譲渡企業
株式会社マイムエステート
代表取締役 若月 啓作氏
譲受企業
非公開(大手不動産ディベロッパー)
着手金・中間金無料 完全成功報酬型
本件担当コンサルタント
中村 浩平
中村 浩平

若月 様:株式会社マイムエステートは不動産賃貸業を営む会社です。創業は昭和13年で、当初は郡是製絲株式会社の埼玉工場としてスタートしました。郡是製絲にとって関東進出の第一号工場で、当時の豊岡町(現在の入間市)に設立されていますが、翌年には飯能市久下に移転しています。
当時の記録によると、埼玉工場には繭を煮るための設備釜が300個以上あったとされ、この地域において製糸業が非常に大規模な産業だったことが伺えます。
また飯能は、名栗から原市場にかけて秩父の山並みが続く地域で、養蚕を広めるために、養蚕家の方々に会社の株を持っていただいたと聞いています。株主として関係性を築きながら繭を仕入れることで、安定的な調達体制を整えていました。当時は繭の仕入れをめぐって製糸会社同士の競争もあったようで、株を持っていただく代わりに独占的に仕入れるといった形が成り立っていました。一時期は株主が1,200人にまで増えたとも聞いています。
その後、第二次世界大戦の影響で、当時の工場は電元社(現・新電元工業株式会社の前身)とともに軍需工場となりました。終戦後、軍需工場を二つの会社に分ける過程で「飯能製糸」という、当社の前身となる会社が設立されます。妻の父が4代目社長、私が6代目社長という系譜で、長い歴史の中で事業の形を変えながら現在に至っています。
若月 様:私は埼玉県狭山市の出身です。大学卒業後は学生ビザでイギリスへ留学したのですが、生活に驚くほど自然と馴染み、自分はイギリスで生まれたのではないかと錯覚するほどでした。ちょうどその頃、旭化成のイギリス支局で求人が出ていたことをきっかけに、現地で就職することになります。
配属先はアイルランドにあったカシミロン工場で、総務責任者を任されました。仕事に取り組む一方で、アイルランドの大自然に触れながら過ごした日々は、今振り返っても印象深い経験です。その後、イタリア支局への転勤の打診がありましたが、そのタイミングで退職し、日本へ帰国しました。
帰国後は、母校の近くに住んでおられた国会議員の秘書として働きました。その先生は後に郵政大臣を務められた方で、当時の埼玉2区から立候補され、飯能市を地盤としていました。私は選挙の責任者として活動する中で、後に義父となる妻の父と出会います。義父は数千人規模の後援会で会長を務めており、後援会に通う中で交流が深まり、妻と結婚しました。
その後は塾の経営なども経験しましたが、最終的には妻の家で代々続く会社に入り、現在に至っています。
若月 様:しばらくは製糸業を続けていましたが、時代の流れの中で結果的に事業は縮小していきました。その中で次の柱として取り組んだのが、飯能駅南口での大規模開発です。ショッピングモールのプロジェクトで、売り場面積16,000㎡、駐車場も約500台弱という商業施設を建設しました。当時の飯能駅南口は工場群が広がるエリアでしたので、大きな話題となりました。
商業施設は利益が大きく出る一方で、建物は減価償却の負担が重く、利益が償却に吸収されていく面があります。そこで私が実感したのが、「これを土地という資産に寄せたら面白い」という視点でした。建物は減価償却に追われますが、自身で所有する土地であれば返済の必要がありません。次の事業の軸を考える上で、土地を中心とする意義が明確になっていきました。
ちょうどその頃、地元企業から不動産の譲渡の話をいただき、購入したことをきっかけに事業規模が一段と拡大しました。所有する土地も広がり、最終的には物件数は100近く、マンションだけでも約65室を保有するところまで成長しました。製糸業で培ってきた地域との繋がりを土台にしながら、資産を活かした不動産賃貸業へと、段階的に重心を移していった形です。

若月 様:当初は親族承継を考えており、娘に会社を継いでもらう前提で準備を進めていました。ただ、娘には3人の子どもがいて、子育てに向き合う姿を日常的に見ていく中で、その選択が現実的なのか迷いが生まれてきました。
特に、娘は学校行事や保護者会への参加も多く、日々の生活の中で時間のやり繰りが簡単ではないことが伝わってきました。そうした状況を見ていると、会社を引き継ぐことで責任と負担が増え、子育てにしわ寄せがいってしまうのではないかという不安が強くなりました。
承継は会社の都合だけで決められるものではなく、引き継ぐ側の人生設計や家庭の状況とも深く結びついています。娘に継いでもらうこと自体は自然な流れだと思っていましたが、家族として無理をさせてまで進めるべきなのかを立ち止まって考えるようになり、親族承継一択で進めることには慎重になりました。
若月 様:これまで土地や不動産を数多く所有してきたからこそ、最終的にはすべて手放したいという気持ちが強くなっていきました。不動産は一つひとつ売却していくこともできますが、それだけでは自分の中で区切りがつかない感覚があったのです。事業として積み上げてきたものを、最後は会社としてきちんと整理し、綺麗に次へ渡す方法を考えたときに、M&Aが最も納得できる選択肢でした。
現在の自宅や土地も妻の名義のものです。M&Aが成立したことで、私自身は何も持たない状態になりましたが、不思議と気持ちが軽くなりました。人間は何も持たずにこの世に生まれるので、同じように何も持たずに生涯を終えることができたら最高だと私は考えています。だからこそ、不動産だけを部分的に売却するのではなく、株式も含めてすべて手放す形を選びました。
若月 様:最も重視したのは、お相手企業の「規模感」です。規模が大きいこと自体が目的ではなく、事業基盤がしっかりしている会社に引き継いでいただきたいという考えがありました。
最近はM&Aを巡る不祥事が報じられることもあり、私としては「きちんとした先に譲りたい」という思いが強くなりました。長年、この地域で事業を続けてきた会社ですので、信頼できる企業に引き継いでもらい、取引先や関係者の方々にも安心していただける形が望ましいです。そうした観点から、企業としての体力やガバナンス面も含めて総合的に判断することを大切にしました。
若月 様:大変だったのは、株主の方々への対応です。冒頭でお伝えした通り、郡是製絲の時代に養蚕家の方々へ株をお渡ししていた経緯があり、当社には株主が多数いらっしゃいました。
ただ、会社が発展してきた背景には、そうした養蚕家の皆様の支えがあったことを絶対に忘れてはいけません。だからこそM&Aを進めるにあたっては、「一軒たりとも不義理を働かない」と最初に心を決めていました。件数が多い分、時間も手間もかかりますので、そこは正直苦労したところです。それでも、会社の歴史にきちんと向き合い、最後まで筋を通すことができたことに安堵しています。

若月 様:今回は買い手企業が大企業だったこともあり、正直なところ安心と不安が混在していました。相手がしっかりした会社であるほど、手続きや確認事項も増えますし、こちらとしても判断に迷う局面が出てきます。その中で、中村さんが常に私の気持ちに寄り添いながら進めてくださったことには、本当に感謝しています。
世間では「M&A仲介会社は手数料が高い」と言われることもあります。ただ、私は今回の経験を通じて、仲介がいなければ絶対に前へ進められなかったと実感しました。関係者も多く、調整も複雑で、経営者一人の力だけでは到底やり切れないと思います。
私自身、途中で中止しようかと考えた場面もありました。それでも最後まで進め、きちんと成立できたのは、お世辞ではなく中村さんがいたからです。最後まで伴走していただき、ありがとうございました。
中村(担当コンサルタント):基本合意をいただいてからは、若月社長は大変だったかと思います。譲受企業様が大企業ですので、確認すべき論点が増え、必要資料の精度や提出スピードも求められました。若月社長には日々ご判断いただく事項が発生し、私も若月社長のご自宅に毎日のように伺わせていただきました。若月社長にご納得いただけるお相手とM&Aが成立し、私としても大変嬉しく思います。この度は本当にありがとうございました。
若月 様:最後に印鑑を押す瞬間は、やはり「不安」や「怖さ」を感じました。これは正直な気持ちです。私は普段、物事をそこまで重く捉える性格ではありません。その私でも怖さを感じたということは、ほかの経営者の方はもっと大きな不安を抱えるのではないかと思います。自分の会社を譲るというのは、それだけ大きな決断です。
だからこそ、信頼できる仲介会社やコンサルタントにお願いすることが重要だと考えています。手数料や条件の良し悪しだけではなく、こちらの事情や迷いも含めて受け止め、整理しながら伴走してくれる相手かどうか。最後の局面まで安心して任せられる体制をつくれるかどうかで、意思決定の質も、気持ちの持ち方も大きく変わります。M&Aを検討される際は、まず「誰と進めるか」を丁寧に選ぶことをおすすめします。
若月 様:言葉にしてしまうと叶わない気もしますので、まだ妻にも具体的なことは話していません。ただ、これからは社会貢献につながることができたら嬉しいと考えています。
私は飯能、そして出身地である狭山といった土地に、お世話になりながら歩んできました。事業を続けられたのも、人との繋がりや地域の支えがあってこそだという思いがあります。だからこそ、何かしらの形で地元にお返しをしていきたい。それが、今の私の一番の願いです。

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