譲渡企業
クラフト・コフナヤ株式会社
代表取締役社長 小船谷 昌幹氏
譲受企業
株式会社山元
着手金・中間金無料 完全成功報酬型
本件担当コンサルタント
江頭 直人
江頭 直人

小船谷 様:クラフト・コフナヤは家具製造と内装設計・施工が主な事業です。現在は16名の従業員で、商業施設やオフィス、ホテルなどの家具製造や内装工事を手掛けています。家具を作るだけではなく、現場での施工まで一貫して対応できることが、当社の特徴です。
当社の強みとしては、熟練した職人が多く在籍しており、長年の仕事を通じて蓄積してきたノウハウがあることです。技術力については、他社と比較しても劣らないという自負を持っています。
また、この地域で当社ほどの人数の職人を抱え、一定の製造能力を持っている会社は多くありません。複数の案件や規模の大きな仕事に対応できることも、当社の強みです。
小船谷 様:当社は、父である先代が「小船谷木工」という屋号で創業しました。当初は桶のような木製品を作っていたと聞いています。その後、当社にとっては恩人と言える方に官公庁や役所関係の仕事をご紹介いただくようになり、学校のロッカーや流し台など、公共施設に納める家具の製造が中心となりました。
私自身は子どもの頃から工場で遊び、職人たちを身近に見て育ちました。大学卒業後は別の会社で経験を積み、平成5年に当社へ入社しています。当時は現在よりも従業員が多く、20名前後の家具職人が働いていたと記憶しています。
私が入社した頃から、少子化などの影響により、新しい学校や公共施設が建設される機会が減り、官公庁関係の仕事も徐々に少なくなっていました。そこで、私はそれまでの経験やネットワークを生かし、商業施設関係の仕事に取り組み始めました。先代が官公庁関係、私が商業施設関係を担当する形でしたが、次第に商業施設やオフィス、ホテル関係の仕事が事業の中心になっていきました。
小船谷 様:ものづくりそのものには、確かに楽しさがあります。ただ、作り手が楽しむだけでは十分ではありません。私が最も大切にしているのは、完成したものを見たお客様に喜んでいただくことです。そのために、当社の熟練した職人たちは最後の「ひと手間」を決して惜しみません。
わずかな工夫や気配りでも、仕上がりや使いやすさは変わります。その積み重ねがお客様の満足につながることを、長年この仕事を続けるなかで実感してきましたので、当社としては非常に大切にしている考え方です。
小船谷 様:職人の世界では、自分が身につけた技術を人に教えたがらないという風潮が残っていることがあります。しかし、会社が組織として続いていくためには、技術を次の世代へ伝えなければなりません。当社では、経験のある職人に対して、若い職人へきちんと技術を教えるように伝えています。
一方、若い職人には、分からないことを分からないままにせず、素直に質問することを徹底させています。知っているふりをするのではなく、周囲からすべてを吸収する姿勢が大切です。「職人」と聞くと、頑固で話しかけにくい印象を持たれることもありますが、当社では世代を超えてコミュニケーションを取りながら仕事をする文化が根付いています。その関係性は、技術の継承にもつながっているはずです。
また、若い職人は現場で経験を積むことが大切です。知識を身につけるだけでは、職人としての技術は磨かれません。私は若い職人に、「初めて取り組んだことで失敗するのは構わない」と伝えています。知らない仕事に挑戦して失敗したのであれば、それは勉強です。
ただし、同じ失敗を繰り返してはいけません。失敗した理由を振り返り、次の仕事に生かすことで、経験が技術へと変わっていきます。挑戦を恐れず、現場で学び続けられる環境をつくることが、若い職人の成長には欠かせないと考えています。
小船谷 様:はい。様々な要因があると思いますが、経営者としては従業員を大切にすることも意識しています。一人ひとりの従業員が会社で頑張ることができるのは、配偶者やご両親、子どもたちなど支えてくれる存在があるからです。従業員を大切にすることは、その家族の生活を大切にすることでもあります。福利厚生や休暇制度なども含め、できる限り安心して働ける環境を整えたいと考えています。

小船谷 様:具体的な計画を持っていたわけではありませんが、新型コロナウイルスの感染が拡大した頃から、自分や会社の将来について考えるようになりました。外出が難しい時期に本を読むなかで、『DIE WITH ZERO』という書籍に出会い、自分の人生や資産、会社を今後どのような形で残していくのかを改めて見つめ直しました。
私には娘が二人いますが、それぞれ当社とは異なる道を歩んでいます。娘たちには「自分が歩みたい道を進みなさい」と伝えていましたし、親族承継という選択は考えていませんでした。
従業員承継も選択肢として検討しましたが、当社の株式を従業員が引き継ぐ場合、株価や税金面を考えると、従業員の負担が非常に大きくなります。会社を引き継いでもらうために、個人へ重い負担を背負わせることは本意ではありません。
親族承継や従業員承継が難しいなかで、会社を解散せずに残す方法を模索していました。
小船谷 様:親族承継、従業員承継、会社の解散など、さまざまな選択肢を考えるなかで、M&Aが現実的な選択肢に思えてきました。どのタイミングで本格的に検討するかも悩んだのですが、私自身が65歳、70歳になってから、今と同じ判断や行動ができるかを考えると、体力的にも時間的にも難しくなることが予想できました。
自分が会社に関わることができ、従業員や買手企業様と一緒に将来をつくれる今だからこそ、M&Aに取り組む意味があると感じたのです。今のタイミングであれば、時間をかけて次の経営体制をつくり、従業員のなかから将来の経営を担う人材を育てることもできます。総合的に考えて、今が最もよい時期だと判断しました。
小船谷 様:まず、同じエリア内の同業者に譲ることは避けたいと考えていました。また、当社の取引先や元請け企業と競合関係にある会社も、候補にはしたくありませんでした。これまで関係性を築いてきた大切なお客様との関係を守ることが重要だったからです。
一方で、当社の事業と関連性のない会社さんでは、職人の仕事や事業の価値を理解してもらうことが難しくなります。当社の仕事と一定のつながりがあり、お互いの事業を生かせる会社が理想でした。
小船谷 様:山元様には、二度、三度と当社まで足を運んでいただき、親身になって話を聞いていただきました。また、山元様のグループには、当社に近い事業を行う会社や、設計・デザインに関係する会社があります。ものづくりや内装工事の現場を理解しているグループであれば、当社の職人や仕事の価値も理解していただけると考えました。
また、実際にグループ会社の方々ともお会いし、事業について具体的な話を重ねるなかで、山元様であれば一緒に会社を成長させていけると感じたのを覚えています。当社の工場や製造能力についても評価していただき、グループ内の既存企業とは異なる強みを持つ会社として、当社の設備や職人の技術を生かしていただけることも、大きな決め手となりました。
小船谷 様:最終段階まで、M&Aについて知っていたのは私と妻だけでした。今回の決断は決して後ろ向きなものではなく、会社や従業員の将来を考えた前向きなM&Aです。私も会社に残りますので、従業員に説明する際も特に不安はありませんでした。
ただ、私にとって従業員への説明以上に難しかったのは、母に話すことでした。父である先代が一から築き上げた会社の株式を、私の判断で譲渡することに対して申し訳なさがあったのは事実です。
それでも母は話を聞いたうえで、「あなたが言うのであれば仕方がない」と受け入れてくれました。その言葉を聞いたときに、安堵したのを覚えています。会社を残すことは、単に法人を存続させることではありません。先代の想いや家族の歴史、職人の技術、従業員の生活を次につなぐことです。その責任を感じながら進めたM&Aでした。

小船谷 様:江頭さんとの出会いは今でも覚えています。M&A仲介会社からの電話はすべて断っていて、基本的に取らないようにしていたのです。しかし、ロイヤルアドバイザリーさんと似た名前の取引先がありまして、間違えて私が出てしまったのです。
ただ、担当者の話し方に親しみやすさがあり、M&Aありきの話ではないということなので、自社の状況や価値を客観的に知りたいという気持ちで、まずは話を聞くことにしました。
江頭さんは非常に真面目な印象で、もう少し打ち解けてもよいのではないかと感じる場面もありましたが、その誠実さがロイヤルアドバイザリーさんの社風なんだと思います。たくさん助けていただくこともありました。ありがとうございました。
江頭(担当コンサルタント):初めてお会いしたときから、従業員の皆様を大切にされている社長様だと感じていました。日々のやり取りでも、返信の速さや一つひとつの対応の丁寧さから、小船谷社長の誠実なお人柄が伝わってきました。
私自身にとって、小船谷社長との出会いは非常に大きく、「小船谷社長であれば、どのように考え、どのように仕事をするだろうか」と意識することを日々の仕事にも取り入れるなど、多くを学ばせていただきました。大切な将来を考える場面でご一緒できたことに、心から感謝しています。ありがとうございました。
小船谷 様:会社を継続することは、決して簡単ではありません。そして、会社が続くためには、必ず「人」の存在があります。
当社はこれまで、積極的に営業をかけて仕事を獲得してきた会社ではありません。さまざまな方との付き合いやご縁がつながることで仕事をいただき、現在まで事業を続けてきました。今回のM&Aも、人との出会いやご縁によって実現したものです。
これからも人とのつながりを大切にし、目の前の仕事に誠実に向き合っていけば、会社は次の世代へつながっていくと考えています。
一方で、ものづくりの方法は、時代に合わせて変えていかなければなりません。
インターネットが普及し、現在はAIも急速に発展しています。30年前には想像できなかった環境のなかで、私たちは仕事をしています。昔から受け継がれてきた技術は、大切に残す必要があるのも事実ですが、昔ながらの技術だけで、これから先も事業を続けられるわけではありません。
技術や考え方を守りながらも、時代に合った仕事の進め方を取り入れる。変えてはいけないものと、変えるべきものを見極めることが大切です。それを土台に、人との縁を大切にする姿勢があれば、クラフト・コフナヤはこれからも続いていくはずです。
小船谷 様:M&Aを行ったからといって、クラフト・コフナヤが別の会社になるわけではありません。私自身も引き続き会社に残り、これまでと同じように仕事を続けます。
M&Aについてお知らせした際には、取引先の方から、「今後も仕事をお願いできるのか」「社長は会社に残るのか」といったお問い合わせをいただきました。皆様にお伝えした通り、当社の仕事に対する姿勢や、お客様との関係は変わりません。
これまで通り、一つひとつの仕事に誠実に向き合い、これまで以上に仕事を任せていただける会社を目指します。山元様のグループに加わることで、新しい力や可能性を得ながら、クラフト・コフナヤらしいものづくりを続けてまいります。
今後とも変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。

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