株式分割とは?仕組み・目的・投資家への影響を詳しく解説

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「株式分割って、株が増えるってこと?」「分割されると、株価が安くなるのはなぜ?」――株式投資や企業経営に関わるなかで、一度は耳にしたことのある「株式分割」。

しかし、その仕組みや意味、投資家や企業に与える影響について、正しく理解できている人は意外と少ないかもしれません。

株式分割は、企業が戦略的に株主層を広げたいときや、株価の調整を行いたいときに活用される資本政策のひとつです。特に、上場企業では話題性や株価上昇のきっかけになることもあり、注目を集めやすい施策でもあります。

本記事では、株式分割の基本から目的、株価・株主への影響、さらにはM&A事業承継といった文脈での活用法まで解説します。

株式分割とは?

株式分割とは、すでに発行されている株式を、一定の比率で細かく分割することを指します。例えば、「1株を2株に分ける」2分割や、「1株を3株にする」3分割などが一般的です。

株式分割の定義と仕組み

株式分割を行うと、株主が保有する株式の数は分割比率に応じて増加しますが、株主が保有する“会社に対する割合”は変わりません

また、理論上の株価は分割比率に応じて下がることになります。

例:

  • 株価が1万円の株式を2分割すると、株価は5,000円に調整され、株数は2倍に
  • 1株保有していた株主は、分割後に2株を保有することになり、総額は同じ

 つまり、株式分割は「ケーキを切り分けて小さくする」ようなイメージで、企業の価値や株主の権利に直接の増減はありません。

株式併合との違い

株式分割と対になる概念が「株式併合」です。これは、複数の株式を1つにまとめる処理であり、株式数は減りますが理論株価は上がります。

分類株式分割株式併合
株数増える減る
株価下がる(調整)上がる(調整)
株主構成変わらない変わらない

併合は、株価が極端に低い場合などに、最低売買単位(例:1単元=100株)での取引価格を引き上げる目的で行われます。

どんな企業が株式分割を行うのか?

株式分割は、特に株価が高騰している成長企業や、株主層の拡大を狙う企業が実施する傾向があります。

  • 株価が高くなりすぎて買いづらい状態を改善する
  • 個人投資家が買いやすくすることで流動性を高める
  • 株主数の増加によって、上場維持要件を満たす など

株式分割の目的とは?

株式分割は、単なる“見かけの株価調整”ではなく、企業が戦略的に実施する資本政策のひとつです。

ここでは、企業が株式分割を行う主な目的を3つの視点から解説します。

① 株価の適正化と流動性の向上

株式分割を行う目的のひとつが、株価を適正な水準に調整し、売買の活発さ(流動性)を高めることです。

株価が1株あたり数万円〜数十万円に高騰している企業の場合、投資単位が大きくなりすぎて、個人投資家にとっては手が出しづらくなります
そこで、株式を2倍・3倍に分割して株価を1万円前後などの“買いやすい水準”に整えることで、売買がしやすくなり、市場での取引量も増加します。

▶ 株価が高すぎると投資家の間口が狭くなります。株式分割はそれを是正する手段といえます。

② 個人投資家へのアプローチ強化

証券取引所や証券会社では、「1単元=100株」で取引を行うのが一般的です。仮に1株が10万円だと、100株=1単元の購入に1,000万円が必要になります。
このような高価格帯の銘柄は、個人投資家が手を出しづらく、投資対象として敬遠されがちです。

株式分割を通じて1株の価格を下げることで、より多くの個人投資家が参入できるようになり、結果的に株主数の増加や株価の底堅さにつながります。

▶ 特に個人投資家が株主構成の鍵を握る企業では、分割は“株主を増やすための戦略”として機能します。

③ 市場での注目度アップ(話題性・PR効果)

株式分割の発表は、投資家の注目を集める「好材料」として捉えられることが多く、メディア露出や証券アプリでの話題性も高まります。

  • 「株式分割=成長企業がやる施策」というポジティブな印象
  • 証券会社やメディアのランキングで取り上げられやすい
  • 株価上昇のきっかけとして“思惑買い”が入ることも

▶ 実際、株式分割の発表直後に株価が上昇する例は少なくありません。

これらの目的を理解すると、株式分割は単なる株数調整ではなく、企業の成長戦略や株主戦略の一環であることが見えてきます。

株主・投資家への影響

株式分割は、企業の株価や発行済株式数に直接影響を与える一方で、株主が保有する“持分の割合”や“資産価値”には基本的に変化がありません。

しかし、市場心理や投資判断には一定の影響を及ぼすため、投資家はその仕組みを正しく理解しておく必要があります。

株式数と持ち株比率の変化

株式分割が行われると、株主が保有する株数は分割比率に応じて増加します。例えば、100株保有していた場合、2分割後は200株になります。

ただし、企業の発行済株式数全体も同様に増えるため、株主が保有する持ち株比率(=企業全体に対する自分の権利割合)は変わりません。

例:

  • 発行済株式数:100万株 → 2分割後:200万株
  • 株主Aの保有株数:1,000株 → 2,000株(保有比率は1%で変わらず)

▶ 数字は増えても、実質的な持ち分の変化はないという点がポイントです。

株価は下がるのに、価値は変わらない理由

分割によって株数が増えると、理論的に1株あたりの株価は分割比率に応じて下落します。

しかし、これはあくまで帳簿上の調整にすぎず、株主の保有資産額(時価)は変わりません。

例:

  • 分割前:株価1万円 × 100株 = 100万円
  • 分割後(2分割):株価5,000円 × 200株 = 100万円

▶ 株価が下がっても損をするわけではない、ということを正しく理解する必要があります。

分割後に株価が上がるのはなぜ?

株式分割の発表後や実施後に、株価が上昇するケースは少なくありません。これは、以下のような投資家心理が影響していると考えられます。

  • 株価が下がって“買いやすくなった”ことで、新たな投資資金が流入する
  • 「株式分割=企業成長のサイン」と捉えられる傾向があり、ポジティブな思惑買いが入る
  • メディア露出やSNSでの話題化による注目度上昇

ただし、これは企業の本質的な価値が上がったわけではなく、短期的な需給バランスや期待によるものです。

過剰な期待だけで株価が上昇した場合は、反動による調整が入る可能性もあるため注意が必要です。

株式分割のメリット・デメリット

株式分割は、企業にとっても投資家にとってもプラスに働く可能性がある一方で、目的や状況によっては逆効果となるケースや注意点も存在します

ここでは、企業側と投資家側それぞれの立場から、メリットとデメリットを整理していきます。

企業側のメリットとデメリット

メリット

  • 株価の適正化による流動性向上
    分割により株価が下がることで、個人投資家が参加しやすくなり、売買が活性化します。
  • 株主層の拡大
    高値ゆえに参入できなかった層が投資可能になり、株主数が増加。上場維持要件にもプラスに働く場合があります。
  • ポジティブなPR効果
    株式分割は「成長企業が実施するもの」というイメージがあり、企業の勢いを外部にアピールできます。

デメリット

  • 実質的価値は変わらないため、期待先行の誤解を招くことがある
    「株価が下がった=割安」と誤解され、短期的な投機を呼び込むことも。
  • 管理コストの増加
    株主数が急増すると、総会運営・通知発送・議決権集計などの株主管理コストが増える可能性があります。

投資家側のメリットとデメリット

メリット

  • 少額資金での投資が可能に
     分割によって1単元あたりの金額が下がるため、特に個人投資家が購入しやすくなります。
  • ポートフォリオ調整の柔軟性が増す
     株数が増えることで、一部売却などがしやすくなり、リスク管理がしやすくなります。
  • 分割発表後に株価が上昇するケースもある
     話題性・期待感によって一時的に値上がりする局面では、利益獲得のチャンスとなることもあります。

デメリット

  • 分割によって企業の価値が上がるわけではない
     保有資産の価値は変わらず、株数や株価が調整されるだけである点に注意が必要です。
  • 投機的な値動きに巻き込まれるリスク
     分割発表を材料にした短期売買が活発になると、ボラティリティ(値動きの激しさ)が増すことがあります。

このように、株式分割は「資本政策」としての効果も期待できますが、その設計やタイミングを誤ると、企業評価を下げるリスクもある施策です。

M&Aにおける株式分割の活用と注意点

株式分割は流動性向上や投資家への訴求を目的とした施策であり、M&Aの株式交換比率調整や事業承継における株式分配の調整など、資本政策の一環としても活用されます。

特に、中小企業のオーナー経営者にとっては、後継者や投資家との関係構築において有効な選択肢となるケースがあります。

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株式分割が企業価値評価に与える影響

M&Aにおいて重要なのは、企業全体の価値(事業価値・株主価値)であり、株式数や株価そのものではありません。

そのため、株式分割を実施したとしても、企業の収益力や成長性が変わらない限り、理論的な企業価値には影響を与えません

ただし、次のような間接的な影響が出ることもあります。

  • 分割により流動性や注目度が高まり、株価が上昇 → 時価総額ベースでの評価が上がる
  • 投資家にとっての「買いやすさ」が増し、資金調達や株式公開時の需要が高まる

▶ 株式分割自体は価値を変えませんが、「市場評価」には一定の影響を及ぼす可能性があります。

事業承継・持株会社設立前の分割対応

中小企業の事業承継やMBO(マネジメント・バイアウト)では、株式分割を使って株式を柔軟に移転しやすくするケースがあります。

具体的な活用シーン

  • 1株の評価額が高すぎると贈与・売買が難しくなる → 分割により1株あたりの評価額を引き下げ、少額単位での承継が可能に
  • 後継者や役員に持株を分散したい場合 → 分割で株式数を増やし、分けやすくする

▶ 「株価を下げる」のではなく、「株式を移転しやすく設計する」ことが目的です。

株式分割と買収防衛策の関係

上場企業のM&Aの現場では、敵対的買収への備えとして、株式分割を活用するケースもあります。

  • 分割により株主数を増やし、少数株主に分散させることで、買収者による支配が難しくなる
  • 分割をきっかけに株価が低下し、新規株主の増加や株式の再配分が進む場合、結果として経営陣や友好的株主の支配力が相対的に高まることがある

▶ ただし、意図的な買収防衛策と見なされる場合、ガバナンス上の懸念を招くリスクもあるため注意が必要です。

M&Aや事業承継では、株式分割は「テクニック」ではなく、全体の資本設計や経営戦略の中で活用すべき手段です。


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株式分割の成功事例と近年の動向

株式分割は、特定の企業や業界だけでなく、上場企業全体の戦略として広く活用されています。

近年では、成長企業が投資家層の拡大を目的として株式分割を活用する事例が増えています。これにより株価や市場評価が上昇することもありますが、株式分割そのものは企業価値を直接変えるものではなく、市場心理や成長性が評価されるかによって効果が異なります。

上場企業による株式分割の成功事例

【事例①】任天堂(7974)

任天堂は2022年に10株を1株にする10分割を実施。それまで1株5万円以上だった株価が5,000円台に調整され、個人投資家の参入が一気に拡大。その後、Switch関連の好決算とあわせて株価も上昇基調となりました。

【事例②】キーエンス(6861)

キーエンスは株価が10万円超の高値を維持していましたが、3分割を発表(2021年)し、市場から大きな注目を集めました。
高値ゆえに流動性が低下していた状況に対し、分割を通じて流動性の改善と機関投資家の注目度向上を実現
しています。

▶ いずれの事例も「分割=成長企業の証」として市場からポジティブに受け取られた好例です。

市場トレンドとしての分割ブーム

2020年以降、日本国内では東京証券取引所の市場区分変更や株式市場の再編が進むなか、高額な株価を持つ企業が株式分割を実施する動きが目立っています。これにより、株価が引き下げられ、個人投資家が投資しやすい環境が整えられることが期待されています

さらに、SNSやスマホ証券アプリの普及により、個人投資家の存在感が急拡大している今、「買いやすさ」は企業の評価にも直結する時代です。

  • 「分割=株主フレンドリーな企業」という評価
  • 若年層・副業層など、新しい投資層へのアプローチ手段
  • 成長企業としてのメッセージ性

▶ 株式分割は、企業と市場をつなぐコミュニケーション手段でもあります。

分割=成長企業のサインか?

確かに、株式分割は成長企業が採用することが多く、好材料とされやすい施策です。

しかし、あくまで「企業の価値をどう見せるか・広げるか」の手段のひとつであり、本質的な成長力や収益力とは別問題です。

  • 収益基盤やビジネスモデルに成長性があること
  • 分割によって長期的な株主還元・資本政策が明確になっていること

こうした中身が伴ってこそ、“シグナル”としての株式分割が市場から評価されるのです。

株式分割の本質を理解し、戦略的に活用しよう

株式分割は、一見すると株価や株数を調整するだけの“テクニカル”な施策に見えるかもしれません。
しかしその本質は、企業の資本政策・株主戦略・市場との対話の在り方を左右する重要な経営判断にあります。

本記事のまとめ

  • 株式分割とは:既存の株式を一定比率で細かく分けること。株主が保有する株式の数は増加するが、持分割合や企業価値には影響を与えない。分割後は1株あたりの株価が引き下げられ、株式の流動性が向上することが期待される。
  • 主な目的:流動性向上、個人投資家の参入促進、話題性・企業成長のアピールなど。
  • 株主への影響:保有株数が増えても資産価値は理論上変化せず、分割を好感して株価が上昇するケースもある。
  • M&Aとの関係:資本設計や承継の柔軟性を高める手段として活用される場面も。買収防衛策としての役割も。
  • 成功事例に共通するのは、企業成長と戦略性を伴った分割の設計

株式分割は“万能の魔法”ではありませんが、目的に応じて活用することで、企業価値を高めるきっかけとなります。

特に、M&A・事業承継・資本再設計を検討している企業にとって、分割は重要な選択肢のひとつです。

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