有限会社中村商事|従業員と取引先を守り、150年を超える看板を上場企業へ託す

譲渡企業

有限会社 中村商事

代表取締役社長   中村 茂美氏

譲受企業

株式会社クラダシ

着手金・中間金無料 完全成功報酬型

本件担当コンサルタント

企業情報第三部

田中 荘都

企業情報第三部

田中 荘都

譲渡企業
  • 有限会社 中村商事
  • https://nakamura-liquor.jp/
  • 有限会社中村商事は群馬県館林市に本社を構える酒類・飲料等の小売会社。「酒の中村」を北関東で3店舗展開し、豊富な品揃えと調達力を強みに地域のお客様から支持を得ている。2026年7月に東京都品川区に本社を構える株式会社クラダシとのM&Aを選択。
譲受企業
  • 株式会社クラダシ
  • https://www.kuradashi.jp/
  • 株式会社クラダシは東京都品川区に本社を構え、ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営する会社。代表取締役社長CEOは河村 晃平氏。「善いビジネスで未来に実りを。」を掲げ、フードロスをはじめとする社会課題の解決に取り組んでいる。2026年7月に有限会社中村商事の酒類・飲料等の小売事業を承継。

規制緩和の逆風を、酒の専門性で乗り越えた歩みと挑戦

1874年の創業から酒類販売を始めるまでの歩みを教えてください。

中村 様:当家の商いは1874年、雑穀問屋として始まりました。酒類販売免許は戦前にも取得していたようですが、戦時中にいったん預け、3代目の中村富茂が1966年2月に免許を改めて取得し、酒類販売を本格的に始めました。

1980年5月に法人化し、私は2001年8月に4代目として代表を引き継ぎました。扱う商品は雑穀から酒類へと移りましたが、地域のお客様に必要とされる商いを続けるという軸は変わっていません。

中村社長は、どのように家業へ入られたのでしょうか。

中村 様:私の世代では、家に商売があれば、そのまま家業に入るのが珍しくありませんでした。私も特別な決意をしたというより、自然な流れで店に入り、仕入れや売場づくり、広告まで、必要なことは何でも自分でやってきました。

伊勢崎店、足利店と店舗が増え、3店舗を運営するようになってからも、現場の動きを自分で確かめながら経営してきました。全体を一人で見渡すには3店舗が限界だと感じるほど、店と近い距離で商売を続けてきたと思います。

ウイスキーを中心に、酒類の品揃えを強化したきっかけは何でしたか。

中村 様:大きな転機は、酒類小売免許の規制緩和です。スーパーやコンビニなどでも酒類を扱う店舗が増え、地域の酒屋は厳しい競争にさらされました。周囲では食品や冷凍食品を増やす店もありましたが、同じことをすればスーパーの土俵で競うことになります。私は、そこでは勝てないと考えました。

そこで、ウイスキー、リキュール、スピリッツなど、酒の専門店だからこそ深く揃えられる分野に集中しました。形になるまでの5年程度は苦しかったのですが、結果として「酒の中村」なら探している酒が見つかる、という強みにつながりました。ホームページでは800種類を超えるウイスキーを揃えていると記載していますが、実際にはそれ以上の種類を揃えています。

同業者が減るなかで、3店舗を続けられた理由はどこにあるとお考えですか。

中村 様:一つは、他社と同じ商品構成にしなかったことです。食品を広げるより、酒類の専門性を磨きました。もう一つは、情報と仕入れの速さです。必要な商品があると聞けば、自らトラックで仕入れに出かけ、すぐに売場へつなげました。

販売面でも、月1回のチラシを内容ごとに3種類に分け、私自身が商品と価格を組み立てていました。品数を増やすだけではなく、「何を、いつ、どう届ければお客様に喜んでもらえるか」を考え続けたことが、3店舗体制を築き、維持できた理由だと思います。

従業員と取引先を守るため、150年の事業を託す決断

事業承継を現実的に考え始めたきっかけを教えてください。

中村 様:私は「酒の中村」を主軸としながらも、いくつかの別事業にも挑戦してきました。そのなかで私自身、体力的にも精神的にも疲れを感じるようになっていました。そんな時、妻から年齢と今後のことを考え、「酒の事業についても、今後を考えてほしい」と言われました。以前から妻は、個人店を取り巻く環境がさらに厳しくなると見ていたのだと思います。

息子も会社に入っていましたが、本人は親族承継に関して、人手不足のなかで3店舗を背負うことに不安を感じていました。家族だからという理由だけで無理に継がせるのではなく、事業を続ける別の道を考える必要があると感じました。

お相手を選ぶうえで、最も重視したことは何でしたか。

中村 様:従業員の雇用を守り、これまでお世話になったメーカーや問屋、取引先との関係を大切にしてくれることです。これまで、多くの同業者が自主廃業するのを見て、店を閉めれば従業員は働く場所を失い、取引先とのつながりも途切れると感じていました。私は、その終わり方は選びたくありませんでした。

そのため、従業員を引き続き雇用することと、既存の取引関係を尊重することを、最初から重要な条件として伝えました。価格や条件もありますが、誰に託すかという点では、人と関係を守る姿勢が一番でした。

株式会社クラダシに託したいと思えた決め手は何でしたか。

中村 様:雇用の継続に加え、従業員の待遇を大切にする姿勢を具体的に示してくれたことです。また、面談でお会いした皆さんが誠実で、上から物を言うようなところもなく、話の方向がずれていると感じることもありませんでした。最終的には、クラダシさんであれば「安心して任せられる」と思えたことが大きかったと思います。

M&Aを終えた今、どのような変化と今後への期待がありますか。

中村 様:成約するまでは大変でしたが、無事にM&Aを終え、まずは少し肩の荷が下りました。成約を迎えたことで、気持ちの面でも一つの区切りがついたと感じています。

これからは、地域のお客様に喜んでもらう店であることを守りながら、クラダシさんの力も借りて、「酒の中村」の品揃えや仕入れのネットワークを次の成長につなげてほしいと思っています。

「気持ちがM&Aに向かなければ中止して構わない」という姿勢でいてくれた

M&Aロイヤルアドバイザリーのコンサルタントはいかがでしたか。

中村 様:最初は、以前に連絡を受けていた別のM&A仲介会社の「田中さん」だと思って、話を聞いたのが始まりでした。始まりは偶然だったものの、信頼できる方だと感じ、M&Aロイヤルアドバイザリーさんにお願いすることを決めました。田中さんでなければ、私はM&Aに対して前向きになることもなかったかもしれません。

M&Aを進めている1年半という期間は大変でしたが、田中さんはM&Aを押し付けず、私の気持ちがM&Aに向かなければ中止して構わない、という姿勢でいてくれました。複数の話を同時に進める余力がないと伝えた時も、私の状態を最優先で進めてくれました。最後まで完了することができたのは、田中さん、M&Aロイヤルアドバイザリーさんのおかげです。大変感謝しています。

田中(担当コンサルタント):中村商事様は150年以上続く歴史ある会社です。また、中村代表は従業員の皆様を守りたいという強い意志を持たれていましたので、中村代表のお気持ちを最優先に考え、M&Aを進めることだけを前提にはしませんでした。ご意思が変われば中止できることを常にお伝えしながら、ご一緒させていただきました。

上場会社との取引で確認事項も多く、少し長い期間になりましたが、無事に最後まで進められたことを、私としても本当に良かったと感じています。こちらこそ、ありがとうございました。

一番大切にしてきたのは、「お客さんに喜んでもらうこと」

50年後、100年後、「酒の中村」に残し続けたい考え方・文化はありますか。

中村 様:私が商売で一番大切にしてきたのは、「お客さんに喜んでもらうこと」です。何よりお客様が第一で、来て良かった、買って良かったと思ってもらえる店でなければなりません。

従業員にも、働いてくれる以上はできるだけ報いたいと考えてきました。長年勤めている店長や従業員は、元気よく、明るく、お客様を迎える店の雰囲気をよく分かっています。経営の形が変わっても、その「酒の中村」らしさは残してほしいと思います。

同じように事業承継に悩む経営者へ、伝えたいことはありますか。

中村 様:M&Aをすると決めてから話を聞く必要はないと思います。私も最初は「田中違い」という偶然から話を聞いただけでした。そこから家族と何度も話し、従業員や取引先を残す道としてM&Aを選びました。

長く続いた会社ほど、自分の代でどうするかは簡単に決められません。ただ、会社をどう手放すかではなく、何を残したいのかを先に考えることが大切です。私にとって残したかったのは、店であり、従業員であり、お世話になった取引先との関係でした。その軸があれば、自分たちに合う選択肢を考えやすくなると思います。

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