譲渡企業
株式会社ヴェンティウーノ
譲受企業
株式会社ナカノアパレル
代表取締役社長 中野 一憲氏
着手金・中間金無料 完全成功報酬型
本件担当コンサルタント
久保田 裕香
久保田 裕香

中野 様:当社は、創業以来、婦人服を中心としたアパレルのOEM・ODM事業を手がけてきました。ブランドの商品づくりを、企画提案から縫製・出荷まで支える会社です。
現在は山形本社工場に加えて、中国とベトナムにも生産拠点を持ち、国内外のネットワークを生かしたものづくりを強みにしています。従業員数は、2026年8月時点で約300名です。
中野 様:父と母が、奈良県生駒市にある縫製工場の一室を間借りして始めたのが当社です。父がそれまで勤めていた会社を離れることになり、自分たちで生計を立てるために事業を立ち上げました。1986年5月に創業し、1988年1月に法人化しています。
当初は自社工場を持たず、お客様から受けた注文に対して生産の段取りを組み、協力工場で商品をつくる形でした。いわゆるファブレスですが、私たちの業界の言葉で言えば「テーブルメーカー」です。
その後、2005年に中国に自社工場を持ち、2012年には山形、2023年にはベトナムへと生産拠点を広げてきました。こうした判断を主導してきたのは父です。世の中の変化に立ち遅れないように、必要だと思ったことを実行してきた。その積み重ねが今の会社につながっていると思います。振り返ると「あの判断がなければ、今の私たちはいない」と感じることが多く、経営者として学ぶべきところです。
中野 様:中国以外の生産拠点を検討する中で、父と弟がバングラデシュなどを視察した時期がありました。ただ、当時のインフラや生産環境を見て、私たちの事業規模や商売のやり方で展開するには難しさがあると判断したのです。
一方、当社が得意としていたのは、小ロット・多品種・短納期のものづくりでした。その条件で考えると、むしろ日本国内に優位性があるのではないか。それなら、自分たちに合う国内の工場を探し、生産拠点にした方がよいのではないかという発想になりました。
国内工場を持ったことは、お客様からの見られ方も変えました。中国にも工場はありましたが、日本で工場を運営していることで、「ナカノアパレルはものづくりの会社だ」と、国内でより強く認識していただけるようになったと思います。
中野 様:大学卒業後はロンドンに留学し、服飾を学びました。当時、私はベルギー・アントワープのファッションに憧れていて、その世界で働くことが夢だったのです。
留学中に関係をつくることができましたので、憧れていたデザイナーのところへ「働かせてください」と足を運びました。アントワープでは約3年半働き、帰国してナカノアパレルに入りました。入社後は営業の現場で経験を重ね、2023年11月に代表取締役社長に就任しています。
海外で暮らした経験は、やはり視野を広げてくれました。日本にいると海外と比較し、海外に行くと日本と比較する。どちらか一方だけではなく、少し引いた目で物事を見られるようになったと思います。異なる考え方を持つ人たちと出会えたことも、私にとって大きな財産です。
中野 様:当社は製造の基盤を持っていますが、もともとのDNAはテーブルメーカーです。つまり、営業から始まった会社です。
どうすればお客様に響く提案ができるのか。どうすれば喜んでいただけるのか。その先にいる、実際に商品を手に取る方にも喜んでいただくにはどうすればよいのか。そうしたことを考える姿勢が、会社の根底にあります。
そこに自社工場というものづくりの基盤が加わってきました。単につくれるだけではなく、お客様のことを考えて提案できる。その姿勢が、長く支持していただける理由ではないかと思っています。(※質問文の数値は2026年1月時点の実績)
中野 様:正直なところ、最初は「大きな会社が取り組むことで、自分たちには関係がない」と思っていました。転機になったのは、もともとお取引先だった方が大学院で学ばれ、当社を研究対象にした論文を書かれたことでした。その方は、後に中小企業診断士となり、当社の顧問として中小企業にできるサスティナブルな経営を一緒に考えてくださるようになりました。
その中で、取引先から環境に配慮した生産体制を求められたら、すぐに対応できるのかと問いかけられたのです。当然ながら、急に言われても簡単にはできません。逆に、周りがまだ対応できていないうちに準備しておけば、選んでいただける可能性がある。そう考えると、自分たちの事業に直結する話だと感じました。
そこで、「サスティナブル縫製工場」を目指すことを明確に打ち出し、ホームページでも発信するようにしました。「サスティナブル縫製工場がモノづくり文化にイノベーションをおこす」という言葉は、今も当社の考え方の中心にあります。

中野 様:これまでにも、生産基盤に関わるM&Aは経験してきました。今回のように、さらに事業を発展させる手段として考えた背景には、利益の構造を変えていきたいという想いがあります。
OEM・ODMは、リスクが比較的限られる一方で、得られる利益にも限りがあります。従業員の頑張りにもっと報いる会社にするには、収益力を高めなければならない。そのためには、商品を直接お客様に届けるビジネスにも取り組む必要があると考えていました。
実は、父が掲げた創業の精神も、自らつくったものを、自らの店で、自らお客様に販売するというものでした。私が考えている方向は、その精神ともつながっています。
これまで、自分たちで事業を育てる挑戦もしてきましたし、うまくいかなかった経験もあります。その中で、すでに事業や販路を築いている会社と一緒になるM&Aなら、目指す未来や、双方の強みを生かせる部分を具体的に描きやすいのではないかと考えるようになりました。M&Aだけが戦略なのではなく、成長を実現するための手段の一つという位置づけです。
中野 様:M&Aロイヤルアドバイザリーさんにご紹介いただいた際に、すぐに「一緒になったら面白いのではないか」と興味を持ったのが始まりです。
ヴェンティウーノ様は、カシミヤに関わる製品の製造・販売から事業を展開してこられた素晴らしい会社ですが、私たちが特に魅力を感じたのは、大貫社長のもとで育てられてきた「SLOANE」でした。
自社での販売に加え、卸売やECにも取り組まれ、幅広い販路と有力なお客様をお持ちです。ブランドを事業の大きな柱に育て、安定的に展開されている。その点に魅力を感じました。カシミヤの専門性だけではなく、ブランドと、それをお客様に届ける基盤に注目したのです。
中野 様:最初にお会いしたときから、とても話しやすい方だと感じました。物事をはっきりおっしゃる方で、考えていることも明確に伝えてくださいます。お互いの腹の内を探り合うというより、会話のキャッチボールを通じて理解を深めていける方でした。
大貫代表には海外に関わるお仕事の経験もあり、面談では事業の話だけでなく、そうした経験についてもいろいろとお話ししました。和気あいあいと話せる時間もあり、印象はとても良かったです。
中野 様:具体的な戦略は、これから双方で話し合い、合意を取りながら進めていくことになります。ただ、ものづくりを得意とする私たちと、ブランドを育てて販売してきたヴェンティウーノ様が、それぞれの得意分野を生かし、互いの強みを補い合えると考えています。
また、ヴェンティウーノ様が得意とするのはセーターの分野で、当社はカットソーを中心にものづくりをしてきました。一見違うようですが、大きなくくりでは、カットソーもニットの一種です。そこには親和性があります。
当社のものづくりのノウハウが、ヴェンティウーノ様の新たな事業展開のきっかけになるかもしれません。一方、同社が持つセーターの知見や商品は、当社にとっても新しい営業資源になります。
それぞれが持つものを、チーム同士の連携によって生かしていく。そうして商品提案や事業の可能性を広げていくことが、私の考えるシナジーです。

中野 様:本当に誠心誠意、取り組んでいただきました。当社の要望も多く聞いていただいたと思います。
特にありがたかったのは、私たちがじっくり考えられる環境をつくってくださったことです。判断を急がせるのではなく、売り手・買い手の双方に寄り添い、分からないことがあれば同じ目線で対応してくださいました。
久保田さんご自身のお人柄もあるでしょうし、会社としての姿勢でもあるのだと思います。重要な局面でも頼りになりました。「何かあれば、まず久保田さんに」という存在でしたね。
久保田(担当コンサルタント):初めてご両社のお引き合わせをさせていただいた時から、中野社長と大貫社長がお話しされている様子を拝見し、両社の相性の良さを感じていました。だからこそ、無理に急ぐのではなく、双方にとって心地よいスピードやタイミングで進めることを大切にしていました。
最終的にこのようなお言葉をいただけたことは、本当にありがたく思っています。私自身も多くを学ばせていただき、大きなやりがいと達成感を感じるご支援でした。
中野 様:売り手にとっても買い手にとっても、M&Aは経営者の人生や会社の将来に関わる重大な決断です。従業員を抱える私たちにとっては、一大決心でもあります。
M&Aを単なる一つの案件として進めてしまうと、十分に理解し合えないまま、本来うまくいくはずだった組み合わせが実現しないこともあると思います。大切なのは、相互理解を深めることを軸にして、お互いが納得するまで話し合える環境があることです。今回は、久保田さん、M&Aロイヤルアドバイザリーさんにその点を大事にしていただいたと感じています。
中野 様:中期経営計画では、2028年9月期にグループ売上高40億円を目指しています。今回のM&Aは、その目標に向けた大きな前進になったと考えています。
同時に、ものづくりの構造改革もしっかり進めていきます。省人省力化に向けた設備投資と、それらをつなぐDXの取り組みを並行して進めたいです。
AIや自動化の技術は、当初計画を立てたときから、さらに変化しています。私たちの製造現場でも活用できる可能性が広がっていると感じますので、その変化を捉えながら、設備と業務の仕組みの両面から生産性を高めていきたいと考えています。
中野 様:山形には「ナカノヴィレッジ」という施設があり、保育施設も設けています。もともとは、従業員から「子どもを預けられる場所があったらうれしい」という声が出たことがきっかけでした。それなら、会社の近くにあった方が便利なのではないかと考えたのです。
保育施設の運営は専門の事業者にお願いしています。従業員の子どもだけでなく、地域の方々にも利用していただいていて、最近では従業員のお孫さんが通う例もあると聞きました。
車で通勤する人が多い地域ですから、出勤時に子どもを預け、退勤時に一緒に帰れることには良さがあります。地方ならではの環境を生かした取り組みの一つだと思っています。
中野 様:2026年3月には、売上高100億円を目指す「100億宣言」も公表しました。ただ、私が目指しているのは、単に売上規模や従業員数を大きくすることではありません。
効率化を進め、人数を増やすことだけに頼らずに事業を成長させる。その結果として、一人ひとりの従業員に還元できるものを増やし、給料の水準も高めていきたいのです。
もっと豊かになってもらい、「この会社で働いていてよかった」「この会社を辞めたくない」と思ってもらえる環境をつくりたい。それが、私がやり遂げたいことです。
言葉にするだけなら、いくらでも言えます。大切なのは行動できるかどうかです。目指していることを実現するために、日々、取り組みを積み重ねていきたいと思っています。

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