稟議とは?書類の書き方と申請方法、承認から決裁の流れを詳しく解説

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稟議とは、特定の事柄に対し、組織の複数の人間で承認・決裁を行う業務プロセスを指します。しかし、その運用方法や書類の書き方に悩む担当者は少なくありません。稟議制度を適切に理解し運用することで、組織の意思決定をスムーズに進め、透明性の高い経営を実現できます。

本記事では、稟議の基本的な定義から書類の書き方、決裁との違いから承認の流れ、運用方法まで詳しく解説します。企業規模に関わらず、日々の業務で稟議に関わる方にとって実践的な内容となっています。稟議制度を効率的に運用し、組織の意思決定を迅速化させるためのポイントを理解していきましょう。

稟議とは何か

稟議とは、日本企業において広く採用されている意思決定プロセスであり、組織の透明性と説明責任を確保する重要な仕組みです。適切な稟議制度の理解は、円滑な業務遂行の基盤となります。

定義と読み方

稟議とは、担当者や部下が自身の権限では判断できない事項について、関係者や上長に書面で申請し、承認や決裁を得るための社内手続きです。「稟」は「申し出る」、「議」は「相談する」という意味を持ち、組織内で重要な決定を行う際に用いられます。

稟議制度は、会議を開催せずに複数の関係者から承認を得られるため、意思決定の効率化を図りながら、同時に決定過程を文書として記録できるという特徴があります。元々は「ひんぎ」と読まれていましたが、現在では「りんぎ」という読み方が一般的になっています。

ビジネスの現場では「稟議を上げる」「稟議にかける」といった表現で承認依頼を行い、「稟議が下りる」「稟議が通る」という表現で承認が完了したことを示します。この一連のプロセスは、企業規模や業種を問わず、日本の組織文化に深く根付いた意思決定手法として定着しています。

目的

稟議制度を導入する主な目的は、組織の意思決定を効率化し、同時に透明性を確保することにあります。多人数が集まる会議を省略しながら、必要な承認を得られる点が大きな利点です。

稟議は決定事項を文書として記録するため、誰がいつどのような判断を下したかが明確になり、後々の監査や調査に対応できる証跡管理が可能になります。これにより、経営の透明性と説明責任を果たすことができます。

また、稟議制度はボトムアップ型の意思決定を促進する効果もあります。現場の担当者が自ら提案を起案し、上層部の承認を得て決裁が下りるまでのプロセスは、組織の活性化と従業員のモチベーション向上にも寄与します。さらに、複数の承認者によるチェック機能が働くため、リスクの早期発見や不正の防止にも役立ちます。

稟議と決裁の違い

稟議と決裁の違いにも触れていきましょう。稟議と決裁は密接に関連していますが、その意味するところは異なります。稟議は起案から承認完了までのプロセス全体を指すのに対し、決裁は稟議プロセスにおける最終段階の承認行為を意味します。

稟議の主体は起案者である担当者や部下であり、その目的は関係者から必要な承認を得ることです。一方、決裁の主体は最終的な決定権を持つ責任者や経営層であり、提案内容を最終的に承認または却下する判断を下します。

つまり稟議は承認を求めるプロセス全体を表し、決裁はそのプロセス内で行われる最重要ステップであるという関係性にあります。稟議書は複数の承認者を経由しますが、決裁は通常一人の責任者によって行われます。企業によっては「専決」「代決」といった決裁の種類を定めている場合もあり、組織の権限構造を反映した運用がなされています。

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    稟議の種類

    企業活動において稟議が必要となる場面は多岐にわたります。一般的に稟議は目的や内容によって複数の種類に分類され、それぞれに適した記載項目や承認フローが設定されます。

    主要な稟議の種類として、契約稟議、捺印稟議、購買稟議、採用稟議、接待交際稟議の5つが挙げられます。それぞれの稟議には固有の目的と記載すべき重要項目があり、適切な運用により組織のガバナンスを強化できます。

    稟議の種類主な目的主要な記載項目
    契約稟議新規契約や契約変更の承認相手先、契約期間、契約内容、金額、リスク、責任範囲
    捺印稟議承認済み契約書への押印許可契約書の種類、相手先、押印箇所、代表者名
    購買稟議商品・サービス購入の承認品目、数量、単価、必要性、見積書、納期、支払い条件
    採用稟議新規人材採用の許可職種、人数、応募者情報、採用理由、給与条件、予算
    接待交際稟議交際費使用の承認相手先、目的、費用、日時、重要度

    契約稟議は取引先との契約締結や変更時に必要となり、契約の重要性や金額に応じて承認ルートが変わります。捺印稟議は契約稟議とは別に、実際に契約書に印鑑を押す段階で必要となる場合があり、二重チェックの役割を果たします。

    購買稟議は無駄な支出を防止し、予算管理を適切に行うために重要です。見積書の添付や複数社の比較検討結果を記載することで、より客観的な判断が可能になります。採用稟議は人件費という継続的なコストに関わるため、経営層の承認が必要となることが一般的です。

    接待交際稟議は税務上の観点からも適切な記録が求められます。相手先との関係性や接待の妥当性を明確にすることで、コンプライアンス遵守にも寄与します。これらの稟議種類を理解し、状況に応じて適切に使い分けることが、効率的な業務運営につながります。

    稟議書の書き方と承認の流れ

    稟議書は組織の意思決定を左右する重要な文書であり、適切な書き方と承認フローの設計が求められます。明確で説得力のある稟議書を作成することで、承認プロセスがスムーズに進行します。

    基本項目

    稟議書には必ず記載すべき基本項目があり、これらを漏れなく記入することが承認を得るための第一歩となります。標準的な稟議書には、起案日、起案者、件名、申請内容、目的、予算、添付資料などの項目が含まれます。

    起案日と起案者の情報は、稟議の発生時点と責任の所在を明確にするために必須であり、後々の追跡調査や監査においても重要な役割を果たします。件名は稟議の内容を端的に表現し、承認者が一目で何についての申請かを理解できるよう工夫します。

    申請内容の記載では、具体的な数値や固有名詞を用いて明確に表現することが重要です。曖昧な表現や抽象的な説明は、承認者の判断を難しくし、差し戻しの原因となります。目的の欄では、なぜこの申請が必要なのか、どのような効果や成果が期待できるのかを論理的に説明します。

    予算に関しては、金額だけでなく、その内訳や根拠となる見積書を添付することで、承認者の理解を促進します。複数の選択肢がある場合は、比較表を作成して各選択肢のメリット・デメリットを示すと、承認者の意思決定を支援できます。添付資料として、見積書、契約書案、仕様書、提案資料などを適切に選択し、稟議書本文と整合性を保つことも重要です。

    書き方のポイント

    効果的な稟議書を作成するためには、承認者の視点を意識した記載が求められます。承認者は限られた時間の中で多数の稟議を処理するため、要点が明確で読みやすい文書が好まれます。

    まず、結論を先に記載する構成を心がけます。何を申請するのか、金額はいくらか、期限はいつかといった重要情報を冒頭に配置することで、承認者は迅速に判断できます。その後に背景説明や詳細情報を記載する構成が効果的です。

    数値データを用いた客観的な説明は説得力を高めるため、市場調査データや過去の実績、費用対効果の試算などを具体的に示すことが重要です。また、想定されるリスクとその対応策を事前に記載することで、承認者の懸念を払拭し、信頼性を高められます。

    専門用語や社内用語を使用する際は、承認者全員が理解できるよう注釈を付けるか、平易な表現に置き換えます。特に経営層が承認者に含まれる場合は、現場の専門用語が理解されない可能性を考慮します。また、複数の代替案を検討した経緯を示すことで、申請内容が十分に検討された結果であることを証明できます。

    緊急性が高い場合は、その理由と期限を明確に記載します。ただし、計画性のない緊急申請は承認されにくいため、可能な限り余裕を持ったスケジュールで起案することが望ましいです。過去に類似案件がある場合は、その結果や教訓を参照することで、説得力を増すことができます。

    承認から決裁までのフローの設計方法

    承認フローは稟議の種類や金額、内容によって適切に設計する必要があります。効率性と牽制機能のバランスを取ることが、健全な組織運営につながります。

    基本的な承認フローは、起案者から直属の上司、部門長、関連部署、経営層という順序で構成されます。ただし、案件の性質によっては、法務部門や経理部門といった専門部署による事前チェックを挟むことも有効です。

    承認フローの段階数は必要最小限に抑えることが、意思決定のスピードアップにつながりますが、重要案件については適切な牽制機能を維持するため、複数段階の承認が必要です。金額基準による承認権限の設定は、多くの企業で採用されている効果的な方法です。

    たとえば、10万円未満は課長決裁、10万円以上50万円未満は部長決裁、50万円以上は役員決裁といった基準を設けることで、承認者の負担を分散させながら、適切な牽制を機能させられます。また、契約期間や人数など、金額以外の基準も併用することで、より精緻な承認制度を構築できます。

    並行承認と順次承認の使い分けも重要です。複数部署の承認が必要でも、それぞれ独立して判断できる内容であれば並行承認を採用することで、承認期間を短縮できます。一方、前段階の承認結果を踏まえて次の承認を行う必要がある場合は、順次承認が適切です。

    承認者選定の基準

    承認者の選定は稟議制度の要であり、組織の権限構造と責任の所在を反映する重要な決定です。適切な承認者を選定することで、意思決定の質とスピードの両立が可能になります。

    承認者選定の第一の基準は、組織上の職位と権限です。一般的には、起案者の直属の上司から始まり、階層を上がっていく構造となります。ただし、すべての稟議を最上位の経営層まで上げる必要はなく、案件の重要度に応じた適切なレベルで決裁できる仕組みが効率的です。

    専門性も重要な選定基準であり、技術的な判断が必要な案件では技術部門の責任者を、法的な検討が必要な案件では法務部門の責任者を承認者に加えることで、より適切な判断が可能になります。これにより、単なる形式的な承認ではなく、実質的なチェック機能が働きます。

    利害関係の有無も考慮すべき要素です。特定の部門や個人に利益が偏る可能性がある案件では、中立的な立場の承認者を含めることで、公平性を確保しやすくなります。また、予算管理の責任者を承認フローに含めることで、組織全体の予算統制を維持できます。

    承認者の人数については、必要十分な範囲に留めることが重要です。承認者が多すぎると意思決定が遅延し、少なすぎると牽制機能が不十分になります。組織の規模や文化に応じて、最適なバランスを見つけることが求められます。また、承認者不在時の代理承認者をあらかじめ指定しておくことで、承認プロセスの停滞を防げます。

    稟議の運用方法

    稟議制度を効果的に運用するためには、明確なルール設定と継続的な改善が必要です。適切な運用により、意思決定の質とスピードを両立させることができます。

    運用ルールとチェックリスト

    稟議を円滑に運用するためには、組織全体で共有される明確なルールとチェックリストが不可欠です。これらの仕組みにより、稟議の品質を一定水準に保ち、承認プロセスの効率化を図ることができます。

    運用ルールには、起案の基準、承認期限、差し戻し時の対応、記載必須事項などを含みます。起案の基準では、どのような案件が稟議を必要とするのか、金額基準や内容基準を具体的に定めます。これにより、不要な稟議の発生を防ぎ、真に承認が必要な案件に注力できます。

    起案者向けのチェックリストには、以下のような項目を含めることが有効です。

    • 件名は内容を的確に表現しているか
    • 申請内容は具体的かつ明確に記載されているか
    • 目的と期待される効果が論理的に説明されているか
    • 予算の根拠となる見積書や資料が添付されているか
    • 想定されるリスクと対応策が記載されているか
    • 代替案の検討結果が示されているか
    • 関連部署への事前相談が済んでいるか
    • 承認者の選定は適切か
    • 期限設定は妥当か
    • 過去の類似案件を参照したか

    承認者向けのチェックリストも別途用意することで、承認業務の標準化を図れます。承認者は申請内容の妥当性、予算の適切性、リスクの評価、代替案との比較、組織方針との整合性などを確認します。差し戻しを行う場合は、具体的な修正指示を明記することで、再申請時の手戻りを最小限に抑えられます。

    電子稟議(ワークフローシステム)の導入効果

    電子稟議システムの導入は、稟議業務の効率化と組織の生産性向上に大きく貢献します。紙ベースの稟議から電子稟議の移行により、多くの課題が解決され、働き方の柔軟性も向上します。

    ワークフローシステムを導入する最大のメリットは、場所と時間の制約から解放されることです。パソコンやスマートフォンから申請や承認が可能になるため、テレワークや出張中でも稟議業務を滞りなく進められます。これは特にコロナ禍以降の働き方の変化に対応する上で重要な要素となっています。

    承認状況のリアルタイム把握は電子稟議システムの重要な機能であり、起案者は自分の申請が現在どの承認者のもとにあるのか、いつ承認されたのかを随時確認できるため、進捗管理が容易になります。これにより、承認が滞っている場合には適切なフォローアップが可能になります。

    書類の紛失や改ざんのリスクが低減されることも重要な利点です。電子データとして保管されるため、物理的な紛失の心配がなく、変更履歴も自動的に記録されます。これは内部統制やコンプライアンスの観点からも有効です。また、検索機能により過去の稟議を容易に参照でき、類似案件の検討や監査対応が効率化されます。

    コスト削減効果も見逃せません。紙代、印刷代、保管スペースの削減に加え、郵送や社内便の必要がなくなることで、直接的なコスト削減が実現します。さらに、承認にかかる時間の短縮により、従業員の生産性が向上し、間接的なコスト削減効果も期待できます。

    電子稟議システムには、承認ルートの自動設定機能や、条件分岐による柔軟なフロー設定機能が搭載されているものが多く、複雑な承認プロセスも効率的に管理できます。承認期限のアラート機能により、承認遅延を防止することも可能です。さらに、データ分析機能を活用することで、稟議の傾向分析や承認プロセスの改善点を可視化できます。

    また、電子稟議システムを導入することで、プロセスの透明性を高め、記録の一元管理が可能となります。このシステム化により、承認履歴や意思決定の根拠を容易に確認でき、監査対応も効率的に行えます。定期的な運用ルールの見直しと改善を行うことで、組織全体のガバナンスが持続的に強化され、経営の健全性が維持されます。ガバナンスの強化は、企業の競争力を高めるだけでなく、ステークホルダーからの信頼を確保するための基盤となります。

    よくある不備と対処方法

    稟議業務においては、起案者と承認者の双方で典型的な不備や問題が発生することがあります。これらを事前に理解し、適切な対処方法を知ることで、稟議の品質向上とプロセスの円滑化が実現できます。

    起案者側でよく見られる不備として、情報不足が挙げられます。申請内容が曖昧で承認者が判断材料を得られない稟議は差し戻しとなります。対処方法としては、5W1Hを意識した記載を心がけ、承認者の立場に立って必要な情報を網羅することが重要です。

    予算の根拠が不明確な稟議も頻繁に見られる問題であり、単に金額だけを記載するのではなく、なぜその金額になるのか、複数の選択肢からなぜその案を選んだのかを明確に説明する必要があります。見積書の添付や比較表の作成も有効です。

    緊急性の主張が過度な稟議も問題です。本当に緊急の場合もありますが、計画性の欠如による緊急申請は承認されにくくなります。対処方法としては、日頃から計画的に業務を進め、余裕を持ったスケジュールで起案することが基本です。真に緊急の場合は、その理由を客観的に説明し、通常のスケジュールが適用できない背景を明確にします。

    添付資料の不足や不適切さも典型的な不備です。見積書、契約書案、仕様書など、承認判断に必要な資料を漏れなく添付することが求められます。また、資料が多すぎて重要なポイントが埋もれてしまうことも避けるべきです。重要な箇所にマーカーを引くなど、承認者の理解を助ける工夫が有効です。

    承認者側の問題としては、承認遅延が深刻です。多忙を理由に承認を後回しにすることで、組織全体の意思決定が遅れ、ビジネスチャンスを逸する可能性があります。対処方法としては、承認期限を明確に設定し、それを遵守する文化を組織に根付かせることが重要です。電子稟議システムのアラート機能を活用することも効果的です。

    承認判断の基準が不明確なことも問題となります。承認者によって判断基準が異なると、起案者は混乱し、組織の一貫性が損なわれます。対処方法としては、承認基準を文書化し、組織内で共有することが必要です。また、定期的な承認者研修を実施することで、判断基準の統一を図ることができます。

    差し戻し時のコメントが不十分な場合も、再起案の妨げとなります。単に「不承認」とするのではなく、何が問題で、どう修正すべきかを具体的に指示することで、効率的な修正が可能になります。承認者は起案者の成長を支援する意識を持つことも重要です。

    まとめ

    稟議は日本企業における重要な意思決定プロセスであり、適切な運用により組織の透明性と効率性を高めることができます。稟議の定義から種類、書類の書き方、承認フローの設計まで、体系的な理解が円滑な業務遂行の基盤となります。

    電子稟議システムの導入は、場所と時間の制約を解消し、テレワーク時代に対応した柔軟な働き方を実現します。承認状況のリアルタイム把握や検索機能により、業務効率が大幅に向上し、コスト削減効果も期待できます。よくある不備への対処方法を理解し、チェックリストを活用することで、稟議の品質を一定水準に保つことが可能です。

    企業の成長段階や組織変革の局面では、稟議制度の見直しが必要になることもあります。運用方法を見直すことで、組織全体の意思決定がより迅速になり、結果としてビジネスの成長につながるでしょう。

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