オリックスによるDHC買収の理由と評価額をM&Aのプロが徹底解説 

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2023年、オリックスが化粧品・健康食品大手のDHCを約3,000億円で買収したこの案件は、創業者からの大型事業承継として日本企業のM&A史において極めて注目される事例となりました。 

オリックスは今回の買収を新たなBtoC事業の柱と位置付け、コーポレートガバナンス改革や業務効率化などを通じてDHCの「第二創業期」ともいえる抜本的な転換を進めています。 

本記事では、オリックスによるDHCの買収を通じた戦略と経営体制再編プロセスなどを解説します。 

オリックスによるDHC買収の概要

まず、オリックスによるDHC買収の概要について解説します。 

DHCの子会社化を実施 

オリックスは、2022年11月にDHCの創業者との間で株式譲渡契約を締結し、買収を開始しました。この買収は、未上場企業の創業者からの事業承継を目的としたM&Aとしては、日本国内で過去最大級とされています。 

その後、2023年1月31日付でDHCの議決権(発行済み株式)の9割以上を取得し、DHCを子会社化したと発表しました。 

オリックスとは 

オリックス株式会社(ORIX Corporation)は、1964年に日商岩井(現・双日)などを母体に、リース事業を主軸とする企業として創業された日本の総合金融グループです。本社は大阪市西区および東京都港区に置かれ、東証プライムおよびニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場している国際的企業でもあります。 

ブランドスローガンは「ほかにはないアンサーを。」で、独自性と課題解決力を重視した経営を掲げています。 

創業当初からのオペレーティングリースを基盤に、現在では法人金融、不動産、信託、銀行、保険、資産運用、空港運営、再生可能エネルギー、ヘルスケアなどの幅広い分野に事業を展開しています。また、プロ野球チーム「オリックス・バファローズ」の運営も手がけ、事業多角化を進める代表的企業のひとつです。 

国内外で積極的なM&Aや事業投資を行い、近年では大手エネルギー関連企業、インフラ資産などへの投資実績があります。 

DHCとは 

株式会社DHC(ディーエイチシー)は、1972年に吉田嘉明氏によって創業された日本の企業です。創業当初は大学向け翻訳業務を手がけており、社名「DHC」は「大学翻訳センター(Daigaku Honyaku Center)」の略称に由来します。 

1980年代から事業の多角化を進め、現在は化粧品・健康食品・語学教材などを製造・販売しており、通販やコンビニを活用した販売チャネルにより、急成長を遂げました。特に、「DHCオリーブバージンオイル」は、同社を代表するロングセラー商品として広く知られています。 

未上場でありながらDHCは連結売上高1,000億円を超える大企業へと成長し、創業者一代で築き上げた独立系企業として注目を集めていました。 

今回の買収におけるオリックスの目的

オリックスのDHC買収は次の目的のためとされています。 

  • 事業の多角化 
  • シナジー効果への期待 
  • 販路拡大とBtoCノウハウの獲得 

それぞれについて解説します。 

事業の多角化 

オリックスは、近年多角的なポートフォリオを展開しており、「中堅企業の集合体」といわれるほど、多様な収益源を持つ企業体に進化しています。 

今回の買収もその一環で、DHCという確立された消費財ブランドの獲得を通じて、特化型の収益源を取り込み、中長期的な企業価値の向上を図る構えを見せています。同社は「出資期間は想定していない」「中長期での発展を目指す」と明言しており、短期的な投資回収ではなく、持続的な成長モデルの構築を重視しているとみられます。 

ただし、オリックスは過去に、会計ソフト大手「弥生会計」を買収しましたが、シナジー効果が得られないと判断して売却したことがあります。そのため、DHCもバリューアップ後に売却が行われる可能性があります。 

シナジー効果への期待 

オリックスは既に医療機器販売のイノメディックスや製薬会社の同仁医薬化工への出資を通じて、ヘルスケア分野への拡張を行ってきました。そのため、DHCの健康食品・サプリメント事業は、同分野のネットワーク拡大に寄与すると考えられています。 

しかし、一部報道や専門家からは、オリックスとDHCとの間には「直接的なシナジー効果は見えにくい」との指摘もあります。コスト統合や規模メリットといった狭義のスケールメリットが直ちに発揮される可能性は高くありません。 

なお、DHCはリゾートホテルや温泉施設を複数保有しており、当初はオリックスの不動産事業とのシナジーも期待されていました。しかし、観光・宿泊施設に関する事業は買収対象には含まれず創業者側に残る形となり、買収後のグループ戦略とは切り離されました。 

販路拡大とBtoCノウハウの獲得 

DHCは、直営店舗や通信販売に加え、コンビニエンスストアやドラッグストアなど多様な販売チャネルを展開しており、2024年7月時点で通販会員数は約1,600万人、直営店舗は97店、卸先は全国で5万店を超えています。このような広範な流通網はDHCの大きな強みのひとつでした。 

オリックスはこの買収を通じて、DHCが築いてきた消費者接点を獲得し、自社に不足していたBtoCブランドの経営ノウハウを吸収することに成功しました。さらに、自社が持つ国内外の法人営業ネットワークを活用することで、DHC商品の新たな販路開拓や他事業との相乗効果も期待されています。 

参考:通販新聞

DHCの抱えていた問題

DHCは買収以前に次のような問題を抱えていました。

  • 組織構造の硬直化 
  • 意思決定の偏重 
  • 創業者による不適切発言ととブランド毀損(きそん) 
  • 市場適応力の欠如と戦略転換の遅れ 
  • 売り上げ低下と収益性の悪化 

それぞれについて解説します。 

組織構造の硬直化 

DHCは創業以来、急成長を遂げる中で、化粧品・健康食品・EC・直営店舗などの各部門を拡充してきましたが、それぞれが縦割りで独立運営される体制が常態化していました。 

結果として、部門間で情報共有がなされず、全社的な連携や戦略の統一が困難となる状況が続いていました。顧客情報が部門ごとに分断され、マーケティングや商品開発における一貫性が欠如していたほか、重複する施策や矛盾した販促活動が散見されるなど、非効率が常態化していました。 

また、部長級の管理職ですら部門横断的な会議に出席しないなど、組織の可視性も著しく低い状況でした。 

意思決定の偏重 

こうした縦割り構造と並行して、経営における意思決定も極端に集中しており、創業者である吉田嘉明氏がほぼ全ての重要事項を一人で決裁する体制が長年維持されていました。 

社員の人事異動、販促予算、出張の可否に至るまで、細部にわたる承認プロセスが創業者に集中しており、現場や中間管理職の裁量が著しく制限されていたのです。 

このような強いトップダウン体制は、かつての成長を支えた一因である反面、経営の柔軟性や人材の自律性を奪い、環境変化への対応力を損なう結果にもつながっていました。 

創業者による不適切発言ととブランド毀損(きそん) 

創業者・吉田嘉明氏による差別的発言に起因するブランドイメージの大幅な毀損(きそん)も大きな問題でした。 

特に2020年11月、公式サイト上に掲載されたブログ記事において、競合他社や特定の人種・国籍を揶揄(やゆ)・中傷する内容が発信され、SNSを中心に「#DHCボイコット」運動が広がりました。この発言は国内外で強い反発を呼び、大手流通業者の取扱縮小や一部商品の棚撤去に発展しました。 

さらに、DHCテレビの放送内容に対しても放送倫理・番組向上機構(BPO)から厳重注意を受けるなど、企業としてのコンプライアンス意識の欠如が浮き彫りとなりました。 

市場適応力の欠如と戦略転換の遅れ 

DHCは、かつては「価格破壊」の象徴として業界をけん引した存在でしたが、近年は競争環境の変化に追随できず、市場適応力の低下が顕著になりました。 

ファンケルなどが品質志向・高付加価値戦略へとかじを切る中、DHCは従来通りの「高配合・低価格路線」に固執していました。2018年には極端な値下げ施策「ぶっとび定期便」などを実施したものの、ブランド毀損(きそん)と利益率低下を招く結果となりました。 

さらに、デジタルマーケティングやSNS活用といった若年層への訴求力でも後れを取り、変革への遅れが成長鈍化に拍車をかけました。 

売り上げ低下と収益性の悪化 

こうした経営上の問題が複合的に作用し、DHCの業績は明確な減速傾向を示しました。 

2018年には売上高約1,082億円を記録していたものの、2022年には売り上げが約905億円に減少しました。

参考:官報決済データベース

オリックスによるDHCの買収方法・価格

オリックスのDHC買収の方法や価格、買収への評価について解説します。 

買収手法 

オリックスは、株式会社ディーエイチシー(DHC)の株式を譲渡によって取得する「株式譲渡」によって子会社化を実施しました。 

まず、2022年11月に創業者である吉田嘉明会長との間で株式譲渡契約を締結し、同氏からDHC株式の過半数を取得する形で買収を開始しました。そして、2023年1月には発行済株式のうち91.1%の議決権を取得したことを発表しています。 

未上場企業であるDHCについては、株主構成や保有比率が非公表とされているものの、オリックスは全株式の取得を目指しており、順次手続きを進めている段階です。 

今回の買収は投資ファンドを介さず、オリックス自身が自社資金で実行する「プリンシパル投資」として位置付けられています。プリンシパル投資とは、外部投資家から資金を募らず、企業が自らの資金で直接投資する手法であり、エグジット(売却)を前提としない柔軟な運用が目的です。また、第三者に収益を分配する必要がないため、収益性が高いのも特徴です。 

買収価格 

買収価格に関する公式発表はないものの、複数の報道によれば、オリックスによるDHCの買収総額は約3,000億円に達するとされています。 

この3,000億円の買収資金の内訳について、約1,000億円がエクイティ(自己資金による出資)、1,000億円がノンリコースローン(DHCの事業収益を返済原資とする融資)、そして残る1,000億円はDHCが保有していた現預金の内部資金によるものです。 

過去にオリックスは、会計ソフト大手の弥生株式会社を約800億円で買収し、2021年末に弥生を約2,600億円で米投資ファンドKKRに売却し、大きな利益を得ています。この売却益が、DHCの買収資金(総額約3,000億円)の一部に充てられたとされています。 

参考:DIAMONDonline

買収への評価 

DHCの買収価格が約3,000億円とされる今回の取引は、事業承継型M&Aとして日本国内でも極めて大規模な事例のひとつです。 

1972年の創業以来、非上場のまま独自経営を貫き、売上高1,000億円・営業利益150億円規模にまで成長したDHCが約3,000億円と評価されたことは、創業者の経営努力と企業価値が適切に認められた、特筆すべき事例です。 

過去の事業承継型M&Aでは、2011年のイオンによる四国地場スーパー「マルナカ」の買収(約450億円)などが知られていますが、それらと比較しても桁違いの規模です。 

なお、近年ではZOZOがヤフーに約4,000億円で買収された事例がありますが、DHCのケースはより純粋な事業承継型M&Aとして高く評価されています。 

DHCにおける買収後の経営体制の変更

オリックスは買収後のDHCの経営体制を変更しました。主な変更点は次のとおりです。 

  • 三代表体制による組織構造刷新 
  • コーポレートガバナンス改革と制度改革の推進 
  • 組織文化の転換と意識改革 
  • 新たな理念の策定と全社的な浸透 

それぞれについて解説します。 

三代表体制による組織構造刷新 

DHCはオリックスによる買収後、2023年4月に経営陣の大幅な刷新を行い、代表取締役が三名体制となる新しい経営構造を導入しました。 

具体的には、化粧品通販業界に豊富な実績を持つ髙谷成夫氏が代表取締役会長兼CEOに就任し、社内昇格の宮﨑緑氏が社長兼COOとして、またオリックスから派遣された小髙弘行氏が副社長として参画しました。 

三者はそれぞれ異なる経歴や専門性を持ち、相互補完的な立場から経営を担う体制となっています。この体制は、従来の創業者一極集中型の意思決定構造からの脱却を図るものであり、多様な観点からの戦略策定と実行を可能にしています。 

コーポレートガバナンス改革と制度改革の推進 

買収後、DHCでは企業統治体制の抜本的な見直しが進められました。取締役会では社外取締役が過半数を占める体制に改められ、監査・報酬・指名の各委員会を設置し、さらに、「法令順守」「情報公開」「人権尊重」など6つの行動指針を定め、それに基づく社内研修や内部通報制度が整備されました。 

経営情報の透明化も進み、従来は一部幹部にしか共有されていなかった業績や方針が、社員全体に開示されるようになったことで、現場の当事者意識も高まりを見せています。 

組織文化の転換と意識改革 

また、組織の硬直化を克服すべく、部門横断型の分科会「プロジェクトブライト」が設置されました。これによって、通販・直営店舗・財務・情報システムなどの管理職層が領域を越えて連携する体制が整えられました。 

また、社内報「Bright Times」の発行や意見箱の設置による対話促進も実施され、従業員間の理解と共感が深まりました。 

新たな理念の策定と全社的な浸透 

2024年5月には、DHCが目指すべき新たな企業の在り方として、「しあわせを、ふつうに。」というパーパスが策定されました。 

また、この理念の下、初めて全社社員総会が開催されました。各ユニットのマネージャーが自部門のビジョンを発表し、全社員が新たな企業像と今後の方向性を共有する機会となりました。 

さらに、経営陣との対話やワークショップを通じて、理念の現場浸透が図られています。これまでの「部門ごとに閉じた動き」から脱却し、全社的な共通意識と目的意識の下で、組織が一丸となって「第二創業」に向けた歩みを進めています。 

DHCにおける買収後の業務改革

DHCは、オリックスによる買収を契機として、従来の経営方針を見直し、業務改革も実施しています。 

  • 直営店舗の再編 
  • 不採算事業の大胆な見直し 
  • 社内業務のデジタル化と情報基盤の再整備 
  • 物流領域の効率化と自動化 
  • 環境配慮型経営 

それぞれについて解説します。 

直営店舗の再編 

直営店舗の再編はDHCの抜本的な変革の象徴です。2018年頃には約230店舗を展開していましたが、買収後は不採算店を中心に閉鎖を進め、2025年4月時点では94店舗にまで絞り込まれています。 

今後は、地方型から都市型へと戦略を転換し、首都圏を中心とする商業施設への出店に重点を置く方針です。

参考: 通販新聞

不採算事業の大胆な見直し 

DHCでは、長年刷新されてこなかった化粧品商品群を抜本的に見直し、約700品目に及ぶ製品ラインアップをおよそ3分の2にまで絞り込む方針が示されています。収益性の高い主力製品に集中しつつ、大胆なリニューアルによってブランド価値の再構築を目指しています。 

この背景には、「豊富な品ぞろえ」が必ずしも顧客本位ではなかったという反省があります。通販は顧客獲得効率が高い一方で、品目が多すぎることによって「何を選べば良いのか分からない」という混乱を招き、かえって顧客体験を損なっていました。 

新たな顧客接点を創出する魅力的な商品開発を強化する「攻め」と、ロングセラー商品の魅力を継続して発信しファン離れを防ぐ「守り」の両輪で売り上げの向上とコスト削減を同時に追求する体制が整備されています。 

社内業務のデジタル化と情報基盤の再整備 

業務プロセスの効率化と情報管理の高度化に向けたデジタル化も推進されています。請求書処理ではAI-OCRとRPAを活用した電子化ソリューションを導入し、文書管理システムと連携することで、月間400時間以上の作業時間を削減しました。 

また、これまで部門ごとに分断されていた顧客情報管理についても抜本的な改革が行われ、約40億円を投じて一元化された顧客データ基盤を構築しました。これによりマーケティングの精度が飛躍的に向上し、ニーズに即した商品開発や販促施策の実行が可能となりました。 

物流領域の効率化と自動化 

物流部門の競争力を高めるため、2023年8月より神奈川県川崎市の拠点にロボット型自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」を導入しました。このシステムは、格子状のラック上をロボットが自在に移動して商品を出し入れする構造であり、従来必要だった倉庫床面積の約5分の1のスペースで同等の機能を維持できるようになりました。 

その結果、保管スペースと人件費の削減、迅速な出荷対応が可能となり、物流部門の生産性と対応力が大幅に向上しました。 

環境配慮型経営 

さらに、環境配慮型経営の一環として、通販梱包(こんぽう)資材の見直しにも着手しています。 

2024年8月からは、①通販用緩衝材の紙素材化、②FSC認証取得済みの配送箱採用、③直営店舗への配送で使用するリターナブルBOXの導入という三つの施策を段階的に実施し、年間130トン、CO₂排出量にして約14.3%の削減を目指しています。 

参考:DHC NEWS RELEASE

DHCにおける買収後の商品戦略

オリックスによる買収後、DHCは既存の中高年層中心の顧客基盤に加え、20〜30代の若年層を新たな主要ターゲットと位置付け、次世代に向けた商品戦略とマーケティング施策を大きく転換しています。 

主な戦略は次のとおりです。 

  • 若年層向けサプリメント市場の開拓 
  • SNSを活用した世代別コミュニケーション戦略 
  • 若年女性向けプロジェクトの展開 
  • 若年層向け新製品ラインの拡充と店舗戦略 

それぞれについて解説します。 

若年層向けサプリメント市場の開拓 

DHCは、加齢を「遅らせる」という新たな健康観に基づき、「ペースオブエイジング」という概念を掲げて若年層サプリメント市場への本格的な参入を開始しました。 

これは、老化や不調が現れる前の段階から、基礎的な健康習慣を身につけることの重要性を啓発するもので、20〜30代を中心とした層に対して、早期からの予防的サプリメント摂取を提案しています。 

2024年3月には、肌荒れ防止や水分保持を目的とした「パーフェクトスキンベストミックス」が発売され、忙しい若年層の生活スタイルに適応した手軽さと機能性が評価されています。 

SNSを活用した世代別コミュニケーション戦略 

デジタル戦略においても、DHCは大きくかじを切りました。Instagram、TikTok、YouTubeといったSNSを積極的に活用し、美容系インフルエンサーとのコラボレーションを通じてZ世代やミレニアル世代の認知度の向上に努めています。 

例えば、2023年12月に開始された「#私のDHCモーメント」キャンペーンでは、ユーザーが製品使用の様子をSNSに投稿する形式を取り、3カ月で2万件を超える投稿が集まりました。 

このような双方向のコミュニケーションは、従来の一方通行型の広告とは異なり、ユーザー参加型のブランド体験を通じて若年層との心理的距離を縮める効果を生んでいます。 

若年女性向けプロジェクトの展開 

2023年11月からは、若年女性層を対象に「DHC SAVESKIN PROJECT」が始動しました。このプロジェクトでは、代表製品である「オリーブバージンオイル」を1万人の働く女性に無償提供し、「たった一滴で、世界は変わる。」というメッセージとともに、ライフスタイルに寄り添うブランドとしての再構築を図っています。 

SNSを通じた口コミ効果により注目を集め、2024年4月からは第2弾として「MY SKIN JOURNEY」キャンペーンを展開。ライフステージに応じたスキンケア提案を通じて、共感型のマーケティングが展開されています。 

若年層向け新製品ラインの拡充と店舗戦略 

製品ラインでも若年層向けのリニューアルが進行しています。特に20代をターゲットとした『F1ベーシックライン』は、シンプルかつ効果的な処方へと刷新され、パッケージデザインもSNS映えを意識したスタイリッシュな外観に一新されました。 

また、販売チャネルでも体験型を重視した「DHC Beauty Station」が登場し、渋谷や新宿、池袋といった若年層が集まるエリアでポップアップストアを積極的に展開しています。テスティングバーの設置やSNS連動キャンペーンを通じて、若年層との接点を拡大させています。 

オリックスによるDHC買収の近似事例5選

オリックスによるDHC買収に近い会社買収の事例を紹介します。 

イオングループによるマルナカの買収 

オリックスによるDHC買収と近似する事例として、イオングループによる食品スーパー「マルナカ」の買収と統合が挙げられます。 

マルナカは1926年創業の老舗で、長年にわたり四国・中国地方を中心に地域密着型の展開を行ってきましたが、2011年にイオングループの傘下入りを果たしました。 

その後、マルナカと山陽マルナカはグループ内での統合を段階的に進めました。まず2021年3月に「マックスバリュ西日本」に吸収合併され、さらに2024年3月には、そのマックスバリュ西日本自体が、同じイオングループで中国・四国地方を地盤とする「フジ・リテイリング」と経営統合を行い、「株式会社フジ」として発足しました。 

なお、「マルナカ」「山陽マルナカ」といった屋号は地域に根差したブランドとして引き続き使用されています。 

ヤフーによるZOZOの買収 

2019年9月、ヤフーはファッションEC最大手のZOZOをTOB(株式公開買付)によって子会社化し、創業者の前澤友作氏は退任しました。 

本件は、気鋭の創業経営者によるカリスマ型経営からの脱却と、企業の持続的成長を見据えた「経営体制の刷新」という点で、DHCと共通しています。ZOZO側には、新たな顧客層の開拓や経営基盤の強化を目的とした戦略的提携意図があり、ヤフー側には若年層市場やアパレル分野の強化を通じたEC事業の拡張という狙いがありました。 

両社の強みを生かす友好的M&Aであり、承継・成長・補完の3要素を備えた近年の代表的な事業承継型M&A事例です。 

ジョンソン・エンド・ジョンソンによるシーズ・ホールディングスの買収 

2018年、米ジョンソン・エンド・ジョンソンは、スキンケアブランド「ドクターシーラボ」などを展開するシーズ・ホールディングスを約2,300億円で買収し、完全子会社化しました。 

本件は、創業者である城野親徳氏の引退とともに、事業承継とグローバル展開を目的とした戦略的M&Aとして注目されました。買収後は、アジア圏での広告・販売網の強化、顧客データベースの活用、高価格帯製品の開発促進が進められています。 

キリンによるファンケルの買収 

2024年6月、キリンホールディングスは健康食品・化粧品大手のファンケルを約2,200億円で完全子会社化する方針を発表しました。 

2019年に約33%を出資して資本業務提携を結んで以降、共同研究や商品開発を進めてきましたが、出資比率の制約から投資や意思決定に限界があったため、TOB(株式公開買付)を通じて完全子会社化に踏み切る形となりました。 

買収により、キリンのヘルスサイエンス事業を中核事業へと育成し、国内外のサプリ市場での競争力強化を図る目的があります。ファンケルにとっても、グローバル展開や研究開発体制の強化が期待されており、「ヘルスケア×スキンケア」の融合による事業拡大が目指されています。 

ウォルト・ディズニーによる21世紀フォックスの買収 

ウォルト・ディズニーは2019年、映画・テレビ事業を手がける21世紀フォックスの主要部門を約713億ドル(約7.7兆円)で買収し、ハリウッド最大級のメディア統合を実現しました。映画興行収入の市場シェアは3割を超え、業界支配力をさらに強めました。 

この買収により、ディズニーは「X-MEN」や「アバター」「ザ・シンプソンズ」など、21世紀フォックスが保有していた人気映画・テレビ作品の権利を取得しました。これらは、既にディズニーが保有していた「マーベル」や「スター・ウォーズ」と並び、同社のコンテンツ力を一層強化する重要な資産となっています。 

テレビ部門では21世紀フォックスの人気番組や制作力を取り込み、動画配信サービス「Disney+」と傘下のHulu強化によってNetflixを追撃する狙いがあるとみられています。 

オリックスによるDHC買収に関するQ&A

最後に、オリックスのDHC買収に関するよくある質問とその回答を紹介します。 

「DHC」のブランド名は買収後も使われるか 

「DHC」というブランド名は引き続き使用される予定です。オリックスは、長年培われたブランド資産を生かしつつも、時代に合ったイメージへの刷新を進めています。 

その一環としてロゴの変更も行われました。新ロゴでは従来の青と白の配色を反転させ、企業パーパスである「しあわせを、ふつうに。」という文言を添えることで、「変革の意思」と「企業としての再出発」を対外的に明確に打ち出しています。 

こうしたブランド再定義は、過去のDHCの功績を否定するのではなく、創業者時代の精神や顧客への姿勢を継承しつつ、組織文化や顧客接点の刷新、デジタルシフトへの対応など「第二創業」に向けた進化の象徴と位置付けられています。 

買収後にDHCの業績はどう変化したか 

オリックスによる2023年の買収以降、DHCは「選択と集中」の経営方針の下、非中核事業の整理と主力領域への資源集中を進めてきました。その結果、2024年12月期には7年ぶりに増収増益を達成し、業績回復への明確な道筋が示されています。 

売上高は987億円となり、前年比2.2%の増加を記録しました。中でも健康食品や化粧品など、従来の主力事業が堅調に推移し、安定した収益基盤を支えています。 

利益額は非開示ではあるものの、経営陣は「着実に利益が出せる構造に移行している」と説明しており、収益性の改善が社内外で強く示唆されています。 

参考:通販新聞

買収後のDHC経営陣や従業員の処遇はどうなったか 

オリックスによる買収に伴い、長年DHCを率いてきた創業者・吉田嘉明氏は株式譲渡完了後に代表取締役会長・CEOを退任しました。 

従業員については、化粧品・健康食品事業を中心とする承継対象事業においては雇用が継続され、経営刷新とともに組織文化の再構築が図られています。 

なぜDHCは創業以来一度も上場しなかったか 

DHCは1972年の創業以来、非上場企業として創業者主導のプライベート経営を貫いてきました。これは、外部株主の意向に左右されず、迅速な意思決定や独自の戦略を展開するための選択でした。 

しかし、オリックスがDHCの企業価値を向上させた上で、上場や売却を行う可能性もあります。 

事業承継されなかった事業はどうなったか 

オリックスによるDHCの買収では、化粧品・健康食品などの中核事業が対象となりました。祖業である翻訳・通訳事業は承継されましたが、リゾートホテルやDHCテレビ、海洋深層水などの非中核事業は買収対象から除外されました。 

なお、DHCが経営していた佐賀県唐津市(創業者の吉田氏の出身地)にある「唐津シーサイドホテル」は別会社として分割され、吉田氏が引き続き代表を務めていましたが、2023年12月にはシャトレーゼHDが全株式を取得し、子会社化しました。また、「DHCテレビ公式ホームページ」は、2022年12月23日(金)をもってサービスを終了しています。 

参考:株式会社ディーエイチシーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

DHCが買収した事例はあるか 

2015年、米久株式会社はビール製造・販売事業を新設分割によりDHCに譲受。新たに「DHCビール」としての事業展開を開始しました。クラフトビール市場の拡大を背景に、これまでの健康食品・化粧品事業とは異なる分野への本格的な参入でした。 

買収後は「DHCラガービール」などの製品を主力に、自社通販サイトでの販売を中心に展開し、イベント出店や一部飲食店での提供など販路の拡大にも取り組みました。しかし、当初の期待に反して事業全体としては収益の柱には育ちきりませんでした。 

オリックスによる買収でDHCビールも事業承継されましたが、事業の再編対象となる可能性があります。 

参考:新設分割及び新設会社の株式譲渡に関するお知らせ

オリックスは今後も同様のM&Aを継続するのか 

オリックスは、DHCのようなBtoCブランドの買収をはじめとする事業投資を、今後も積極的に展開していく方針です。生活関連分野の強化や収益ポートフォリオの多様化に加え、非金融領域での持続的成長を見据えた戦略的なM&Aを推進していくと考えられます。 

同社のM&Aにおける特徴は、「ハンズオン投資」にあります。これは、単なる資本提供にとどまらず、出資先に経営陣を派遣し、事業成長を実務面から支援する投資手法です。オリックスは出資先の企業文化を尊重しながら、グループ内の既存事業との協業やシナジーの創出を重視しています。こうした姿勢が多くの譲渡企業から高く評価され、買い手に選ばれています。 

また、自己資金を用いた中長期的な出資により、短期的な売却益を目的とせず、出資先のポテンシャルを丁寧に引き出すスタンスを取っています。 

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