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「株式分割って、株が増えるってこと?」「分割されると、株価が安くなるのはなぜ?」――株式投資や企業経営に関わるなかで、一度は耳にしたことのある「株式分割」。
しかし、その仕組みや意味、投資家や企業に与える影響について、正しく理解できている人は意外と少ないかもしれません。
株式分割は、企業が戦略的に株主層を広げたいときや、株価の調整を行いたいときに活用される資本政策のひとつです。特に、上場企業では話題性や株価上昇のきっかけになることもあり、注目を集めやすい施策でもあります。
本記事では、株式分割の基本から目的、株価・株主への影響、さらにはM&Aや事業承継といった文脈での活用法まで解説します。
株式分割とは、すでに発行されている株式を、一定の比率で細かく分割することを指します。例えば、「1株を2株に分ける」2分割や、「1株を3株にする」3分割などが一般的です。
株式分割を行うと、株主が保有する株式の数は分割比率に応じて増加しますが、株主が保有する“会社に対する割合”は変わりません。
また、理論上の株価は分割比率に応じて下がることになります。
■例:
つまり、株式分割は「ケーキを切り分けて小さくする」ようなイメージで、企業の価値や株主の権利に直接の増減はありません。
株式分割と対になる概念が「株式併合」です。これは、複数の株式を1つにまとめる処理であり、株式数は減りますが理論株価は上がります。
分類 | 株式分割 | 株式併合 |
株数 | 増える | 減る |
株価 | 下がる(調整) | 上がる(調整) |
株主構成 | 変わらない | 変わらない |
併合は、株価が極端に低い場合などに、最低売買単位(例:1単元=100株)での取引価格を引き上げる目的で行われます。
株式分割は、特に株価が高騰している成長企業や、株主層の拡大を狙う企業が実施する傾向があります。
株式分割は、単なる“見かけの株価調整”ではなく、企業が戦略的に実施する資本政策のひとつです。
ここでは、企業が株式分割を行う主な目的を3つの視点から解説します。
株式分割を行う目的のひとつが、株価を適正な水準に調整し、売買の活発さ(流動性)を高めることです。
株価が1株あたり数万円〜数十万円に高騰している企業の場合、投資単位が大きくなりすぎて、個人投資家にとっては手が出しづらくなります。
そこで、株式を2倍・3倍に分割して株価を1万円前後などの“買いやすい水準”に整えることで、売買がしやすくなり、市場での取引量も増加します。
▶ 株価が高すぎると投資家の間口が狭くなります。株式分割はそれを是正する手段といえます。
証券取引所や証券会社では、「1単元=100株」で取引を行うのが一般的です。仮に1株が10万円だと、100株=1単元の購入に1,000万円が必要になります。
このような高価格帯の銘柄は、個人投資家が手を出しづらく、投資対象として敬遠されがちです。
株式分割を通じて1株の価格を下げることで、より多くの個人投資家が参入できるようになり、結果的に株主数の増加や株価の底堅さにつながります。
▶ 特に個人投資家が株主構成の鍵を握る企業では、分割は“株主を増やすための戦略”として機能します。
株式分割の発表は、投資家の注目を集める「好材料」として捉えられることが多く、メディア露出や証券アプリでの話題性も高まります。
▶ 実際、株式分割の発表直後に株価が上昇する例は少なくありません。
これらの目的を理解すると、株式分割は単なる株数調整ではなく、企業の成長戦略や株主戦略の一環であることが見えてきます。
株式分割は、企業の株価や発行済株式数に直接影響を与える一方で、株主が保有する“持分の割合”や“資産価値”には基本的に変化がありません。
しかし、市場心理や投資判断には一定の影響を及ぼすため、投資家はその仕組みを正しく理解しておく必要があります。
株式分割が行われると、株主が保有する株数は分割比率に応じて増加します。例えば、100株保有していた場合、2分割後は200株になります。
ただし、企業の発行済株式数全体も同様に増えるため、株主が保有する持ち株比率(=企業全体に対する自分の権利割合)は変わりません。
■例:
▶ 数字は増えても、実質的な持ち分の変化はないという点がポイントです。
分割によって株数が増えると、理論的に1株あたりの株価は分割比率に応じて下落します。
しかし、これはあくまで帳簿上の調整にすぎず、株主の保有資産額(時価)は変わりません。
■例:
▶ 株価が下がっても損をするわけではない、ということを正しく理解する必要があります。
株式分割の発表後や実施後に、株価が上昇するケースは少なくありません。これは、以下のような投資家心理が影響していると考えられます。
ただし、これは企業の本質的な価値が上がったわけではなく、短期的な需給バランスや期待によるものです。
過剰な期待だけで株価が上昇した場合は、反動による調整が入る可能性もあるため注意が必要です。
株式分割は、企業にとっても投資家にとってもプラスに働く可能性がある一方で、目的や状況によっては逆効果となるケースや注意点も存在します。
ここでは、企業側と投資家側それぞれの立場から、メリットとデメリットを整理していきます。
■メリット
■デメリット
■メリット
■デメリット
このように、株式分割は「資本政策」としての効果も期待できますが、その設計やタイミングを誤ると、企業評価を下げるリスクもある施策です。
株式分割は流動性向上や投資家への訴求を目的とした施策であり、M&Aの株式交換比率調整や事業承継における株式分配の調整など、資本政策の一環としても活用されます。
特に、中小企業のオーナー経営者にとっては、後継者や投資家との関係構築において有効な選択肢となるケースがあります。
■あわせて読む
『M&Aとは?目的やメリット、実際の流れや成功させるポイントをご紹介』
M&Aにおいて重要なのは、企業全体の価値(事業価値・株主価値)であり、株式数や株価そのものではありません。
そのため、株式分割を実施したとしても、企業の収益力や成長性が変わらない限り、理論的な企業価値には影響を与えません。
ただし、次のような間接的な影響が出ることもあります。
▶ 株式分割自体は価値を変えませんが、「市場評価」には一定の影響を及ぼす可能性があります。
中小企業の事業承継やMBO(マネジメント・バイアウト)では、株式分割を使って株式を柔軟に移転しやすくするケースがあります。
■具体的な活用シーン
▶ 「株価を下げる」のではなく、「株式を移転しやすく設計する」ことが目的です。
上場企業のM&Aの現場では、敵対的買収への備えとして、株式分割を活用するケースもあります。
▶ ただし、意図的な買収防衛策と見なされる場合、ガバナンス上の懸念を招くリスクもあるため注意が必要です。
M&Aや事業承継では、株式分割は「テクニック」ではなく、全体の資本設計や経営戦略の中で活用すべき手段です。
M&Aロイヤルアドバイザリーでは、企業価値評価・株式設計・承継支援を一体で行うことで、目的に応じた最適なストラクチャー構築を支援しています。
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株式分割は、特定の企業や業界だけでなく、上場企業全体の戦略として広く活用されています。
近年では、成長企業が投資家層の拡大を目的として株式分割を活用する事例が増えています。これにより株価や市場評価が上昇することもありますが、株式分割そのものは企業価値を直接変えるものではなく、市場心理や成長性が評価されるかによって効果が異なります。
【事例①】任天堂(7974)
任天堂は2022年に10株を1株にする10分割を実施。それまで1株5万円以上だった株価が5,000円台に調整され、個人投資家の参入が一気に拡大。その後、Switch関連の好決算とあわせて株価も上昇基調となりました。
キーエンスは株価が10万円超の高値を維持していましたが、3分割を発表(2021年)し、市場から大きな注目を集めました。
高値ゆえに流動性が低下していた状況に対し、分割を通じて流動性の改善と機関投資家の注目度向上を実現しています。
▶ いずれの事例も「分割=成長企業の証」として市場からポジティブに受け取られた好例です。
2020年以降、日本国内では東京証券取引所の市場区分変更や株式市場の再編が進むなか、高額な株価を持つ企業が株式分割を実施する動きが目立っています。これにより、株価が引き下げられ、個人投資家が投資しやすい環境が整えられることが期待されています。
さらに、SNSやスマホ証券アプリの普及により、個人投資家の存在感が急拡大している今、「買いやすさ」は企業の評価にも直結する時代です。
▶ 株式分割は、企業と市場をつなぐコミュニケーション手段でもあります。
確かに、株式分割は成長企業が採用することが多く、好材料とされやすい施策です。
しかし、あくまで「企業の価値をどう見せるか・広げるか」の手段のひとつであり、本質的な成長力や収益力とは別問題です。
こうした中身が伴ってこそ、“シグナル”としての株式分割が市場から評価されるのです。
株式分割は、一見すると株価や株数を調整するだけの“テクニカル”な施策に見えるかもしれません。
しかしその本質は、企業の資本政策・株主戦略・市場との対話の在り方を左右する重要な経営判断にあります。
■本記事のまとめ
株式分割は“万能の魔法”ではありませんが、目的に応じて活用することで、企業価値を高めるきっかけとなります。
特に、M&A・事業承継・資本再設計を検討している企業にとって、分割は重要な選択肢のひとつです。
M&Aロイヤルアドバイザリーでは、企業価値評価や資本政策のプロフェッショナルとして、目的に合った最適なストラクチャーと統合戦略の設計をご支援しています。
「株式分割を検討しているが、何から始めるべきかわからない」「事業承継やM&Aを見据えて資本戦略を考えたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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