譲渡企業
株式会社吉川製作所
譲受企業
パナレーサー株式会社
代表取締役社長 大和 竜一氏
着手金・中間金無料 完全成功報酬型
本件担当コンサルタント
奥村 陽
奥村 陽

大和 様:パナレーサー株式会社は、兵庫県丹波市に本社を構え、自転車用タイヤ・チューブの開発・製造を主力事業とする会社です。事業の大部分をタイヤ・チューブが占めており、長年にわたり自転車タイヤ・チューブのものづくりを支えてきました。加えて、OEMメーカーと連携しながら、空気入れなどの関連製品の開発にも取り組んでいます。
大和 様:1952年にナショナルタイヤ株式会社として大阪で創業したのが始まりです。創業以来、当社は技術開発を強みとして成長を続けてきました。1963年には業界で初めてナイロン製シングルコードタイヤの生産を開始し、1976年には世界初となるナイロンコード製の競技用チューブラータイヤを開発するなど、早い段階から国内外で存在感を高めてきました。
1979年にはタイヤブランドとして「Panaracer」を制定し、1980年代以降は当社製タイヤを使用した選手が世界選手権で優勝するなど、競技の世界でも実績を積み重ねています。1990年代から2000年代にかけては、MTBやロードレースの分野で技術革新と実績の両面を伸ばし、新たなコンパウンド技術の開発に加え、「ストラディアス」や「R’AIR」といった製品展開も進めてまいりました。さらに、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスといった世界最高峰のレースにも、日本製タイヤとして挑戦してきた歩みがあります。
近年では、2014年発売の「グラベルキング」を起点に、2022年の「アジリスト」、2023年の「アジリスト ファスト」、2024年の「アジリスト ファスト TLR」など、市場ニーズの変化に応える新製品の開発を進めています。また、UCIグラベルワールドシリーズとのパートナーシップ締結、2025年の米国販売会社PnR USA Corporationの設立、さらには今回の株式会社吉川製作所との資本提携など、グローバル展開と事業基盤の強化にも継続して取り組んでいます。
大和 様:はい。大手グループ傘下だった当時から経営環境は厳しかったと聞いていますが、レピュテーションリスクの観点もあり、簡単に整理することはできなかったのだと思います。そうした経緯を経て、2015年に投資ファンドへ売却されました。
私が代表に就任した当時、特に深刻だと感じたのは、働いている社員の”心の状態”でした。長い間、「何もするな」「お金を使うな」という強い抑制のもとに置かれ、極限までコストを切り詰めながら利益を求められる状況が続いていました。その結果、組織全体に閉塞感が広がり、前向きに挑戦しようという空気が失われていたのです。
象徴的だったのは、業務で使うパソコン環境です。ノートパソコンは使えず、デスクトップも厳重に管理されていました。情報管理を目的とした会議が毎月のように開かれ、現場がどう動くかよりも、情報をいかに統制するかに重きが置かれていた印象があります。もちろん情報セキュリティは重要ですが、当時はそれが過度な制約となり、現場の自由な発信や行動を妨げていました。
例えばSNS運用で、Facebookに記事を投稿したいという連絡が私に届いたときは衝撃でした。「なぜ私の承認が必要なのか。良い内容ならすぐに発信して構わない」と伝えたところ、若手社員いわく、FacebookなどSNSの投稿にはこれまで社長承認が必要だったというのです。さらに、自転車業界で非常に重要な発信手段であるXも運用されていませんでした。セキュリティ観点から使ってはいけないという会社の判断だったようです。
そこで、私はすぐにSNSに関する運用ルールの変更を指示しました。そこから僅か4日後に若手社員がアカウントを立ち上げて発信すると、その投稿が大きな反響を呼び、一気に業界から注目を集めることになりました。あの出来事は現場が自主性を持ち、外に向けて正しく発信するだけでも、会社はここまで変われるのだと実感した出来事でした。
大和 様:はい。厳しい面に驚かされる一方で、ポジティブな要素も確かにありました。特に強く感じたのは、長い歴史の中で培われてきたタイヤの品質と、それを形にする製造能力の高さです。これは本当にもったいないほどの強みだと思いました。
工場には長年使われてきた機械が数多く並んでいましたが、それらが今も現役で稼働していました。その光景を見たときに、これだけの設備と技術が残っているのであれば、活かし方次第で十分に収益を生み出せると直感しました。むしろ、こうした基盤が維持されてきたこと自体が、ある意味では奇跡的なことだと感じたほどです。
タイヤづくりの根幹にある技術は、時代の変化で急に大きく変わるものではありません。だからこそ、お客様が求めるニーズをしっかり捉え、魅力ある製品として届けることができれば、必ず勝負できると考えました。現場に残っていた技術、設備、そしてものづくりの精神を見たとき、この会社には大きな可能性がある、まさに宝の山だと感じたことをよく覚えています。
大和 様:私が着任してすぐに手がけたのが、コーポレートカラーと企業ロゴの刷新です。前身の大手グループのロゴがブルーを基調としていたことから、その流れを踏まえつつ、若者や女性を意識したレッドの要素を掛け合わせ、最終的にパープルを新たなコーポレートカラーとして定めました。視認性やデザイン性なども含めて総合的に検討し、新しい企業ロゴを作成しました。
この刷新に込めた想いは、単なる見た目の変更ではありません。私にとっては、「過去からの決別」を明確に示す意味合いがありました。これまでの古い体制を一度清算し、会社として新しい挑戦を始める。その意思を社内外に示すために、ロゴやカラーの変更は非常に象徴的な取り組みだったと考えています。

大和 様:以前から、M&Aは成長戦略の一つとして考えていました。実際、2024年頃には、世界的な完成車メーカーの日本法人に動きがあった際に関心を持ち、当社としても検討していた経緯があります。結果としてその会社さんは別の形に落ち着きましたが、タイヤ以外の領域にも事業の幅を広げていく必要性は強く感じていました。
というのも、当社は国内生産に強みを持つ一方で、生産能力には一定の上限があります。タイヤ事業だけで売上を伸ばしていくには、どうしてもキャパシティの制約を受けます。国内生産を前提にすると、成長のスピードには限界があるため、さらに伸ばしていくには海外生産を含めた展開、あるいはタイヤ以外の商材へと広げていく視点が不可欠でした。
ただ、これまで当社は「買手側」として見られる会社ではありませんでした。むしろ、M&A仲介会社さんからは「売りませんか」と声をかけられる立場であり、当社がM&Aによって事業を広げるという見方は、ほとんど持たれていなかったと思います。それでも、会社を成長させていくためには、従来とは異なる一手が必要だと考えていましたし、何か一社でも実現しなければ次の展開にはつながらないという思いがありました。
そうした中で、M&Aロイヤルアドバイザリーさんから吉川製作所さんとのお話をいただき、当社にとって非常に良いタイミングだったと感じています。実際にこのM&Aがまとまった後は、多方面から反響をいただき、「そうした取り組みもされるのですね」「次はこんなご紹介ができます」といった声も寄せられるようになりました。今回のM&Aは、事業の幅を広げるだけでなく、当社の成長に対する見られ方そのものを変えるきっかけにもなったと感じています。
大和 様:私自身、新潟の酒蔵で代表を務めた経験がありますし、銀行員時代にも製造業のお客様を多く担当してきました。そのため、ものづくりの大切さについては理解しているつもりです。私が考える「ものづくりへの執着」とは、徹底して良いものを作り続ける姿勢にほかなりません。
その一方で、製造業においては、ものづくりへの執着と同じくらい大切にしなければならないことがあると考えています。それが、工場や職場の環境を整えることです。
銀行員時代、先輩からは「工場を必ず見てこい。そして、綺麗に整理整頓されているかどうかをよく見てこい」と繰り返し言われていました。当時は、その意味を完全には理解できていませんでしたが、後になってよく分かりました。工場の状態には、その会社の姿勢が表れるのです。整理整頓が行き届いていない会社は、品質管理や業務運用の面でもどこかで緩みが生じやすく、結果として経営面にも影響が出ることがあります。
私が代表を務めた酒蔵でも、工場環境の改善には徹底して取り組みました。パンデミック後に受注が止まり、生産を続けられない時期がありましたが、その期間をただ待つのではなく、製造を延べ20日ほど止めて、大規模な清掃と環境整備に充てました。現場を一から見直し、工場を徹底的に綺麗にしたのです。
その後、整備された環境の中で新しい商品の生産を始め、翌年の春に市場へ投入したところ、大きな反響をいただきました。結果として売上にもつながり、私自身、工場を綺麗にすることは単なる美観の問題ではなく、事業の成果にも結びつくのだと実感しました。
大和 様:はい。当社としても可能性が大きく広がったと感じています。今回ご一緒したことで、当社にとって扱える領域がタイヤ以外にも広がり、新たなチャレンジの可能性が一気に見えてきました。
例えば、ワイヤー一つをとっても、自転車業界の中だけでなく、他業界へ展開していく余地があるのではないかと感じています。用途や提案の仕方次第では、需要が高まる可能性のある製品です。また、自転車ブレーキに関しても、決してなくなるものではなく、今後も必要とされ続ける分野です。だからこそ、既存事業をしっかり活かしながら、さらに伸ばしていく余地があると見ていますし、現在の売上規模を踏まえても、次のステージに進める可能性は十分にあると考えています。
当社もタイヤ以外の商材を持てたことで、事業の見え方が変わりました。世界が広がったという実感があります。加えて、ホイールをはじめとした他の自転車部品についても、吉川製作所様は業界内のネットワークや知見を豊富にお持ちです。そのため、今後はさまざまな部品や商材の調達も可能になりそうですし、そこから新たなビジネスの展開も期待できます。

大和 様:奥村さんには、常にタイムリーに動いていただいたという印象です。迅速にご対応いただく場面が多く、そのフットワークの軽さには驚かされましたし、同時にとても心強く感じていました。全体を通して、誠実に向き合っていただいたと感じています。
M&Aは条件や価格面だけで進むものではなく、実際には関わる人同士の相性が非常に重要です。私自身、これまでファンドで仕事をする中で、よく「ケミストリーが合うかどうか」という表現を耳にしてきましたが、要するに大切なのは、一緒に進めていける相手かどうかということだと思います。その意味で、今回は非常に自然な形でコミュニケーションを取ることができ、安心してリードをお任せすることができました。
こうした相性の良さがあったからこそ、プロセス全体も無理なく進めることができたのだと思います。迅速さと誠実さの両方を備えたご対応をいただき、非常にありがたく感じています。
奥村(担当コンサルタント):私も、初めて吉川社長にパナレーサー様をご紹介した際、御社は勢いのある会社という印象があったため、どのような社長がいらっしゃるのだろうと、期待と緊張の両方がありました。吉川社長も同じようなお気持ちだったと思います。
ただ、実際にお打ち合わせやトップ面談を重ねる中で、その印象はすぐに変わりました。大和様はとても丁寧で親しみやすく、非常にお話ししやすい方でしたので、私自身も自然体でコミュニケーションを取ることができました。
先ほどお話にあったように、M&Aでは条件面だけでなく、やはり相性が非常に重要だと感じています。その意味で、今回は非常に良い関係性の中で進めることができました。
また、大和様は海外に出張される機会も多く、時差をまたいだやり取りが必要になる場面もありました。そのため、どのタイミングでもできる限り対応できるよう意識して準備していましたが、そうした点をご評価いただけたことは大変嬉しいです。ありがとうございました。
大和 様:今後の目標として考えているのは、パナレーサーが復活してきた歩みを、当社だけのものにとどめないことです。本来であれば厳しい状況の中で姿を消していても不思議ではなかった会社が、ここまで立て直すことができた。その経験があるからこそ、日本の自転車業界に残る製造業や部品メーカーの皆さまとも力を合わせ、まだ十分に戦っていけるということを形にしていきたいと考えています。吉川製作所様をはじめ、志を共にできる会社様と一緒に、新たな仕組みをつくっていきたいです。
事業規模の面でも、さらに大きな成長を目指していきます。売上を50億円、さらに100億円規模へと伸ばしていくことができれば、今はまだ夢物語でも、その先に上場という選択肢も見えてきます。仮にIPOを目指すとしても、それは私のためではなく、そこで働く従業員が報われ、会社に誇りを持てるようにするためです。かつては十分に評価されず、苦しい時期を過ごしてきた会社が、周囲から尊敬され、働く人たち自身も胸を張れる存在になる。それが上場かどうかは重要ではありません。
私自身にとっても、パナレーサーでの仕事は、これまでの人生の集大成として取り組んでいます。これまでIPOや企業再生に関わる仕事をしてきた性質上、最後まで見届けることができた会社はありません。だからこそ、これまで培ってきた知見や経験のすべてを注ぎ込み、この会社を通じて一つの完成形をつくりたいと思っています。

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