廃業とは?倒産・解散・休業との違いやM&Aでの回避方法まで解説

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近年、日本企業の廃業件数は増加の一途をたどっています。2024年の休廃業・解散企業数は、過去最多となる約6.9万件を記録しました。経営者の高齢化や後継者不足、コロナ禍での支援策終了、物価高などが主な要因とされています。 

しかし、廃業は必ずしも最良の選択とは限りません。従業員の雇用や長年築いた経営資源が失われる一方で、M&Aによる事業承継という代替手段も存在します。本記事では、廃業の基本知識から具体的な手続き、費用、そしてM&Aでの回避方法まで詳しく解説します。 

廃業の基本知識|定義と類似用語との違い 

廃業を検討する前に、まずは廃業の正確な意味と、混同しやすい関連用語との違いを正しく理解することが重要です。適切な判断を行うためには、それぞれの用語が持つ意味と特徴を把握し、自社の状況に最も適した選択肢を見極める必要があります。 

廃業とは何かを正しく理解する 

廃業とは、法人や個人事業主が自らの意思で事業活動を完全に停止し、企業としての活動を終了させることを指します。廃業は経営者の主体的な判断によって行われることが多いですが、債務超過や支払い不能といった外的要因により、結果的に廃業を選択せざるを得ないケースも存在します。したがって、廃業の理由は多様であり、必ずしも経営者の意思だけに基づくものではありません。 

一般的に廃業という言葉は、債務の状況に関わらず自主的に事業をやめることを指します。例えば、東京商工リサーチの定義では、法的手続きによらず資産が負債を上回る状態(資産超過)で事業を停止する場合を「休廃業」として位置付けており、これには実質的な廃業も含まれることがあります。 

廃業を選択する理由は多岐にわたりますが、後継者不足、事業や業界の将来性への不安、経営者の高齢化、事業環境の変化への対応困難などが主な要因として挙げられます。重要なのは、廃業が必ずしもネガティブな選択ではなく、経営者が戦略的に判断する経営手法の一つだということです。 

倒産・解散・休業との違いを明確に把握する 

廃業と混同されやすい用語として、倒産、解散、休業、閉店があります。これらの違いを明確に理解することで、自社に適した対応策を選択できます。 

倒産との違い  

倒産は、債務超過や業績不振により経営活動の継続が困難になり、やむを得ず経営を断念することです。廃業が自主的な判断であるのに対し、倒産は経済的困窮によって強制的に事業停止に追い込まれる状況を指します。また、廃業では債務完済が前提となりますが、倒産では債務を完済できない状態が一般的です。 

解散との違い  

解散は、法人格を消滅させるための法的手続きの開始地点を指します。会社法では以下のような解散理由を定めています。 

・株主総会での決議による解散  
・定款で定めた存続期間の満了  
合併による会社の消滅  
・破産手続きの開始決定 

解散決定後も法人格は即座に消滅せず、清算手続きを経て最終的に会社が消滅します。 

休業との違い  

休業は企業の完全な消滅ではなく、一時的に経営活動を停止させることです。法人登記は残したまま事業を停止するため、将来的な事業再開の可能性を残します。休業中は売上が発生しないため法人税や事業税は課されませんが、法人住民税の均等割については自治体によって扱いが異なります。 

閉店との違い  

閉店は主に店舗運営事業で使われる用語で、特定の店舗を閉めることを指します。複数店舗を運営している場合、一部店舗の閉店は廃業を意味しません。 

廃業を選択する企業の実態と背景 

近年、事業を停止する企業の実態を見ると、必ずしも経営状況が悪化した企業ばかりが選択しているわけではありません。帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2023年)」によると、2023年に休業・廃業または解散した企業のうち、直近期末決算が黒字だった企業の割合は51.9%、資産が負債を上回る「資産超過」状態だった企業の割合は62.3%でした。  

このような「黒字」状態や「資産超過」状態での事業停止の背景には、経営者の高齢化と後継者不足という構造的な問題があります。中小企業白書(2022年版)によると、2021年に休廃業・解散した企業の代表者年齢では70代が42.7%を占め、70代以上が全体の6割を超えるなど、経営者の高齢化が顕著です 。 

また、将来的な事業環境への不安も廃業選択の重要な要因となっています。人手不足、原材料費の高騰、デジタル化への対応困難など、中小企業を取り巻く経営環境の変化に対応するためには相当の投資と労力が必要です。こうした状況を踏まえ、大きな損失を被る前に「予防的な廃業」を選択する経営者が増加傾向にあります。 

廃業の主な理由と現在の動向 

日本における廃業件数は近年増加傾向にあり、中小企業を取り巻く経営環境の変化が大きく影響しています。廃業を選択する企業の背景にある理由を理解することで、同様の課題を抱える経営者は早期に対策を講じることが可能になります。 

後継者不足による廃業の増加 

後継者不足は現在の事業停止増加における最も深刻な要因の一つです。例えば、東京商工リサーチの「全国企業『後継者不在率』動向調査(2024年)」によると、全国の企業における後継者不在率は62.15%にのぼります。同調査では、70代の経営者においても31.64%が後継者不在の状態にあります 。 

後継者不足の背景には、少子高齢化による承継候補者の減少、事業承継に伴う相続税や贈与税の負担、経営環境の厳しさを理由とする子息の継承意欲の低下などがあります。また、従来の終身雇用制度の変化により、有能な従業員が他社に転職してしまい、社内での後継者育成が困難になっているケースも見られます。 

中小企業庁の調査では、組織形態別の廃業意向について、個人事業者が26.0%と最も高く、小規模法人、中規模法人の順で廃業意向が低くなる傾向が明らかになっています。事業規模が小さいほど後継者確保が困難で、廃業リスクが高まることを示しています。 

経営不振と資金ショートによる廃業 

赤字経営の継続や債務超過状態に陥った企業では、資金繰りの悪化により廃業を余儀なくされるケースがあります。特に資金ショートによる支払い不能状態は、倒産に直結する深刻な問題です。 

手形や小切手の不渡りが発生すると、取引銀行だけでなく他の金融機関にもその情報が共有され、企業の信用力が急激に低下します。6か月以内に不渡りを2度生じさせると銀行取引停止処分となり、借入れや当座預金による取引が2年間停止されるため、事実上の倒産状態となります。 

また、売掛金として計上されている売上は帳簿上では利益に貢献しますが、実際に回収されるまでは現金収入になりません。この売掛金と現金収入のタイムラグが原因で、黒字経営であっても資金ショートにより倒産する「黒字倒産」も発生しています。 

コロナ禍が廃業件数に与えた影響 

2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大は、廃業動向に大きな変化をもたらしました。帝国データバンクの調査によると、2023年の休廃業・解散件数は59,105件に達し、前年比10.6%増となり、2019年以降では4年ぶりの増加を記録しました。 

コロナ禍初期には、政府や自治体による持続化給付金、雇用調整助成金、実質無利子・無担保融資などの支援策により、一時的に倒産件数は減少しました。しかし、これらの支援策は短期的な延命効果にとどまり、根本的な経営改善には至らないケースが多く見られました。 

支援策の縮小・終了とともに、事業や業界の先行きを不安視する経営者による「予防的な廃業」が増加しています。特に以下の要因が重なり、廃業を選択する企業が増えています。 

・物価高騰による原材料費・光熱費の上昇  
・人手不足の深刻化と人件費の上昇  
・デジタル化投資への対応困難  
・消費者行動の変化への適応の遅れ 

業種別では、帝国データバンクの調査によると、2023年の休廃業・解散件数の最多は建設業で7,628件、前年から10.0%増加しました 。卸売業、小売業なども含め、多くの主要業種で前年からの増加が見られました。 

廃業のメリット|経営者が得られる利点 

廃業は必ずしもネガティブな選択ではありません。適切なタイミングで廃業を選択することで、経営者は様々な利点を得ることができます。特に債務を完済できる状態での自主的な廃業は、倒産と比較して多くのメリットがあります。 

経営に関する負担からの解放 

廃業を選択する最大のメリットは、長年にわたって背負ってきた経営責任と精神的負担から完全に解放されることです。会社経営には常に様々なリスクと責任が伴い、経営者は24時間365日、事業のことを考え続ける必要があります。 

具体的には、従業員の雇用維持、取引先との関係管理、資金繰りの調整、税金対策、法令遵守など、多岐にわたる課題への対応が求められます。これらの負担は経営者の健康面にも大きな影響を与え、ストレスによる体調不良や睡眠不足に悩む経営者も少なくありません。 

廃業により事業活動を完全に停止することで、これらすべての経営負担から解放され、経営者は自分自身の時間を取り戻すことができます。特に高齢の経営者にとっては、残りの人生を家族との時間や趣味に充てることができる大きなメリットとなります。 

休業という選択肢もありますが、休業中でも法人住民税の均等割や税務申告の義務が残るため、完全な負担解消にはなりません。廃業であれば、こうした継続的な義務からも完全に解放されます。 

倒産手続きが不要になる簡便性 

債務を完済できる状態での廃業は、倒産に比べて手続きが大幅に簡略化されます。倒産の場合は破産手続きが必要となり、弁護士への相談、必要書類の準備、裁判所への破産申し立てなど、時間と手間のかかる複雑な手続きが求められます。 

破産手続きでは、破産管財人の選任、債権者集会の開催、財産の強制処分など、経営者の意思とは関係なく手続きが進められます。また、手続き期間も長期にわたることが多く、経営者にとって大きな負担となります。 

一方、自主的な廃業では株主総会での解散決議、財産の清算、清算結了登記など、比較的シンプルな手続きで完了します。経営者自身が主導して計画的に進めることができるため、精神的な負担も軽減されます。 

中小企業においては経営者自身が会社債務の連帯保証人となっているケースが多いため、計画的な廃業手続きにより経営者個人の資産を守ることも可能です。これは倒産手続きでは困難な大きなメリットといえます。 

債務を完済してからの円満な事業終了 

廃業では従業員への退職金や取引先への買掛金などの債務をすべて返済してから会社を閉じるため、関係者への迷惑を最小限に抑えることができます。これは経営者にとって重要な精神的メリットです。 

長年にわたって支えてくれた従業員に対して適切な退職金を支払い、取引先に対しても未払い債務を完済することで、経営者は負い目を感じることなく事業を終了できます。これにより、廃業後も地域や業界での人間関係を良好に保つことが可能になります。 

また、債務完済により残った資産は株主(多くの中小企業では経営者自身)に分配されるため、経営者は廃業後の生活資金を確保することができます。長年の経営努力による蓄積を無駄にすることなく、次の人生設計に活用できる点も大きなメリットです。 

倒産の場合は債権者への弁済が優先され、経営者個人への配当は期待できないことが多いため、この点でも廃業の方が経営者にとって有利な選択となります。 

廃業のデメリット|失われるものと注意点 

廃業を選択する際は、メリットだけでなくデメリットも十分に検討する必要があります。一度失ったものは二度と取り戻すことができないため、廃業の決断は慎重に行うべきです。特に雇用や経営資源の消失は、社会全体にとっても大きな損失となります。 

従業員の雇用と取引先関係の消失 

廃業による最大のデメリットは、従業員の雇用が失われることです。長年にわたって経営者と苦楽を共にしてきた従業員にとって、突然の失業は生活基盤を脅かす深刻な問題となります。特に中高年の従業員の場合、再就職が困難になることも多く、経営者にとっては心理的な負担となります。 

従業員への影響は単なる雇用の喪失にとどまりません。退職を余儀なくされた従業員は、新しい職場で一から人間関係を築き直し、これまでに培ったスキルや経験を活かせない環境で働くことになる可能性があります。また、会社都合の退職となるため、失業給付の受給資格などでは従業員にとって不利にならない側面もありますが、転職活動における心理的な影響や、新しい職場への適応が必要となる場合があります。 

取引先との関係についても、廃業により長年にわたって構築してきたビジネスパートナーシップが消失します。取引先は新たな仕入先や販売先を確保する必要があり、場合によっては事業運営に支障をきたす可能性があります。特に地域密着型の事業では、地域経済全体への影響も懸念されます。 

顧客との関係も同様に失われます。長年にわたって信頼関係を築いてきた顧客は、サービスや商品の提供を受けられなくなり、代替手段を探す必要があります。これは顧客満足度の低下や地域コミュニティの結束力低下にもつながる可能性があります。 

経営資源と事業価値の喪失 

廃業により、長年にわたって蓄積してきた貴重な経営資源が失われます。これらの経営資源は、単純な資産価値以上の価値を持っており、その喪失は社会全体にとっても大きな損失となります。 

具体的に失われる経営資源には以下のようなものがあります。 

・従業員が持つ専門的なスキルやノウハウ  
・顧客データベースや取引先との信頼関係  
・ブランド価値や企業の評判  
・特許や技術、営業秘密  
・組織文化や経営哲学 

これらの無形資産は、帳簿上の価値では測れない重要な価値を持っています。特に製造業や技術系企業の場合、熟練技術者の持つ技術やノウハウは代替が困難で、一度失われると復元が不可能な場合も多くあります。 

また、M&Aであれば事業全体として評価される価値も、廃業では個別資産の処分価格でしか評価されません。事業継続を前提とした企業価値と、清算を前提とした資産価値には大きな差があり、経営者にとっても経済的な損失となります。 

廃業手続きに必要な費用負担 

廃業には想像以上の費用がかかることも重要なデメリットです。これらの費用は事前に十分な準備をしておかないと、廃業手続きの途中で資金不足に陥る可能性があります。 

主な廃業費用は以下の通りです。 

・解散登記費用:約4万1,000円(登録免許税含む)  
・官報公告費用:約3〜4万円  
・清算結了登記費用:約2,000円  
・従業員への退職金や特別手当  
・設備や機械の処分費用  
・在庫商品の廃棄費用  
・事務所や工場の原状復帰費用  
・専門家(司法書士、弁護士、税理士)への報酬 

特に会社都合退職となる従業員への退職金は、就業規則や退職金規程に基づいて算定されますが、企業の財務状況や経営者の判断、あるいは長年の慣行により、通常の算定額に上乗せした金額や特別手当が支払われることもあり、その場合は大きな費用負担となります。 

さらに、廃業手続き中は新たな売上が発生しないにも関わらず、手続き完了まで一定期間を要するため、その間の固定費(家賃、光熱費、保険料など)も継続して発生します。これらの費用を含めた総額が、想定していた金額を大幅に上回る場合も少なくありません。 

廃業の具体的な手続きと流れ 

廃業を円滑に進めるためには、法令に基づいた適切な手続きを段階的に実行することが重要です。手続きの流れを事前に把握し、必要な準備を整えることで、関係者への影響を最小限に抑えながら事業を終了することができます。 

解散決議から清算人選任までの初期手続き 

廃業手続きの第一段階は、会社の解散決議と清算人の選任です。この初期手続きが全体の流れを決定づけるため、慎重に進める必要があります。 

まず、取締役会や取締役間で解散の意思決定を行い、解散予定日を明確に決定します。この段階で、従業員や主要取引先への事前説明も並行して行うことが重要です。突然の廃業発表は関係者に大きな混乱を招くため、可能な限り余裕を持ったスケジュールで進めることが望ましいです。 

次に、臨時株主総会を開催し、会社法第471条に基づく解散決議を行います。解散決議には株主総会での特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。多くの中小企業では経営者が大部分の株式を保有しているため、実質的な問題は生じないことが一般的です。 

解散決議と同時に清算人の選任も行います。清算人は清算事務の管理者として、債権の取立て、債務の弁済、残余財産の分配などの重要な役割を担います。定款に定めがない場合は株主総会決議により選任し、それもない場合は取締役が自動的に清算人となります。 

解散決議から2週間以内に、法務局において解散登記と清算人登記を行う必要があります。登記申請には登録免許税として4万1,000円が必要で、司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。 

債権者への公告と財産調査の進め方 

解散登記完了後は、債権者保護のための公告手続きと会社財産の調査を並行して進めます。これらの手続きは法律で義務付けられており、適切に実行しないと後の清算手続きで問題が生じる可能性があります。 

債権者への公告は、官報への掲載と個別催告の両方を行います。官報公告では解散の事実と債権申出期間(最低2か月間)を記載し、会社が認識している債権者に対しては個別に催告状を送付します。官報への掲載費用は約3〜4万円程度です。 

この公告期間中に申し出のなかった債権者は、清算後に残った財産に対してのみ弁済を請求できることになります。そのため、帳簿や契約書を詳細に確認し、見落としがないよう注意深く債権者をリストアップする必要があります。 

並行して、清算人は会社財産の現況調査を行い、解散時点での財産目録と貸借対照表を作成します。この作業では以下の項目を詳細に調査します: 

・現金・預金の残高確認  
・売掛金や貸付金などの債権の回収可能性評価 
・在庫商品や固定資産の時価評価  
・買掛金や借入金などの債務の確定  
・偶発債務(保証債務など)の有無確認 

財産目録と貸借対照表は株主総会での承認を受け、清算結了まで保存する義務があります。また、この段階で債務超過が判明した場合は、特別清算や破産手続きへの移行を検討する必要があります。 

最終的な清算結了登記までの完了手続き 

債権者申出期間の終了後は、実際の清算業務に入ります。これは廃業手続きの最終段階であり、法的な手続きの完了まで慎重に進める必要があります。 

まず、会社の資産を現金化し、申し出のあった債務をすべて弁済します。不動産や設備などの資産売却では、適正な価格での処分を心がけ、必要に応じて複数の業者から見積もりを取得します。在庫商品については、可能な限り通常販売で処分し、残った分は廃棄処分を行います。 

すべての債務弁済が完了し、残余財産が確定したら株主への分配を行います。残余財産の分配は株式の保有割合に応じて行われ、分配完了をもって清算業務は実質的に終了します。 

清算業務の完了後は、決算報告書を作成し、株主総会での承認を受けます。決算報告書には清算期間中の収支、財産の処分状況、債務の弁済状況、残余財産の分配内容などを詳細に記載します。 

最後に、株主総会での決算報告承認から2週間以内に清算結了登記を行います。この登記により会社の法人格が消滅し、廃業手続きが完了します。清算結了登記の登録免許税は2,000円で、比較的少額です。 

なお、清算期間中は解散事業年度と清算事業年度の確定申告も必要です。解散日から2か月以内に解散事業年度の申告を行い、以降は1年ごとに清算事業年度の申告を行います。残余財産確定時には最終的な確定申告も必要となります。 

廃業にかかる費用の内訳と相場 

廃業を検討する際は、手続きに必要な費用を事前に正確に把握し、十分な資金を確保しておくことが重要です。予想以上の費用負担により手続きが滞ると、関係者に迷惑をかけるだけでなく、計画的な廃業ができなくなる可能性があります。 

登記手続きと官報公告にかかる必須費用 

廃業手続きで必ず発生する法定費用として、登記関連費用と官報公告費用があります。これらは法律で義務付けられているため、どのような企業でも負担する必要があります。 

登記関連費用  

・解散登記:登録免許税30,000円  
・清算人登記:登録免許税9,000円  
・清算結了登記:登録免許税2,000円  
 
合計で41,000円の登録免許税が必要です。 

官報公告費用  

債権者への公告として官報への掲載が義務付けられており、費用は約3〜4万円程度です。公告内容や文字数により多少の変動がありますが、一般的な内容であれば3万円台で済むことが多いです。 

これらの必須費用だけで約7〜8万円となり、最低限の廃業手続きでもこの程度の費用は確実に発生します。司法書士に登記手続きを依頼する場合は、別途報酬として5〜10万円程度が追加で必要になります。 

従業員退職金と設備処分費用の見積もり 

従業員への退職金は、廃業費用のなかでも大きな割合を占める項目です。会社都合退職となるため、通常の自己都合退職よりも割増しされた退職金を支払うのが一般的です。 

退職金の算定は、就業規則や退職金規程に基づいて行いますが、会社都合退職の場合、自己都合退職の場合よりも手厚い算定基準が設けられていることがあります。また、企業の状況や経営者の判断によっては、お詫びや慰労の意味合いで特別手当が支給されることもありますが、これらは企業の任意によるものです。 

設備や機械の処分費用も、業種や規模により大きく異なります。製造業では大型機械の撤去・処分に数十万円から数百万円の費用がかかる場合があります。一方、オフィス系の事業であればデスクや椅子、パソコンなどの処分費用は比較的少額で済みます。 

在庫商品については、可能な限り通常価格での販売を試みますが、最終的に売れ残った商品は廃棄処分となります。廃棄費用は商品の種類や量により異なりますが、適切な産業廃棄物処理業者に依頼する必要があり、相応の費用が発生します。 

専門家依頼費用と総額の目安 

廃業手続きを円滑に進めるため、多くの企業が司法書士、税理士、弁護士などの専門家に依頼します。これらの専門家費用も事前に見積もっておく必要があります。 

司法書士費用  

登記手続き全般で5〜10万円程度が相場です。複雑な清算手続きが必要な場合は、さらに高額になる可能性があります。 

税理士費用  

解散から清算結了までの税務申告を依頼する場合、10〜30万円程度が一般的です。清算期間の長さや申告回数により費用が変動します。 

弁護士費用  
債権者との交渉や法的問題が生じた場合に必要となり、案件により大きく異なりますが、50万円以上かかることも珍しくありません。 

総額の目安  

企業規模や業種により大きく異なりますが、一般的な中小企業での廃業費用総額は以下のような目安となります。ただし、実際の費用は企業の状況や地域、業種によって大きく変動します。 

・小規模企業(従業員5名以下):100〜300万円  
・中規模企業(従業員10〜30名):500〜1,500万円  
・大規模企業(従業員50名以上):1,500万円以上 

これらの費用には退職金、設備処分費、専門家報酬、原状復帰費用などが含まれます。特に従業員数が多い企業や大型設備を保有する製造業では、費用が大幅に増加する傾向があります。 

廃業を検討する際は、これらの費用を差し引いても十分な残余財産が確保できるかを慎重に検討し、必要に応じて費用の詳細見積もりを専門家に依頼することをお勧めします。 

廃業を回避するM&Aという選択肢 

廃業を検討している経営者にとって、M&A(企業の合併・買収)は事業と雇用を継続しながら経営責任から解放される有効な選択肢です。近年、中小企業のM&Aは急速に普及しており、廃業の代替手段として注目されています。適切にM&Aを活用することで、廃業のデメリットを回避しながらメリットを享受することが可能です。 

M&Aによる事業承継のメリット 

M&Aによる事業承継は、廃業と比較して経営者、従業員、取引先のすべてにとって多くのメリットをもたらします。最も重要なメリットは、従業員の雇用が維持されることです。東京商工リサーチの調査によると、M&Aを実施した買い手企業の82.1%で、売り手企業の全従業員またはほぼ全員の雇用が継続されています。 

経営者にとってのメリットとしては、事業売却による対価を得られることが挙げられます。廃業では資産を個別に処分するため処分価格でしか評価されませんが、M&Aでは事業全体としての価値(のれんを含む)で評価されるため、より高い対価を期待できます。長年にわたって築いてきた顧客基盤、ブランド価値、従業員のスキルなども適正に評価されます。 

さらに、M&Aでは以下のような無形資産も承継されます。 

・従業員が持つ専門技術やノウハウ  
・顧客との信頼関係や取引実績  
・仕入先や協力会社とのネットワーク  
・企業文化や組織風土  
・特許や商標などの知的財産 

これらの経営資源は一度失われると復元が困難であり、M&Aによる承継は社会全体の資源有効活用にも寄与します。また、買い手企業の経営資源と組み合わせることで、事業のさらなる発展も期待できます。 

廃業とM&Aの費用・効果比較 

廃業とM&Aを費用と効果の両面で比較すると、多くの場合M&Aの方が経営者にとって有利な結果をもたらします。まず費用面では、廃業には退職金、設備処分費、登記費用、専門家報酬などで数百万円から数千万円の費用が必要ですが、M&Aでは仲介手数料やアドバイザリー費用が主な費用となります。 

M&A仲介手数料は成功報酬制が一般的で、取引が成立しない限り大きな費用負担は発生しません。また、多くのM&A仲介会社では着手金や月額報酬を無料とし、成約時のみ手数料を支払う料金体系を採用しています。 

効果面での比較では、廃業による経営者の手取り額は「資産売却額-廃業費用-税金」となりますが、M&Aでは「事業売却価格-M&A手数料-税金」となります。事業売却価格は資産売却額を大幅に上回ることが多いため、M&Aの方が経営者の手取り額が多くなる傾向があります。 

税制面でも、M&Aには優遇措置があります。株式譲渡による事業承継では、譲渡所得として約20%の税率が適用され、廃業時の清算所得よりも税負担が軽減される場合があります。また、事業承継税制の活用により、さらなる税制優遇を受けられる可能性もあります。 

時間的な効果も重要な要素です。廃業手続きは解散決議から清算結了まで通常6か月から1年以上を要しますが、M&Aは3か月から6か月程度で完了することが多く、経営者の負担期間が短縮されます。 ただし、具体的な期間は企業の状況や取引の規模によって異なります。

M&A検討時の相談先と進め方 

M&Aを検討する際は、適切な相談先を選択し、計画的に進めることが成功の鍵となります。主な相談先として、M&A仲介会社、ファイナンシャルアドバイザー、事業引継ぎ支援センター、金融機関などがあります。 

M&A仲介会社  

売り手と買い手の双方を仲介し、マッチングから成約まで一貫してサポートします。中小企業のM&Aでは最も一般的な相談先で、豊富な経験とネットワークを活用したスムーズな進行が期待できます。 

事業引継ぎ支援センター  

全国47都道府県に設置された公的機関で、無料での相談が可能です。中立的な立場からアドバイスを受けられるため、M&A検討の初期段階での相談に適しています。 

金融機関  

メインバンクや地域金融機関もM&A支援サービスを提供していることが多く、既存の取引関係を活かした相談が可能です。 

M&Aの基本的な進め方は以下の通りです。 

  1. 初期相談・方針決定:M&Aの目的と条件を明確化 
  1. 企業価値評価:事業の価値を客観的に算定 
  1. 買い手候補の選定条件に合致する買い手を探索 
  1. 交渉・条件調整価格や条件の詳細交渉 
  1. デューデリジェンス買い手による詳細調査 
  1. 最終合意・クロージング契約締結と事業移転 

M&Aロイヤルアドバイザリー株式会社では、中小企業向けのM&Aサービスを提供しており、廃業を検討している経営者の方々に対して、事業承継の可能性を含めた最適なソリューションをご提案いたします。廃業を決断する前に、まずはM&Aの可能性について専門家にご相談いただくことをお勧めします。

まとめ|廃業の代わりにM&Aを選択しよう 

廃業には経営負担からの解放や手続きの簡便性といったメリットがある一方で、従業員の雇用喪失や経営資源の消失、相応の費用負担といったデメリットも存在します。特に近年増加している黒字廃業では、まだ価値のある事業が失われてしまいます。M&Aによる事業承継なら、従業員の雇用を維持し、経営資源を次世代に承継させながら、経営者も適正な対価を得ることができます。廃業を検討する前に、ぜひM&Aの可能性をご検討ください。 

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