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薬局業界は今、経営環境の大きな変化に直面しています。2024年度の調剤報酬改定により従来の門前薬局型から地域密着のかかりつけ薬局への転換が求められ、慢性的な薬剤師不足が深刻化する中で、M&Aが注目される理由も明確になってきました。
本記事では、調剤薬局M&Aを検討されている経営者の方へ向けて、最新の業界動向から具体的な手続きの流れ、適正な価格算定方法まで、実践的で役立つ情報を網羅的に解説します。成功事例から学ぶポイントや、両当事者のメリット・デメリット、実施時の注意点についても詳しく紹介します。
後継者不在に悩む中小薬局の経営者の方、事業拡大を図る買収企業の担当者の方、どちらの立場でも参考になる内容です。地域医療を支える薬局の持続的発展のため、調剤薬局M&Aを戦略的に活用するためのヒントを見つけていただければと思います。
目次
調剤薬局業界は現在、かつてない規模の変革期を迎えています。1990年以降、医薬分業政策の推進により急速に拡大してきた業界は、厚生労働省のレポートによると、2023年度は全国で6万2,000軒を超える調剤薬局が存在し 、コンビニエンスストアの店舗数(2023年度で約5万7,600店 )を上回る規模となっています。しかし近年、この成長に陰りが見え始め、M&Aが業界再編の重要な手段として注目を集めるようになりました。
国の医療費抑制策や2024年度の調剤報酬改定、薬剤師不足の深刻化など、複数の要因が重なり合い、特に中小規模の薬局では経営環境が厳しさを増しています。こうした状況下で、M&Aは単なる企業売買を超えて、持続可能な薬局経営を実現するための戦略的選択肢として位置づけられています。
2024年度の調剤報酬改定では、国の方針が明確に示されました。調剤基本料1~3がそれぞれ3点引き上げられた一方で、地域支援体制加算は7点引き下げられるなど、メリハリの効いた改定となっています。
この改定の背景には、「対物業務から対人業務へ」という薬剤師業務の転換と、「患者のための薬局ビジョン」に基づくかかりつけ薬局の推進があります。単に処方箋を受け付けて薬を渡すだけの門前薬局への評価は下がり、地域医療に根ざしたかかりつけ薬局としての機能を果たす薬局が評価される仕組みに変わりました。
この制度改革により、従来の立地に依存した経営モデルは通用しなくなり、多くの薬局がビジネスモデルの転換を迫られています。特に、特定の医療機関からの処方箋に依存する門前薬局では、新しい加算要件への対応が困難なケースが多く、M&Aを通じた組織力の強化が必要となっています。
中小規模の調剤薬局が直面する最も深刻な課題は薬剤師不足です。
これらの課題は相互に関連し合っており、単独での解決は極めて困難です。薬剤師不足により店舗運営が不安定になると、患者サービスの質が低下し、結果として処方箋の流出につながります。また、仕入れ条件の不利さは収益を圧迫し、薬剤師への適切な給与提供や設備投資を困難にします。
M&Aは、これらの構造的課題を解決する有効な手段として機能しています。大手チェーン薬局との統合により、中小の調剤薬局は大手の仕入れのスケールメリットを活用でき、薬価差益の確保が可能になります。
また、組織力の向上により、薬剤師の確保も容易になります。大手企業の知名度や研修制度、キャリアパスの提示は、薬剤師にとって魅力的な就業環境となります。さらに、グループ内でのIT投資により、DX化への対応も効率的に進めることができます。
成功する調剤薬局M&Aでは、単なる規模拡大を超えて、地域医療への貢献や薬剤師のスキルアップ、患者サービスの向上といった質的な改善も同時に実現されています。こうした包括的なアプローチにより、M&Aは薬局業界の持続可能な発展に寄与する重要な戦略となっています。
調剤薬局M&Aは、調剤薬局特有の規制や許認可を考慮した特殊な取引手法を必要とします。薬局は医療に直結する重要な社会インフラであるため、その譲渡には厳格な法的手続きが求められます。
調剤薬局M&Aには主に「株式譲渡」と「事業譲渡」があり、それぞれの特徴を理解することが成功の鍵となります。また、調剤薬局には都道府県知事の許可や地方厚生局への申請など、重要な許認可が関わってくるため、これらの引き継ぎ方法についても事前に十分な検討が必要です。
調剤薬局M&Aにおける最も基本的な選択肢は、株式譲渡と事業譲渡です。
最も重要な違いは、許認可の取り扱いです。株式譲渡では法人格がそのまま継続されるため、薬局開設許可や保険薬局指定などの許認可も包括して承継されます。一方、事業譲渡では許認可は引き継がれないため、買収側は新たに行政手続きを行う必要があります。
株式譲渡は手続きが簡易で期間も短く済む利点がありますが、簿外債務などの潜在的リスクも同時に承継することになります。事業譲渡は必要な資産のみを選択できる利点がある反面、薬局開設許可や保険薬局指定申請など多数の行政手続きが必要となり、時間と労力がかかります。
調剤薬局M&Aは通常、以下の3つのフェーズに分かれて進行します。
「準備フェーズ」では、M&A仲介会社との契約締結、企業概要書の作成、資料の整備を行います。この段階で薬局の財務状況や許認可の状況を整理し、売却価格の目安を設定します。
「マッチング・交渉フェーズ」では、買手候補の選定、トップ面談の実施、基本合意書の締結を行います。調剤薬局M&Aでは地域性や門前医療機関との関係性が重要になるため、地域に精通した買手候補の選定が特に重要です。
「最終契約フェーズ」では、デューデリジェンス(DD)の実施、最終契約書の締結、クロージングを行います。薬局特有の許認可状況の確認や処方元医療機関との関係性の調査が重点的に行われます。
全体のスケジュールは通常6ヶ月から1年程度ですが、薬局の規模や複雑さ、行政手続きの必要性により変動します。最短では3ヶ月での成約例もありますが、十分な検討期間を設けることが重要です。
調剤薬局M&Aで最も複雑なのが許認可手続きです。事業譲渡を選択した場合、買手は新たに以下の主要な手続きを行う必要があります。
これらを含めて多数の行政手続きが必要となり、それぞれに必要書類の準備と審査期間があります。
許認可手続きを円滑に進めるためには、行政に詳しい専門家のサポートを受けることが推奨されます。また、薬剤師の配置や設備要件など、許認可の要件を満たすための事前準備も重要なポイントとなります。スケジュール管理を徹底し、必要書類の準備に十分な時間を確保することで、スムーズな許認可取得が可能になります。
調剤薬局M&Aは売り手と買い手の双方にとって大きな機会をもたらしますが、同時に注意すべきリスクも存在します。調剤薬局は地域医療を支える重要なインフラであり、そのM&Aは単なる企業買収以上の社会的責任を伴います。
成功する調剤薬局M&Aには、双方の利益が一致していることが不可欠です。譲渡側にとっては後継者問題の解決と創業者利益の獲得が主な動機となり、譲受側にとってはスケールメリットの享受と事業拡大の機会が期待されます。しかし、薬局特有のリスクを適切に管理しなければ、M&A後に大きな問題が生じる可能性があります。
調剤薬局M&Aにおいて譲渡側が得られる最大のメリットは、後継者不在問題の根本的解決です。日本の中小企業の127万社が後継者不在という状況の中、調剤薬局業界も同様の課題を抱えています。親族内承継や社内承継が困難な場合、M&Aによる第三者承継は事業継続の有効な選択肢となります。
また、M&A後も元経営者が役員として残る場合、株式譲渡益を得た上で経営に関与し続けることも可能です。特に地域密着型の薬局では、元経営者の経験と人脈が大きな価値となるため、買収後も重要な役割を担うケースが多く見られます。
さらに、大手グループに参画することで、これまで個人薬局では困難だった設備投資やIT化、人材研修なども実現でき、薬局の機能向上につながります。
譲受側にとって最も重要なメリットは、スケールメリットによる競争力の向上です。複数の薬局を統合運営することで、医薬品の仕入れコストを大幅に削減できます。特に中小薬局の買収により、これまで個別交渉が困難だった卸業者との大口取引が可能になります。
また、買収により一定の患者基盤を確保できるため、新規開業と比較してキャッシュフローの予測が立てやすく、投資リスクを軽減できる点も重要なメリットです。グループ運営によるノウハウの共有や、在宅医療などの新サービス展開も容易になります。
調剤薬局M&Aで最も注意すべきリスクの一つが、薬剤師を含む従業員の離職です。M&A発表により不安を感じた薬剤師が退職することで、薬局運営に深刻な支障をきたす可能性があります。特に管理薬剤師が辞めてしまうと、薬局の営業継続が困難になります。
また、経営統合の失敗も重大なリスクです。薬局の文化や運営方針が大きく異なる場合、統合に時間がかかり、一時的に業績が悪化する可能性があります。これを避けるため、M&A前の段階で統合計画を詳細に検討し、段階的な統合スケジュールを策定することが重要です。
さらに、処方元医療機関との関係性が薬局の価値に大きく影響するため、医師との面談や関係維持に十分な配慮が必要です。買収後の医師への挨拶回りや、サービス品質の維持・向上により、長期的な信頼関係を構築することが成功の鍵となります。
調剤薬局業界のM&Aにおいて、成功を収めた企業にはいくつかの共通したパターンがあります。これらの事例を分析することで、今後M&Aを検討される方にとって有益な戦略的洞察を得ることができます。
ウエルシアホールディングスの事例では、地域戦略に基づいた着実なM&Aが成功を収めています。
ウエルシアホールディングスによる金光薬品の買収(2019年3月発表、同年6月1日付で子会社化)では、岡山県を中心に31店舗(うち調剤専門薬局12店舗)を展開していた地域密着型企業を子会社化しました。ウエルシアは、この買収により中国地方での地盤強化を図り、ドミナント戦略の実現に成功しています。
ファーマライズホールディングスも積極的なM&A戦略で知られています。2024年1月には愛知県のGOOD AIDを買収し、関東・中部・関西地方に25店舗を保有する同社を傘下に収めることで、大都市圏での店舗展開を強化しました。この事例は、地域特性を活かした計画的な拡大の重要性を示しています。
日本調剤の事例では、1909年に創業し、1964年には日本で初めての調剤薬局「水野調剤薬局」を開設した合同会社水野を買収。同社の持つ業界最先端のICT技術と効率的な店舗運営ノウハウを既存店舗に活用することで、大きなシナジー効果を創出しました。
異業種からの参入企業も注目すべき成功事例を生み出しています。総合メディカルグループによる広島県のライフアート(62店舗の地域密着型調剤薬局)の買収(2024年12月発表)では、同グループが全国展開する医療モール運営事業との連携により、地域医療の発展を目指した統合的なヘルスケアサービスの実現を目指しています。
クスリのアオキホールディングスでは、他業態の店舗を取得し自社の強みである複合型店舗へ転換する戦略的M&Aを展開しています。2024年1月には、岐阜県のウッドペッカーからホームセンター1店舗を譲り受け、医薬品、化粧品、日用雑貨、食品を取り扱う複合型店舗へと改装することで、地域ドミナント戦略を強化する方針です。
これらの異業種参入企業の成功要因は、既存事業で培った強みを薬局事業に適用し、従来の薬局にはない付加価値を創造している点にあります。一方で、薬局事業運営に不可欠な薬機法等の規制遵守や、医療従事者・患者との信頼関係構築は、業界経験の浅い企業にとっては特に留意すべき点であり、これらの業界規範への適切な対応が求められます。
事業承継型M&Aでは、単なる経営権の譲渡を超えた価値の継承が重要となります。メディカル一光グループによる京都府の京寿薬品の買収事例(2024年4月発表)では、京都府南部地域で長年親しまれてきた「京寿薬局」が持つ地域医療への貢献姿勢を尊重しつつ、グループのドミナント戦略に組み込むことを目指しています。
クオールホールディングスの山梨県ダイナ(18店舗)の買収事例(2024年5月発表)では、1994年の設立以来、地域密着で運営され、ドライブスルー対応(一部店舗)や利用者の健康サポートに注力してきた薬局の特徴を活かしつつ、同社の山梨県初展開の足がかりとしています。これは、地域特性と企業文化を尊重した承継の好例といえるでしょう。
事業承継型M&Aの成功要因として、以下の要素が挙げられます。
これらの成功事例からは、M&Aの成功に必要な要素として、明確な戦略目的、人材の価値重視、地域医療への貢献意識という共通項が浮かび上がります。市場シェア拡大や効率化だけでなく、地域社会への責任を果たしながら持続的な成長を実現することが、薬局M&Aの真の成功といえるでしょう。
調剤薬局業界は2024年度調剤報酬改定により、従来のビジネスモデルから大きな転換を迫られています。薬剤師不足、異業種参入、後継者不在といった課題に対し、M&Aは有効な解決策として注目されています。
本記事で解説したように、調剤薬局M&Aの成功には6つのポイントが重要です。適切な価格算定、薬剤師の確保、かかりつけ薬局機能の強化、医療機関との関係維持、徹底したデューデリジェンス、専門アドバイザーの活用です。
譲渡側は後継者問題の解決と創業者利益を得られ、譲受側はスケールメリットと事業拡大を実現できます。ただし、従業員の処遇変化や医療機関との関係悪化などのリスクもあるため、十分な準備と専門家のサポートが不可欠です。
成功事例から学べるのは、M&Aの目的を明確化し、薬局特有の価値を適切に評価することの重要性です。変化の激しい時代だからこそ、M&Aを戦略的に活用し、持続可能な薬局経営と地域医療の質向上を実現していきましょう。 M&Aや経営課題に関するお悩みはM&Aロイヤルアドバイザリーへご相談ください。
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