資金調達なども視野に入れてサポートします。 

    事業承継について銀行に相談するメリット

    事業承継について銀行に相談するメリットとして、次の点が挙げられます。 

    • 銀行独自のノウハウを活用した支援が受けられる 
    • 経営状況を踏まえた実践的なアドバイスがもらえる 
    • 無料相談に対応している銀行が多い 
    • 資格を持つ行員による相談対応が受けられる場合もある 

    それぞれについて解説します。 

    銀行独自のノウハウを活用した支援が受けられる 

    銀行は中小企業との取引実績を通じて、経営や事業承継に必要な知識やノウハウを蓄積しています。 

    また近年では、自社株評価を含む事業承継の支援サービスを提供する銀行も増加しています。これにより、経営課題の整理や自社株・事業用資産の概算評価など、実務に即した支援を受けられます。 

    ただし、法務・財務・税務の専門分野については、提携する弁護士や税理士、M&A仲介会社などの専門家の協力を得る形で進められます。銀行の支援を基に、専門家の助言も活用することで、実行段階に向けた実効性の高い事業承継が期待できます。 

    経営状況を踏まえた実践的なアドバイスがもらえる 

    銀行は日常的に企業と接しており、融資などを通じて自社の経営状況を把握しています。そのため、改めて事業内容や理念を説明しなくても、状況に応じた現実的なアドバイスを受けられる点が大きなメリットです。 

    特に中小企業の場合、経営者が初めて相談する先として銀行が選ばれることも少なくありません。経営改善や後継者育成に関する支援も含め、事業承継の方向性を柔軟に相談できる点が特長です。 

    加えて、銀行と信頼関係が構築されていれば、承継後も金融支援を受けやすくなり、長期的な経営安定にもつながります。 

    無料相談に対応している銀行が多い 

    多くの地方銀行では、事業承継に関する初期相談に対して相談料や着手金が発生しない点が大きな特徴です。 

    これは銀行が地域企業との接点を深める目的で行っているものであり、税理士やM&A仲介会社など専門家への橋渡し役としての意味合いを持ちます。地方銀行は専門家から紹介料を得る仕組みが多いため、相談者から手数料を受け取らないケースが一般的です。 

    ただし、銀行自身が支援業務を直接担う場合や、アドバイザリー契約を締結する場合には、銀行への手数料が発生する可能性もあります。また、紹介された専門家に対しては別途費用がかかる点も事前に確認しておく必要があります。 

    資格を持つ行員による相談対応が受けられる場合もある 

    中小企業の事業承継ニーズの高まりを受けて、地方銀行では「事業承継アドバイザー」などの民間資格を取得した行員が相談対応を行う例が増えています。これにより、事業承継に関する基本的な疑問や方針の整理など、初期段階での支援が受けやすくなっています。 

    さらに、資格を持った行員が中心となり、定期的なセミナーや個別相談会を開催する取り組みも見られます。 

    ただし、実際の株式譲渡や契約手続きといった専門的な対応は、提携先の税理士や弁護士、M&A仲介会社などに引き継がれることが一般的です。 

    事業承継について銀行に相談するデメリット・リスク

    事業承継について銀行に相談するデメリット・リスクとして、次の点が挙げられます。 

    • 事業承継先に銀行の顧客が優先される可能性がある 
    • M&A・事業承継の経験が不足している可能性がある 
    • 利益相反のリスクがある 
    • 実務を銀行が担わないケースがある 
    • 紹介された専門家の手数料が高いことがある 

    それぞれについて解説します。 

    事業承継先に銀行の顧客が優先される可能性がある 

    銀行が第三者承継のマッチングを支援する場合、承継先として紹介されるのは多くの場合、同行の既存取引先です。 

    これは、銀行が持つネットワーク内から買い手企業を選定するため、自然と融資先や系列顧客が優先される構造にあります。その結果、本来の希望条件に合致する買い手と巡り合う機会が限定される可能性があります。 

    M&A・事業承継の経験が不足している可能性がある 

    一部の銀行では、事業承継やM&Aに関する支援経験が限定的であることがあります。 

    特に地方銀行の場合、M&A専門部署を設けていたとしても、対応実績が少なくノウハウが蓄積されていないケースが見られます。特殊な業種に対応できる体制が整っていないことで、柔軟な支援が受けられないこともあります。 

    また、案件の規模や業種によっては、銀行では対応が難しいと判断され、支援を断られる場合もあるため注意が必要です。 

    利益相反のリスクがある 

    事業承継先が銀行の既存取引先である場合、銀行は買い手企業に対して融資を実行できる立場にあります。 

    このような状況では、銀行が自らの利益を優先し、買い手側に有利な条件で交渉を進める可能性が否定できません。特に価格交渉や譲渡条件の設定において、売り手にとって不利な内容となる恐れがあります。 

    また、明確な違法行為でなくとも、銀行の立場が中立でなくなることにより、取引の公正性に影響が出るリスクがあります。こうした利益相反の可能性を理解した上で、条件や交渉内容については第三者の専門家による助言も取り入れ、冷静に判断することが重要です。 

    実務を銀行が担わないケースがある 

    銀行は事業承継に関する相談窓口として機能しますが、実際の手続きや交渉を銀行自身が担うことは多くありません。 

    多くの地方銀行では、提携先のM&A仲介会社や税理士などの専門家に業務を委託する体制がとられています。銀行はあくまで「入り口」としての役割にとどまり、承継の実務は外部機関に任せるため、進行や対応の質は紹介先に依存します。 

    そのため、紹介された担当者との相性や経験により、事業承継が思うように進まないこともあります。銀行を通じた相談であっても、実務を担う専門家を自ら確認・選定する意識が重要であり、銀行任せにすることで情報不足や意思疎通のズレが生じる恐れもあります。 

    紹介された専門家の手数料が高いことがある 

    銀行への相談自体は無料であることが多い一方で、紹介された士業やM&A仲介会社に支払う手数料が高額になるケースがあります。 

    銀行から紹介された専門家は、紹介料を銀行に支払っている場合があり、その分の費用が手数料に上乗せされることがあります。そのため、初期費用がかからず安心して相談を始めたものの、最終的には想定より高額な費用負担が発生するケースもあります。 

    銀行側から明確な費用体系が提示されないこともあるため、事業承継にかかる総コストについては、自身で積極的に確認する姿勢が必要です。 

    事業承継を銀行に相談する際に注意すべきポイント

    事業承継を銀行に相談する際に注意すべきポイントは次のとおりです。 

    • 数字を明確にして相談する 
    • 売り上げ規模に応じて相談する銀行を選ぶ 
    • 業績が悪い場合は積極的な支援を受けられない可能性がある 

    それぞれについて解説します。 

    数字を明確にして相談する 

    銀行に事業承継の相談をする際は、売り上げ規模や利益、負債、資産などの数字を明確にした上で臨むことが重要です。 

    銀行は数値情報を基に判断・助言を行うため、漠然とした不安や感情的な相談には対応が難しい傾向があります。承継後の経営計画や財務状況が曖昧なままでは、銀行としても的確な支援策を提示できません。 

    また、後継者の有無や事業の将来性、株主構成や資産状況など、相談前に自社の基本情報を整理しておくことで、より具体的な提案や支援が受けられます。特に初期相談では、決算書や財務諸表、株式構成などの資料を準備しておくと良いでしょう。 

    売り上げ規模に応じて相談する銀行を選ぶ 

    銀行によって対応可能な事業承継案件の規模は異なります。 

    地方銀行は地域の中小企業を主な対象とし、小規模案件には柔軟に対応できる一方で、規模が大きすぎる場合には対応できないことがあります。逆に、メガバンクや外資系銀行は大規模案件を中心に扱っており、小規模な承継には消極的な傾向です。 

    従って、自社の売り上げ規模や事業内容に応じて、適切な金融機関や支援機関を選定することが大切です。銀行に相談して断られた場合でも、事業承継・引継ぎ支援センターやM&A仲介会社など、他の選択肢を検討することで、対応可能な支援先が見つかることもあります。 

    業績が悪い場合は積極的な支援を受けられない可能性がある 

    銀行は融資先の信用力を重視するため、業績が悪化している企業に対しては事業承継支援を慎重に扱う傾向があります。 

    地方銀行では特に、将来的なリスクを避けたいという姿勢から、赤字が続いていたり債務超過の状態にある企業に対し、積極的なマッチング支援が行われない場合もあります。 

    しかし、業績が好調でなくても、商品力や地域性、従業員のスキルなどに魅力がある企業であれば、第三者による承継が成立することもあります。銀行が消極的な場合は、幅広いネットワークを持つM&A仲介会社に相談することで、適切な承継先を見つけられる可能性があります。 

    銀行に相談しながら進める事業承継の流れ

    銀行に相談しながら事業承継を進める場合は、承継の形態によって進め方が異なります。「親族や従業員への承継」と「第三者への承継」のそれぞれについて、基本的な流れを解説します。 

    親族や従業員への承継 

    準備の必要性の認識 

    事業承継は短期間で完了するものではなく、後継者の選定や育成、関係者との調整など多くの工程を要します。特に親族内や従業員への承継では、信頼関係や社内の立場・役割の調整といった繊細な要素が関わるため、計画的な準備が不可欠です。 

    この段階では、銀行は経営者に対して承継の必要性と早期着手の重要性を伝え、承継計画のたたき台作成に向けたアドバイスといった初動支援を行います。 

    経営状況・経営課題等の把握 

    準備を本格化させるには、自社の現状把握が不可欠です。財務内容や収益構造、経営課題などを客観的に把握し、後継者が事業を引き継ぎやすい環境を整える必要があります。 

    銀行はこれらの「見える化」をサポートするため、財務諸表分析や経営診断ツールを用いて支援を行います。 

    経営改善 

    事業承継を円滑に進めるためには、業績や組織体制の改善が重要です。収益性や資金繰りの安定性を高めることで、後継者が安心して経営を引き継げます。 

    銀行は必要に応じて、資金調達支援や業務フローや組織体制の見直しに関するアドバイスを通じて、事業の魅力向上を後押しします。 

    事業承継計画策定 

    中長期的な視点で事業承継のスケジュールや体制、承継方法を明確化した計画を策定します。計画には、後継者の育成方針や株式や資産の承継方法、関係者への説明スケジュールなどが含まれます。 

    銀行によっては、この計画策定をサポートするコンサルティングサービスを提供しており、外部の専門家と連携するケースもあります。 

    事業承継の実行 

    計画に基づき、実際の承継を進めます。親族内承継であれば贈与や相続、従業員承継であれば株式や経営権の移転が行われ、必要に応じて関係者との調整も発生します。 

    この段階では、銀行は資金面の支援や手続きのアドバイス、専門家の紹介などを通じて実行支援を行います。 

    第三者への承継 

    準備の必要性の認識 

    M&Aなど第三者への事業承継では、経営者が早期にその必要性を認識し、計画的に動くことが重要です。親族や従業員に後継者がいない場合は、外部への承継の選択肢を早い段階で検討しなければなりません。 

    銀行は、定期的な面談や融資取引を通じて経営者の年齢や承継リスクを把握していることが多く、必要に応じて承継に向けたアドバイスがもらえます。 

    経営状況・経営課題等の把握 

    買い手となる他企業にとって、財務状況や事業の見通しが不透明な場合は、譲り受けへの意欲が下がる恐れがあります。 

    銀行は財務分析や経営診断レポートを通じて、経営課題の可視化や企業の強みの数値化を支援します。加えて、信用格付や資金繰りに関するアドバイスを通じて、買い手が安心して判断できる信頼性の高い情報開示を後押しします。 

    経営改善 

    企業価値を高め、買い手にとって魅力的な事業とするためには、経営改善が必要です。 

    銀行は財務リストラクチャリングや設備投資支援、不要資産の整理に関するアドバイスを行い、承継可能性を高める経営体制への転換を後押しします。また、必要に応じて外部専門家との連携も提案されます。 

    マッチング実施 

    実際に買い手候補を探す段階では、銀行が提携するM&A仲介会社や事業承継ネットワーク(バンクM&A、事業承継・引継ぎ支援センター等)を紹介するケースがあります。銀行は信頼性の高いパートナーとの橋渡し役として機能し、マッチングの効率性を高めます。 

    M&Aの実行 

    交渉から契約締結までの実行段階では、銀行は必要に応じて資金面での支援や、ファイナンシャル・アドバイザーとしての立場から買収スキームの検討を行うこともあります。 

    また、従業員や取引先との関係維持に関する助言、外部専門家(弁護士・税理士)の紹介など、円滑な承継の実現に向けたサポートを提供します。 

    銀行以外の事業承継に関する相談先

    銀行以外の事業承継に関する相談先は次のとおりです。 

    • 公的機関 
    • 弁護士 
    • 司法書士 
    • 公認会計士 
    • 税理士 
    • M&A仲介会社 
    • 事業承継コンサルティング会社 
    • 商工会・商工会議所 
    • 同業者 

    それぞれについて解説します。 

    公的機関 

    公的機関では、中小企業の円滑な事業承継を支援する窓口が複数用意されています。 

    代表的なものが「事業承継・引継ぎ支援センター」や「よろず支援拠点」で、全国に設置されており、親族内承継から第三者承継まで幅広い相談に対応しています。公的な立場であるため中立性が高く、相談自体は無料で行える点も特徴です。 

    また、後継者候補とのマッチングを行う「後継者人材バンク」や、経営難の中小企業を対象とした「中小企業再生支援協議会」などでも、状況に応じた支援が受けられます。 

    弁護士 

    弁護士は、事業承継に伴う法律的リスクの検討や契約書の作成・確認に関して強みを持ちます。特に、株式の承継や議決権の調整、遺留分の対策など、親族や利害関係者間の権利調整が必要な場面で重要な役割を果たします。 

    M&Aによる第三者承継の場合には、基本合意書や最終契約書の作成、デューデリジェンスに関するリーガルチェックなども対応可能です。税理士資格を持つ弁護士も増えており、税務と法律の両面から支援が受けられる点もメリットです。 

    司法書士 

    司法書士は、事業承継に伴う登記手続きや遺言書の作成支援など、法務局提出書類の作成や手続き代行に強みがあります。 

    役員変更や会社分割など組織再編にかかる登記変更、M&Aによる商号変更なども対応可能です。また、他士業との連携ネットワークを通じて、複雑な案件にも柔軟に対処します。 

    弁護士と比べて費用が抑えられることも多く、特定の手続きに限定すればコストパフォーマンスに優れた選択肢といえます。ただし、訴訟や相続紛争などの法的トラブルには原則対応できない点に注意が必要です。 

    公認会計士 

    公認会計士は、財務・会計の専門家として、会社の現状把握と承継後の経営支援において重要な役割を果たします。具体的には、財務諸表監査や事業価値評価、税務戦略の立案といった支援を通じて、会社の強みやリスクを可視化し、承継計画に反映できます。 

    また、事業承継を契機に経営改善や内部統制の再構築が必要な場合でも、具体的なアドバイスを受けられ、経営全体の安定化に貢献します。 

    税理士 

    税理士は顧問契約を通じて中小企業の実情を把握しているケースが多く、事業承継の最も身近な相談窓口です。特に、事業承継税制の適用や相続・贈与税対策に強みがあり、後継者へのスムーズな資産移転に関する支援が受けられます。 

    さらに、会社の資産評価や株価算定などの実務も依頼でき、必要に応じて他の専門家との連携も可能です。最近では、税理士のネットワークを活用して後継者を探す「担い手探しナビ」などの新たなサービスも展開されています。 

    M&A仲介会社 

    M&A仲介会社は、譲渡希望企業と買収希望企業を引き合わせ、条件交渉からクロージングまでを一貫して支援します。中小企業の事業承継では、後継者不在や相性の良い承継先探しが課題となるため、仲介会社のネットワークとマッチング力は大きな強みです。 

    また、財務・法務・税務の各専門家と連携してトータルサポートを提供するため、経営者の負担を軽減できます。 

    手数料は、完全成功報酬型や着手金・中間金を含む方式など、企業ごとに異なります。利用に当たっては、事前に料金体系を十分に確認しておくことが重要です。 

    事業承継コンサルティング会社 

    事業承継コンサルティング会社は、弁護士・税理士・公認会計士などの士業や、民間資格の事業承継士を擁し、承継に特化した総合支援を行います。計画の立案や課題の抽出、後継者の育成支援、M&Aの実行支援など、一連のプロセスを一貫して対応できる点が強みです。 

    専門性の高さに加え、継続的に寄り添う支援体制が魅力ですが、会社によって業務範囲や対応力に差があります。契約前に対応範囲や費用を確認しましょう。 

    商工会・商工会議所 

    商工会・商工会議所は、地域の中小企業支援機関として、事業承継に関する無料相談や専門家紹介を行っています。 

    全国各地に拠点があり、経営者が気軽に相談できる環境が整っています。地元企業とのネットワークを活用し、同業種の後継者候補の紹介にも対応しています。 

    最近では「事業承継診断」などの支援メニューも整備されており、承継準備の進捗(しんちょく)や課題を見える化する支援も受けられます。必要に応じて専門機関や金融機関との橋渡しも行っています。 

    同業者 

    同業者に相談することで、実際に事業承継を経験した立場からの具体的なアドバイスや体験談を聞けることがあり、自社の検討において参考になる場合があります。業界特有の課題や成功・失敗の事例など、実務に根ざした情報を得られる点が大きなメリットです。 

    特に、地域や業界内で信頼関係のある取引先や競合企業に相談することで、実情に即したリアルな意見を得られ、自社に適した承継方法を検討する上で有益な気づきにつながることもあります。 

    事業承継の相談先を決める際のポイント

    事業承継の相談先を決める際のポイントは次のとおりです。 

    • 事業承継やM&Aの実績が豊富か 
    • 専門家や金融機関などと連携しているか 
    • 自社や相談課題に関する理解があるか 
    • 費用体系と支払時期を確認する 
    • 担当者との相性・信頼性を重視する 

    それぞれについて解説します。 

    事業承継やM&Aの実績が豊富か 

    事業承継の相談先を選ぶ際は、まずその組織や企業に十分な実績があるかを確認することが重要です。事業承継は企業ごとに事情が異なるため、豊富な実績に基づいたノウハウがなければ柔軟な対応は困難です。 

    特にM&Aを伴う場合は、マッチングや交渉などの実務経験が求められます。公式サイトや事例紹介などを通じて、過去の支援実績を確認し、信頼できる相談先かを見極めましょう。 

    専門家や金融機関などと連携しているか 

    事業承継では、税務・法務・財務など複数分野に関する課題が発生します。そのため、単独での対応では限界があることも多く、税理士・弁護士・金融機関などと連携している相談先を選ぶと安心です。 

    特にM&Aの場合は資金調達や契約実務に関する支援が求められる場面も多いため、連携体制が整っているかを事前に確認し、必要に応じて紹介を受けられるか確認しましょう。 

    自社や相談課題に関する理解があるか 

    相談先が自社の業種や経営課題に関する理解を持っているかも重要な判断軸です。例えば、製造業とIT業では課題の本質や引継ぎ方法が大きく異なるため、業界特有の事情に詳しい相談先の方が、より的確なアドバイスが得られる可能性があります。 

    また、相談したい課題が承継者の選定や資産の分割、M&Aなどで異なる場合、その分野に詳しい担当者がいるかを確認しましょう。 

    費用体系と支払時期を確認する 

    相談先によって費用体系や支払時期は異なり、「初回相談無料」「成果報酬型」「着手金あり」などさまざまです。承継が成立しなくても費用が発生するケースもあるため、支払のタイミングや内訳をしっかり確認しましょう。 

    予算に不安がある場合は、公的機関や商工会議所などの無料相談を活用する選択肢もあります。 

    担当者との相性・信頼性を重視する 

    事業承継は相談から完了までに数年を要することもあり、担当者との相性や信頼性は極めて重要です。意思疎通がしづらい相手では、課題が複雑化したときに対応が遅れたり、判断を誤る可能性も高まります。 

    初回相談や面談での印象、対応の丁寧さ、専門知識の有無などを通じて、自社の思いに寄り添いながら伴走してくれる相手かを見極めましょう。 

    銀行による事業承継に向けた施策に関する近年のニュース

    銀行による事業承継に向けた施策に関する近年のニュースをいくつか紹介します。 

    京葉銀行のファンド事業拡大 

    京葉銀行グループは、地域経済の持続的発展を目指し、ファンドを活用した企業支援体制を強化しています。 

    2025年5月、グループ会社の京葉銀キャピタル&コンサルティングと共同で、スタートアップ向けの「京葉銀成長支援投資事業有限責任組合」と、事業承継支援のための「京葉銀事業承継2号投資事業有限責任組合」の二つのファンドを設立しました。 

    事業承継ファンドでは、後継者問題を抱える中小企業への資本支援と経営支援を行います。投資による資金供給に加え、コンサルティング等を通じて雇用維持や地域経済の活性化にも貢献し、課題解決型営業の一環として地域企業との関係強化を図ります。 

    埼玉りそな銀行と日本政策金融公庫が事業承継支援で協定締結 

    埼玉りそな銀行と日本政策金融公庫さいたま支店は2025年2月、埼玉県内の中小企業における円滑な事業承継を後押しするため、「事業承継支援に関する覚書」を締結しました。 

    少子高齢化により後継者不在が深刻化する中、両者は事業譲渡・譲受の希望を持つ顧客情報の共有や、事業承継関連セミナーの共催などを通じて、地域企業の継続と活性化を図る方針です。 

    協定では、双方向での事業者紹介や相談対応、ノウハウ共有、融資推進など多岐にわたる連携項目が盛り込まれています。創業支援や企業再生など既存の協力関係を土台に、より一層の支援体制を整備していくとしています。 

    みずほFGによる事業承継支援の体制整備 

    みずほフィナンシャルグループ(FG)は、後継者不足に悩む全国約1万6000社の中堅・中小企業に対し、事業承継支援体制を強化しています。特にオーナー企業に向け、相続・資産運用・株式の承継・不動産の見直し、さらにはM&AやMBOファイナンスなど、幅広い選択肢を提案しています。 

    また、みずほ信託銀行では200人規模の専門チームを擁し、「承継のみずほ信託」のスローガンの下、財務・法務・税務の観点からきめ細かな支援を展開しています。 

    銀行・証券・信託の横断的な連携により、法人と個人の両面からの対応を可能とし、経営者の世代交代を円滑に進める環境づくりを進めています。 

    relayによる日本政策金融公庫と宮崎銀行からの協調融資実行 

    株式会社ライトライトは、事業承継マッチングプラットフォーム「relay」を通じて地域の小規模事業者の支援に取り組んでいます。 

    2024年には、日本政策金融公庫宮崎支店および宮崎銀行からの協調融資により、総額1.1億円の資金調達を実施しました。この資金は、自治体と連携した「relay the local」プログラムの導入加速に活用され、UIJターンを促進しながら地域社会の持続的な活性化を図ります。 

    「relay」は、事業承継をオープンネームで公表し、経営者の思いをストーリーとして可視化することで、共感を軸とした新しいマッチングを可能にしています。 

    事業継承と銀行に関するQ&A

    最後に、事業継承と銀行に関するよくある質問とその回答を紹介します。 

    事業承継信託とは何か 

    事業承継信託とは、現経営者が自社株式などを信託財産として信託銀行などに託し、後継者への円滑な事業承継を図る制度です。 

    信託契約により、委託者(現経営者)は受託者(信託銀行等)に自社株の管理・運用を委ね、後継者を受益者に指定することで、経営権を段階的かつ計画的に移転できます。相続や贈与と異なり、経営者の意思に基づいて承継タイミングや方法を柔軟に設定でき、相続トラブルの防止や株式の集中管理といった効果もあります。 

    一方、信託契約の設計には一定のコストや法的知見が求められるため、事前の検討と専門家の助言が不可欠です。近年は地域金融機関などでもこの仕組みを活用したサービスが提供されています。 

    東京都の「地域金融機関による事業承継促進事業」とは何か 

    東京都の「地域金融機関による事業承継促進事業」は、都内中小企業の円滑な事業承継を支援するため、地域金融機関と連携して実施されている支援施策です。 

    令和元年より開始され、信用金庫や信用組合などの職員が企業を訪問し、承継に向けた課題を抽出しています。また、専門家(最大8回まで無料派遣)による承継計画策定支援や、中小企業制度融資の活用による資金調達支援も行われます。加えて、この支援を受けた企業は、「事業承継融資」において利率優遇を受けられる特典もあります。 

    金融機関と行政が連携し、相談・計画策定・資金支援までを一貫して支援するパッケージ型支援として注目されています。 

    事業承継と廃業の分かれ目はどこか 

    廃業と事業承継の判断は、後継者の有無や企業の収益性、将来性、経営者の意思など、複数の要素を総合的に考慮して行われます。 

    特に、後継者が家族・従業員・外部から確保できるかどうかは重要な分岐点です。また、赤字が続いていたり市場環境が悪化しているなど、事業の継続可能性が低い場合は、承継よりも廃業が現実的とされることがあります。 

    一方で、借入金が多く体制が整っていない場合でも、地域にとって不可欠な事業や、明確な後継者候補がいるケースでは、外部承継(M&A等)によって事業の継続が検討されることもあります。 

    事業承継において銀行を相談先に選ぶことは、多くの利点があります。銀行は資金調達のプロフェッショナルであり、財務面でのアドバイスをはじめ、経営改善や税金対策など、幅広いサポートを受けられます。しかし、銀行だけに頼るのではなく、他の専門家や機関と連携することも重要です。

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