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「厚生年金とはそもそもどんな制度なのか?」と疑問を抱いている方は多いのではないでしょうか。
名前は知っていても、仕組みや加入条件、老後にどれくらい受け取れるのかは意外とわかりにくく、不安を感じてしまうこともあります。しかし、厚生年金とはどういう制度かを理解しないままにしておくと、将来の備えが不十分になる可能性も否定できません。
本記事では、厚生年金とはどういうものか、その基本的な仕組みから受給までの流れなどを整理して解説し、しっかり理解できるよう分かりやすくまとめています。
目次
まず、厚生年金の基礎的な情報を紹介します。
厚生年金は、企業に勤める人や公務員など、給与を得て働く人が加入する公的年金制度です。
社会保険の一部として位置付けられ、老後の生活資金を支えるだけでなく、病気やケガで働けなくなったとき、または家計を支える人が亡くなったときにも給付を受けられるなど、人生のリスクに備える重要な役割を果たします。
必要な加入期間を満たした場合、原則65歳から老齢厚生年金として支給が始まり、その後は生涯にわたって受け取れます。
厚生年金は、国民年金の上に重ねて支給される「2階部分」の年金制度です。日本の公的年金は、全国民が加入する国民年金(基礎年金)を土台に、その上に職業によって異なる年金制度が設けられています。
厚生年金に加入している人は、自動的に国民年金の第2号被保険者となり、基礎年金の受給資格も同時に得られます。
公的年金の構造は1階建てと2階建てに例えられ、1階部分にあたるものが国民年金、2階部分に相当するものが厚生年金や国民年金基金です。会社員や公務員は第2号被保険者、扶養されている配偶者は第3号被保険者、自営業者などは第1号被保険者と分類され、それぞれ加入する制度が異なります。
厚生年金は、基礎年金だけでは不足しがちな老後の生活費を補う制度として、厚生年金は大きな役割を担っています。
日本の公的年金制度は、大きく「国民年金」と「厚生年金」の二本柱で成り立っています。
国民年金は、20歳から60歳までの全国民が加入する基礎的な制度で、老後に受け取る老齢基礎年金の元になります。年金額は加入期間に応じて決まり、仕組みとしては最も共通性の高い制度です。
対して厚生年金は、企業や官公庁に勤めて給与を得ている人を対象とした制度です。加入の扱いは勤務先ごとに管理され、一定の条件を満たす従業員が自動的に加入します。
国民年金が個人単位で運用されるのに対し、厚生年金は「雇用されて働く」という働き方を前提とした制度である点が両者を分ける大きな特徴です。
厚生年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、いずれも公的年金に上乗せして老後の資金を備えるための私的年金制度です。しかし、仕組みや目的には大きな違いがあります。
かつて存在した厚生年金基金は、企業が従業員のために運営していた制度で、国が行う老齢厚生年金の一部(報酬比例部分)の支給を基金側が代わりに実施し、その上で独自の上乗せ給付を行う点が特徴でした。ただし、制度維持の難しさなどを背景に、2014年の制度改正以降は厚生年金基金の新設が認められていません。多くの基金は解散または確定給付企業年金への移行が進められており、現在はほとんど見られなくなっています。
一方、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人が自ら積立額と運用方法を選択し、将来の受取額が運用成果で決まる制度です。国民年金だけでは将来が不安な自営業者やフリーランス、第3号被保険者が加入できる他、厚生年金に加入している会社員や公務員も上限額の範囲内で利用できます。掛金は全額所得控除の対象となるため節税効果が高く、老後資金を自分で計画的に増やしたい人に向いています。
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厚生年金の種類は、次のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
老齢厚生年金は、厚生年金に加入していた人が一定の資格期間を満たした上で、原則65歳から受給できる年金です。
企業に勤めていた期間の給与や賞与が「標準報酬」として記録され、その金額と加入年数を基に将来の受給額が算出されます。老齢基礎年金の上に加算される形で支給されるため、いわば老後の生活を支える年金の主柱となる存在です。
また、老齢厚生年金には、働き続けながら受け取る場合の「在職老齢年金」など、受給時の状況によって計算方法が変わる仕組みも設けられています。現役時代の収入が反映されるため、収入水準が高かった人や加入期間が長かった人ほど支給額が大きくなります。
障害厚生年金は、厚生年金に加入している期間中に病気やけがが原因で一定の障害状態になった場合に支給される年金です。
加入者が働けなくなるリスクに備えるための制度で、障害の程度に応じて1級・2級・3級に区分され、それぞれで支給額や扱いが異なります。特に3級や障害手当金が設けられている点は、厚生年金特有の仕組みです。
障害の原因となった初診日が厚生年金の被保険者期間であることが条件で、この日を基準に審査が行われます。また、支給後も障害状態に変化がある場合は、等級の見直しや支給額の変更が行われることもあります。
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人、または加入期間中の人が亡くなった場合に、遺族の生活を支えるために支給される年金です。
対象となる遺族は、配偶者や子どもを中心に、一定の条件を満たすことで受給できます。特に、18歳到達年度末までの子どもがいる配偶者は優先的に対象となり、家計を支える人を失った家庭の生活費を補う役割があります。
支給額は、亡くなった人の厚生年金加入期間や給与・賞与の記録に基づいて算出されます。年金額の計算方法は老齢厚生年金と共通する部分が多く、亡くなった人がどのような働き方をしていたかが反映される点が特徴です。また、配偶者の年齢や子どもの有無によって支給期間が異なる場合があり、生涯にわたって受け取れるケースと一定期間に限られるケースがあります。
厚生年金に加入する条件は、次のとおりです。
それぞれをわかりやすく解説します。
厚生年金の加入対象となるのは、基本的に企業に雇われて働く人々です。
正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイトといった雇用形態に関係なく、一定の条件(例えば、所定の労働時間や賃金の水準)を満たす場合には、雇われて働く以上は厚生年金の制度に加入することが求められます。具体的には、パートやアルバイトの場合、通常は週の所定労働時間が20時間以上で、一定の賃金水準を満たす必要があります。雇用契約が成立した段階で加入資格が発生しますが、実際の手続きは通常、雇用主が行います。そのため、従業員本人が別途手続きをする必要はありません。
公務員についても、任用された時点で自動的に厚生年金の対象となります。かつては国家公務員や地方公務員で異なる制度が運用されていましたが、制度統合により民間企業と同じ厚生年金の仕組みが適用されるようになりました。このような取り扱いは、雇われて働く人々の社会保障を一体的に整えるという目的に基づいています。
厚生年金に加入できるかどうかは、働く職場が制度の対象である「適用事業所」と認められているかにもよります。
適用事業所には2種類あります。まず強制適用事業所は、法律上、厚生年金の導入が必須とされる事業所です。株式会社などの法人の他、一定数以上の従業員を抱える個人事業所もこの区分に含まれます。また、2022年10月からは法律や会計を扱う士業事務所も条件を満たせば強制適用に加わりました。
一方で、従業員数が少ないなど強制適用の基準に該当しない事業所は、任意適用事業所として制度の導入が可能です。導入には、働く人の過半数の賛成と事業主からの申請が必要で、認可を受ければ厚生年金を適用できます。働く企業がどちらの区分に該当するかが、加入の可否を左右します。
厚生年金の加入対象となるには、年齢が70歳未満であることも基本条件です。
厚生年金は現役として働く世代の保障を目的にした制度であるため、一定の年齢に達すると新たに加入できません。就職や転職のタイミングで70歳未満であれば、雇用形態や勤務先の状況に応じて厚生年金が適用されます。
ただし、例外として、過去の加入期間が不足して年金を受け取れない場合には、70歳以上であっても不足分を補うために加入が認められることがあります。また、国籍を問わず同じ基準が適用されるため、外国人労働者であっても条件に該当すれば厚生年金に加入します。
働き方によってはパートやアルバイトも厚生年金に加入しなければならない場合があります。パートやアルバイトが加入対象になる条件は、次のとおりです。
これらの条件を全て満たした場合、雇用形態にかかわらず厚生年金への加入が義務となります。
厚生年金に加入するメリットは、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
厚生年金は、基礎年金の上に重ねて受け取れる「追加の年金」として設計されており、老後の収入を安定させる役割を担います。
そのため、企業や公的機関に勤めている人は、自営業者など国民年金のみの人よりも受給額が多くなるケースが一般的です。
長期間の加入や高い収入が続くほど受け取れる年金は増え、老後の生活をより手厚く支えてくれる点が大きなメリットといえるでしょう。
厚生年金の大きな利点の一つが、保険料の負担を勤務先と従業員が半分ずつ分担する仕組みであることです。
全額を自分で支払う必要がなく、同じ保障内容でも支払いの負担が大きく軽減されます。会社が半額を負担してくれることで、個人の払い込みだけでは得られない水準の年金を、比較的少ない負担で確保できます。
また、保険料は給与に応じて設定されるため、収入が大きく増えた時期でも個人が全額を負担するわけではありません。無理のないコストで老後の年金を積み立てられる仕組みといえます。
厚生年金は70歳までは加入を続けられるため、定年後も働きながら保険料を納めることで、その分だけ将来受け取る年金額を上乗せできます。現役でいる期間が延びるほど年金の計算に反映されるため、長く働くほど保障が充実する仕組みです。
また、年金の受給を始めた後も就労を続ける場合、収入などが一定範囲におさまっていれば働きながら年金を受け取ることも可能です。
加齢後も働く人が増える時代に合わせ、働きながら年金を増やせる制度が整っている点も厚生年金の大きなメリットといえるでしょう。
次に、厚生年金の扶養制度について解説します。
厚生年金に加入している会社員や公務員は「第2号被保険者」に区分されますが、配偶者が生計を共にし、一定の条件を満たす場合には「第3号被保険者」として扱われます。
第3号被保険者は、自分で保険料を支払わなくても国民年金に加入しているのと同じ扱いとなり、保険料は国が負担する仕組みです。この制度は、働き方や家庭の事情により収入がない、またはわずかな配偶者が不利にならないように設けられています。具体的には、専業主婦(夫)や短時間勤務の配偶者でも年金加入期間を確保できるよう配慮されています。ただし、配偶者が第3号被保険者として認定されるためには、収入が一定の金額(たとえば、年間130万円未満、または月額108,333円未満)であることが求められます。
結果として、第3号被保険者に該当している場合、将来の老齢基礎年金の受給資格や受給額に必要な加入期間が積み上がり、自分で保険料を納めなくても老後の年金がきちんと受け取れるという大きなメリットがあります。このように、第3号被保険者制度は、経済的に負担が少ない配偶者に対しても年金制度の保障を提供する重要な役割を果たしています。
第3号被保険者として認められるのは、「厚生年金に加入している人に扶養されている配偶者」が対象ですが、全ての人が自動的に該当するわけではありません。法律で定められた基準を満たす必要があります。主な条件は次のとおりです。
これらの条件を満たすと、配偶者は保険料を自分で支払うことなく国民年金に加入でき、将来の老齢基礎年金の受給につながります。働き方や収入状況によって該当の判断が変わることがあるため、パート勤務を始める場合や収入が増える見込みがある場合は、事前に確認しておくと安心です。
厚生年金保険料の計算方法について解説します。
厚生年金の保険料は、その人がどれだけの収入を得ているかによって左右されます。毎月の基本給に加え、残業代や役職手当、通勤手当など、税引き前の給与総額が計算の対象です。
さらに、年に数回支払われる賞与も保険料の算定に含まれます。保険料率は令和6年度で18.3%と定められており、この割合を会社と従業員が折半して負担します。
給与や賞与が高いほど保険料負担は増えますが、同時に将来的な厚生年金の受給額が手厚くなるメリットもあります。
厚生年金の保険料は、実際の給与額そのものではなく、「標準報酬月額」と「標準賞与額」という基準に基づいて算定されます。
標準報酬月額とは、税引き前の給与総額(基本給、残業手当、役職手当、通勤手当など)を一定の幅ごとに区切り、1〜32の等級に当てはめたものです。一方、賞与については等級区分は使わず、税引き前の支給額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」を用いて計算します。
この仕組みによって、月ごとの給与に多少の変動があっても保険料が急に上下しにくく、負担額が安定しやすいという特徴があります。一方で賞与は支給のたびに実額で計算するため、都度保険料が発生する点は押さえておくと良いでしょう。
保険料がどのように算出されるのか、実際の数値を使って見てみましょう。
例えば、税引き前の給与が毎月29万円の場合、この金額は「報酬月額29〜31万円」に該当します。したがって、標準報酬月額は19等級の30万円として扱われます。計算は、この30万円に保険料率18.3%を掛けることが基本で、算出される保険料は約5.49万円となります(30万円×0.183=54,900円)。負担は会社と従業員で折半されるため、その半分にあたる約2.745万円(54,900円÷2)を従業員が実際に支払います。
賞与も同様に計算されます。例えば、30万円の賞与が支給された場合、1,000円未満を切り捨てた30万円に保険料率18.3%を掛けるため、約5.49万円(30万円×0.183=54,900円)の保険料が発生します。こちらも会社と従業員で半分ずつ負担します。
ただし、賞与に対する保険料の計算には上限があるため、具体的な金額は賞与の額面や企業の規定によって異なる場合があります。また、保険料率は定期的に見直されることがあるため、最新の情報を確認することが重要です。
厚生年金の切り替え方法について解説します。
国民年金に加入している人が企業で働き始めると、入社と同時に厚生年金へ加入する形に切り替わります。勤務先が社会保険の対象事業所であれば、会社側が「健康保険・厚生年金保険資格取得届」を年金事務所へ提出するため、本人が市区町村で別途手続きを行う必要はありません。
手続きが受理されると、それまで支払っていた国民年金の保険料は自動的に止まり、給与から厚生年金保険料が差し引かれる仕組みに移行します。もし国民年金の保険料を口座振替やクレジットカードで支払っていた場合は、念のため支払いが停止されているかどうか自身でも確認しておくと、二重払いの心配がなく安心です。
会社を辞めると、それまで加入していた厚生年金の資格がなくなり、翌日からは国民年金に加入し直す必要があります。この切り替えは自動では行われないため、自分で市区町村の窓口へ行き「国民年金第1号被保険者資格取得届」を提出するか、マイナポータルを使ってオンラインで手続きを進めます。届け出は、原則として退職日の翌日から14日以内に行うことが求められています。
手続きを後回しにすると、国民年金の未納期間が生じてしまい、将来受け取れる年金額に影響が出る恐れがあります。そのため、退職後はできるだけ早く切り替えを済ませることが重要です。また、保険料の支払いが難しい場合には、免除や猶予といった制度を申請することも可能です。退職後の年金手続きは誰も代わりにやってくれないため、自分自身で確実に対応しておくことが大切です。
厚生年金の受給額は、次の三つの要素で構成されています。
厚生年金受給額は、報酬比例部分+経過的加算+加給年金の合計が受給額です。
報酬比例部分は、老齢厚生年金の中心を占める重要な項目です。名前のとおり、現役時代にどれだけの収入を得ていたか、どれだけ長く加入していたかによって金額が変わります。
報酬比例部分は、制度改正の影響により次の二つの期間で計算方法が異なります。
平均標準報酬月額×(7.125/1000)×加入月数
平均標準報酬額(給与+賞与)×(5.481/1000)×加入月数
2003年4月以降は賞与も基準に含まれるため、ボーナスの多い働き方をしていた人はその分受給額が増えます。加入期間が長く、給与水準が高いほど上乗せされる仕組みです。
経過的加算は、1985年の制度改正で基礎年金が導入された際、旧制度と新制度の間に生じる年金額の差を調整するために設けられました。
20歳以上60歳未満の期間に厚生年金に加入していた人が、この調整の対象となります。
計算式は、次のとおりです。
A:1,657円×定額単価×加入月数 B:基礎年金満額(795,000円)×(加入月数/480カ月)
このAとBの差額を用いて、改正前後の不公平を是正する仕組みです。長期間厚生年金に加入していた人ほど、調整額が大きくなる傾向があります。ただし、経過的加算の具体的な計算方法や金額については、加入者の状況や年金制度の変更により異なる場合があるため、最新の情報を確認することが重要です。
加給年金とは、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になった時点で、一定の条件を満たす配偶者や子どもがいる場合に支給される「家族手当のような年金」です。
対象となる家族は、次のとおりです。
金額(令和7年度)は、次のとおりです。
配偶者の年齢が65歳に達したり、子どもが条件を外れたり、離婚などで生計維持関係がなくなると加給は終了します。
年金の平均的な受給額について、詳しく解説します。
厚生年金は、給与や賞与に応じて保険料が決まる「報酬比例」の仕組みを採用しているため、加入者によって受給額に大きな差が生じます。
最新の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、老齢厚生年金(基礎年金を含む)の平均受給額は月額147,360円です。
この金額には、国民年金にあたる老齢基礎年金分と、厚生年金特有の報酬比例部分が含まれています。長期間にわたり厚生年金に加入していた人や、現役時代の給与・賞与が高かった人はこの平均額を上回ることが多く、逆に短い期間しか加入していない場合やパート勤務が中心だった場合は平均を下回る傾向があります。
また、繰上げ受給・繰下げ受給の選択によっても実際の受給額は変動します。
国民年金は、20歳以上60歳未満の全ての人が加入する「基礎年金」であり、職業や働き方にかかわらず全国民が対象です。
最新のデータでは、国民年金のみ加入している人(自営業・学生期間・無職期間など)の平均受給額は月額57,700円です。新規に受給を開始した人(新規裁定者)に限ると平均55,252円と、さらに低くなります。
国民年金は「定額制」で、加入期間に応じて支給額が決まるため、加入期間が短いと受給額も大きく減ります。40年間全ての期間で保険料を納めた場合の満額は2024年度で月額約68,000円ですが、実際には保険料免除期間や未納期間がある人も多く、平均額が満額を大きく下回る理由となっています。
厚生年金の受給条件は、次のとおりです。
それぞれを詳しく解説します。
老齢厚生年金を受け取るためには、まず「受給資格期間」が通算で10年以上あることが欠かせません。
受給資格期間には、厚生年金に加入していた年数だけでなく、国民年金に加入していた期間、保険料免除や納付猶予を受けていた期間、学生納付特例を利用していた期間なども合算されます。
また、海外在住期間などの「合算対象期間(カラ期間)」も受給資格の計算に組み込まれるため、厚生年金に加入した年数が短い人でも、多くの場合は条件を満たせます。
老齢厚生年金を受け取れる年齢は、原則65歳と定められています。
65歳の段階で受給資格期間(通算10年以上)を満たしていれば、基礎年金と厚生年金の両方を合わせて受給できます。厚生年金は、加入期間の長さや現役時代の給与額がそのまま受給額に反映されるため、働く期間が長いほど将来の年金が増える仕組みです。
また、受給開始のタイミングは誕生日や退職時期によって多少前後することがありますが、年金制度の基本的な基準は65歳です。継続して働きながら厚生年金に加入している場合は、70歳になるまで加入と保険料納付が可能なため、その分年金額をさらに上乗せできる可能性もあります。
老齢厚生年金は、受給開始年齢を自身の生活設計に合わせて調整できる柔軟性があります。
60~64歳の間に受け取りを早める「繰上げ受給」を選ぶこともでき、最大5年早く年金を受け取れます。ただし、繰り上げた分だけ受給額は生涯にわたって減額される点がデメリットです。
逆に「繰下げ受給」を選べば、受給開始時期を65歳以降、最大75歳まで遅らせられます。繰り下げた月数に応じて年金額は増額され、例えば70歳から受け取る場合、65歳で受け取るより大幅に多い年金額になります。働き続けるかどうか、他の収入があるかなどによって最適な受給時期は異なるため、自身のライフプランに合わせて選べる仕組みです。
厚生年金を受給する方法を解説します。
老齢厚生年金の受給手続きは、本人からの請求がない限りスタートしません。
65歳の誕生日の約3カ月前になると、日本年金機構から「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」が郵送されます。この書類が受給準備のスタートとなる大切な案内です。封筒には請求書の他、必要書類や手続き方法を説明した案内文が同封されており、受け取ったら必ず内容を確認しましょう。
引っ越しなどで住所変更の手続きをしていない場合、案内が届かないことがあります。年金事務所に登録された住所が古いままだと受け取れないため、事前に住所情報を最新のものへ更新しておくことが欠かせません。万が一請求書が届かなかった場合は、年金機構のホームページからのダウンロードや最寄りの年金事務所・年金相談センターで再発行が可能です。
老齢厚生年金の請求手続きを進める際は、所定の書類を不備なく準備することが重要です。まず全員に共通して必要となる書類は、次のとおりです。
さらに、加入期間や家族構成によって追加書類が求められます。
また、共済組合に加入していた期間がある場合や、1級・2級の障害状態にある子どもがいる場合など、状況に応じた追加書類が必要となることもあります。事前に必要書類の一覧を確認し、漏れがないよう整理しておくことで、スムーズに申請を進められます。
必要書類がそろったら、年金請求書を年金事務所や年金相談センターへ提出します。
提出方法は窓口持参のほか、郵送でも受け付けているため、都合に合わせて選ぶことができます。書類提出後は、日本年金機構が内容を確認し、加入期間や受給資格を基に年金額を決定する「裁定」が行われます。
審査には通常1〜2カ月ほどかかり、結果は「年金証書」とともに郵送で通知されます。裁定結果が届けば、指定した口座へ年金の振り込みが始まりますので、通知書類は大切に保管しておくことが重要です。また、年金の振り込みが始まると、定期的に年金額の見直しが行われることもあるため、年金受給者はその点についても注意が必要です。
最後に、厚生年金に関するよくある質問とその回答を紹介します。
厚生年金は、会社が保険料を給与から天引きし、事業主がまとめて納付する仕組みのため、個人の意思で「未納」にすることは基本的にありません。しかし、過去の記録漏れや事業所側の手続き不備などによって、結果的に未納期間が生じてしまうケースがあります。
未納期間があると、その期間は将来の年金額に反映されず、受給額が少なくなる可能性があります。また、未納期間が長い場合、受給資格期間(原則10年以上)のカウントにも影響する可能性があります。
もし記録に不自然な空白がある、加入していたはずの期間が反映されていないと感じた場合は、日本年金機構に記録の確認を申し出ましょう。転職が多い人や短期間の勤務が続いた人は、手続き漏れが起きやすいため、早めに確認しておくと安心です。
退職した翌日からは厚生年金の資格を失うため、その時点で自動的に「国民年金第1号被保険者」の扱いです。
再就職までの期間が短くても、1日でも空白があれば国民年金への切り替えが必要です。手続きをしないまま放置すると、その期間は未加入扱いとなり、老後の基礎年金額が減ってしまいます。
国民年金の加入手続きは、市区町村の窓口で行います。再就職して厚生年金に再加入するまでの期間が1カ月未満であっても、加入手続きは必須です。収入が減る時期で保険料の支払いが難しい場合は、免除制度や納付猶予制度の利用も検討できます。空白を作らないことが将来の年金額を守るポイントです。
会社を退職して独立した場合、退職した時点で厚生年金の資格は消滅し、自分で加入する国民年金(第1号被保険者)へ切り替わります。切り替えの手続きは、住所地の市区町村役場で行います。
なお、会社員時代に納めていた厚生年金の記録はそのまま保管され、将来の老齢厚生年金の計算にしっかり反映されます。フリーランスになったからといって、過去の年金記録がリセットされることはありません。
また、国民年金のみでは老後の受給額が手薄になるため、自営業者やフリーランスの方にはiDeCoや国民年金基金を併用して老後資金を補うケースも多く見られます。
副業をしている場合でも、厚生年金への加入判断は「副業の有無」ではなく、各勤務先が加入要件を満たすかどうかで決まります。
本業の会社で厚生年金に加入している場合、副業先の勤務条件が要件を満たしていなければ、副業先での加入は不要です。しかし、副業先でも週20時間以上の勤務や月収8.8万円以上などの条件を満たすと、本業に加えて副業先でも厚生年金に加入する必要があります。
その際、保険料は各勤務先から天引きされ、報酬は合算して年金額が計算されるため、老後の受給額が増える可能性があります。一方、本業で厚生年金に加入していない場合は、要件を満たす勤務先がなければ国民年金に加入します。副業を行う際は、自分の働き方がどの基準に該当するか確認しましょう。
年金を受給しながら働く場合、「在職老齢年金制度」によって収入が一定額を超えると、老齢厚生年金の一部が支給停止となることがあります。これは、賃金と年金を合わせた額が基準を超えた場合に、調整が行われる仕組みです。
ただし、この制度はあくまで支給額の一部が一時的に調整されるだけで、減額された分が消えるわけではありません。
働き続けた期間については、後から年金額が再計算され、「在職定時改定」や退職時の加算によって将来の老齢厚生年金が増える仕組みです。そのため、調整が行われても長期的には働いた分だけ年金額が上乗せされ、トータルで損になるわけではありません。働き方によっては、収入と年金を両立しつつ受給額を増やせます。
海外に移住して日本の会社を退職した場合、退職日をもって厚生年金の資格は失われます。
ただし、これまで会社員として納めてきた厚生年金の加入記録は将来の受給額に反映され、失われることはありません。
また、日本企業からの海外赴任のように「会社に在籍したまま海外で働く場合」は、厚生年金を継続して加入できるケースがあります。移住後は国民年金の資格がなくなるため、希望すれば「任意加入」で加入期間を延ばせます。受給資格期間が10年未満の人や老後の年金額を確保したい人にとって有効です。
さらに、日本と社会保障協定を結んでいる国に移住する場合、日本と移住先の年金加入期間を通算できるため、年金の受給資格が途切れにくい仕組みが整っています。
厚生年金の加入状況は、いくつかの方法で確認できます。
最も手軽な方法は、日本年金機構が運営するオンラインサービス「ねんきんネット」です。基礎年金番号とマイナンバーカード、または専用IDがあれば、加入期間や標準報酬月額、将来の受給見込み額まで、24時間いつでも確認できます。
さらに、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」でも、これまでの納付状況や加入記録をチェックできます。記録に疑問がある場合は、最寄りの年金事務所で照会や訂正の手続きが可能です。年金記録の誤りは将来の受給額に影響するため、定期的に確認しておくことが大切です。
厚生年金と社会保険は、どちらも働く人を支える公的な制度ですが、その範囲と役割が異なります。社会保険は、医療・年金・介護・労災・雇用といった複数の制度をまとめた総称であり、国が生活を包括的に支えるために用意している仕組みです。
一方、厚生年金はその社会保険の中に含まれる年金制度の一つで、企業に勤める人が加入する基礎年金の上乗せ部分にあたります。
社会保険は、健康保険や介護保険、労災保険、雇用保険、そして厚生年金保険といった複数の制度を含んでいます。これらは、病気やケガの際の医療費補助、働けなくなったときの収入保障、老後の生活資金、失業時の支援など、働く人のさまざまなリスクに備えるためのものです。そのうち厚生年金は、老後や障害、死亡時に給付を行う年金保険であり、会社員や公務員が加入する仕組みです。国民全員が加入する国民年金に上乗せされる形で支給されるため、将来受け取れる年金額が自営業者より高くなる点が特徴です。
まとめると、社会保険は複数の公的保険制度を含む大きな枠組みであり、厚生年金はその中の一つです。
日本年金機構は、公的年金制度の運営を国から正式に委任されている唯一の組織であり、日本の社会保障を支える中核的な存在です。公的年金は国民生活の基盤となる制度であるため、その運営を担う同機構には、高い専門性と公平性、そして適切な公的権限の行使が求められています。日本年金機構は、基本理念に沿って業務を遂行し、年金の加入、保険料の徴収、記録管理、給付など、制度を支える一連のプロセスを適正に管理することで、国民一人一人の年金受給権を守る役割を果たしています。
組織体制としては、東京都に置かれた本部が事業全体の企画や統括を行い、全国312カ所に設けられた年金事務所が窓口として、加入・届出・相談などの実務を担当しています。また、提出された書類の審査を専門的に行う事務センターが全国15カ所に配置され、正確で効率的な処理を支えています。このように、日本年金機構は広いネットワークを通じて国民に身近なサービスを提供し、社会全体の年金制度が円滑に機能するための重要な役割を担っています。
厚生年金についての理解は、将来の生活設計において非常に重要です。厚生年金は、主に会社員や公務員が加入する年金制度で、老後の生活を支える大きな柱となります。加入条件や受給額の計算方法をしっかり把握することで、自分の将来に向けた安心感を得ることができます。また、国民年金との違いや、厚生年金基金、iDeCoとの関係も把握しておくと良いでしょう。もし今回の内容で不明点があれば、日本年金機構の窓口や公式サイトを利用して、さらに詳しい情報を得ることをお勧めします。自分の年金記録を確認し、不足や誤りがないか定期的にチェックすることも大切です。厚生年金を上手に活用し、安心できる未来を築いていきましょう。
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