メザニンファイナンスとは?意味や種類、M&Aでの活用法を解説 

着手金・中間金無料 完全成功報酬型

M&Aや事業承継において、資金調達は成功の鍵を握る重要な要素です。近年、従来の銀行融資だけでは解決できない資金ニーズに対応する新たな手法として、メザニンファイナンスが注目を集めています。

メザニンファイナンスとは、債券と株式の中間的な性質を持つ資金調達手法で、ミドルリスク・ミドルリターンの特徴があります。M&Aにおいては買収資金の調達や経営権の維持、事業承継の円滑化など多様な場面で活用されています。本記事では、メザニンファイナンスの基本概念から具体的な活用法まで、実践的な観点から詳しく解説していきます。 

メザニンファイナンスとは何か?

企業の資金調達において、メザニンファイナンスは重要な選択肢の一つとなっています。ここでは、その基本概念から特徴まで解説します。 

メザニンファイナンスの定義と基本概念 

メザニンファイナンスとは、従来の銀行融資(シニアローン)と普通株式によるエクイティファイナンスの中間に位置する金融手法です。「メザニン」は英語で「中2階」を意味し、バランスシート上で純資産と負債の間に位置することからこの名前がつけられました。 

メザニンファイナンスには、劣後ローン・劣後債、優先株式、転換社債型新株予約権付社債などがあり、通常の融資や株式発行では満たせない多様な資金ニーズに対応します。 

デットとエクイティの中間に位置する性質 

メザニンファイナンスは、デットファイナンス(負債)とエクイティファイナンス(資本)の特性を併せ持ちます。返済優先順位は一般的な負債よりも後回しとなりますが、株式よりは前に位置づけられます。 

この中間的な性質により、既存株主の議決権希薄化を避けつつ資金調達ができる、あるいは銀行融資だけでは足りない資金を補完するといったメリットをもたらします。 

ミドルリスク・ミドルリターンの特徴 

リスクとリターンの観点では、シニアローンはローリスク・ローリターン、エクイティファイナンスはハイリスク・ハイリターンであるのに対し、メザニンファイナンスは相対的にミドルリスク・ミドルリターンとなります。 

企業が破綻した場合、シニアローンから優先的に弁済され、メザニンファイナンスは一部しか回収できないリスクがありますが、その分、通常の融資よりも高い金利や投資倍率を得られる可能性があります。 

このミドルリスク・ミドルリターンの特性により、メザニンファイナンスは企業の資金調達ポートフォリオの多様化やリスク分散に貢献します。 

中小企業に適したメザニンファイナンスの種類と選び方

中小企業がM&Aや事業拡大を進める際、適切な資金調達手段を選ぶことが重要です。メザニンファイナンスには様々な種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。ここでは、中小企業に適したメザニンファイナンスの種類と、その選び方について解説します。 

劣後ローン・劣後債の仕組みと特徴 

劣後ローン・劣後債は、他の負債(シニアローンなど)と比較して返済順位が低く設定されている借入や債券です。返済順位が劣後する分、資金提供者にとってリスクが高まるため、通常のローンより高い金利が設定されます。 

劣後ローン・劣後債の主な特徴は以下の通りです。 

  • 貸借対照表上の区分:会計上は原則、負債(例:長期借入金)として計上されます。ただし、金融機関が融資審査などで企業の財務健全性を評価する際には、その資本的な性質(返済順位が低いなど)を考慮し、劣後ローン・劣後債の一部を自己資本とみなして評価することがあります。これは会計上の正式な計上区分とは異なる、分析上の評価である点に留意が必要です。
  • 返済順位:通常の借入(シニアローン)よりも返済順位が下位に設定されます。
  • 金利水準:リスクに応じて、通常の借入よりも高い金利が設定されることが一般的です。
  • 財務上のメリット:銀行審査において資本性の借入として扱われるため、見かけ上の自己資本比率が向上します。

中小企業が劣後ローン・劣後債を活用するメリットとしては、一般的な融資よりも資金調達がしやすい点や、業績に応じて金利負担を調整できる柔軟性が挙げられます。特に大規模な買収を検討している場合や、新規事業立ち上げに大きな初期投資が必要な場合に有効な選択肢となります。 

優先株式の活用方法と実践ポイント 

優先株式は、普通株式と比べて配当や残余財産の分配において優先的な権利を持つ種類株式です。メザニンファイナンスの一種として、以下のような特徴があります。

  • 議決権の制限:多くの場合、議決権を付与しないか制限することで、経営権に影響を与えることなく資金調達が可能です。
  • 配当の優先性:普通株式よりも優先的に配当を受け取る権利があります。
  • 資本としての計上:優先株式によって調達した資金は資本金として計上されるため、自己資本比率の向上に寄与します。  
  • 償還の柔軟性:一定期間経過後に発行会社が買い戻せる設計も可能です。

中小企業のM&Aにおける優先株式の活用ポイントとしては、事業承継において経営権を維持しながら資金調達できる点が挙げられます。また、株主間で権利関係を明確にしておくことで、将来の株式買取りなど出口戦略を計画的に進められる利点もあります。 

ただし、優先株式発行には株主総会での特別決議が必要なため、手続きが複雑になることや、日本国内では認知度が低く「資金繰りが悪化している」と誤解される可能性もある点には注意が必要です。 

転換社債型新株予約権付社債の適用場面 

転換社債型新株予約権付社債(CB:Convertible Bond)は、一定の条件で株式に転換できる権利が付与された社債です。株式と債券の両方の性質を持ち、以下のような特徴があります。 

  • 柔軟性:投資家は社債のまま保有して定期的な利息を受け取るか、株式に転換して値上がり益を狙うか選択できる
  • 転換価格:発行時に決められた価格で株式に転換できるため、株価上昇時には投資家にメリットがある 
  • 低利回り:株式転換権があるため、通常の社債と比較して利回りは低めに設定される  
  • 資金計画:満期時には一括返済が必要なため、長期的な資金計画が重要 

中小企業にとっての適用場面としては、将来的な成長が見込まれる局面での資金調達に適しています。特にバリュエーション(企業価値評価)が確定しにくい創業期の企業にとっては、現時点での株式発行を回避しつつ資金調達ができるメリットがあります。 

また、M&Aによる買収資金として活用する場合も、買収後の企業価値向上に応じて株式転換されることで、資金提供者と経営者の利害が一致するというメリットもあります。 

ハイブリッド証券の柔軟性と活用法 

ハイブリッド証券は、債券と株式の特徴を併せ持つ金融商品の総称です。前述の優先株式や劣後債、転換社債型新株予約権付社債もハイブリッド証券に含まれますが、ここではより幅広い概念として解説します。 

ハイブリッド証券の主な特徴は以下の通りです。 

  • リスク/リターンの中間性:デットとエクイティの中間的なリスク/リターン特性を持つ
  • 設計の柔軟性:企業のニーズに合わせて様々な条件設定が可能
  • 資本性評価:条件によっては格付機関から一定の資本性評価を受けられる場合がある  
  • 財務改善効果:自己資本比率の向上や財務構造の改善に寄与 

中小企業がハイブリッド証券を活用する方法としては、成長期の資金調達や、財務基盤強化のための資本性資金の調達などが考えられます。特に市場拡大や製品開発のための資金を必要としている場合に、財務構造を大きく変えることなく必要な資金を確保できる利点があります。 

また、事業承継やM&Aのような重要な局面では、普通株式の発行による経営権の希薄化を避けつつ、必要な資金を調達する手段として検討する価値があります。 

中小企業がメザニンファイナンスを選択する際は、自社の財務状況や成長フェーズ、経営戦略との整合性を考慮することが重要です。それぞれの手法の特性を理解した上で、M&A戦略や将来の成長計画に最も適した資金調達方法を選びましょう。 

メザニンファイナンス活用法①|買収資金の調達

M&Aにおける買収資金の調達は、企業の将来を大きく左右する重要な要素です。特に中小企業のM&Aでは、資金調達方法の選択肢が限られることが多いため、メザニンファイナンスは非常に有効な手段となります。このセクションでは、買収資金調達におけるメザニンファイナンスの活用方法について詳しく解説します。 

バイアウトファイナンスとしての活用術 

バイアウトファイナンスとは、企業買収(M&A)に必要な資金を調達する手法です。メザニンファイナンスはバイアウトファイナンスの一環として、特に「バイアウトメザニン」と呼ばれる形で活用されています。 

バイアウトメザニンの基本的な構造は以下のようになります。 

  • 買い手の自己資金(エクイティ出資)による調達  
  • 金融機関からのシニアローン(優先債務)による調達  
  • メザニンファイナンス(優先株式、劣後ローンなど)による調達 

この三層構造により、買い手企業は少ない自己資金で大規模な買収を実現できます。例えば、買収総額の20%を自己資金、50%をシニアローン、30%をメザニンファイナンスで調達するといった資金構成が可能になります。 

中小企業のM&Aにおいては、特に経営陣によるMBO(マネジメント・バイアウト)や事業承継を目的としたバイアウトの場面で、メザニンファイナンスが重要な役割を果たします。自己資金だけでは買収資金が不足する場合に、経営権維持と資金調達を両立させるための有効な選択肢となるのです。 

銀行融資との効果的な組み合わせ方 

メザニンファイナンスの大きな強みは、銀行融資(シニアローン)と効果的に組み合わせることで、資金調達力を高められる点にあります。中小企業のM&Aでこの組み合わせを活用するポイントは以下の通りです。 

まず、銀行融資には一般的に担保や保証人の設定、財務制限条項(コベナンツ)などの条件が付きます。一方で、メザニンファイナンスは比較的柔軟な条件設計が可能です。例えば、劣後ローンと銀行融資を組み合わせる場合、以下のようなメリットが得られます。 

  • 銀行の融資審査において、劣後ローンの一部が資本とみなされ、財務状況が良好に評価される  
  • 返済スケジュールを銀行融資とメザニンで差別化することで、資金負担の平準化が可能
  • 銀行融資だけでは調達できない金額を上乗せできるため、より大規模なM&Aが実現可能 

効果的な組み合わせのためには、銀行とメザニン提供者の間で「債権者間契約」を締結し、返済優先順位や担保権の取り扱いなどを明確にしておくことが重要です。これにより、買収後の資金繰りや返済計画を安定的に進めることができます。 

買収資金調達の成功事例 

中小企業におけるメザニンファイナンスを活用したM&A 資金調達の成功事例をご紹介し 
ます。なお、以下でご紹介する事例は、実際の手法や資金構成を理解していただくための架 
空の事例であり、実在の企業の事例ではありません。

【事例1:製造業の事業承継型M&A】

老舗製造業の後継者不在問題を解決するため、同業他社が買収を検討したと仮定します。買収金額は10 億円でしたが、買い手企業の自己資金は3 億円しかありませんでした。そこで、以下の資金構成で買収を実現しました。

  • 自己資金:3 億円(30%)
  • 銀行融資:5 億円(50%)
  • 劣後ローン:2 億円(20%)

この資金構成により、買い手企業は無理なく買収を実現し、買収後も安定した返済計画を立 
てることができました。劣後ローンは銀行融資より返済期間を長く設定することで、初期の 
資金負担を軽減する工夫も行われました。

【事例2:サービス業のMBO】 

成長中のサービス企業で、創業者が引退を希望したため、現経営陣がMBO による買収を検 討したケースを想定してみましょう。買収金額は8 億円でしたが、経営陣の自己資金は限 られていたため、以下の資金構成を採用しました。

  • 経営陣の自己資金:1 億円(12.5%)
  • 銀行融資:4 億円(50%)
  • 優先株式:3 億円(37.5%) 

優先株式は議決権を制限する設計とし、経営陣が経営権を維持したまま大型の資金調達を実 現しました。また、優先株式には5 年後から段階的な買戻し条項を設けることで、将来的 に全株式を経営陣が保有できる出口戦略も同時に設計されました。

これらは典型的な資金調達手法を示すための想定事例ですが、メザニンファイナンスは M&A における資金調達の幅を広げ、より多くの選択肢を企業に提供することがわかります。 自社の状況に合わせた最適な資金構成を検討することで、M&A の成功率を高めることができるでしょう。 

メザニンファイナンス活用法②|事業承継と経営権維持

事業承継において、株式買取資金の調達と経営権維持は重要な課題です。メザニンファイナンスはこれらの課題解決に効果的です。 

事業承継プロセスへの組み込み方 

中小企業では、後継者の自己資金だけでは株式買取が難しいケースが多くあります。メザニンファイナンスを活用した段階的な株式取得や、オーナー経営者の引退計画と後継者の経営権取得を並行して進める設計が可能です。 

例えば、初期段階では少数株式と劣後ローンを組み合わせて取得し、業績向上に伴って残りの株式を買い取る方法や、現オーナーが優先株式を保有することで一定期間は安定配当を得られる仕組みなどが考えられます。 

経営権・議決権を維持しながらの資金調達手法 

事業承継では経営権の維持が特に重要です。議決権のない優先株式を活用することで、議決権構成に影響を与えずに資金調達が可能になります。 

また、劣後ローンは負債として計上されますが、銀行審査では自己資本と同様に扱われ、財務体質強化にも貢献します。 

将来的な株式買取条件を事前に設定する手法も有効です。例えば、劣後ローンに株式転換権を付与したり、一定期間後の買取条件を設定したりすることで、段階的な経営権移転を実現できます。 

円滑な事業承継の実践事例 

以下の事例は、事業承継の手法を分かりやすくご説明するための仮想事例であり、実在する企業の事例ではございません。

【同族企業の世代交代事例】

 創業者の株式評価額30億円の老舗製造業において、子息への事業承継を想定したケースです。この例では、子息が10億円のシニアローンと10億円の劣後ローン調達、残り10億円を創業者から贈与される形で事業承継を実現したと仮定します。10年後一括返済の条件とし、その間の業績向上で返済原資を確保する計画としました。

【従業員承継のためのMBO 事例】

 創業者から従業員への承継を検討する場合の典型的なスキームとして、従業員持株会に転換社債型新株予約権付社債を導入する方法があります。この仮想事例では、5年間の業績向上後に社債を株式に転換するスキームとし、段階的な株式取得を実現する設計としました。

これらは事業承継における資金調達手法の代表的なパターンを示したモデルケースですが、実際の事業承継においても同様のスキームが活用されることで、円滑な世代交代や経営権の移転が可能となります。

メザニンファイナンス活用法③|企業価値と成長資金

企業の持続的成長には強固な財務基盤と成長投資資金が不可欠です。メザニンファイナンスはこの両立に貢献します。 

財務基盤強化によるバリュエーション向上 

メザニンファイナンスによる資本増強は、企業価値評価の向上につながります。主なメカニズムは以下の通りです。 

  • 自己資本比率の改善:劣後ローンや優先株式は銀行審査で自己資本とみなされることが多く、財務諸表上の自己資本比率が向上します。これにより企業の財務安定性が評価され、バリュエーションにプラスの影響を与えます。
  • 資本構成の最適化:適切なメザニンファイナンスの活用によって、加重平均資本コスト(WACC)を低減できる可能性があります。資本コストの低減は企業価値の向上に直結し、将来のM&Aや株式上場(IPO)の際に有利な条件を引き出せます。
  • 取引先からの信用向上:メザニンファイナンスによって財務状況が改善すれば、取引条件の改善や新規ビジネスチャンスの拡大が期待できます。場合によっては格付評価の向上にも貢献し、より有利な条件での資金調達が可能になります。 

このように、メザニンファイナンスを活用した財務基盤の強化は、単なる資金調達の枠を超えて、企業価値そのものを高める戦略的な取り組みとなります。 

成長資金としての戦略的活用ポイント 

メザニンファイナンスは成長資金として戦略的に活用できる資金調達手段です。主な活用ポイントは以下の通りです。 

  • 成長ステージに応じた最適な種類の選択:創業初期のスタートアップには転換社債型新株予約権付社債が、安定成長期の企業には劣後ローンや優先株式が適しているなど、企業の成長段階によって最適な手法が異なります。
  • 長期的投資案件への活用:設備投資や研究開発など、即時の収益化が難しく長期的なリターンを期待する投資には、返済スケジュールの柔軟性を持つメザニンファイナンスが適しています。特に通常の融資では資金調達が難しい大型投資案件に効果的です。
  • 新規事業進出や市場拡大のための資金:新たな事業領域に挑戦する際には初期投資が大きく、収益化までに時間がかかることが一般的です。メザニンファイナンスはそうした成長投資のリスクと収益の特性に合わせた柔軟な設計が可能です。
  • 株式の希薄化なしでの大規模資金調達:特に同族経営の中小企業では、議決権の分散を避けながら成長投資のための資金を調達できるメリットは非常に大きいといえます。 

事業計画と返済計画の整合性を確保し、成長ペースに合わせた資金調達設計を行うことが成功のカギとなります。 

企業価値向上に成功した実例 

メザニンファイナンスを活用して企業価値向上に成功した事例を見てみましょう。なお、以下でご紹介するのは、メザニンファイナンスの効果を理解していただくための仮想的な事例であり、特定の実在企業の事例ではありません。

【IT 企業のグローバル展開事例】

売上高30 億円の中堅IT 企業がグローバル展開を加速させるケースを想定してみます。海外拠点の設立や現地企業の買収に20 億円の資金が必要となった場合、この企業は10 億円の劣後ローンと10 億円の優先株式を組み合わせたメザニンファイナンスを活用したと仮定します。

株式の希薄化を最小限に抑えながら大規模な成長投資を実行した結果、3 年後には売上高100 億円企業へと成長し、企業価値は5 倍以上に向上しました。最終的には新規上場(IPO)を果たし、メザニンファイナンスの投資家も高いリターンを得ることに成功したという想定です。

【製造業の事業転換事例】

老舗の製造業がデジタル技術を活用した新事業モデルへの転換を図る典型的なケースとして、大規模な設備投資と研究開発資金が必要となる場合を考えてみましょう。この仮想企業は、銀行融資15 億円に加え、15 億円のメザニンファイナンス(劣後ローンと転換社債の組み合わせ)を調達したと仮定します。

メザニンファイナンスの据置期間を活用することで、新事業が軌道に乗るまでの資金繰りの余裕を確保し、事業転換を成功させました。その結果、従来の低収益体質から脱却し、高収益企業への変身を遂げたことで、企業価値は大幅に向上したというシナリオです。

これらはあくまでも典型的な成功パターンを示したモデルケースですが、メザニンファイナンスの柔軟性を活かして、通常の借入や株式発行だけでは実現が難しい大規模な成長投資を可能にしている点が共通しています。投資成果が企業価値の向上として結実することで、企業と資金提供者の双方がWin-Win の関係を構築できることを示しています。

メザニンファイナンス活用法④|柔軟性とリスク分散

企業経営において資金調達の柔軟性とリスク分散は重要な課題です。特に中小企業では、環境変化に対応できる柔軟な財務戦略が求められます。メザニンファイナンスはこれらの課題解決に大きく貢献します。 

返済条件の柔軟性を活かした調達計画 

メザニンファイナンスの最大の特徴は返済条件の柔軟性です。通常の銀行融資と比較して、企業の事情に合わせた多様な返済条件の設計が可能です。 

主な柔軟性としては次の点が挙げられます。

  • 返済スケジュールの柔軟設計:据置期間の設定やバルーンペイメント方式(最終返済時に残額を一括返済)を採用することで、初期の資金繰り負担を軽減できます。
  • 金利設定の多様性:固定金利、変動金利に加え、業績連動型の金利設定も可能です。業績連動型では好調時に高い金利を支払い、不振時には金利負担を抑える設計ができます。
  • 元本償還方法の選択肢:一括返済、分割返済のほか、株式への転換権付与など、企業と投資家双方にとって有利な条件を設計できます。 

例えば、成長投資の回収に時間がかかるプロジェクトでは、3年間の据置期間を設け、その後7年間で段階的に返済額を増やしていく設計にすることで、成長に合わせた返済計画が可能になります。 

多様な資金調達手段としての位置づけ 

企業の資金調達戦略において、メザニンファイナンスは重要な選択肢の一つとして位置づけられます。様々な資金調達手段を組み合わせることで、リスク分散や資金調達の安定性を高めることができます。 

メザニンファイナンスのポートフォリオにおける位置づけとして:

  • 資金調達手段の多様化によるリスク分散:銀行融資のみへの依存を避け、金融環境の変化に対する耐性を高めます。
  • 投資家層の拡大:通常の融資より高いリターンを求める投資家や、株式ほどのリスクは取りたくない投資家へのアプローチが可能になります 
  • 資金調達の交渉力向上:複数の調達手段を持つことで、それぞれの交渉でより有利な条件を引き出せる可能性が高まります  
  • 将来の資金調達にも良い影響:メザニンファイナンスによる財務基盤強化が、その後の銀行融資条件改善につながります 

実際には、シニアローン60%、メザニンファイナンス20%、エクイティ20%といった資金調達ポートフォリオを構築することで、リスクと資金コストのバランスを取りつつ、必要な資金を確保することが可能になります。 

M&A後の統合プロセスにおける役割 

M&A成立後の統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)では、しばしば想定外の資金需要が発生します。この段階でメザニンファイナンスを活用することで、統合プロセスを円滑に進めることができます。 

M&A後の統合プロセスにおけるメザニンファイナンスの主な役割は下記の通りです。 

  • シナジー実現までの資金需要カバー:シナジー効果は即座に現れるものではなく、実現までに追加投資が必要な場合が多くあります  
  • 買収後に発見された追加費用への対応:デューデリジェンスでは見つけられなかった問題や追加投資の必要性に対して、機動的な資金調達手段となります  
  • 不採算事業の再構築や撤退にかかる費用:買収後の事業再構築に必要な費用を、柔軟な返済条件で調達できます  
  • PMIの円滑化:十分な資金的余裕があることで、統合プロセスを急ぐ必要がなく、慎重かつ効果的な統合が可能になります 

例えば、製造業のM&Aでは買収後に設備統合コストが予想を上回ることがありますが、メザニンファイナンスを活用することで柔軟に追加資金を調達し、計画的な統合を進めることができます。 

このようにメザニンファイナンスは、資金調達の柔軟性とリスク分散を通じて、企業の戦略的な財務管理や円滑なM&A実行を支援する重要なツールとなります。 

メザニンファイナンス活用法⑤|資金ギャップの解消

中小企業が直面する「資金ギャップ」。銀行融資だけでは調達できない資金や、株式発行を避けたい場合に生じる資金不足。メザニンファイナンスはこの課題を効果的に解決します。 

従来の融資だけでは足りない場面での活用 

中小企業が成長を目指す際、従来の銀行融資だけでは十分な資金を調達できないケースがよくあります。その主な理由は以下の通りです。 

  • 担保不足:十分な担保資産を持たないことが多い  
  • 信用力の制約:財務基盤が脆弱で、銀行の審査基準を満たせない  
  • 成長フェーズのリスク:急成長期には収益とリスクのバランスが不安定  
  • 大型投資の必要性:設備投資やM&Aなど、一時的に大きな資金が必要 

メザニンファイナンスは、こうした状況で融資と株式発行の間のギャップを埋める役割を果たします。企業の成長ポテンシャルに注目する投資家からの資金調達を可能にし、銀行融資の限界を超える資金調達を実現するのです。 

中小企業特有の資金調達課題の解決法 

中小企業特有の資金調達課題に対して、メザニンファイナンスは以下のような解決策を提供します。 

  • オーナーシップの維持: 優先株式(議決権なし)や劣後ローンなどを活用することで、経営権を維持したまま資金調達が可能です。
  • 財務指標の改善: 一部のメザニンファイナンスは金融機関の審査において自己資本とみなされることがあり、財務指標の改善に寄与します。
  • 柔軟な返済条件: 据置期間の設定や業績連動型の返済などの柔軟な条件設定により、成長投資を優先しながら無理のない返済計画を立てられます。 

資金ギャップ解消に成功した事例 

以下は、メザニンファイナンスによる資金調達の仕組みを説明するための仮想的な事例であり、実在の企業の事例ではありません。

【事例:製造業の設備投資】

年商20億円の金属加工業A社が、6億円の設備投資を計画したケースを想定してみましょう。銀行融資は3億円が限度でしたが、以下の資金構成でギャップを解消したと仮定します。

  • 自己資金:1 億円
  • 銀行融資:3 億円
  • 劣後ローン:2 億円(7 年返済、最初の2 年間は利息のみ)

この資金調達により、設備投資から3年後には年商が30億円に拡大。メザニンファイナンスが企業成長の推進力となったという想定です。この架空の事例が示すように、メザニンファイナンスは、中小企業が直面する資金ギャップを効果的に解消し、成長戦略を確実に実行するための強力なツールです。従来の融資では対応できない資金ニーズにも柔軟に対応できる点が大きな魅力といえるでしょう。

メザニンファイナンスの調達方法と注意点

メザニンファイナンスを調達するためには専門知識と戦略的アプローチが必要です。ここでは調達方法と注意点について解説します。 

主要な資金提供者と調達先の選び方 

メザニンファイナンスの主な提供者には以下のような機関があります。 

  • メザニン専門ファンド:メザニンファイナンスに特化した投資を行い、豊富な経験と専門知識を持つ  
  • プライベートエクイティファンド:企業の買収や成長支援を行うファンドで、メザニン投資も行う  
  • 事業会社のCVC:事業シナジーを重視した投資を行う企業系のファンド  
  • 政府系金融機関:日本政策投資銀行(DBJ)などが中小企業向けメザニンファイナンスを提供  
  • 機関投資家:生命保険会社や年金基金などが長期運用として参画するケース 

調達先選びでは、単なる資金提供だけでなく、業界知識やネットワークなどの付加価値も考慮することが重要です。自社の事業特性や成長戦略に合った資金提供者を選ぶことで、戦略的パートナーシップを構築できます。 

複数の資金提供者に打診し、条件を比較検討することが望ましいでしょう。そのためには、自社の事業計画や資金需要を明確にし、魅力的な投資案件として提示できる準備が必要です。 

中小企業向け調達の相場とコスト構造 

メザニンファイナンスのコストは、シニアローンより高く、エクイティより低い水準に設定されるのが一般的です。 

  • 劣後ローンの金利相場:年間5~15%程度  
  • 優先株式の配当利回り:年間5~10%程度  
  • 中小企業向け調達規模:数千万円~数十億円が中心  
  • 付随コスト:アレンジメントフィー、モニタリングフィーなど(調達額の1~3%程度) 
  • 返済期間:通常3~10年程度、事業計画に合わせた据置期間設定も可能 

これらのコストは一見高く感じられるかもしれませんが、経営権維持や資金調達の柔軟性といったメリットと比較考量することが重要です。また、業績向上に伴い、将来的により有利な条件での借り換えも視野に入れた戦略的な判断が求められます。 

コベナンツや担保条件の交渉ポイント 

メザニンファイナンスでは資金提供者のリスク管理のために様々な条件が設定されます。特にコベナンツ(誓約条項)は重要な交渉ポイントです。 

主なコベナンツ項目:  

  • 財務制限条項:自己資本比率や有利子負債比率などの財務指標の維持を求める条項  
  • 配当制限:株主への配当を制限する条項  
  • 追加借入制限:新たな借入を行う際の制限や事前承認を求める条項  
  • 資産処分制限:重要資産の売却に関する制限
  • 情報開示義務:定期的な財務情報等の提供を義務付ける条項 

これらのコベナンツは企業の経営自由度を制限する要因となるため、以下のポイントを押さえた交渉が重要です。 

  • 財務指標の基準値:現実的に達成可能な水準に設定する  
  • 抵触時の猶予期間:一時的な業績悪化時の猶予期間を確保する  
  • 段階的な条件:業績向上に応じてコベナンツが緩和される仕組みを導入する  
  • 業種特性への配慮:業界平均や事業特性に合わせた指標設定を交渉する 

担保条件については、メザニンファイナンスは無担保で提供されることも少なくありませんが 、案件によっては一定の担保設定(例:第二順位担保)を求められるケースもあります。メザニンファイナンスはシニアローンほど厳格な担保を要求されないことが多く、これも重要な交渉ポイントとなります。 

資金コストと経営自由度のバランス確保 

メザニンファイナンスを活用する際の重要な課題は、資金コストと経営自由度のバランスをいかに確保するかという点です。一般的に、この両者はトレードオフの関係にあります。 

資金コストを抑えようとすると、資金提供者はリスク管理のために厳しいコベナンツを要求し、経営の自由度が制限される傾向があります。逆に、経営自由度を高く保ちたい場合は、より高いコストを受け入れる必要があるでしょう。 

このバランスを適切に確保するためには、自社の成長戦略に照らして必要な経営自由度を明確にし、中長期的な企業価値向上の観点から判断することが重要です。また、他の資金調達手段との組み合わせで全体最適を図ることも検討すべきでしょう。 

審査を通過するための準備と対策 

メザニンファイナンスの審査は通常の銀行融資よりも厳格な評価が行われます。審査を通過するための準備として以下の点を重視しましょう。 

  • 説得力ある事業計画の策定:特に返済原資がどのように生み出されるかを具体的に説明
  •  将来の収益予測:過去の実績だけでなく、将来の市場環境や競合状況を踏まえた現実的な予測  
  • 資金使途の明確化:調達資金の使用目的とそのリターンを明確に提示  
  • 経営陣の能力・実績アピール:経営陣のバックグラウンドや過去の成功事例を提示  
  • 業界動向や競合分析:自社が属する業界の成長性や競合他社との差別化ポイントの説明 

こうした準備を効果的に進めるには、M&Aアドバイザーや財務コンサルタントなどの専門家のサポートを受けることも検討すべきでしょう。また、複数の資金提供者にアプローチし、比較検討することで交渉力向上が図れます。 

まとめ|メザニンファイナンスを活用してM&Aを成功させよう

メザニンファイナンスは、デットとエクイティの中間に位置する資金調達手法で、中小企業のM&A事業承継において大きなメリットがあります。特に経営権を維持しながら資金調達ができる点が強みです。種類には劣後ローン、優先株式、転換社債型新株予約権付社債などがあり、企業の状況に応じて選択できます。活用シーンとしては、買収資金の調達、事業承継における株式買取資金、成長戦略のための投資資金、資金ギャップの解消などが挙げられます。

資金コストと経営自由度のバランスを考慮し、専門家のサポートを受けながら綿密な計画を立てることで、メザニンファイナンスを戦略的に活用し、M&Aを成功させることができるでしょう。 M&Aや経営課題に関するお悩みはM&Aロイヤルアドバイザリーへご相談ください。

CONTACT

お問い合わせ

Feel free to contact us.

当社は完全成功報酬ですので、
ご相談は無料です。
M&Aが最善の選択である場合のみ
ご提案させていただきますので、
お気軽にご連絡ください。

無料
お気軽にご相談ください
phone
03-6269-3040
受付:平日 9:00~18:00
icon 無料相談フォーム
icon
トップへ戻る

M&Aロイヤルアドバイザリーは、
一般社団法人 M&A支援機関協会の正会員です。