優先株とは?種類やメリット・デメリット、普通株との違いを徹底解説 

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優先株は、普通株式と比べて配当や残余財産の分配において優先的な権利を持つ種類株式のひとつです。「優先」という言葉からポジティブな印象を受けますが、議決権に制限があるなど、権利が制約されている特徴もあります。 

本記事では、優先株の基本的な仕組みや種類、転換型・非参加型といった形式別の違い、企業・投資家双方にとってのメリット・デメリット、さらには発行方法などについても詳しく解説します。 

優先株とは

まず、優先株の基本的な情報について解説します。 

優先的な権利が付与されている株式のこと 

優先株とは、配当や残余財産の分配など、一定の事項において普通株より優先的な権利が付与された「種類株式」の一種で、正式名称は「優先株式」です。 

配当などの高いリターンや倒産時のリスクヘッジなどが期待できる一方、議決権が制限されることが多く、経営への関与は限定的です。 

なお、株式と債券の中間的性質を持つことから、ハイブリッド証券の一種に分類されます。 

ハイブリッド証券とは 

ハイブリッド証券とは、株式と債券の両方の性質を併せ持つ金融商品であり、代表的なものとして優先株や優先出資証券、劣後債(期限付き・永久)などが挙げられます。 

企業側にとっては、これらは会計上で自己資本として認識される場合がある一方、投資家に対しては利払いや配当といった定期的なキャッシュフローが提供されることから、実質的には債券に近い性格を有するものとして捉えられます。 

ハイブリッド証券を活用することで、企業は財務の健全性を維持しながら資金調達が可能となります。特に一部は自己資本と評価されるため、資本と負債のバランス調整に有効です。ただし、元本毀損(きそん)や償還延期のリスクもあるため注意が必要です。 

優先株が有名になったきっかけ 

優先株が国内で注目を集めた大きな契機は、1998〜1999年にかけての金融危機時に行われた政府による大手銀行への公的資金注入です。 

当時、不良債権問題で信用不安が高まっていた大手銀行に対し、政府(金融再生委員会など)が資本を投入する手段として、普通株ではなく議決権の制限された優先株を取得する形式が採用されました。 

これにより、政府は銀行の経営には関与せずに資本増強を行うことができ、金融システムの安定化が図られました。優先株が果たす役割が広く認識されたことで、以降は企業の財務戦略において有効な資本調達手段として位置付けられるようになりました。 

優先株と他の株式との違い

優先株以外の株式には、「普通株」や「劣後株」があります。また、「社債」も優先株に似た特徴を持ちます。それぞれの特徴や違いについて解説します。 

優先株と普通株の違い 

普通株とは、優先的権利が何も付与されていない株式のことで、正式名称は「普通株式」です。優先株と普通株の最大の違いは、配当や残余財産分配の「優先順位」にあります。 

普通株は企業の利益に応じて配当を受けられますが、その配当額や実施の有無は保証されておらず、会社清算時の残余財産分配も後回しになる可能性があります。 

一方、優先株はあらかじめ決められた配当が優先的に支払われたり、清算時に先に分配を受けたりする権利が付与されることが多いです。ただし、その見返りとして議決権が制限されます。 

優先株と劣後株の違い 

劣後株は、配当や残余財産の分配において普通株よりもさらに後順位に置かれる株式であり、優先株とは対照的な位置付けにあります。正式名称は「劣後株式」です。 

既存の普通株主の利益を損なわずに資金調達を行うことを目的として発行されることが多いです。そのため、通常は経営者や経営陣など内部関係者向けに用いられます。 

また、市場評価が低くなる特性を生かし、相続税対策など特定の目的で利用されることもあります。 

優先株と社債の違い 

優先株は、議決権が制限され、配当が優先されるという点で社債と似た性格を持ちます。しかし、本質的には「株式」であり、返済義務がないという決定的な違いがあります。 

社債はあくまで企業が投資家からの借り入れとして発行する債券であり、元本の償還義務や利息の支払い義務が法的に課されています。 

優先株の種類

優先株は受け取れる配当に応じて次の三つに分類されます。 

  • 参加型 
  • 非参加型 
  • 制限参加型 

それぞれについて解説します。 

参加型 

参加型の優先株(参加型優先株式)とは、所定の優先配当を受けた後、企業の利益が十分にあれば普通株と同様に追加の配当(普通配当)を受けられる株式です。 

二重で配当を享受できる点が大きな特徴であり、インカムゲインを重視する投資家にとっては非常に魅力的で、日本ではこの形式の優先株が比較的多く採用されています。 

一方で、優先的権利が手厚い分、株価が高くなる傾向があり、取得コストはやや重くなる点がデメリットです。 

非参加型 

非参加型の優先株(非参加型優先株式)とは、所定の優先配当のみを受け取る権利がある株式です。たとえ普通株主に追加の配当が支払われた場合でも、非参加型の株主は設定された配当額を超えて受け取ることはできません。 

この形式は、企業側にとって配当負担を抑えられるメリットがあり、特にアメリカでは一般的に採用されています。配当が限定的である分、株価が低めに設定される傾向があり、取得コストの面では参加型よりも手頃です。 

ただし、優先配当の水準が普通株の配当を下回る場合には、投資家にとって不利になる可能性があります。 

制限参加型 

制限参加型の優先株(制限参加型優先株式)とは、参加型と非参加型の中間に位置する形式で、優先配当を受けた後、一定の条件下で普通配当にも一部参加できる株式です。 

例えば「優先配当額と同額まで」や「普通配当の8%まで」といった上限が設けられており、無制限に配当を受けられる参加型とは異なります。 

このため、投資家にとっては参加型よりも配当メリットは限定的ですが、その分株価や発行条件が柔軟であり、企業・投資家双方にとってバランスの取れた選択肢となり得ます。 

優先株の様式

優先株は受け取れる配当の時期によっても次の二つに分類されます。 

  • 累積型 
  • 非累積型 

それぞれの特徴について解説します。 

累積型 

累積型の優先株(累積型優先株式)とは、ある年度に予定された配当が支払われなかった場合でも、その不足分が翌年以降に繰り越され、後にまとめて受け取れる優先株の形式です。 

この仕組みにより、投資家は配当未達リスクを軽減できるため、安定的な収益確保が可能です。特に業績の波がある企業に対しても安心して出資できる点が魅力です。 

ただし、企業にとっては配当負担が年をまたいで残り続けるため、財務的な重荷となる可能性があります。このようなリスク補償的な特性を持つため、累積型優先株は非累積型より株価が高めに設定される傾向にあります。 

非累積型 

非累積型の優先株(非累積型優先株式)とは、その年度に予定された配当が支払われなかった場合でも、その不足分を次年度以降に繰り越すことができない形式の優先株です。一度配当が見送られると、その権利は失われてしまうため、投資家にとっては配当面でのリスクが高まります。 

企業側にとっては、業績が悪化した際に配当を行わないことで将来の配当義務を回避できるメリットがあります。このため、非累積型は企業にとって累積型に比べて負担が軽く、株価も相対的に低くなる傾向があります。 

優先株のメリット

企業側と投資家側それぞれにおける優先株発行のメリットを解説します。 

優先株発行の企業側のメリット 

経営に介入されずに資金調達ができる 

優先株は多くの場合、議決権が制限されているか、全く付与されていない形式で発行されます。そのため、発行企業は資金を調達しながらも、株主総会での議決や経営方針に対する影響を受けにくいという特徴があります。 

普通株式を発行する場合には、新株主が議決権を持つことになり、取締役の選任や重要事項の決議に影響を与える可能性がありますが、優先株であればそのリスクを回避できます。 

ベンチャー企業やファミリービジネスにおいては、経営への影響力低下を防ぎつつ外部資金を導入できる手段として重宝されています。 

ストックオプションの効果を維持できる 

ベンチャー企業などでは、従業員に報酬としてストックオプションを付与することがあります。これは、将来あらかじめ決められた価格(行使価格)で自社株を購入できる権利で、株価が上がればその差額が利益になります。 

この行使価格は、付与時の普通株の評価額を基に決まります。優先株を発行すると、優先株の評価額が高いため、相対的に普通株の評価額が低くなり、ストックオプションの行使価格も低く設定できます。 

その結果、株価上昇による利益の幅が広がり、従業員のインセンティブ効果を維持・強化できるのです。 

持ち株比率の低下を防げる 

優先株は、普通株よりも1株当たりの出資額が大きいため、同じ資金調達額を得る場合でも発行株数を抑えられます。これにより、既存株主の持ち株比率が大きく希薄化することを防げます。 

特に、創業者や経営陣が支配権を維持したい場合には、普通株ではなく優先株の発行を選択することで、経営権を保ったまま外部資金を導入できます。 

また、株数が少ないことは、将来的な株式公開(IPO)やM&Aの戦略設計時に有利に働く場合があります。 

優先株発行の投資家側のメリット 

配当が二重に受け取れる場合がある 

参加型優先株式の場合、優先配当に加えて普通配当も受け取れるため、実質的に二重の配当収入を得られます。 

このため、企業の業績が好調な時期には、普通株よりも高いリターンを得られます。 

安定したリターンを得られる 

優先株は、普通株式と比較して配当の安定性が高いという特性があります。優先配当はあらかじめ金額や利回りが定められていることが多く、企業の利益状況にかかわらず支払われる可能性が高いことから、投資家は安定したリターンが期待できます。 

特に累積型の優先株であれば、業績悪化で一時的に配当が見送られても、後年度に未払分が繰越されるため、長期的な視点でのリスク軽減につながります。 

倒産時にも損失を抑えられる 

企業が破綻した場合、保有株式が無価値となるリスクがありますが、優先株は清算時の残余財産分配において普通株よりも優先順位が高いため、損失を一定程度抑えられます。 

もっとも、債務や社債などが優先されるため、全てが返金される保証はありませんが、それでも普通株に比べて資金回収の可能性が高いのは大きなメリットです。倒産リスクがゼロではない中小企業や新興企業に投資する際のリスクヘッジ手段として有効です。 

優先株のデメリット

企業側と投資家側それぞれにおける優先株発行のデメリットを解説します。 

優先株発行の企業側のデメリット 

日本ではイメージが良くない 

日本国内では、優先株は「経営再建中の企業が発行する救済手段」として認識されることが多く、企業イメージの低下を招く恐れがあります。 

前述のとおり、1990年代後半の金融危機時に、公的資金注入の手段として優先株が使われた歴史があるため、現在でも「経営が苦しい会社が使う株式」という印象を持つ人が少なくありません。 

たとえ合理的な経営判断として発行した場合でも、外部からはネガティブに受け取られるリスクがあります。 

発行手続きが煩雑になる 

優先株は「種類株式」に分類されるため、発行時には定款の変更や株主総会の特別決議が必要となり、普通株式と比べて発行手続きが煩雑です。 

初めて優先株を導入する場合は、弁護士や証券会社などと綿密な調整が必要となり、手続きや書類の作成に多大な労力とコストがかかります。 

種類株主総会の開催が必要になる場合がある 

優先株の発行後、特定の議案に関して種類株主だけを対象とした「種類株主総会」の開催が求められる場合があります。 

例えば、優先配当の変更や議決権の付与・剥奪、種類株の消却・転換など、種類株主の権利に直接影響を及ぼす事項については、普通株主総会とは別に種類株主の承認が必要です。このような法的義務が加わることで、ガバナンス上の手間が増え、意思決定のスピードや柔軟性が損なわれるリスクがあります。 

優先株発行の投資家側のデメリット 

売買に向いていない 

優先株は、通常の株式市場ではほとんど取引されておらず、流動性が著しく低いです。 

多くの優先株は特定の投資家や機関投資家向けに私募で発行されるため、一般市場での売買が難しく、売りたいときに買い手が見つからないリスクがあります。このため、短期的な売買や価格差の利益を狙った投資には不向きです。 

値上がりによる売却益は狙いにくい 

優先株は、配当の安定性や利回りを重視する設計が多く、株価の上昇によるキャピタルゲイン(売却益)を得る目的には適していません。 

優先株は通常、配当額や償還条件が固定的であり、将来的な利益成長が価格に反映されにくい構造になっています。そのため、企業の成長や業績改善によって普通株が大きく値上がりする局面でも、優先株の価格は一定に保たれるか、緩やかな上昇にとどまることが一般的です。 

優先株は議決権が制限される 

優先株は、議決権がない、または大幅に制限されていることが一般的で、これにより投資先企業の経営に関与できません。 

普通株であれば、株主総会での議決を通じて経営判断に影響を与えられますが、優先株保有者にはそのような手段が原則として与えられません。仮に経営が悪化し株主として介入したい場合でも、発言権を行使できないため、リスク管理の面でも不利となります。 

優先株の発行方法

優先株は主に以下の方法で扱われます。

  • 直接発行 
  • 普通株の転換 
  • 株式分割 

それぞれについて解説します。 

直接発行 

優先株の発行方法として最も基本的な方法が直接発行です。 

新たに株式を発行する際、最初から優先株として設計・発行する方法であり、資金調達や資本政策の一環として活用されます。 

なお、会社が初めて優先株を発行する場合は、定款に優先株の内容を盛り込む変更手続きが必要があるため、注意が必要です。定款の変更は株主総会の特別決議(議決権の2/3以上の賛成)によって承認されます。 

普通株の転換 

既に発行済みの普通株式を優先株式に転換する方法もあります。ただしこの方法は実務上のハードルが高く、対象株主全員の合意書・同意書の取得が必要です。 

具体的には、転換を希望する株主全員の「合意書」、および転換を希望しない株主全員の「同意書」を取得し、加えて株主総会による特別決議も求められます。つまり、全株主の協力が不可欠であり、調整が難航するケースも多く、現実的にはあまり一般的な手段とはいえません。 

また、転換に伴って株主構成や権利内容が変わるため、法的・税務的な影響も慎重に検討する必要があります。 

株式分割 

優先株を分割によって発行割合を調整する方法もあります。 

例えば「普通株1株→10株」「優先株1株→20株」といった形で株式分割を行うと、相対的に優先株の比率が高くなります。ただし、このような普通株主に不利な内容の分割を行う場合は、普通株主による特別決議が必要です。 

優先株の分割には会社の資本構成を戦略的に調整できる一方で、種類株主間の権利関係が複雑化するリスクもあります。分割の実施には、種類株主の利益を公平に扱う視点が求められ、株主間の調整・説明責任を伴います。 

優先株の発行または転換における検討事項

優先株の発行または転換における検討事項は次のとおりです。 

  • 配当条件などの設計 
  • 議決権の範囲 
  • 普通株式に転換するための条件などの設計 

それぞれについて分かりやすく解説します。 

配当条件などの設計 

優先株を発行する際は、年間配当率や分配方法、受け取り条件について慎重な設計が必要です。 

年間配当率 

一般的に、優先株は普通株より高い配当率が設定されるため、配当コストが企業の利益を圧迫しない水準で調整する必要があります。 

一般的に、優先株の配当は普通株に比べて3〜10%程度上乗せされることが多いですが、毎年の分配に適用されるため、財務状況や市場環境を踏まえて1年ごとに見直しや設定が行われます。 

分配方法 

配当分配の形式としては、前述のとおり、「参加型」「非参加型」「制限参加型」がありますが、投資家の期待と会社の負担のバランスを取ることが求められます。 

株主との間で分配方法を事前に決めておかないと、後々トラブルになる可能性があるため、注意しましょう。 

受け取り方法 

配当の受け取り方法には前述のとおり、「累積型」と「非累積型」があります。 

累積型では、配当が未払いとなった場合でも翌年以降に繰り越して支払う義務があるため、企業にとっては財務負担が継続するリスクがあります。反対に非累積型であれば、未払い分の繰越義務がないため、配当コストを抑えやすいという利点があります。企業の資金余力や資本政策に応じて、適切な方式を選択することが重要です。 

議決権の範囲 

優先株は、高配当などの優遇と引き換えに議決権が制限されることが一般的です。発行時には、優先株主にどの範囲まで議決権を認めるかを慎重に検討する必要があります。あまりにも議決権を制限すると、普通株主だけで重要事項を決議され、優先株主に不利益が生じる恐れがあります。 

一方で、議決権の範囲を広げすぎると、会社側は意思決定のたびに種類株主総会を開催する必要が生じ、経営の機動性が損なわれるリスクもあります。 

普通株式に転換するための条件などの設計 

優先株は、将来的に普通株式に転換されることを前提とするケースが多く、事前にその転換条件やタイミング、コストを設計しておくことも極めて重要です。 

転換の条件 

優先株は、将来的に普通株式へ転換されることを前提として発行されるケースが多く、その際の転換条件の設計が重要です。 

特に株式上場を行う際では、上場審査の過程で優先株の整理・転換が求められることがあるため、転換請求権の行使条件や上場の際の自動転換条項を明文化しておくことが必要です。 

一方で、優先株式から普通株式への転換が進むと、種類株主総会の意義が薄れ、経営意思決定が複雑化する懸念もあるため、議決権と株主構成のバランスを踏まえた制度設計が求められます 

転換のタイミング 

優先株式から普通株式への転換タイミングは、転換の目的によって異なりますが、自発的に行う場合は、業績が安定し株価が堅調な時期とされています。 

また、一般的に株式上場を行う場合は、上場前に普通株式へ転換しておきます。これは市場での流動性を高め、株式取引を円滑にするためです。

コスト 

優先株は一般に高配当設計のため、長期保有による配当コストが企業にとって重荷になります。そのため、一定のタイミングで普通株へ転換し、配当負担を軽減するケースも見られます。 

ただし、配当を下げすぎると投資家の魅力が薄れるため、コストと株主メリットのバランスを取ることが重要です。 

優先株以外の資金調達方法

優先株以外の主な資金調達方法は次のとおりです。 

  • 銀行融資 
  • 他企業や投資家からの出資 
  • クラウドファンディング 

それぞれについて解説します。 

銀行融資 

銀行融資は、最も利用頻度の高い資金調達手段のひとつです。都市銀行や地方銀行、信用金庫などの金融機関から資金を借り入れることで、比較的まとまった額を低金利で調達できます。融資の形態には、企業の信用力や事業規模に応じて、「プロパー融資」や「信用保証付き融資」などさまざまな種類があり、企業の状況に応じた柔軟な対応が可能です。 

ただし、融資は返済義務がある負債であり、元本と利息を確実に返済する必要があります。加えて、審査が厳しく、財務諸表や事業計画の提出が求められ、融資実行まで時間がかかるケースが多いため、事前準備と慎重な資金計画が必要です。 

他企業や投資家からの出資 

他の企業やエンジェル投資家などからの第三者割当による出資は、返済義務のない自己資本を調達できる手段です。 

特にスタートアップ期や事業拡大フェーズでは、外部資本の導入により成長資金を確保できます。加えて、出資者がビジネスパートナーとなり、経営支援やネットワークの提供といった副次的なメリットも期待できます。 

しかし、出資比率によっては出資者が実質的に経営に影響を及ぼす可能性があり、意思決定に制限がかかるリスクがあります。 

クラウドファンディング 

クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募る資金調達手法です。製品開発や地域振興、社会的課題の解決などの目的に対し、支援者から「応援資金」を募ります。 

リターンとして商品やサービスを提供する「リターン型」や、将来的な利益分配を約束する「投資型」など形式はさまざまです。返済義務がないケースも多く、資本コストを抑えられる可能性が高い点が魅力ですが、事業内容の魅力発信やプロモーション、支援者との信頼構築など、多面的な対応が必要であり、実行には一定のマーケティング能力が求められます。 

種類株式とは

種類株式とは、一般的な株式(普通株式)とは異なり、特定の権利内容が付された株式を指します。 

会社法では、株式について配当、議決権、譲渡制限などの条件を付すことが認められており、そうした条件付きで発行されるものが種類株式と呼ばれます。 

具体的には、会社法第108条第1項により、次の9つの権利内容について設定が可能とされています。 

  • 剰余金の配当 
  • 残余財産の分配 
  • 議決権の制限 
  • 譲渡制限 
  • 取得請求権 
  • 取得条項 
  • 全部取得条項 
  • 拒否権 
  • 役員選任権 

それぞれについて解説します。 

剰余金の配当(会社法108条1項1号) 

配当に関する優先・劣後の関係を定める種類株式です。優先して配当を受け取れる「優先株式」や、一般的な「普通株式」、後順位の「劣後株式」などが設定可能です。 

この仕組みにより、企業は安定的なリターンを出資者に提供しつつ、資金調達を有利に進められます。 

利益配分の差を明確に設けたい場合に活用され、資本政策に柔軟性を持たせる効果があります。 

残余財産の分配(会社法108条1項2号) 

会社解散時に残った財産を、どの株主から優先的に分配するかを定める株式です。債務を返済した後の残余財産について、受け取りの優先順位を明記できます。 

このような優先株の設定により、出資者に対して資本回収の見通しを与えられ、資金調達の円滑化にも寄与します。 

剰余金配当とともに、企業の財務設計において重要な要素とされています。 

議決権の制限(会社法108条1項3号) 

株主総会での議決権の行使を制限した株式です。経営には関わらず、配当など経済的な利益だけを得たい株主向けに設計されます。 

「無議決権株式」もこれに該当します。公開会社では発行制限がありますが、非公開会社では比較的自由に設定できます。 

経営権を一部の株主に集中させたい場合などに適しています。 

譲渡制限(会社法108条1項4号) 

株式を譲渡する際に、会社の承認が必要となる制限を設けた株式です。経営支配権の維持や、望ましくない第三者への株式流出防止を目的としています。 

この制度は、特に非上場企業や同族会社、スタートアップなどで広く利用されています。 

取得請求権(会社法108条1項5号) 

株主が会社に対し、自分の保有する株式を買い取るよう請求できる株式です。請求があった場合、会社は定められた対価で必ず株式を取得しなければなりません。 

これにより、株主にとって投資の回収手段が確保され、企業としても出資者のハードルを下げる効果が期待されます。 

取得条項(会社法108条1項6号) 

一定の事由(株式の上場、会社指定日、株主の死亡など)が生じたときに、会社が強制的に株式を取得できる種類株式です。株主の同意なしに取得できるため、経営上の柔軟な資本政策を可能にします。 

取得対価としては現金だけでなく他の株式も設定でき、株主構成の見直しや整理の手段として利用されます。 

全部取得条項(会社法108条1項7号) 

株主総会の特別決議によって、対象株式の全てを会社が強制的に取得できる種類株式です。スクイーズ・アウト(少数株主の排除)や100%減資、敵対的買収への防衛策として使われます。 

取得には株主への対価(現金や株式など)の提示が必要です。 

拒否権(会社法108条1項8号) 

特定の重要事項について、株主総会や取締役会の決議に加えて、該当する種類株主による同意(種類株主総会決議)を必要とする種類株式です。 

通称「黄金株」とも呼ばれ、敵対的買収の防止や経営の重要決定をコントロールする手段として活用されます。 

1株のみでも議案を否決できる強力な権利を持つため、譲渡制限とセットで運用されることが一般的です。 

役員選任権(会社法108条1項9号) 

種類株主に、取締役や監査役などの役員を選任する権限を付与する株式です。 

特定株主が役員の人選に関与できるため、ベンチャーキャピタルからの投資においてよく利用されます。 

なお、この種類株式は公開会社や委員会設置会社では発行できず、非公開会社に限定されます。 

優先株に関するQ&A

最後に、優先株に関するよくある質問とその回答を紹介します。 

優先株はどのような人が買うべきか 

優先株は、安定したリターンを求めつつリスクを抑えたい人に適した投資商品です。普通株式よりも優先的に配当や清算時の残余財産の分配を受ける権利があるため、企業業績が悪化した場合でも一定の利益回収が期待できます。 

特に、定期的な配当を目的とするインカムゲイン志向の投資家には有利とされます。一方で、議決権が制限されていることが多く、経営参加を希望する場合やキャピタルゲイン(値上がり益)を重視する場合には不向きです。 

アメリカや欧州では長期安定志向の投資手段として浸透しており、日本でもベンチャー投資を中心に徐々に普及しつつあります。 

上場されている優先株はあるか 

日本の株式市場では、上場優先株は非常にまれですが、例外的に上場している優先株が伊藤園の第1種優先株式(証券コード:25935)です。購入方法は、通常の株式と同様に証券口座を通じて購入可能です。 

2007年に上場されたこの優先株は、議決権が原則付与されない代わりに、普通株式の1.25倍の配当が受け取れる設計となっており、さらに最低配当額(15円/株)も保証されています。加えて、普通株式と同様に株主優待制度も適用されており、安定した配当収入と特典を期待する投資家から一定の支持を集めています。 

優先出資証券とは何か 

優先出資証券は、主に協同組織金融機関(例:信金中央金庫)やSPC(特別目的会社)が自己資本を強化する目的で発行するもので、投資家から広く出資を募る形式の証券です。 

優先株とは配当の優先性や議決権の制限などの共通点が多く、いずれもハイブリッド証券に分類されますが、法律上の位置付けや発行主体に明確な違いがあります。優先株は会社法に基づく「株式」ですが、優先出資証券は「出資」に基づくものであり、議決権を一切持たず、原則として社債より劣後します。 

また、優先出資証券は租税特別措置法上、株式などと同様に扱われるため、譲渡益にはキャピタルゲイン課税が適用されることが一般的です。投資信託や高利回り型商品の構成要素としても注目される一方、流動性やリスクの面で社債より高リスク・高リターンの性格を持つことがあります。 

転換型優先株とは何か 

転換型優先株とは、一定の条件を満たした場合に、優先株式を普通株式へ転換できる権利(転換請求権)が付与された優先株です。将来的には株主の判断で普通株へ転換し、株価上昇益(キャピタルゲイン)を得られます。 

転換は主に、企業の上場や資本構成の変更、特定の業績達成時などを契機として行われます。特にベンチャー企業の資金調達や企業再生局面で広く利用されています。 

社債型種類株式とは何か 

社債型種類株式とは、優先株同様に議決権を持たず、優先的に配当を受けられますが、普通株への転換権がない種類株式のことです。 

性質としては、株式でありながら社債に近く、安定した利回りを求める投資家に向いています。発行企業側にとっては、議決権の希薄化を招かずに自己資本を拡充できるメリットがあり、柔軟な資本政策の選択肢となります。 

近年の例としては、ソフトバンクが2023年度内に最大1200億円、2024年度内に最大2000億円規模の社債型種類株式を発行する計画を発表しています。年2.5~3.2%の固定配当が予定されており、満期時には株式として償還される仕組みです。調達資金は、通信やIT分野における成長投資に充てられる見込みです。 

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