株式会社JRC|協業型M&Aで切り拓く成長戦略。新設「グロースM&Aカンパニー」が目指す未来とは

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代表取締役社長   浜口 稔氏、取締役副社長 常川 陽介氏

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本件担当コンサルタント

企業情報第二部

織田 浩行

企業情報第二部

織田 浩行

譲渡企業
  • 株式会社トーカイコンベア
  • https://tokai-c.co.jp/
  • 株式会社トーカイコンベアは神奈川県川崎市に本社を置く搬送機器メーカー。クリーニング・リネンサプライ業界向けに衣類搬送・保管用コンベヤシステムの設計・製造・販売を手がけ、高い技術力を強みとする。2026年9月に株式会社JRCとのM&Aを実施。
譲受企業
  • 株式会社JRC
  • https://corp.jrcnet.co.jp/
  • 株式会社JRCは大阪市西区に大阪本社を置く搬送機器メーカー。ベルトコンベヤ部品で国内トップシェアを誇り、環境エネルギー事業やロボットSI(システムインテグレーション)事業も展開。2026年9月に株式会社トーカイコンベアをグループに迎えた。

コンベヤ領域を軸に、環境エネルギーやロボットSI(システムインテグレーション)まで事業を拡大

株式会社JRCの事業内容と強みについて教えてください。

浜口 様: 当社は、ベルトコンベヤに使われるローラやプーリなどの部品の製造・販売を主力事業としています。製鉄所や発電所をはじめ、さまざまな産業の現場で使われています。屋外用ベルトコンベヤ部品では国内シェア約52%を有し、全国で1万3,000社を超えるお客様にご利用いただいています。

コンベヤ事業では部品を納めるだけでなく、現場の課題を解決するソリューション提案から工事、メンテナンスまで一貫して対応しています。製品を入口に、お客様の設備がより良く動くところまで関われることが、当社の大きな強みです。

また、現在はコンベヤ事業に加え、ごみ処理施設などの搬送設備を手がける環境エネルギー事業、産業用ロボットを活用して製造現場の自動化・省人化を支援するロボットSI事業も展開しています。

1961年の創業から今日に至るまで、事業の転機はどこにあったのでしょうか。

浜口 様:創業者である父は淡路島の出身で、若い頃、大阪の立売堀にある機械工具関係の商店で働き、ベアリングなどを扱っていました。当時、ベルトコンベヤのローラにベアリングが数多く使われており、「これは商売になるのではないか」というところから始まったと聞いています。1961年に浜口商店を創業し、その後、工場を設けて生産を本格化させ、1965年に浜口鉄工株式会社として法人化しました。

大きな転機は、1989年にローラの自動組立ラインを導入したことです。私たちは後発メーカーで、当時は決して注目を集める存在ではありませんでした。ただ、自動化によって品質が安定し、生産量も増やせるようになりました。その結果、お客様からの評価が変わり、シェアも伸びていきました。1991年には株式会社ジェイアールシーを設立し、町の鉄工所から製造メーカーへと成長していったという感覚があります。

JRC様が事業領域を積極的に広げるようになった背景を教えてください。

浜口 様:一つのきっかけは、上場を目指したことです。以前から、将来的に株式をどうしていくかという問題がありました。親族への承継という選択肢も難しいなかで、M&Aによって会社を託すのか、それとも上場を目指すのかを考えたのです。検討を重ねた結果、より大きく開かれた会社にしようと上場を目指しました。

インテグラルさんの協力を得て2023年に上場できましたが、上場はゴールではありません。株主の皆様の期待に応え、しっかり成長していく責任があります。環境エネルギー事業への進出やロボットSI事業の立ち上げなど、上場以前から事業領域の拡大を進めてきましたが、今後もさらなる成長を目指して取り組みを加速させていきたいと考えています。

副社長の常川様は、インテグラルの担当者として御社に携わっていたそうですね。

常川 様:はい。インテグラルの投資先にJRCがあり、2019年から大阪に移って常駐し、2023年の上場準備やロボットSI事業の立ち上げなどに携わりました。ファンドの投資が終了した後も、私はこの会社に残りたいと思い、2024年に転籍しました。

残りたいと思えた一番の理由は、「浜口と一緒に仕事を続けたい」と思えたことです。ビジョンが明確で、挑戦を任せてくれる。社員にも真面目で、お客様や仲間を大切にする人が多い。まだまだ成長できる会社だと感じました。

それでは、環境エネルギーやロボットSIという領域に注目された背景も教えてください。

浜口 様:以前は製品を納めたら、それで仕事が終わっていました。ただ、現場へ足を運んでお客様の声を聞いてみると、コンベヤがうまく動いていない、工程がスムーズに流れていないといった課題が多くありました。私たちがそこで改善提案をすると、とても喜んでいただけました。単に製品を販売するのではなく、課題を解決すること自体を事業にしようと考えるようになりました。

ロボットSIもその延長線上にあります。当社は製造現場で産業用ロボットを長年使っており、利用者としての知見や改善のノウハウを蓄積してきました。それを、人手不足に悩む中小のものづくり企業などに提供できれば、社会の役にも立てると考えたのです。

環境エネルギー事業については、2016年にグループに加わった、ごみ処理施設などのコンベヤ設備を手掛ける会社が基盤になっています。そこからM&Aも活用して事業を広げてきました。

それぞれの企業が持つ文化・考えを尊重した「協業型M&A」

M&Aを本格的に成長戦略へ取り入れた理由は何でしょうか。

浜口 様:自分たちだけで新規事業を立ち上げることの難しさを実感したからです。ロボットSIを自力で始めたときには、非常に時間もお金もかかりました。一方、M&Aであれば、すでに技術や人材、顧客基盤を持つ会社と一緒に事業を伸ばすことができる。短期間で成長を加速させる有効な手段だと考えました。

当社は上場以前からM&Aに取り組んでおり、2016年にグループ入りした会社を起点に、環境エネルギー事業を育ててきました。新規事業をはじめる方法は一つではなく、互いの強みを生かせるM&Aも大切な選択肢になります。

御社が掲げる「協業型M&A」とは、どのような考え方なのでしょうか。

常川 様:私たちが「協業型M&A」と呼んでいるのは、親会社の方針を押し付けるのではなく、残る役員や社員の皆さんの想いと、JRCの想いをすり合わせて、双方がより良い会社になるためのM&Aです。そこは当社のM&Aポリシーの核となっています。

お相手企業にも、それまで培ってきた文化や考え方があります。それを一方的に変えるのではなく、良いところを伸ばしていく。仮に両社の考え方に溝が生じたとしても、きちんと話し合って理解していただいたうえで進めます。

その考え方を実践するうえで、特に大切にされていることはありますか。

常川 様:基本的に、グループに加わる会社の社員の皆さんには、まず私たちが直接会社の説明をします。そして、一人ひとりと面談するようにしています。実際に話を聞くと、想いや不安、希望が出てくるのです。そうした声に耳を傾けることで、お互いの理解が深まっていきます。

PMI(買収後の統合プロセス)を担うメンバーにも、親会社の立場で上から指示するのではなく、人柄で信頼を得るよう伝えています。ありがたいことに、グループに加わった会社の方から「JRCと一緒になって良かった」と言っていただいたり、役員の方と遠慮なく意見を交わせる関係になったりすることもあります。そんな距離感がJRCらしいM&Aなのかなと思います。

価格や条件だけでは測れない部分も、大きいのですね。

浜口 様:そう思います。私自身も、インテグラルさんから出資を受ける際には、投資される側として常川さんと面談した経験があります。ほかのファンドとの話がかなり進んでいましたが、常川さんの人柄にひかれ、最終的にインテグラルさんにお願いした経緯があります。ですから、M&Aで相手とどう向き合うかの大切さは、自分の経験としてもよく分かります。

当社が最も高い価格を提示するとは限りません。価格面で他社に及ばない場合でも、JRCを選んでくださる経営者の方がいらっしゃいます。条件はもちろん大切ですが、「この人たちと一緒にやっていきたい」と思っていただける関係を築くことが何より重要だと感じています。

常川 様:企業の価値は、突き詰めれば「人」にあると考えています。どれだけ良い事業や技術があっても、それを生み出し、伸ばしていくのは「人」です。従業員たちが前向きに取り組めなければ、会社は成長しません。だからこそ、M&Aでも人を大切にする姿勢を貫いています。

2026年8月に「グロースM&Aカンパニー」を新設した背景を教えてください。

常川 様:もともと当社には、コンベヤ、環境エネルギー、ロボットSIという三つの事業領域があり、それぞれの周辺分野でM&Aを進めてきました。ただ、さまざまな会社とお会いするなかで、既存事業とは少し離れていても、すばらしい経営者や技術を持つ企業に出会うことがあったのです。

以前は事業領域が異なるという理由でお断りしていたケースもありましたが、採用、管理体制、製造技術などで協力できることはあります。事業承継という社会課題にも向き合いながら、互いに成長できる会社とご一緒したい。それなら既存の方針に当てはめず、独立した受け皿を設けようと考え、新設しました。

将来的には、ご一緒した会社自体が中心となって、さらに周辺の会社とM&Aを進め、事業を伸ばしていく形も考えています。企業を取得して終わりではなく、新たな成長の核を一緒につくっていきたいです。

トーカイコンベアとの出会い。「人」と「技術」に感じた可能性

グロースM&Aカンパニーの第1号案件となったトーカイコンベア様の、どこに魅力を感じられたのでしょうか。

浜口 様:まず、金岡社長がとても魅力的で、本当に素敵な経営者だと感じました。それに、トーカイコンベアさんは、衣類搬送用コンベヤというニッチな分野で確かな技術と実績を持っています。当社とは同じ「搬送」に関わる会社ですが、手がける分野や顧客はかなり違います。だからこそ、組み合わせることで新たな可能性があると思ったのです。これまで培ってきた技術や顧客基盤を生かしながら、国内外でさらに成長できる余地がある。そこにも大きな魅力を感じました。

実際にお会いして、金岡社長や社員の皆様にはどのような印象を持たれましたか。

浜口 様:とても明るくて、真面目な方々だなと思いました。会社全体に、穏やかで良い雰囲気があります。金岡社長も新しいことへの挑戦を続けてこられた方ですし、社員の皆さんにも、その姿勢が伝わっているのではないでしょうか。

常川 様:私たちも社員の皆さんに会社の説明をして、一人ひとりと面談しましたが、前向きな方が本当に多かったです。仕事は決して簡単ではないはずなのに、「新しいことをやってみたい」という気持ちが伝わってきました。金岡社長自身も、すべてを自分で抱えるのではなく、人を信頼し、人を育てる経営をされている。人を大切にするという点は、JRCと共通している部分だと感じました。

両社の事業を組み合わせることで、どのような相乗効果を期待していますか。

常川 様:トーカイコンベアさんが扱う衣類搬送用コンベヤでは、電気制御やプログラミングなどの技術が重要になってきます。まずは、JRCのロボットSI事業が持つ電気制御の知見を生かせると考えています。これまで外部にお願いしていた部分についても、外注先との関係を大切にしながら、社内にノウハウを蓄積していきたいですね。

加えて、採用面やシステム化・DX、マーケティングといった経営面でも支援できることがあります。将来的には、販売力の強化や海外での事業拡大にも取り組んでいけると考えています。まずはトーカイコンベアさんの持つ良さをさらに伸ばしていくことが重要だと思っています。

M&A後の両社の関係については、どのように感じていらっしゃいますか。

常川 様:社員の皆さんが新しい取り組みを楽しみにしてくださっていると聞いています。現場にも足を運びながら一緒に考えていますし、工場を見に来たいという話も出ています。これから何ができるだろうと、お互いに前向きに話せる関係になってきたのは、とてもうれしいです。

浜口 様:トーカイコンベアの皆さんに期待していただいている分、私たちもしっかり応えていかなければいけません。意欲の高い方が集まっていますので、これまで「やりたかったけど、できなかった」ことに挑戦できるよう、力を合わせていきたいと考えています。

両社の想いを理解し、スムーズに進めてくれた「橋渡し役」

今回のM&Aを担当したM&Aロイヤルアドバイザリーの織田はいかがでしたか。

浜口 様:M&A仲介会社は、担当される方がどれだけ売手企業と買手企業の想いを理解し、間に入って話を進めてくれるかが大切だと思います。織田さんは金岡社長とも良い関係を築いていて、お互いの考えを大切にしながら、スムーズに進めてくれました。両社のすばらしい橋渡しをしていただいたと感じています。

常川 様:金岡社長に寄り添い、織田さんはどの会社と一緒になるのがベストかを真剣に考えていたと思います。金岡社長だけでなく、社員の皆さんにとっても良い選択になるよう、さまざまな可能性を踏まえて向き合っていたことが印象に残っています。

織田(担当コンサルタント):今回のM&Aでは、両社の事業内容や経営方針はもちろん、経営者同士の価値観や将来のビジョンが合致するかどうかも大切なポイントでした。検討を進めるなかでは、さまざまな論点や調整すべき事項もありましたが、浜口社長、常川副社長には一つひとつの事情を受け止め、最後まで真摯に向き合っていただきました。

また、成約後には金岡社長から、社員の皆様が今後の新たな取り組みをとても楽しみにされていると伺い、両社にとって意義のあるご縁をおつなぎできたことを大変嬉しく感じています。今後、両社がそれぞれの強みを生かしながら、さらなる成長を実現されることを心より楽しみにしております。

コンベヤで世界一を目指す。M&Aは「良い会社」をともにつくる手段

今後、JRCグループをどのような企業グループにしていきたいとお考えですか。

浜口 様:何よりも、もっと良い会社をつくっていきたいです。そのためには事業の規模も拡大していかなければなりません。上場した以上、さらに上の市場を目指せる規模感に成長していきたいと思っていますし、長い目で見れば、コンベヤの分野では世界一を目指したいと考えています。

2035年2月期には売上高750億円、営業利益120億円という長期ビジョンを掲げています。コンベヤ、環境エネルギー、ロボットSI、そしてグロースM&Aのそれぞれを、しっかりとした収益の柱に育てていくことが目標です。

その実現に向けて、M&Aは今後どのような役割を担うのでしょうか。

常川 様:私たちはM&Aの件数そのものを追いかけているわけではありません。本当に良い会社と出会えたら、一緒に成長していきたいという考えです。事業承継の課題を抱える企業も増えていくなかで、JRCとしてお役に立てる場面はまだまだあると思います。

グロースM&Aカンパニーも、将来的にはコンベヤ、環境エネルギー、ロボットSIと肩を並べるような事業の柱に育ててまいります。

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