執行役員とは?会社法上の定義や設置メリット、取締役との違いを解説 

着手金・中間金無料 完全成功報酬型

執行役員とは、会社の経営方針を受けて、事業や組織の運営を実際に動かす役割を担うポジションです。執行役員は取締役のように会社法で定められた役員ではありませんが、一般の社員よりも経営に近い立場で、重要な業務執行を任されます。一方で、取締役との違いがわかりにくいと感じる人も少なくありません。 

本記事では、執行役員の基本的な位置付けや役割、導入するメリット・デメリット、他の役職との違いを整理し、制度を正しく理解するためのポイントをわかりやすく解説します。

執行役員とは?概要をわかりやすく解説

まず、執行役員について基本的な情報を解説します。 

執行役員の定義

執行役員とは、経営陣が決定した戦略や方針を具体的な事業活動へと落とし込み、現場をけん引する「実務運営の最高責任者」を指す呼称です。この制度は、会社全体を動かす「経営」と、具体的な事業を動かす「執行」を切り分けるために生まれました。

執行役員は、あくまで実務部隊のリーダーとしての呼び名であり、経営陣である「取締役」とは区別して用いられます。日本では、1997年にソニーが初めて導入したのをきっかけに、現在では多くの企業で執行役員制度が採用されています。

執行役員の役職と権限

執行役員は、会社法や商業登記法において定められた役職ではありません。法律上の「役員」とは、取締役や監査役、会計参与、執行役などを指し、執行役員はこれに含まれない法定外のポストです。 

執行役員の法的な立ち位置は、会社との契約形態によって異なり、「雇用契約に基づく使用人(従業員)」または「委任契約に基づく受任者」として扱われます。雇用契約の場合は、待遇面でも原則的に一般社員と同様に労働基準法が適用されます。

ただし、職務内容や権限によっては一部例外がある点に注意が必要です。また、執行役員は組織内で極めて重要な役割を担うため、実務上は会社法における「重要な使用人」として扱われ、取締役会がその選任や解任を決定することが一般的です。

    必須
    必須
    必須
    必須

    個人情報につきましては、当社の個人情報保護方針に基づき適切に管理いたします。詳しくは「個人情報の保護について」をご確認ください。

    img

    THANK YOU

    お問い合わせが
    完了しました

    ご記入いただきました情報は
    送信されました。
    担当者よりご返信いたしますので、
    お待ちください。

    ※お問い合わせ後、
    2営業日以内に返信がない場合は
    恐れ入りますが
    再度お問い合わせいただきますよう、
    よろしくお願い致します。

    お急ぎの場合は
    代表電話までご連絡ください。

    phone
    03-6269-3040
    受付:平日 9:00~18:00
    img
    img

    執行役員の主な役割

    執行役員の主な役割は、次のとおりです。 

    • 経営層と現場の連携 
    • 顧客との信頼構築 
    • 特定事業の収益に対する責任 
    • リスクマネジメント 
    • 次世代経営人材の選抜と育成 

    それぞれを詳しく解説します。 

    経営層と現場の連携 

    執行役員の重要な役割の一つが、経営層と現場をつなぐ「橋渡し役」です。 取締役会で示される経営戦略やビジョンは、どうしても抽象的になりがちですが、執行役員は現場の社員がすぐに行動へ移せる具体的な施策や目標へと落とし込みます。経営の言葉を現場の言葉に置き換え、方向性をわかりやすく示すことで、組織全体の意識と行動をそろえていきます。 

    同時に、執行役員は現場から経営層への情報の「窓口」でもあります。市場の変化や顧客の反応、業務上の課題など、最前線で得られるリアルな情報を整理し、経営判断に生かせる形で伝える役割を担います。こうした双方向の情報共有によって、戦略が現実とかけ離れることを防ぎ、柔軟な修正を可能にします。 

    このように、執行役員は経営と現場の間に立ち、両者のズレを調整しながら組織を前進させる存在です。単なる伝達役ではなく、組織全体の動きを整える要となるポジションだといえるでしょう。 

    顧客との信頼構築 

    執行役員は、事業部門を代表する「会社の顔」として、重要顧客や戦略的パートナーとの関係構築に深く関わります。担当者レベルでは判断が難しい条件交渉や大きな投資を伴う案件において執行役員が直接対応することは、企業として本気で取り組む姿勢を示す強いメッセージとして役立ちます。 

    役職者自らが顧客と向き合い、直接対話を重ねることで、相手に安心感や信頼感が生まれます。その結果、価格や条件だけではない関係性が築かれ、競合他社との差別化につながる点も大きなメリットです。 

    また、執行役員に求められることは、目先の売り上げだけを追うことではありません。顧客が抱える経営課題や将来の方向性を理解し、中長期的な視点でともに成長する関係を築くことが重要です。業界内の人脈や情報を活用しながら新たな機会を創出し、経営層同士の信頼関係を土台とした強固なパートナーシップを構築することで、安定した収益基盤と企業価値の向上に貢献します。 

    特定事業の収益に対する責任 

    執行役員は、営業・製造・開発など、担当する事業領域における実質的な最終責任者として、収益目標の達成を担います。単に現場を管理するだけでなく、予算の策定から実行、進捗(しんちょく)管理までを一貫して統括し、事業全体の成果に責任を負う立場です。 

    与えられた数値目標を達成するためには、限られた経営資源をどこに重点配分するかの判断が欠かせません。人材、設備、資金、情報といった資源を適切に配分し、担当事業のパフォーマンスを最大化することが求められます。 

    同時に、自部門の利益だけを追うのではなく、会社全体として最適な結果を導く視点も重要です。他の執行役員と連携し、部門を横断した取り組みや相乗効果を生み出すことで、企業全体の価値向上につなげていきます。 

    こうした取り組みを通じて、株主や投資家といったステークホルダーに対し、事業の成長性と収益性を継続的に示し続けることも、執行役員に課される大きな責務といえるでしょう。 

    リスクマネジメント 

    執行役員は、企業が安定して成長し続けるための「守りの要」として、全社的なリスク管理とガバナンスの強化を担います。不祥事や事故、法的トラブルといった事態を未然に防ぐため、コンプライアンスの徹底や健全な倫理観の浸透を主導し、現場が無理な運営や不正に傾かない組織づくりを進めます。 

    その中核は、内部統制の実効性を高める取り組みです。制度やルールを形だけで終わらせず、現場レベルで機能する仕組みとして定着させることで、企業ブランドや社会的信用の毀損(きそん)を防ぎます。 

    また、問題が発生した際には、迅速な判断と指示によって混乱を抑え、被害を最小限にとどめる対応力も求められます。さらに、法改正や社会情勢の変化を先取りし、潜在的なリスクに事前に手を打つことで、経営の安定性を高めます。 

    次世代経営人材の選抜と育成 

    執行役員には、目先の成果だけでなく、組織の将来を担う人材を育てる責任もあります。後継候補となる次世代リーダーを見極め、計画的に育成していくことは、企業の持続的成長に直結する重要な役割です。 

    日々の業務の中で、意思決定の考え方や物事を多面的に捉える視点を共有し、部下の視座を引き上げていきます。単なる知識やスキルの指導にとどまらず、難易度の高い案件や責任の重い役割をあえて任せることで、経営を担うための判断力や精神的な強さを養います。 

    また、一人一人の適性を踏まえた配置転換や経験の幅を広げる取り組みを通じて、全体を俯瞰(ふかん)できる人材層を厚くしていくことも欠かせません。こうした人材育成の積み重ねは、組織の新陳代謝を促し、長期的な競争力を支える基盤の一つです。 

    執行役員と似た役職との違い

    執行役員と似た役職との違いをわかりやすく解説します。 

    執行役員と執行役の違い 

    執行役員と混合しやすい役職の一つが執行役です。

    執行役は、指名委員会等設置会社にのみ設けられるポジションです。 取締役会から一定の権限を任され、業務執行に関する判断そのものを行う立場にあります。現場を動かすだけでなく、「何を実行するのか」「どの方針で進めるのか」といった業務上の意思決定に関与する点が特徴です。 

    執行役員は、決められた方針や施策を実務として遂行する役割を担います。業務執行に深く関わる点は共通していますが、判断権限の有無という点で両者には明確な違いがあります。そのため、指揮命令の関係では、業務執行を決定する執行役が上位に位置し、執行役員はその決定を受けて動く立場と整理できます。 

    なお、執行役が担うのは、あくまで取締役会から委ねられた業務執行に関する範囲に限られます。会社の経営方針そのものや、株主総会に提出する重要事項の決定といった経営の根幹に関わる判断は、引き続き取締役会が担う点も押さえておく必要があります。 

    執行役員と取締役の違い 

    取締役は会社法に基づいて置かれる法定役員であり、株式会社には少なくとも一人の取締役を設ける必要があります。さらに、取締役会を設置している会社では、複数名の取締役によって構成され、組織として経営判断を行う体制が求められます。 

    取締役は会社と委任関係に立ち、取締役会での審議や決議を通じて、経営方針や重要な業務執行について判断する役割を担います。会社全体の方向性を定める立場であるため、その責任は重く、経営判断に対する説明責任も伴います。 

    一方、執行役員は取締役が決定した方針を受け、現場で具体的な業務を推進することが主な役割です。雇用契約の場合、労働基準法が適用され、報酬面でも報酬ではなく従業員給与として扱われる点が、取締役との実務上の大きな違いといえるでしょう。 

    ただし、委任型の場合は給与ではなく、報酬として支払われることもあります。

    執行役員と役員の違い 

    執行役員は肩書に「役員」とつきますが、役員ではありません。役員とは、取締役や監査役など、会社法に基づいて選任される法定の地位にある者を指します。 

    会社の意思決定機関や監督機関の一員として、経営判断や統制に直接関与する点が大きな特徴です。重要事項の決定や監督を通じて、企業運営全体に影響を及ぼす立場であり、その分、法的責任も重くなります。 

    一方、執行役員は会社法に定めのない社内制度上の役職であり、会社全体を統制する立場ではなく、担当分野の成果に責任を負う点が特徴です。このように、役員は「経営判断と統治に深く関与する存在」、執行役員は「実行段階で経営に関わる存在」と整理すると、両者の違いがより明確になります。 

    執行役員と管掌役員の違い 

    管掌役員は、取締役の立場のまま特定分野を統括する責任者として位置づけられます。取締役会の一員として経営戦略の検討や重要事項の判断に関与し、自身が担当する領域については、より踏み込んだ意思決定を行う点が特徴です。経営企画や財務、人事など、専門性の高い分野を受け持ち、会社の成長や方向性に直接影響を与える役割を担います。 

    一方、執行役員は経営判断を行う立場ではなく、決定された戦略や方針を実務として推進する役職です。取締役会には属さず、経営全体を俯瞰して判断するのではなく、担当領域における実行と成果に責任を負います。 

    このように、管掌役員は「経営判断に深く関与する取締役」、執行役員は「判断内容を現場で具現化する実行責任者」という違いがあります。 

    執行役員と会計参与の違い 

    会計参与は、会計・税務の専門知識をもつ第三者的立場の人材が、会社の財務情報の信頼性を高めるために関与する制度上の役職です。全ての株式会社は定款で会計参与を設置する旨を定められます。 

    取締役と連携しながら決算書類などを作成し、その内容が正確であることを担保する役割を担います。また、これらの書類は会社とは別に管理され、株主や債権者から求めがあった場合に確認できる体制が整えられています。特に中小企業においては、外部から見た会計の透明性を確保するための仕組みとして活用されるケースが多く見られます。 

    会計参与は「財務情報の信頼性を外部視点で支える存在」、執行役員は「事業を動かす内部の実行責任者」という点で、役割と関与の方向性が明確に異なります。 

    執行役員と監査役の違い 

    監査役は、株主総会で選任される会社法上の役員であり、会社から独立した立場で職務を行う機関です。経営陣から一定の距離を保ちつつ、会社運営が適正に行われているかを監視する役割を担います。 

    監査役には、職務を誠実かつ慎重に遂行することが求められ、業務を怠った場合には会社に対して損害賠償責任を負うこともあります。その責任は重く、単なる名義的なポジションではありません。実務面では、取締役会などの重要な会議に出席し、取締役や従業員、外部監査人からの報告内容を精査します。さらに、会社の業務や財産の状況を調査し、必要に応じて助言や意見を述べたり、問題のある行為を未然に防ぐための対応を取ることも求められます。 

    一方、執行役員はこうした監督機能を担う立場ではなく、事業運営を実際に推進する実行責任者です。監査役が「チェックする側」であるのに対し、執行役員は「チェックされる側」に位置し、両者は企業統治において明確に役割が分かれています。 

    執行役員と部長の違い 

    部長は、自身が率いる部門の運営・統括を任される管理職であり、現場における最高責任者として機能します。部内の業務配分や人材配置、目標設定と進捗(しんちょく)管理、メンバーの育成などを通じて、部署に与えられた成果を着実に上げることが求められます。経営方針の実現に貢献する役割ではあるものの、その活動領域は担当部門の中に限定されることが一般的です。

    一方、執行役員は特定の部署を超え、会社全体の動きを見渡しながら経営判断を実行に移す立場です。複数部門にまたがる調整や、全社的な施策の推進、将来を見据えたリスク対応など、組織全体を前進させることが期待されます。短期的な部署目標よりも、会社として進むべき方向性を形にすることが重視される点が特徴です。 

    このように、部長が「部署単位で現場を率いる管理者」であるのに対し、執行役員は「会社全体を動かす実行責任者」として、求められる視野と責任のスケールが大きく異なります。 

    執行役員制度について

    続いて、執行役員制度について詳しく解説します。 

    執行役員制度とは 

    執行役員制度とは、執行役員という役職を設け、経営判断を行う立場と業務を実行する立場を区分するための制度です。企業が自社の組織設計に基づいて任意に導入する仕組みであり、会社法上に定められた制度ではありません。 

    設置人数に制限なし 

    執行役員は会社法上の定めがない役職であるため、配置する人数に公的なルールは存在しません。1名の企業もあれば、数十名を置く大企業もあります。この「自由度の高さ」こそが執行役員制度の強みであり、企業のフェーズに合わせて柔軟に組織を組み替えられます。 

    例えば、多角化経営を行う企業では「1事業部につき1名の執行役員」を配置して責任の所在を明確にしたり、急成長中のスタートアップでは特定の重要プロジェクトを完遂させるために期間限定でポストを新設したりすることも可能です。 

    部署数や事業の複雑さに応じて、企業が「今、現場を動かすために必要な人数」を最適化できる点が、執行役員制度の大きな特徴です。 

    任期と定年がない 

    執行役員の任期についても、法律による期間の定めはありません。しかし、多くの企業では「1年」または「2年」といった区切りを設けています。これは、成果が出せない場合の入れ替えを可能にすると同時に、選任プロセスに緊張感を持たせ、組織内の「不公平感」を解消するためです。定期的な再任審査を行うことで、常に最適なリーダーが現場を指揮する体制を維持します。 

    また、定年に関しては一般社員と同じ基準を設けることが基本ですが、例外を認めるケースも少なくありません。特定の技術領域に精通している、あるいは強力な顧客ネットワークを持っているなど、その人物の続投が経営利益に直結すると判断される場合、執行役員専用の「定年延長ルール」を適用することがあります。 

    このように、組織の若返りと熟練した指導力の維持を両立させるための柔軟な運用がなされています。 

    年収相場と格付け 

    執行役員の報酬は、一般社員とは一線を画す高水準です。統計データによると、従業員の身分を維持したまま就任する一般的な執行役員でも、平均年間報酬は約1,593万円に達します。この金額は企業規模が大きくなるほど跳ね上がる傾向にあり、大手企業の現場トップには相応の重い責任と対価が用意されています。 

    さらに、執行役員制度の中にも「格付け(ランク)」が存在します。経営に近い役割を兼務するほど報酬は高くなり、常務クラスの役割を担う「常務執行役員」では約2,246万円、さらに上位の「専務執行役員」ともなれば平均約3,058万円という水準になります。 

    単なる「部長の上」という位置づけではなく、経営陣への階段を登るほど、その責任の重さに比例して報酬も飛躍的に上昇していく実力主義の構造となっています。 

    執行役員制度を導入するメリット

    執行役員制度を導入するメリットは、次のとおりです。 

    • 役割の分離による経営の高度化と現場の加速 
    • 経営の考えが現場に伝わりやすい 
    • 経営感覚を備えた「次世代リーダー」の計画的選抜 
    • 社員のやる気と成長意欲が高まる 
    • 取締役にせずに幹部登用できる 

    それぞれを詳しく解説します。 

    役割の分離による経営の高度化と現場の加速 

    執行役員制度の導入メリットは、取締役が「将来のかじ取りと監督」に、執行役員が「戦略の完遂」に専念できる体制が整えられる点です。 

    執行役員制度がない場合、取締役が現場の細かな実務に追われ、本来優先すべき長期的な投資判断やガバナンスの強化がおろそかになるリスクがあります。役割を明確に切り分けることで、取締役会は高所大所からの議論に集中でき、経営の質が向上します。同時に、実務における決定権が執行役員に委譲されるため、現場の機動力が飛躍的に高まります。 

    上位者の承認を待つロスタイムが削減され、執行役員の裁量で即断即決が可能になるため、変化の激しい市場環境において競合他社を上回るスピード感で事業を推進できます。 

    経営の考えが現場に伝わりやすい 

    経営方針や戦略は、どうしても抽象的な表現になりやすく、そのままでは現場が「何を優先すべきか」「どこまで判断して良いのか」を判断しにくいことがあります。執行役員が間に入ることで、方針の背景や目的を整理し、現場の業務や判断基準に置き換えて説明できる点も大きなメリットです。 

    さらに、執行役員は現場の実情を把握した上で、課題や改善点、社員の声を集約し、経営層に伝える役割も果たします。現場で起きている問題が早い段階で共有されることで、経営判断が実態から乖離(かいり)することを防ぎやすくなります。 

    このような双方向の情報の流れが生まれることで、経営の考えが現場に浸透しやすくなり、現場の動きも経営の方向性とそろいやすくなります。その結果、組織全体としての一体感が高まり、方針に沿った行動が取りやすい環境が整います。 

    経営感覚を備えた「次世代リーダー」の計画的選抜 

    執行役員の立場を設けることは、将来の社長や取締役を育てるため育成プログラムの一環にもなります。 

    部長職までの「特定部門の最適化」という視点から脱却し、全社戦略に基づいた資源配分やリスク管理を実戦形式で経験させることで、経営者としての視座を養います。この段階を経て取締役に昇格した人材は、既に経営的な判断基準を身につけているため、就任直後から高いパフォーマンスを発揮できます。 

    また、執行側の苦労や実務の勘所を熟知しているため、取締役となった後も現場を動かす執行役員と盤石な協力体制を築け、組織の継承が極めてスムーズです。 

    社員のやる気と成長意欲が高まる 

    執行役員というポジションが設けられていることで、社員にとって「どこまで成長できるのか」「次に目指す立場はどこか」が具体的に見える点もメリットです。 

    努力や成果を積み重ねれば、現場の管理職にとどまらず、経営に近い立場までステップアップできる可能性があるとわかることは、日々の仕事への向き合い方に大きな影響を与えます。 

    また、年齢や社歴ではなく、成果や役割への向き合い方を重視して執行役員に登用する運用が行われれば、「頑張った分だけ正当に評価される」という認識が社内に広がります。この納得感は、指示待ちではなく、自ら考えて行動しようとする姿勢を育てるために重要です。 

    執行役員制度は、単なる役職の追加ではなく、社員の意欲と成長を引き出す土台として機能するといえるでしょう。 

    取締役にせずに幹部登用できる 

    執行役員は、会社の中で責任ある立場を担う幹部でありながら、法律上の役員である取締役には該当しません。 

    取締役を選任する場合は登記が必要であり、手続きに時間や手間がかかるほか、氏名などの個人情報が公開されます。また、万が一その人物に不祥事やトラブルが生じた場合、金融機関からの評価や融資判断に影響を与える可能性もあります。 

    その点、執行役員であれば、肩書や権限を明確に与えつつも登記を伴わないため、会社としてのリスクを抑えた幹部登用が可能です。将来の取締役候補を見極めるための「試行的なポジション」としても活用しやすく、経営の柔軟性を保ちながら組織強化を図れる点が大きなメリットといえます。 

    執行役員制度を導入するデメリット

    執行役員制度を導入するメリットだけでなく、デメリットについても触れていきます。主なデメリットは、次のとおりです。 

    • 組織の階層が増えて風通しが悪くなる 
    • 経営陣が現場の「本当の姿」を見失う 
    • 「役員」か「社員」か立ち位置が中途半端になる 
    • 誰が決めるのかがハッキリせず、チャンスを逃す 

    それぞれを詳しく解説します。 

    組織の階層が増えて風通しが悪くなる 

    執行役員という新しいポジションを作ることで、経営陣と現場の間に「壁」が一段増えてしまうリスクがある点がデメリットの一つです。 

    特に、実力を評価するためではなく、年功序列の調整役として執行役員を増やしてしまうと、組織がピラミッドのように重なりすぎてしまいます。 さらに、執行役員の中にまで「専務」や「常務」といった細かい上下関係を作ってしまうと、一つの物事を決めるのに多くのハンコや承認が必要になり、かえって業務が停滞します。 

    上司が増えすぎることで「誰の指示を優先すべきか」が現場で混乱し、結果として会社の動きが鈍くなってしまうのは本末転倒な事態といえます。 

    経営陣が現場の「本当の姿」を見失う 

    執行役員に業務運営を大きく任せる体制になると、経営トップが現場の状況を直接見る機会が減ってしまうことがあります。 

    報告書や数値だけを基に判断する状態が続くと、日々の業務で起きている小さな変化や、顧客の反応、社員の負担感といった「現場ならではの情報」を捉えられません。その結果、実態とかけ離れた方針や指示が出てしまう可能性もあります。 

    また、執行役員が経営陣との関係を優先しすぎると、問題点や不満が正確に伝えられないケースも生じます。良い情報だけが上に上がり、課題やトラブルが表に出ない状態が続けば、経営判断の精度は下がってしまいます。 

    このように、経営と現場の距離が広がると、考え方のズレが生まれやすくなり、組織としてのまとまりも失われがちです。 

    「役員」か「社員」か立ち位置が中途半端になる 

    前述のとおり、執行役員は法律で定められた役職ではなく、各社が独自に設けるポジションです。そのため、社内での位置付けや権限を明確にしておかないと、立場が曖昧になりやすいという課題があります。制度だけを形として導入しても、実態が伴わなければ「肩書だけの存在」になってしまいます。 

    例えば、経営トップが意思決定を全て自分で行う場合、執行役員に任せたはずの業務にも細かく関与してしまい、権限が十分に発揮されません。その結果、執行役員自身も判断に迷い、現場の動きが鈍くなることがあります。 

    また、一般の社員から見ても、「自分の上司なのか」「経営側の人なのか」がわかりにくくなり、相談先や責任の所在が曖昧になるケースもあります。こうした状態が続くと、組織の混乱や不信感につながりかねません。執行役員制度を生かすには、役割と立場を社内で明確に共有することが不可欠です。 

    誰が決めるのかがハッキリせず、チャンスを逃す 

    取締役と執行役員の判断範囲が明確に定まっていないと、重要な局面で決断が滞る恐れがあります。誰が最終判断を下すのかが分からない状態では、互いに様子をうかがったり、判断を先送りしたりしがちです。その結果、スピードが求められる場面で動けず、ビジネスチャンスを逃してしまうことがあります。 

    また、問題が発生した際にも、責任の所在が不明確なまま対応が遅れ、事態が大きくなってしまうケースも少なくありません。迅速な判断ができないことは、会社にとって大きなリスクになります。こうした事態を避けるためには、どこまでを取締役が決め、どこからを執行役員に任せるのかを事前にはっきり定めておくことが重要です。 

    執行役員制度を導入する手順

    執行役員制度を導入する手順は、次のとおりです。 

    1. 締役会での意思決定 
    1. 執行役員の位置付けを社内規程で明確にする 
    1. 選任と手続きの完了 

    それぞれを詳しく解説します。 

    1.締役会での意思決定 

    執行役員制度を導入するにあたって、まず経営陣の間で制度導入の必要性について共通認識を持つことが欠かせません。執行役員は、取締役が担う経営判断を支え、実務を分担する立場にあるため、制度の導入は経営体制そのものに影響します。そのため、多くの企業では取締役会を開き、執行役員制度の導入を正式な議題として取り上げます。 

    ここで、導入の目的や基本的な考え方を整理した上で、取締役会としての意思決定を行います。取締役会で決議しておくことで、制度導入が個人の判断ではなく、会社としての正式な方針であることが明確になります。この段階で合意形成をしっかり行っておくことが、後の運用を円滑に進める上で重要なポイントです。 

    2.執行役員の位置付けを社内規程で明確にする 

    制度導入を決定した後は、執行役員の立場や役割を明文化する社内規程を整備します。執行役員は法定役員ではないため、その権限や責任は会社が定めたルールに基づいて運用されます。 

    規程では、主に以下の点を整理します。 

    • 執行役員の任期の考え方 
    • 担当業務や責任範囲 
    • 報酬や評価の基本方針 
    • 契約形態(雇用契約か委任契約か) 

    契約形態については、社内の従業員を登用する場合は雇用契約を結ぶケースが多く、外部人材を起用する場合には委任契約が選ばれることもあります。いずれの場合でも、取締役や一般社員との違いが明確になるよう整理しておくことが欠かせません。 

    3.選任と手続きの完了 

    執行役員として適任者が決まり、本人の就任意思が確認できたら、正式な選任手続きを行います。 一般的には選任辞令を交付し、執行役員としての立場や開始日を明確にすることで、職務が正式にスタートします。この辞令は、社内外に対して役割を示す意味も持ちます。 

    また、外部から人材を迎え入れ、雇用契約を結ぶ形で執行役員に就任してもらう場合は、通常の採用と同様に各種手続きを行う必要があります。具体的には、雇用保険や労災保険への加入手続きを忘れずに進めることが重要です。 

    こうした事務面の準備をあらかじめ整えておくことで、就任後の混乱を防ぎ、円滑に新しい体制へ移行しやすくなります。 

    執行役員に適した人材の特徴

    執行役員に適した人材の特徴は、次のとおりです。 

    • 経営に関わる実務経験を持っている 
    • 取締役と社員の双方と円滑にやり取りできる 
    • プレッシャーに耐え、安定した判断ができる 
    • 専門性を持ちつつ、視野を広げられる 
    • 誠実で、周囲から信頼されている 

    それぞれをわかりやすく解説します。 

    経営に関わる実務経験を持っている 

    執行役員は、会社法上の役員ではないものの、実務の面では取締役が決めた方針を事業として成立させる責任者という立場にあります。そのため、単に現場業務に詳しいだけでなく、売り上げ・コスト・人員配置などを含めて、事業全体を見ながら判断してきた経験が重要です。 

    過去に部門責任者や事業責任者として、結果に対する説明責任を負ってきた人材は、執行役員としても現実的で無理のない意思決定ができる可能性が高いといえます。 

    取締役と社員の双方と円滑にやり取りできる 

    執行役員は、取締役と従業員のどちらにも近い立場で業務を行います。そのため、経営層の考えを正しく理解しつつ、現場の感覚や制約も把握できる対話力が不可欠です。一方的に指示を伝えるだけではなく、背景や目的を説明し、現場の意見や懸念を整理して経営に返すことが求められます。 

    上下関係に依存せず、立場の違う相手とも冷静に意思疎通できる人材は、執行役員として組織の調整役を果たせます。 

    プレッシャーに耐え、安定した判断ができる 

    執行役員は、日々の業務執行について結果責任を負う立場にあり、その判断は部門や会社全体に影響を及ぼします。小さな判断であっても、積み重なれば経営成果や組織運営に直結するため、自らの決定に責任を持つ姿勢が不可欠です。 

    また、執行役員は常に時間的制約や数値目標、社内外からの要請にさらされるため、強いプレッシャーの中で意思決定を行う場面が多くなります。そのような状況でも、感情や場の雰囲気に左右されることなく、事実関係や優先順位を整理し、冷静に判断できる精神的な安定感が求められます。 

    一時的な成果や目先の都合に流されず、中長期的な影響まで見据えて判断できる人は、組織からの信頼を得やすく、執行役員として継続的に役割を果たしやすいといえるでしょう。 

    専門性を持ちつつ、視野を広げられる 

    執行役員には、財務、営業、開発、人事など、いずれかの分野で培ってきた実務上の強みが求められます。専門知識や経験は、判断の質を高め、現場からの信頼を得るための重要な土台です。 

    一方で、執行役員の役割は自分の専門領域に限定されるものではありません。事業全体や他部門との関係性を踏まえた判断が求められるため、他分野にも関心を持ち、必要な知識を吸収し続ける姿勢が欠かせません。専門分野の論理だけで結論を出すのではなく、会社全体への影響を考えられる柔軟さが重要です。 

    専門性を判断の軸として生かしつつ、視野を広げて物事を捉えられる人材は、部門間の調整や複雑な課題にも対応しやすく、執行役員として高い付加価値を発揮しやすいといえるでしょう。 

    誠実で、周囲から信頼されている 

    執行役員は、部門間の調整や人事、業務配分など、立場の異なる多くの関係者に影響を与える判断を行う役割を担います。そのため、その人の判断基準や姿勢が組織全体から常に見られる立場にあります。場面ごとに態度が変わったり、特定の人や部署を優遇するような振る舞いがあれば、信頼はすぐに揺らいでしまいます。 

    執行役員に求められるのは、私的な感情や個人的な関係に左右されず、事実やルールに基づいて判断を下す誠実さです。判断の理由を説明でき、一貫した姿勢を保てる人は、社員からも経営陣からも安心して任せられる存在になります。このような信頼は一朝一夕に築けるものではありませんが、日々の言動を通じて積み重ねられることで、組織を安定して動かすための重要な土台となります。 

    執行役員を解任するケース

    執行役員を解任する場合は、会社が独自に定めた規程やルールに基づいて判断・手続きを行うことが基本です。執行役員は会社法上の役員ではないため、解任自体は会社法に定められていません。ただし、雇用契約や就業規則、社内規定に反した解約は無効となる可能性があります。対応を誤ると労務トラブルにつながる恐れがあるため、注意が必要です。

    実務上よく見られる解任理由は、次のとおりです。 

    • 社内規程に反する行為や不正があった 
    • 職務を十分に果たせていないと判断された 
    • 現場の責任者として適性を欠くと判断された 
    • 就業規則上の懲戒事由に該当する 

    それぞれを詳しく解説します。 

    社内規程に反する行為や不正があった 

    執行役員が、会社で定められた執行役員規程に反する行動を取ったり、不正行為によって会社の信頼を大きく損ねたりした場合には、解任が検討されることがあります。執行役員は、会社の方針や重要な判断を現場で実行する立場にあり、その言動は社内外に強い影響を与えます。そのため、通常の社員以上に、ルールを守る姿勢や高い倫理観が求められます。 

    こうした立場にありながら、規程違反や不正が確認されると、「会社を任せられる存在かどうか」という根本的な信頼が揺らいでしまいます。信頼関係が崩れた状態では、組織を率いる役割を果たすことが難しくなるため、職務の継続が適切ではないと判断され、解任に至るケースも少なくありません。 

    職務を十分に果たせていないと判断された 

    執行役員は、担当領域における実務の最終責任者として、安定した業務運営と成果の創出が求められます。そのため、長期間にわたって業務が停滞していたり、明らかに期待された役割を果たせていない状態が続いた場合には、解任が検討されることがあります。 

    単に成果が出なかったという理由だけで直ちに解任されるわけではありませんが、改善の機会を設けても状況が変わらず、取締役会として「このまま職務を任せるのは難しい」と判断した場合には、組織運営の観点から見直しが必要です。 

    執行役員という立場は、結果に対する説明責任が大きいため、業務遂行能力そのものが重要な判断材料です。 

    現場の責任者として適性を欠くと判断された 

    執行役員は、単に指示を出す立場ではなく、現場をまとめ、組織を前に進める役割を担います。そのため、判断力や統率力、周囲との信頼関係が著しく欠けている場合には、現場の最高責任者として不適切と判断されることがあります。 

    例えば、部下とのコミュニケーションが極端に不足していたり、現場の混乱を放置したまま改善に取り組まない姿勢が続いたりすると、組織全体に悪影響を及ぼします。こうした状態が常態化すると、会社としては「執行役員という立場にふさわしいか」を再検討せざるを得ず、解任という判断に至るケースもあります。 

    就業規則上の懲戒事由に該当する 

    執行役員が雇用契約に基づく立場である場合、原則として一般社員と同様に就業規則が適用されます。そのため、就業規則に定められた懲戒事由に該当する行為があった場合には、解任の対象となる可能性があります。 

    例えば、ハラスメント行為や職務上の重大な怠慢、会社の秩序を乱す行動などが確認された場合には、立場の重さを踏まえ、より厳しく判断されることもあります。執行役員は模範となるべき存在であるため、一般社員以上に行動の影響が大きい点が考慮されます。 

    執行役員を解任する方法

    執行役員の解任は、会社の信頼性やガバナンスに直結する重要な判断です。感覚的な判断や場当たり的な対応ではなく、社内ルールと契約内容、関係法令を踏まえた手続きを取ることが欠かせません。ここからは、執行役員を解任する方法を解説します。 

    取締役会で正式に解任を決定する 

    執行役員は、会社運営に深く関与する立場にあるため、その解任は経営陣の合議によって判断されます。通常は取締役会を開催し、解任の是非を正式な議題として取り上げ、決議を行います。このとき重要なのは、誰がどのような理由で解任を判断したのかを明確にし、会議の内容を記録として残しておくことです。 

    後日、本人との認識の食い違いや紛争が生じた場合でも、適正な手続きを踏んだことを説明できる体制を整えておくことが、会社を守ることにつながります。 

    役職の解任と雇用関係は切り分けて考える(雇用型の場合) 

    雇用型の執行役員は、会社と雇用関係にある従業員です。そのため、執行役員という肩書を外すことと、雇用を終了させることは、同じ意味にはなりません。執行役員を解任した結果、報酬や処遇を引き下げる場合には、労働条件の変更にあたるため、原則として本人の同意が必要です。本人の合意が得られないまま一方的に条件を下げると、後に無効と判断される恐れがあります。 

    また、役職を外したことを理由に、そのまま従業員としての解雇に踏み切ることは、極めて慎重であるべきです。客観的に見て合理性があり、社会的にも妥当といえる事情がなければ、解雇は認められにくく、会社側に不利な結果を招く可能性があります。 

    契約内容に沿って解任と終了を行う(委任の場合) 

    委任型の執行役員は、従業員ではなく、業務を任される立場として会社と契約を結んでいます。そのため、執行役員としての地位を解くことが、そのまま契約の終了につながるケースが一般的です。この場合、雇用型とは異なり、委任契約や執行役員規程に定められた内容に従って手続きを進める必要があります。

    例えば、「一定の事由に該当した場合は執行役員を解任し、契約を終了できる」といった取り決めをあらかじめ明確にしておくことが重要です。契約内容が曖昧なまま解任を行うと、トラブルの原因になりやすいため、制度設計の段階から解任時の扱いまで想定しておくことが求められます。 

    まとめ

    執行役員やその制度について理解を深めることは、経営を効率的に進める上で大切なポイントです。特に、取締役との違いや、制度を導入するメリット・デメリットを把握することは、企業の経営戦略を考える上で役立ちます。執行役員は、実際の業務を動かす中核的な存在であり、その選任や運用方法が企業の成長に影響を与えることも少なくありません。

    もし執行役員制度の導入を検討しているのであれば、この記事で紹介した手順やポイントを参考に、自社のニーズに合った制度設計を進めてみてください。また、適切な人材を選ぶことも重要なので、必要に応じて専門家の意見を取り入れるのも一つの手です。今後の経営をより円滑に進めるために、執行役員制度を効果的に活用していきましょう。

    M&Aロイヤルアドバイザリーでは、M&Aや事業承継に関するご相談を承っております。会社売却をご検討の際にはお気軽にお問い合わせください。

    CONTACT

    お問い合わせ

    Feel free to contact us.

    当社は完全成功報酬ですので、
    ご相談は無料です。
    M&Aが最善の選択である場合のみ
    ご提案させていただきますので、
    お気軽にご連絡ください。

    無料
    お気軽にご相談ください
    phone
    03-6269-3040
    受付:平日 9:00~18:00
    icon 無料相談フォーム
    icon
    トップへ戻る

    M&Aロイヤルアドバイザリーは、
    一般社団法人 M&A仲介協会の正会員です。