クロスセルとは?メリットや事例から学ぶ成功のためのテクニック

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企業が売上を拡大する方法は数多く存在しますが、既存顧客への効果的なアプローチとして注目されているのが「クロスセル」です。新規顧客の獲得には多大なコストがかかる一方、すでに関係性のある顧客へ関連商品を提案するクロスセルは、費用対効果に優れた営業手法として多くの企業で実践されています。しかし、誤った方法で実施すると顧客離れを招くリスクもあります。

本記事では、クロスセルの基本的な意味から具体的なメリット、成功事例、実践的なテクニックまで解説します。顧客単価の向上と長期的な関係構築を両立させるクロスセルの全体像を把握し、自社のビジネスに活用するヒントを見つけてください。

クロスセルとは?意味などをわかりやすく解説

この項では、クロスセルの意味や似た言葉との違い、注目される背景について述べます。

クロスセルの定義

クロスセルとは、顧客が購入しようとしている商品やすでに購入した商品に関連する別の商品を提案し、追加購入を促す営業手法です。この手法の目的は、一人の顧客から得られる売上を増やすことにあります。

例えば、スマートフォンを購入する顧客に保護ケースや画面フィルムを提案したり、ハンバーガーを注文した顧客にポテトやドリンクをセットで勧めたりするのがクロスセルの典型的な例です。顧客が必要としている商品の周辺にある商品を提案することで、購買体験を充実させながら売上を増やせます。

クロスセルの成功率は7~10%ほどですが、企業の営業力やマーケティング施策が優れていたり、商品やサービスの相性が非常に良い場合だったりすると、成功率が20%程度にまで達することもあります。顧客はすでに企業やブランドに対して一定の信頼を持っているため、関連商品の提案も受け入れやすい状態にあるのです。

アップセルとの違い

クロスセルと混同されやすい概念に「アップセル」があります。両者は顧客単価を向上させる点では共通していますが、提案する商品の性質が異なります。

アップセルは、顧客が検討している商品よりも上位モデルや高価格帯の商品を提案する手法です。例えば、通常モデルのパソコンを検討している顧客に対して、より高性能なハイスペックモデルを勧めるのがアップセルにあたります。顧客が求めている価値をより高いレベルで満たす商品への置き換えを促します。

一方、クロスセルは商品そのものを置き換えるのではなく、追加的な商品を提案します。パソコン本体に加えて、マウスやプリンター、セキュリティソフトなどの関連商品を勧めるのがクロスセルです。顧客のニーズを横方向に広げることで、より充実した購買体験を提供します。

項目クロスセルアップセル
提案内容関連商品・補完商品上位モデル・高価格商品
目的顧客ニーズを広げる顧客ニーズをより高度に満たす
具体例スマホ購入時にケースを提案通常スマホからハイエンド機種を提案
アプローチ購買体験の充実化商品価値の向上

いずれの手法も、顧客にとって価値のある提案であることが重要です。単に売上を増やすためだけの提案は、顧客の不信感を招く可能性があります。

注目される背景

近年、クロスセルが多くの企業で重視されるようになった背景には、新規顧客獲得コストの上昇があります。広告費の高騰や市場の成熟化により、新しい顧客を獲得するためのコストは年々増加しています。

一般的に、新規顧客の獲得コストは既存顧客への販売コストの5倍以上とされています。既存顧客は企業との取引実績があり、商品やサービスの品質を理解しているため、追加購入のハードルが低い傾向にあります。

また、顧客生涯価値(LTV)を最大化する経営戦略の重要性が認識されるようになったことも、クロスセルが注目される理由です。一度の取引で関係を終わらせるのではなく、長期的な関係を構築し、継続的に購入してもらうことが企業の持続的成長につながります。クロスセルは、このLTVを高める手段として位置づけられています。

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    クロスセルのメリット

    クロスセルを効果的に実践することで、企業は複数の重要なメリットを得ることができます。単なる売上増加だけでなく、顧客との関係性強化や営業効率の向上など、多面的な効果が期待できます。

    顧客単価と生涯価値の向上

    クロスセルの最も直接的なメリットは、顧客一人あたりの購入金額、すなわち顧客単価を向上させることです。一度の購買機会で複数の商品を購入してもらうことで、取引あたりの売上が増加します。

    顧客単価の向上は、LTVの増加に直結します。LTVは「購入単価×購入回数×継続期間」で算出されるため、1回あたりの購入金額が増えれば、その顧客から得られる総売上も増加します。

    例えば、月額5,000円のサービスを利用している顧客に、関連する月額2,000円のオプションサービスをクロスセルできれば、月額7,000円となります。この顧客が3年間継続利用すると仮定した場合、LTVは18万円から25.2万円へと7.2万円増加します。

    このように、クロスセルは短期的な売上増加だけでなく、長期的な収益基盤の強化にも貢献します。特に中小企業にとって、限られた顧客基盤から最大の価値を引き出すことは経営の安定化に重要です。

    顧客満足度とリピート率の向上

    適切なクロスセルは、顧客満足度を高める効果があります。顧客が気づいていなかったニーズを満たす商品を提案することで、より充実した購買体験を提供できるからです。

    例えば、デジタルカメラを購入した顧客に、予備バッテリーやメモリーカードを提案することで、旅行先でバッテリー切れやメモリー不足に悩まされることを防げます。顧客は「提案してもらって良かった」と感じ、企業に対する信頼が深まります。

    満足度の高い顧客は、リピーターとなる可能性が高く、口コミによる新規顧客の紹介も期待できます。

    また、クロスセルによって顧客の利便性が向上すれば、他社への乗り換えを防ぐ効果もあります。複数の商品やサービスを同一企業から購入している顧客は、切り替えコストが高くなるため、継続利用する傾向が強まるのです。

    営業効率とコスト効率の改善

    クロスセルは営業活動の効率を高める効果もあります。既存顧客へのアプローチは、新規顧客の開拓と比べて時間とコストを大幅に削減できます。

    新規顧客に対しては、まず企業や商品の認知を得ることから始めなければなりません。興味を持ってもらい、信頼を構築し、最終的に購買決定に至るまでには多くのステップが必要です。一方、既存顧客はすでにこれらのステップをクリアしているため、商品提案から購入までのプロセスが短縮されます。

    また、1度の接客や商談で複数の商品を提案できるため、営業担当者の生産性も向上します。訪問営業の場合、移動時間や商談の準備時間を考慮すると、1回の訪問で複数商品を成約できることの効率性は高いと言えます。

    さらに、クロスセルは広告宣伝費の削減にもつながります。既存顧客との接点を活用して商品提案ができるため、追加の広告費をかけずに売上を伸ばせる可能性があります。メールマガジンや会員向けサイト、購入後のフォローコールなど、既存の顧客接点を活用することで、低コストでのクロスセルが実現できます。

    クロスセル実施時の注意点

    クロスセルには多くのメリットがある一方で、誤った実施方法は顧客との関係を損なうリスクも含んでいます。短期的な売上を追求するあまり、長期的な顧客関係を犠牲にしないよう注意が必要です。

    押し売りと受け取られるリスク

    クロスセルが失敗する最大の要因は、顧客に「押し売り」と受け取られてしまう可能性があることです。顧客のニーズや購買意欲を無視した一方的な提案は、不快感や不信感を生み出します。

    特に、顧客が明確に断っているにもかかわらず繰り返し提案したり、顧客の予算や状況を考慮せずに高額な商品を勧めたりすると、企業イメージの低下につながります。

    例えば、低価格帯の商品を探している顧客に高額な関連商品を強く勧めることは逆効果です。顧客の購買意図や予算感を理解せずに提案することで、「この企業は自分のことを理解していない」「売上のことしか考えていない」という印象を与えてしまいます。

    また、タイミングも重要です。商品選定の初期段階で関連商品を次々と提案されると、顧客は圧倒され、購買意欲が低下する可能性があります。顧客が主要商品の購入を決定した後、または購入後のタイミングで自然に提案することが効果的です。

    顧客離れと信頼低下の可能性

    不適切なクロスセルは、顧客離れの原因となります。一度失った信頼を取り戻すことは非常に困難であり、長期的な収益損失につながります。

    特に注意すべきなのは、顧客のニーズに合わない商品を提案してしまうケースです。例えば、すでに同様の商品を所有している顧客に対して重複する商品を勧めたり、顧客の使用環境や目的に適さない商品を提案したりすると、「この企業は私の状況を把握していない」と感じさせてしまいます。

    また、クロスセルした商品の品質が期待以下だった場合、顧客満足度は大きく低下します。主要商品に満足していても、追加購入した関連商品の品質が低ければ、企業全体への評価が下がってしまうのです。

    営業担当者の教育不足も問題となります。商品知識が不十分な状態でクロスセルを行うと、顧客の質問に適切に答えられず、不信感を招きます。クロスセルを実施する際は、営業担当者が関連商品についても十分な知識を持っていることが前提となります。

    クロスセルの成功事例

    クロスセルを効果的に実践している企業の事例から、成功のポイントを学ぶことができます。業種や規模が異なる企業でも、顧客理解と適切なタイミングという共通のポイントが見られます。

    Amazonのデータ活用型クロスセル

    ECサイトの代表格であるAmazonは、クロスセルの成功事例として頻繁に取り上げられます。同社の「この商品を買った人はこんな商品も買っています」や「よく一緒に購入されている商品」といった機能は、クロスセルの典型例です。

    Amazonの強みは、膨大な顧客データと購買履歴を分析し、顧客一人ひとりに最適な関連商品を自動的に提案できる点にあります。例えば、特定のカメラを購入した顧客には、そのカメラに適したレンズや三脚、メモリーカードなどが自動的に表示されます。

    このようなアプローチにより、顧客は自分で関連商品を探す手間が省け、購買体験が向上します。同時に、Amazonは効率的に売上を拡大できます。

    さらに、Amazonはクロスセルとアップセルを巧みに組み合わせています。商品ページには上位モデルの提案(アップセル)と関連商品の提案(クロスセル)が同時に表示され、顧客に複数の選択肢を提供しています。この包括的なアプローチが、高い顧客単価の実現につながっています。

    マクドナルドのセット販売戦略

    飲食業界におけるクロスセルの代表例が、マクドナルドのセット販売です。「ポテトとドリンクもご一緒にいかがですか」という提案は、クロスセルの基本形として多くの企業が参考にしています。

    マクドナルドのセット販売が成功している理由は、顧客にとってのお得感と利便性にあります。単品で購入するよりも割安な価格設定により、顧客は「お得に購入できた」と感じます。同時に、マクドナルド側は客単価を引き上げることができます。

    また、レジでの提案というタイミングも効果的です。顧客がメインのハンバーガーを注文し、購買意欲が高まっている状態で関連商品を提案することで、受け入れられやすくなります。スタッフの提案も「いかがですか」という柔軟な表現であり、強制的な印象を与えません。

    さらに、セットメニューという形で標準化することで、営業担当者(店舗スタッフ)のスキルに依存せず、一定品質のクロスセルを実現しています。どの店舗でも同様の提案ができる仕組みが、全社的な売上向上につながっています。

    大塚商会のソリューション型クロスセル

    BtoB分野でのクロスセル成功事例として、大塚商会の取り組みが挙げられます。同社はオフィス機器やITシステムの販売において、顧客の課題解決を軸としたクロスセルを展開しています。

    例えば、セキュリティ対策のニーズを持つ企業に対して、ウイルス対策ソフトだけでなく、ファイアウォール機器、バックアップシステム、従業員向けセキュリティ教育サービスなど、包括的なソリューションを提案します。単一商品の販売ではなく、顧客の課題を総合的に解決する提案が特徴です。

    この手法が成功している背景には、顧客企業との深い関係性があります。定期的な訪問や相談対応を通じて顧客の状況を把握し、潜在的なニーズを発掘しています。顧客理解に基づく提案であるため、受け入れられやすく、高い成約率を実現しています。

    また、導入後のサポート体制が充実していることも重要です。クロスセルした商品やサービスについても継続的なフォローを行うことで、顧客満足度を維持し、さらなるクロスセル機会を創出しています。

    クロスセル成功のためのテクニック

    クロスセルを効果的に実施するためには、具体的な方法と実践的なテクニックが必要です。顧客理解から提案のタイミング、コミュニケーション方法まで、総合的なアプローチが求められます。

    顧客データの収集と部門間共有

    効果的なクロスセルの出発点は、詳細な顧客情報の収集と活用にあります。顧客の購買履歴、問い合わせ内容、利用状況、フィードバックなど、あらゆる接点から得られる情報を体系的に蓄積することが重要です。

    特に重要なのは、これらの情報を営業部門だけでなく、カスタマーサポート、マーケティング、商品開発など、複数の部門で共有することです。顧客との接点は多岐にわたるため、各部門が持つ情報を統合することで、より正確な顧客理解が可能になります。

    CRM(顧客関係管理)システムの導入は、この情報共有を効率化する有効な手段です。顧客ごとに購入履歴、サポート履歴、連絡履歴などを一元管理することで、どの担当者でも顧客の状況を把握し、適切なクロスセルを提案できます。

    また、定期的なデータ分析も欠かせません。どの商品の組み合わせが購入されやすいか、どのタイミングでのクロスセルが成功しやすいかなど、データから傾向を見出すことで、提案の精度を高められます。

    最適な提案タイミングの見極め

    クロスセルの成功は、提案するタイミングに大きく左右されます。顧客の購買心理や状況を理解し、最も受け入れられやすいタイミングを選ぶことが重要です。

    効果的なタイミングの一つは、顧客が主要商品の購入を決定した直後です。購買意欲が高まっており、関連商品の提案にも前向きに耳を傾けやすい状態にあります。

    Webサイトであれば、商品をカートに入れた後やチェックアウトページで関連商品を提案するのが効果的です。実店舗であれば、レジでの会計時や商品の説明をしている最中に自然な流れで提案できます。

    また、購入後のフォローアップもクロスセルの好機です。商品を使用し始めてしばらく経過した頃に、使用状況を確認する連絡をすると同時に、消耗品や追加アクセサリーを提案することができます。顧客が商品の価値を実感している段階であれば、関連商品への関心も高まっています。

    定期購買や契約更新のタイミングも重要です。継続利用を決定した顧客は、企業やサービスに満足している状態であり、オプションサービスや上位プランへの変更提案を受け入れやすくなります。

    自然な提案手法

    クロスセルで避けるべき行動は、強引な営業姿勢です。短期的な売上を優先するあまり、顧客の意向を無視した提案をすると、長期的な関係性を損なってしまいます。

    効果的なクロスセルは、顧客にとって「提案してもらって良かった」と感じられるものでなければなりません。そのためには、顧客の状況やニーズを丁寧にヒアリングし、本当に役立つ商品だけを提案する姿勢が重要です。

    提案の際は、選択肢を残すことも大切です。「必ず購入してください」ではなく、「こういった商品もございますが、いかがでしょうか」という柔軟な表現を使うことで、顧客に圧力を感じさせません。顧客が断った場合は、それを尊重し、無理に説得しようとしないことが信頼関係の維持につながります。

    また、クロスセルを断られた場合でも、将来の購買機会につながる場合があります。「もし今後必要になりましたら、いつでもご連絡ください」と伝えることで、顧客は安心感を持ち、実際に必要になった際に思い出してくれる可能性が高まります。

    効果的なメリットの伝え方

    クロスセルの提案では、商品の機能説明だけでなく、顧客にとっての具体的なメリットを明確に伝えることが重要です。顧客は商品そのものではなく、その商品がもたらす価値に対してお金を払います。

    例えば、パソコンと一緒にセキュリティソフトを提案する場合、「このソフトはウイルスを検出します」という機能説明ではなく、「このソフトを導入することで、大切なデータを守り、安心してインターネットを利用できます」というメリットを伝えます。

    具体的な使用シーンを示すことも効果的です。「旅行先でバッテリーが切れて大切な瞬間を撮影できなかった、という経験をされたお客様が多いので、予備バッテリーをお勧めしています」といった説明は、顧客が自分の状況に重ね合わせやすく、必要性を実感しやすくなります。

    また、他の顧客の成功事例や満足の声を紹介することも説得力を高めます。「多くのお客様がこの組み合わせで購入され、非常に便利だったとおっしゃっています」という情報は、社会的証明として機能し、購買決定の後押しになります。

    M&Aにおいても、企業価値を高めるためには顧客単価の向上や効率的な営業手法の確立が重要な評価ポイントとなります。クロスセルの仕組みを構築し、安定的な収益基盤を持つ企業は買い手から評価されます。

    まとめ

    クロスセルは、既存顧客への関連商品提案を通じて顧客単価を向上させる効果的な営業手法です。新規顧客獲得と比較して費用対効果が高く、顧客生涯価値の向上にも直結するため、多くの企業が重視しています。

    成功のカギは、顧客理解に基づいた適切なタイミングでの提案と、押し売りにならない自然なコミュニケーションにあります。Amazonやマクドナルドなどの成功事例からも分かるように、顧客データの活用、タイミングの見極め、顧客ベネフィットの明確な提示が重要です。

    一方で、不適切なクロスセルは顧客の不信感を招き、長期的な関係性を損なうリスクもあります。短期的な売上追求ではなく、顧客満足度の向上を第一に考え、顧客にとって価値のある提案を心がけることが、持続的な売上拡大につながります。本記事で紹介したテクニックを実践し、自社のビジネスに合ったクロスセル戦略を構築しましょう。事業の売却や成長戦略をお考えの経営者の方は、ぜひ専門家にご相談ください。

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