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「福利厚生って、そもそもどこまでの制度を指すの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。給与や賞与のように目に見える報酬とは違い、福利厚生は企業によって内容が大きく異なります。そのため、導入目的や対象範囲の正しい理解が必要です。
本記事では、福利厚生の定義や種類、メリット、導入方法など自社の魅力を高め、社員が安心して働ける環境を整えるための実践的な知識を分かりやすくまとめます。
目次
まず、福利厚生の概要を紹介します。
福利厚生は、企業が従業員とその家族の生活を支援し、働きやすい職場環境を整えるために設ける制度や取り組みのことです。給与や賞与といった「直接的な報酬」に対し、福利厚生は「間接的な報酬」として位置付けられ、従業員が安心して長く働けるようサポートする役割を担っています。
近年、福利厚生は、従来の一律制度から従業員個々のニーズに応じた柔軟性・選択性重視へと移行しています。
特にウェルビーイング(心身の健康)の支援強化は企業課題の一つであり、メンタルヘルス相談や予防医療の導入が増えています。また、従業員が福利厚生の内容を自由選択できるカフェテリアプランを導入する企業も増えてきました。さらに、育児と仕事を両立するための支援など、働き方の改善に目を向けた福利厚生の導入も注目されています。
ただし、全ての企業が導入できているわけではなく、コストや運用負荷の課題を踏まえる必要があります。
フリンジ・ベネフィット(Fringe Benefit)とは、企業が従業員に対して給与や賞与とは別に提供する現金以外の経済的利益を指します。租税法上で明確な定義はありませんが、一般的には「雇用契約などに基づいて、労働の対価として雇用者から受け取る個人的な利益」と解釈されています。代表的な例として、社宅や寮の貸与、会社保養所の利用、低利での融資、食事の提供、社会保険料の会社負担分、企業年金の拠出などが挙げられます。
一方、福利厚生はフリンジ・ベネフィットを含むより広い概念で、従業員の生活や健康、働きやすさを総合的に支援する制度を指します。健康保険や年金などの法定制度に加え、住宅手当、育児支援、研修制度など企業が自主的に設ける制度も含まれます。
つまり、フリンジ・ベネフィットは「給与以外の経済的メリット」を中心とした概念であり、福利厚生の一部を構成する要素として位置付けられます。
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福利厚生の種類は、大別して次の2種類です。
それぞれを分かりやすく解説します。
法定福利厚生とは、国の法律で企業に実施が義務付けられている制度を指します。企業が雇用主として従業員を守るために負担しなければならない最低限の社会保障であり、全ての企業に適用されます。目的は、病気・けが・老後・失業など、生活上のリスクから従業員を保護し、安心して働ける環境を整えることです。
法定福利厚生は、企業と従業員が保険料を分担する形で運用されます。法定福利厚生は「企業が果たす社会的責任」の象徴であり、労働者の生活基盤を支える重要な仕組みです。
法定外福利厚生は、法律で定められた義務ではなく、企業が自主的に導入する任意の制度を指します。企業ごとの経営方針や人事戦略に基づき設計され、従業員の働きやすさや満足度を高めることが目的です。従業員のニーズや社会の変化を反映しやすく、企業独自の文化や価値観を示す手段でもあります。
法定外福利厚生の充実度は「働きやすい企業」の指標としても注目されており、今後もその重要性はますます高まっていくといえるでしょう。
法定福利厚生の種類は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
健康保険は、従業員やその家族が病気やけがをした際に、医療費の自己負担を軽減し、経済的な負担を和らげるための制度です。原則として医療費の3割を自己負担とし、残りを保険から給付する仕組みです。さらに、業務外のけがや病気で働けない期間に支給される「傷病手当金」や、出産時に支給される「出産手当金」「出産育児一時金」なども含まれます。
企業は、全国健康保険協会(協会けんぽ)または各業種の健康保険組合を通じて加入し、従業員と折半で保険料を負担します。
厚生年金保険は、老後の生活資金を支える年金制度であり、国民年金に上乗せされる形で運用されます。現役時代に保険料を納めることで、将来、老齢厚生年金として給付を受けられます。さらに、病気や事故によって障害が残った場合の「障害厚生年金」、被保険者が亡くなった際に遺族へ支払われる「遺族厚生年金」など多様な保障を含んでいます。企業と従業員が保険料を折半し、原則として給与から自動的に天引きされます。
厚生年金は、長期的な生活の安定を支える重要な公的制度であり、高齢化社会におけるセーフティーネットとして欠かせません。
雇用保険は、失業や休業などにより収入が途絶えた従業員を支援する制度です。主な給付には、離職時に支給される「基本手当(失業給付)」の他、育児や介護のために休職する場合の「育児休業給付金」「介護休業給付金」、スキルアップを目的とした「教育訓練給付金」などがあります。
保険料は企業と従業員の双方で負担し、国が管理・運営を行います。安定した雇用環境の維持と働く人の自立支援を目的とした制度です。
労災保険(労働者災害補償保険)は、業務中や通勤中に起きたけがや病気、死亡などに対して、治療費や補償給付を行う制度です。労働者が安心して働ける環境を整えるため、保険料は全て企業が負担します。主な給付内容は、治療費を全額補償する「療養補償給付」、休業中の所得を保障する「休業補償給付」、後遺障害が残った場合の「障害補償給付」、死亡時の「遺族補償給付」などです。
労災保険は、労働災害の発生を前提に被災者や遺族の生活を支える制度であり、企業の安全管理体制を促進する役割も担っています。
介護保険は、40歳以上の国民を対象に、介護が必要となった際にサービスを受けられるようにする制度です。高齢化の進行に対応し、介護を社会全体で支えることを目的に導入されました。要介護または要支援の認定を受けた場合、訪問介護やデイサービス、施設入所などの介護サービスを利用できます。
保険料は40歳以上から納付義務が発生し、65歳以上は市区町村が徴収する「第1号被保険者」、40〜64歳は医療保険と一体で徴収される「第2号被保険者」に区分されます。
子ども・子育て拠出金(児童手当拠出金)は、児童手当や保育所・認定こども園の運営、地域型保育などの子育て支援事業に充てられる財源として設けられた制度です。正式には「子ども・子育て支援法」に基づく拠出金で、企業が負担する法定福利費の一つです。
企業が従業員に支払う総支給額に応じて一定の拠出率を事業主が全額負担し、社会保険料と合わせて納付します。従業員個人に直接支給されるわけではありませんが、拠出金は全国の児童手当や保育施策に充てられ、社会全体で子育てを支える仕組みとして機能しています。
法定外福利厚生には、以下のようなものがあります。
それぞれを解説します。
住宅手当・家賃補助は、従業員の住居費負担を軽減し、安心して働ける生活基盤を整えるための制度です。特に都市部では家賃が高騰し、給与に占める住居費の割合が大きくなりがちなため、企業が一部を補助することで経済的な安定を支援します。支給方法には、家賃の一定割合を負担する方式や地域・家族構成に応じた定額支給などがあり、福利厚生のなかでも人気の高い制度です。
また、転勤者や単身赴任者への住宅支援を充実させることで、人材の定着率向上や地方勤務のハードル軽減にもつながります。近年では、リモートワーク普及に併せて地方移住支援型の住宅補助を導入する企業も増えており、柔軟な制度設計が求められています。
通勤手当は、従業員が自宅から勤務先まで通う際の交通費を企業が補助する制度です。定期券代の全額または一部を支給するケースが一般的で、マイカー通勤者にはガソリン代や駐車場代を支給する企業もあります。一定額までは所得税の非課税対象とされ、従業員だけでなく企業にも税務上のメリットがあります。
通勤手当は、単なる交通費補助ではなく、通勤ストレスの軽減や遅刻防止、働きやすい職場環境の形成に寄与する重要な制度です。近年では、リモートワークやハイブリッド勤務の広がりを受けて、出社日数に応じた実費精算型や通勤手当と在宅勤務手当を組み合わせた柔軟な支給方式を採用する企業も増えています。
食事補助は、社員食堂の設置や食事券・宅配弁当補助などを通じて、従業員の食費負担を軽減する制度です。健康的で栄養バランスの取れた食事の提供は、体調管理や集中力維持に役立ち、業務効率の向上にもつながります。特に大企業では、管理栄養士監修のメニューやカロリー表示を導入し、「健康経営」の一環として従業員の健康づくりを支援する動きが広がっています。
一方で、中小企業では外部提携サービスを利用して割引価格で食事を提供するなど、低コストで導入する工夫も見られます。また、社員食堂は職場の交流を促す「社内コミュニケーションの場」としての役割も果たし、組織の一体感醸成にも貢献しています。
法定で定められた定期健康診断に加え、企業が独自に人間ドックやがん検診、生活習慣病検査などの費用を補助する制度です。従業員が自らの健康状態を把握し、疾病の早期発見・早期治療につなげることを目的としています。近年は、「健康経営」の一環として、配偶者検診や生活習慣改善プログラムへの補助を行う企業も増加しています。また、受診率向上を目的に、費用の全額負担や勤務時間内での受診を認めるケースも珍しくありません。
こうした取り組みは、従業員の健康意識を高めるだけでなく、医療費負担の軽減や長期的な休職リスクの防止にもつながります。結果として、生産性向上や企業の持続的成長を支える重要な福利厚生の一つといえます。
メンタルヘルスケア制度は、ストレスや心の不調を未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境を整えるための取り組みです。企業は、社内カウンセラーの設置や外部EAP(従業員支援プログラム)との契約を通じて、専門家への相談体制を整備しています。特に長時間労働や在宅勤務の増加により、メンタル不調の早期発見と対応の重要性が高まっています。近年では、管理職・人事担当者へのメンタルヘルス研修やストレスチェック制度の活用も進み、組織全体での支援体制を構築する動きが一般的です。
こうした制度は、従業員の離職防止やモチベーション維持、さらには生産性向上にも直結し、企業の健全な成長を支える不可欠な福利厚生の一つです。
資格取得やスキルアップを支援する制度は、企業が人材を長期的に育成し、キャリア形成を後押しするための重要な福利厚生です。受験料や通信講座費用の補助、合格時の報奨金支給などの金銭的支援に加え、社内外の研修やセミナー参加を奨励する仕組みも整えられています。
さらに、「学ぶ姿勢を評価する文化」を根付かせることで、社員の成長意欲を高め、優秀人材の定着にもつながる点が大きなメリットです。
eラーニング・自己啓発支援制度は、従業員が自分のペースでスキルを磨けるように設けられた学習支援制度です。オンライン講座を中心に、語学・プログラミング・マネジメント・会計など、職種やキャリアステージに応じた幅広い教材を提供します。時間や場所に縛られず学習できるため、リモートワーク時代に適した育成手法として注目されています。
また、書籍購入費や外部セミナー受講費の補助、資格取得支援制度と連動した仕組みを設ける企業も増加しています。個々の学びを尊重する姿勢は、社員のモチベーション向上だけでなく、自律的に学ぶ文化の醸成や組織の知的資産向上にも寄与します。教育投資を通じて長期的な企業価値を高める代表的な制度です。
保養所・リゾート施設の利用補助は、従業員やその家族が心身をリフレッシュし、健全なワークライフバランスを保てるよう支援する制度です。企業が自社保有の保養施設を運営するケースに加え、ベネフィット・ワンやリロクラブなどの福利厚生代行サービスを利用して、全国の宿泊・レジャー施設を割安で利用可能にする方法も一般的です。
長期休暇や週末に利用できるリゾート制度は、仕事と私生活の切り替えを促し、従業員のストレス軽減やモチベーション維持に効果的です。また、家族との時間を確保できることで、企業へのエンゲージメントや満足度の向上にもつながります。
こうした「心の健康」を重視した福利厚生は、離職防止にも寄与する重要な取り組みといえます。
福利厚生の目的とメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
福利厚生の充実は、企業の採用競争力を高め、優秀な人材を確保・維持する上で欠かせません。給与水準だけでなく「どのような働き方支援があるか」を重視する求職者が増えており、住宅手当や子育て支援、在宅勤務制度などの整備は、応募意欲を高める要因の一つです。
また、福利厚生が整った職場では離職率が低下し、定着率の向上にもつながります。結果として、採用コストの削減と安定した人材基盤の確保の実現が可能です。
福利厚生は、従業員の健康と生活の安定を支える役割を担っています。健康診断や人間ドック、メンタルヘルス支援などの制度は、疾病の早期発見や予防に役立ち、長期的な休職や離職を防ぎます。さらに、住宅手当や通勤手当などの生活支援制度によって経済的不安を軽減し、従業員が安心して業務に集中できる環境を整えます。
こうした取り組みは、従業員の心身の健康を守るだけでなく、企業にとっても欠勤・医療費の増大・人材流出といったリスクの低減につながり、結果的に組織の安定運営を支える重要な要素です。
福利厚生は、従業員が安心して働けるだけでなく、仕事への意欲を高める効果もあります。研修制度や資格取得支援、eラーニングなどのスキルアップ支援は、従業員の成長意欲を刺激し、仕事への主体性を引き出します。学びを支援する仕組みが整っている企業ほど、社員のパフォーマンスや生産性は高まりやすい傾向があります。
また、食事補助やリフレッシュ休暇といった制度は心身のバランスを整え、集中力を持続させる効果があります。福利厚生は単なる待遇の充実ではなく、成果を出せる職場環境づくりの一環として重要です。
職場の人間関係やチームワークを円滑にすることも、福利厚生の大きな目的の一つです。社員旅行や懇親イベント、クラブ活動の支援などは部署を超えた交流を促し、社員同士の信頼関係を深めます。これにより、日常業務でのコミュニケーションがスムーズになり、協働のしやすい職場文化が形成されます。
さらに、メンタルヘルス相談窓口やカウンセリング制度を整備することで、社員が安心して相談できる環境を整備でき、心理的安全性の高い職場を実現します。良好な人間関係は、組織の一体感とエンゲージメント向上にも直結します。
福利厚生は、企業の社会的評価やブランド価値の向上にも貢献します。
「従業員を大切にする企業」としての姿勢は、求職者や顧客、投資家、地域社会からの信頼を得る上で重要です。実際に、福利厚生の充実はESG経営や人的資本開示の観点からも注目されており、企業の社会的責任を果たす取り組みとして高く評価されます。
また、外部からの評判が高まることで採用広報や取引先との関係にも好影響を及ぼし、長期的な企業価値の向上につながる点もメリットです。福利厚生は、内向きの人材施策にとどまらず、企業の信頼性とブランド戦略を支える重要な要素といえるでしょう。
福利厚生の注意点とデメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
福利厚生は、従業員満足度や企業イメージの向上に寄与する一方で、長期的なコスト負担が発生する点が大きな課題です。住宅手当・研修費補助・レジャー施設の利用補助などは継続的な支出となり、特に中小企業では経営を圧迫する要因となる場合があります。また、利用率が低い制度を維持し続けると、費用対効果が下がり、投資としての成果が見えにくいです。
そのため、制度導入時には「目的」「対象」「期待効果」を明確化し、導入後も定期的に利用実績や満足度の検証が不可欠です。効果の薄い制度を削減し、戦略的にリソースを再配分することで、限られた予算の中でも最大限の成果を得られます。
福利厚生制度は種類が増えるほど、運用や管理の手間が増大します。申請受付や利用状況の確認や費用精算、契約更新などの事務処理が煩雑化し、人事・総務部門の業務負担が大きくなる点がデメリットです。特に従業員数の多い企業では、制度内容の周知や利用ルールの統一が難しく、結果として「制度はあるが使われていない」という形骸化を招くことも少なくありません。
これを防ぐには、導入段階から運用フローや申請条件を明確に文書化し、管理ツールやクラウド型福利厚生システムを活用して業務を自動化することが有効です。効率的な管理体制を整えることで、担当者の負担を軽減し、制度の継続的な運用を可能にします。
福利厚生は、制度内容や対象範囲によって従業員間の不公平感を生みやすい側面があります。例えば、既婚者のみ住宅手当が支給される、デスクワーク中心の社員のみ在宅勤務手当が適用されるなど、特定の層に偏る制度設計は不満の原因です。こうした不均衡は、モチベーションの低下や職場への不信感につながり、結果的に生産性の低下を招く恐れがあります。
公平性を保つには、ライフステージや働き方の違いに応じて福利厚生を選べる「カフェテリアプラン」や、社員アンケートを通じた制度改善が有効です。多様性を尊重し、全ての従業員が納得できる仕組みを整えることが、現代の人事戦略において重要な要素といえるでしょう。
福利厚生の内容によっては、法令や税制に関するリスクが発生する場合があります。
例えば、通勤手当や住宅手当には非課税の上限があり、超える部分は課税対象です。また、正社員だけを対象とした制度が、非正規社員との差別とみなされる可能性もあります。
さらに、外部サービスを利用する場合には、個人情報の取り扱いや契約条件にも注意が必要です。こうしたトラブルを避けるためには、最新の法令・ガイドラインを確認し、税務・労務部門と連携して設計・運用する体制の整備が欠かせません。
福利厚生の対象者は、次のとおりです。
それぞれを解説します。
正社員は、全ての福利厚生制度の中心的な対象者です。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険などの法定福利厚生はもちろん、住宅手当・資格支援・社宅・社員旅行などの法定外福利厚生も、原則として全面的に適用されます。
また、正社員は企業の中核を担う存在であるため、長期的な雇用を前提とした福利厚生が手厚く設計されている傾向があります。
契約社員は、企業と直接雇用契約を結んでいる従業員であり、勤務日数や労働時間が一定基準を満たしていれば、正社員と同様に法定福利厚生の対象です。ただし、契約期間が短い場合や労働時間が週20時間未満などのケースでは、社会保険や雇用保険の適用外となることがあります。
法定外福利厚生については企業ごとに運用が異なり、正社員と同等に扱う場合もあれば、対象を限定する場合もある点に注意が必要です。
派遣社員は、派遣元(派遣会社)に雇用され、派遣先で業務を行う形態の従業員です。そのため、社会保険や雇用保険などの法定福利厚生は、派遣先ではなく派遣元が加入・負担します。
一方で、派遣先企業の社員食堂や休憩室などの施設利用に関しては、派遣社員にも平等な利用機会を提供することが法律で定められています(労働者派遣法第30条の3)。ただし、派遣先独自の法定外福利厚生(住宅手当・社宅制度など)は対象外であることが一般的です。
近年の法改正により、パート・アルバイトも一定の条件を満たせば、健康保険や厚生年金の加入対象となりました。2025年現在のパート・アルバイトの対象者は、次のとおりです。
また、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあれば雇用保険にも加入可能です。さらに、「同一労働同一賃金」の推進により、正社員とパート・アルバイトの待遇格差をなくす取り組みも進んでいます。
インターンのうち、雇用契約ではなく業務委託契約を結んでいる場合は、原則として福利厚生の対象外です。業務委託は「労働契約」ではなく「請負・委任契約」にあたるため、社会保険・労災保険・雇用保険などの法定福利厚生は適用されません。
ただし、実態として勤務時間の拘束や指揮命令がある場合には、労働者性が認められることもあり、その場合は法定福利厚生の対象となることもあります。一部の企業では、学生向けに交通費支給や昼食補助などの限定的な福利厚生を導入しているケースも見られます。
会社役員も、従業員と同様に利用できる福利厚生の対象です。福利厚生費として認められるためには、役員・従業員を問わず全員が利用できる制度であることが条件です。特定の役職者や役員だけを優遇する制度は、福利厚生費ではなく給与または役員報酬として課税対象になる可能性があります。
また、福利厚生の内容や金額が社会通念上妥当な範囲であることも非課税の要件です。そのため、役員に対しても「全従業員共通」で利用できる制度を設けることが重要です。
福利厚生の導入・運用の流れは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
まずは、福利厚生を導入する「目的」を明確に定義することが出発点です。
例えば、採用競争力の強化や離職率の低下、従業員満足度の向上、健康経営の推進など、企業によって重視する課題は異なります。目的を具体化することで、どの領域にリソースを投じるべきかが明確になります。目的が曖昧なままでは、コストだけが増えて実効性のない制度になるリスクが高まってしまうため、注意が必要です。
目的を定めた後は、企業の現状や従業員構成、業種特性を踏まえて制度を具体的に設計します。
例えば、若手社員が多い企業では住宅補助やキャリアアップ支援、子育て世代が多い職場では育児休業制度や時短勤務、介護離職を防ぎたい企業では介護支援制度など、社員層に合わせた制度設計が求められます。また、制度を公平に運用するために、対象者の範囲・利用条件・支給上限・申請方法などのルールを詳細に定め、就業規則や福利厚生規程としての明文化が重要です。
福利厚生制度は、導入しただけでは意味がありません。従業員が制度の内容を理解し、積極的に利用できるようにするための周知・浸透活動が不可欠です。制度が十分に知られていないと、利用率が伸びず、投資の意味がありません。効果的な周知のためには、まず制度の概要・利用方法・申請手順を明記した社内ガイドラインを整備し、社内ポータルサイトや掲示板、社内メールなどを活用した継続的な発信が重要です。
人事部門は単に制度を案内するだけでなく、従業員が使いやすい環境をつくり、定期的にフィードバックを受け取ることで、福利厚生の価値を社内全体に浸透させられます。
福利厚生は、運用と改善を継続して初めて効果を発揮します。定期的に制度の利用実績や従業員満足度をデータとして把握し、導入目的との整合性を検証しましょう。利用率が低い場合には、制度の認知不足や利用条件の不便さなど課題を分析して改善策を講じる必要があります。
また、経営環境や働き方が変化する中で、制度を時代に合わせてアップデートする柔軟性も求められます。例えば、通勤手当から在宅勤務手当への切り替え、対面型研修からオンライン研修への移行など、働き方の変化に合わせた制度改革が効果的です。
自社で福利厚生制度を一から構築・運用するには、コストや管理工数の面で大きな負担がかかります。そこで近年、福利厚生代行サービスを多くの企業が利用しています。
福利厚生代行サービスは、専門企業が旅行・レジャー・グルメ・健康支援・育児・介護・自己啓発などの多様な福利厚生メニューをまとめて提供する仕組みで、導入企業は社員が会員サイトを通じて自由に利用できる環境を整えるだけで済みます。
利用企業にとっての最大のメリットは、幅広い福利厚生を低コストかつ効率的に導入できる点です。自社で制度を設計する場合、契約や運用管理に多くのリソースを要しますが、代行サービスではその手間を省きつつ、多様な社員ニーズに対応できます。特に中小企業にとっては、少ない予算で大企業並みの福利厚生を提供できる点が大きな魅力です。
最後に、福利厚生に関するよくある質問とその回答を紹介します。
医療機関では、長時間勤務や夜勤など心身の負担が大きい働き方を支える福利厚生が特に重要です。
代表的な施策として、夜勤手当や住宅補助、院内保育所の設置、メンタルヘルス支援制度などが挙げられます。これらは、過重労働を防ぎ、安心して働ける環境を整えるための基本的な取り組みです。
特に看護職やコメディカルスタッフでは、ワークライフバランスを保つための柔軟なシフト制度やリフレッシュ休暇の導入が有効とされています。また、医療の質を維持するために、資格取得支援や学会・研修参加費の補助制度など、スキルアップを支援する制度の整備も欠かせません。
女性が安心して長く働ける環境を整えるには、ライフイベントとキャリアを両立できる制度設計が重要です。
代表的な例は、産前産後休暇や育児休業、時短勤務、在宅勤務制度などの育児支援策です。仕事と家庭の両立を可能にし、出産や育児を理由に離職するリスクを軽減します。
近年ではさらに踏み込み、不妊治療休暇や病児保育、保育料補助、復職支援プログラムなど、多様なライフステージに寄り添う制度を導入する企業が増加しています。また、キャリア面では、女性管理職の育成を目的としたリーダー研修やメンター制度、キャリア面談制度が注目されています。
公務員の場合、福利厚生は国家公務員共済組合や地方職員共済組合など法律に基づいて全国一律で整備されています。これにより、住宅手当・共済組合病院の利用・医療費補助・災害補償・貸付制度など、安定したサポートが受けられる点が特徴です。長期的な雇用を前提とした安心感の高い制度設計であるといえます。
一方、民間企業は法令で定められた範囲に加え、自社の方針や企業文化に合わせて柔軟に制度を設計できる点が強みです。
公務員は「安定性」、民間企業は「多様性」に優れており、それぞれの働き方に合った福利厚生の形が存在します。
福利厚生の最低ラインとは、法律で企業に実施が義務付けられている「法定福利厚生」を指します。どの企業も必ず従業員に提供しなければならない制度であり、次の6項目です。
一方で、住宅手当や食事補助、健康診断などの「法定外福利厚生」は企業の任意であり、実施義務はありません。ただし、法定福利厚生だけでは従業員満足度を維持することが難しいため、多くの企業が自社独自の制度を設けてプラスαの支援を行っています。
福利厚生は、条件を満たせば損金(経費)として計上でき、非課税扱いです。非課税と認められるためには、全従業員が平等に利用できること、費用が社会通念上妥当な範囲であること、現金や商品券など換金性の高いものでないことの3点を満たす必要があります。
例えば、全社員を対象に実施する懇親会や健康診断、社宅貸与などは非課税ですが、一部社員のみを対象とした場合は課税対象です。なお、課税対象となると給与扱いとなり、所得税や社会保険料が加算されるため注意しましょう。
原則として、福利厚生費を現金で支給することは課税対象です。例えば、健康診断費用や社員旅行費を従業員に現金で渡す場合、給与とみなされ、所得税や社会保険料の算定対象に含まれます。
課税リスクを防ぐためには、会社が直接費用を負担する「現物支給」または「立替精算」の形を取ることが望ましいです。例えば健康診断は医療機関への直接支払い、社員旅行は旅行会社への一括払いとし、従業員への現金配布は避けましょう。
福利厚生は、企業が従業員の生活と仕事のバランスを整え、働く意欲を高めるために非常に重要な役割を果たします。多くの企業や人事担当者が抱える課題として、どのような福利厚生を導入すれば良いのか、コストと効果のバランスをどう考えるべきかという点が挙げられます。この記事を通じて、福利厚生の基礎知識から最新のトレンドまで幅広く理解することができたと思います。まずは、自社の現状を見つめ直し、従業員のニーズをしっかりと把握することから始めてみましょう。そして、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、最適な福利厚生制度を設計・導入していくことをお勧めします。福利厚生を充実させることで、企業としての魅力を高め、優秀な人材の採用や定着を促進しましょう。
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